【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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遅くなってすいません。普通の配信を書くのがキッツイ!
なんででしょうねぇ……


ダンジョン配信者の俺たちと人の悪意

 

「ダンジョン配信者になりたい?」

「そう!」

 

 中学校からの帰り道。俺、不知火雄志(しらぬいゆうじ)は、目の前の幼馴染である八代瑞希(やしろみずき)が夢を語るの聞いていた。

 

「楽しい冒険して、みんなを笑顔にするの!」

 

 瑞希は昔から周りを喜ばせるのが好きな奴だったし、その夢に特に驚きはなかった。

 

「そんでさ、ゆうめーになって、テレビに出ちゃったりなんかしてー」

「みんなを笑顔にしたいのか、テレビに出たいのかはっきりしろよ」

「どっちも!」

 

 俺たちは、まあ普通の幼馴染だと思う。家が近くて同い年だからって、結構一緒にいることが多くて、友達とかよりも兄弟って感じの関係だ。瑞希もあんまり女女してないっていうか、割と男友達と同じ感じで付き合えてたし。えっとあれだ。ボーイッシュ、ってやつか。

 前から瑞希は冒険者になりたいと言っていたし、俺もそうなりたいと思ってた。でも、配信者になりたいと言ったことは一度もなかったのである。

 

「でさ、雄志も一緒にやろ?」

「はぁ? なんで?」

「いいじゃん、やろうよ! ね?」

「…………お、おう……」

 

 正直、俺は有名になりたいとは思っていたけど、そういうふうに有名になりたいと思ってたわけじゃない。

 けど、あの日のちょっと首を傾げた上目遣いの瑞希を、不覚にも可愛いと思ってしまったのだ。

 

 

 

 その結果。

 

「はーい、こんにちはー!! 瑞希だよー!!」

「うっさ……ちーす、雄志でーす」

「こらー!」

 

 現在19歳の俺は瑞希と一緒に、『ダンらぼ』というダンジョン配信系クランに入団し、ダンジョン配信をしている。『ダンらぼ』は、ダンジョン配信系のクランとしては上から3番目くらいのデカいとこだ。なんでそんなとこのオーディションに受かったのかマジでわかんねぇ。ついでに言えば、俺のやつを勝手に出した母親と瑞希もよくわかんねぇ!

 俺はネットのこととかよくわかんないし、配信ってのもよくわかってなかったけど、それにしたって男女ペアって大丈夫なのか? とは思った。

 だってなんか、アレじゃん? アイドルとかに熱愛報道とか出ると大変なことになるしさ。配信者だって似たようなもんだろ? って。それに瑞希だって一応女だしさ。

 でも、クランマスター兼社長が、幼馴染てぇてぇ? だかなんだかって言って、俺たちは2人で配信することになったのだ。そして、なんだかんだ好意的に受け止められて、今俺たちは配信者としてそこそこの地位にいる。

 

 "こんにちはー!”

 "ちーす!”

 "今日も瑞希は元気!!”

 "うっさwww”

 "お、開幕てぇてぇか???”

 

 毎回思うけどよ、そのてぇてぇってなんなんだよ。その感情は一体に何に対して起きてんだ……?

 その後もちょっとした雑談なんかをした。雑談っても、最近の配信外のことをちょっと話すか、なんかの宣伝するだけだ。最近だと、先輩方がライブをやるってんで、その宣伝だな。

 ……なんでダンジョン配信者が、冒険者がライブやってんだろうな? 俺たちもそのうちやんのかね?

 

「あーほら、いい加減今日の話をしろよ」

「えっとねー、今日は品川ダンジョンに潜るよ!」

「品川にはまだ潜ったことなかったからな。初挑戦だな」

 

 "品川かー!”

 "結構むずくない?”

 "難易度高めやん”

 "大丈夫なん?”

 

 まあ、初挑戦ってのは嘘である。下見くらいは流石にしている。こっちは命かけてんだからな。でも、初挑戦で潜るっていうのが、配信者的にはいいわけで。あんま嘘とかつきたくねぇんだけどな。

 視聴者もそのことには気づいたうえでスルーしてくれているみたいだしな。お互い楽しんでいければなって思う。

 まあ、視聴者が気付いてるのは理由があるんだけどな。

 

「え、この前潜ったじゃん」

 

 "瑞希ちゃんwww”

 "やはり嘘はつけない…!”

 "先生、雄志君が嘘つきましたー”

 "雄志頼むぞ”

 "マジで頼むぞ”

 

 こいつがこの様だからだよ。まったく、うちの視聴者たちは優しすぎて涙が出てくるぜ。

 あと、頼むぞってなんだよ。元からそのつもりだっての。

 

「さ、行くか」

「おー!」

 

 俺たちのパーティーは、前衛の俺と中衛の瑞希で構成されている。

 俺は片手剣と盾を持ったいわゆる剣士スタイル。瑞希は短剣のレンジャースタイルだ。瑞希のユニークスキルが探知系だったのでこうなっている。俺が前で敵引き付けてる間に、横から瑞希が刺すって戦闘スタイルだ。

 まあ、瑞希的には俺を後ろに置きたかったらしい。理由を聞いたら、私に守ってもらう俺を煽りたかったとか抜かしやがったので、顔をぐにぐにしてやった。

 品川ダンジョンは、モンスターの性能こそオーソドックスだが、群れでいることが多いため、難易度の高いダンジョンとして認定されている。

 だから、数の少ないところを瑞希に探してもらってそっちに進み、連携して倒してドロップアイテムに一喜一憂する。俺たちの冒険はいつもこんな感じだ。変に奇をてらうことはしないし、危ない橋も渡らない。良くも悪くも普通の冒険なんだけど、それが幼馴染の男女だと人気が出るってんだからマジでよく分からんよな、配信界隈(この世界)って。

 だから、今日