【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
プロットの見直しで1日開けましたすみません。
「ご飯できたよー」
「ホントにデリカシーってものが……えっ!?」
「女性の扱いというものを……はい!?」
"いや、本当にすみませんでした!”
"キレすぎで草”
"それキレるわ”
"キレないわけないやろがい!”
"ユキちゃん!?”
2人に声を掛けたら、後ろを振り返って大声を上げて固まった。2人の仕事も私がやったことに対して思うところがあるのかもしれないけど、私は特に気にしないけどね。料理好きだし。
極論、私がひたすら作って2人が食べ続けていても全然気にしない。私としてはそもそも食べてくれるのが嬉しいし。とはいえ、これが知らない人だったら多分無理なので、お店とかはダメかな……。モンスタージビエのお店とかやったらそれはそれで面白そうだし、将来の選択肢の中には入れておこうかな。
その辺は置いといて、固まってる2人をテーブルにつかせないとね。
「2人ともそこまでにして食べようよ。冷めちゃう」
「そ、そうだね。食べよ食べよ!」
「え、ええ、美味しいうちにいただきましょう!」
"草”
"大人組はさぁ…”
"今回はリスナーが悪いやろ”
"今回『は』”
"やめたれwww”
冷や汗を流しながら慌ててテーブルに座る2人。そんなに慌てなくていいのに。
ちょっと反省はしてほしいのでそのへんのことは触れないけれども。
ああ、リスナーさんたちは後で覚えておいてね。
「 実 食 !」
" 実 食 !”
"わあ、2代目だ!!”
"それでこそ実食ネキや!”
"二人目来てて草”
"なんでお前らは乗らねぇんだよ!!”
いつも通りに花奈さんが実食して、私は食べ始める。
よし、餃子は後回しだ。メインだしね。とりあえず、卵餡掛けから食べようかな。味も一番薄いし。いや、そこそこ濃いけどね。他に比べてね。
「なんかもう恒例行事になってるよねそれ」
「お約束と言うのは大事ですわよ」
「そういうもの?」
「コメントが稼げますわ」
「配信者すぎる答えが出てきてびっくりだよ」
"お約束大事は分かる”
"この過疎配信でコメント稼いでどうすんだよwww”
"ユキちゃんの思想と真っ向から反している模様”
"絶っ対に有名になりたくない!!”
"配信者にあるまじき言動すぎて好き”
はぐはぐ……いい感じの餡掛け。うんうん。ご飯にも合うし。今後家とかでも作ろうかなこれ。簡単だし、ご飯に合わせるならこれもいいな。あとでいろいろ試してもっと美味しくならないか研究しよう。
「餡掛け美味しい」
「ユキちゃんが完全にご飯食べてるだけに……」
「話に加わるつもりもなさそうですわね……」
"餡掛け美味しいw”
"完全にスルーwww”
"もきゅもきゅ食べてそう”
"アヤネさんはバクバク食ってるな”
"実食ネキはグビグビ飲んでるぞ”
"一人食ってなくて草”
美味しいけど、ご飯と一緒に食べるとちょっと薄いかな……? ご飯がすすむ味なのは間違いないけど、個人的には、もうちょっと味濃くてもいいなぁ……
「うーん、もうちょっと味濃くしてもよかったかもな……いや、そうすると麻婆茄子と取り合わせが悪いか」
「反省会までしてる……」
「非常に美味しい以外の感想なんてございませんのに……」
「美味しいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、それ以外何もないのもちょっと困るんだよね……」
花奈さんの感想は嬉しいよ。でもね、それだけだと困るんだよ。これからも私がメインで作っていくわけだし、色々意見は欲しい。味付けとか、野菜とかの大きさとか。
「何故です?」
「味の好みってあるじゃん。辛いの嫌だとか甘いのが苦手だとか」
「ふむ……そういうことでしたら、味付けは濃い目でお願いいたします。お酒に合うので」
「はいはい」
"お酒に合うので(キリッ”
"この飲んだくれがよぉ”
"こいつ酒好きすぎやろwww”
"モンスターで酒を造ろうとしている女だ。面構えが違う”
キリッて顔して言うことじゃないんだよ呑兵衛め……。んー、となると鬼灯も味濃いのが好きなのか? いや、あいつは結構繊細なの好きだよな……?
特に、出汁メインのもの出すと美味しいそうに食べてるし……まぁ、メインの飲料がお酒な人とお酒以外飲めない人の違いと言われたらそれだけの可能性があるけども。2人が同時に来たらどうしたものかな。
「私も濃い目がいいな! ご飯に合うから!」
「はーい」
"アヤネさんは可愛い”
"いっぱい食べる女の子は可愛い”
"ユキちゃんの反応で草”
"実食ネキの時と明らかにテンション違うのワロタ”
横から彩音さんが元気よく要望を伝えてくれる。私もその方がいいから、多分これからは味が濃い目になります。
……塩分に気をつけないとダメだなこれは。生活習慣病とかになったら大変だ。2人はお酒も飲んでるし。
減塩の醤油や味噌を買い揃えるか。などと考えていたら、花奈さんがバックパックからお酒を取り出した。
一応、料理に合うお酒を選んで持って来たいと言われたので、行く前に今日の予定ではこの系統で行くよー。くらいの話は花奈さんにしている。
彩音さんにも同じように伝えようかと思ったら、サプライズの方が楽しいから隠して欲しいって言われた。
「本日は中華と言うことでこちらに割るようの焼酎とウーロン茶。そしてビールを持ってまいりました」
「ビールちょうだい」
「どうぞ」
うん。分かってたよね。そのために採用したもんね。
2人してカシュッという音とともにビール缶を開けて、グビグビとビールを飲み始めた。
もうこの点に関してはどうにもならないとして……
「……2人はさ」
「うん」
「はい」
なんだろうな。なんか変に緊張してないか2人とも……?
「何時くらいに寝てるの?」
「大体1時とか……」
「わたくしは12時頃ですわね」
「起きるのは?」
「大体8時過ぎかな」
「わたくしは7時過ぎには起きておりますわ。髪のセットに時間がかかりますので」
"よかった、まだ常識の範疇だった”
"カナさんの髪のセットヤバそう…”
"そもそも手入れヤバそう…”
つまり、2人とも大体7時間睡眠なわけだね。私と変わらないな。
あと、花奈さんの髪のセットに時間がかかるは納得。というより、ウェーブかけて腰まである髪の手入れの手間とか考えたくない。私のこの長さでさえ面倒くさいのに。
「ユキちゃんは?」
「12時には寝てる。起きるのは大体7時」
「それって学校間に合うの?」
「家からそんな遠くないし余裕だよ。前日に朝ご飯とお弁当の仕込みは済ませておくし」
"この手際のよさよ”
"結婚してほしい”
"冒険者以外お断りやろ”
"ユキちゃんについていけるくらい強くないと厳しいゾ”
"ついでにモンスターも食べれないとな”
"やっぱいいです”
"やっぱいいですwww”
まあ、前日に仕込みをしてしまえばそんなに時間のかかるものでもない。炊飯器のボタンを押して、汁物を火にかけて、その間に髪の寝癖を取って……みたいな感じである。
面倒だからさっさと済ませたいっていうのも大いにあるけども。
「やはり、あまりにも女子力が光り輝いておられませんか?」
「翌日の仕込みとかしたことないよ……」
「朝からドタバタしたくないじゃん」
「それはそうだけどね……そうじゃないんだよ」
"わかるー”
"翌日面倒ってわかってるんだけどな…”
"もうね、やる気がね…”
彩音さんの若干哀愁すら感じる言葉に、じゃあどういうことなんだよって言いたくなってしまう。朝からバタバタしたくないなら前日に済ませておく以外にないだろうに……
「じゃあ、2人は朝ごはんどうしてるの?」
「ご飯を炊いてインスタントの味噌汁と……サラダ的な何か……」
「わたくしはパンにおかずを数品と言う感じで……あとサラダとか……」
「なんで目をそらしながら言うの……?」
"絶対サラダ食ってねぇだろwww”
"取ってつけたようなサラダ草”
"大人2人はさぁwww”
いや、本当になんで目をそらしたの? 別に悪い内容じゃないでしょ今の朝ご飯のメニューは。ちゃんと野菜もとってるし。
そう思っていたら、彩音さんが話を打ち切ってしまった。
「と、とにかく! 全部とっても美味しいよユキちゃん!」
「う、うん。どういたしまして……?」
"逃げるな。逃げるなぁ!!”
"年下に負けている現実から逃げるなぁ!!”
"やめたれwww”
なんだか彩音さんに押し切られてしまったけれど、触れられたくないんだろうし、とりあえずはいいかな。
その後もしばらく雑談しながらご飯を食べていたんだけど、彩音さんが物憂げな表情をして餃子を見つめ始めた。
「餃子、かぁ……」
「どうかしたの?」
「いやぁ、餃子って色々種類があるでしょ?」
「ありますわね。ワンタンなども広義では餃子の一種でしょうし」
「2人はどれが好きかなって」
「私は水餃子かな。ゴマダレにラー油とかで食べるのが好き。ワンタンスープなんかも好きだし」
「わたくしは焼き餃子ですわね。ビールにサワー。色々合いますから」
「……揚げ餃子ってやっぱり少数派だよね……」
"餃子は焼き一択”
"スープに入ってるワンタン好きだわ”
"焼き餃子のイメージ強いな”
"焼き餃子以外売ってる店がそもそも少ないイメージあるわ”
確かにあんまり揚げ餃子が一番! って人聞かないかも。愛依や凉、お父さんに白石さんなんかを思い浮かべても揚げ餃子が一番な人は思いつかない。
そのまま餃子議論に花を咲かせようとしたとき、《魔力探知》に何か引っかかった。
「……?」
「? どうしたの?」
気になったので、そちらに集中。彩音さんが怪訝な顔をしているけど、今はスルーだ。
こちらに逃げてきているらしき2人の冒険者、その後ろにオークが大量に。そして……。
「…………こっちに逃げてきてる人が2人。後ろにオークの大群」
"は?”
"イレギュラーか?”
"押し付けられる?”
"押し付けられてもユキちゃん一人で余裕やろ”
"それはそう”
その後ろに
こういうことをやる連中は、捕まえてギルドに突き出す。絶対にだ。
杖を持って席を立つと、事態を把握した花奈さんがスキルを発動し盾を装備し始め、彩音さんはテーブルに立てかけてあったハルバードをつかみ取った。
「た、助けてくださーい!!」
「無理言ってるのは分かってるっ! たのむ、助けてくれっ!!」
オークの群れから逃げている男女の助けを呼ぶ声も聞こえてきた。どうやら男女二人組らしい。
とはいえここは中層で、この結界石はミノタウロスの一撃すら防ぐほどのもの。オークごときでは絶対に破れない。だから、2人がここに逃げ込んだ時点で確実に助かる。
そうだとしても、ここに逃げ込むまでに2人が追い付かれない保証もない。だから、今すぐにでも助けに行く。
「2人は逃げている人たちの保護に回って。
「は、はい」
「わ、分かった」
やることは単純だ。モンスターを倒して前2人を助けて、後ろ3人も潰す。
私は2人に指示だけ出すと、結界の中から浮遊魔法で飛び出した。
「……ユキちゃんキレてなかった……?」
「……キレてましたわね……」
次回はたぶん逃げてきた側視点……の予定。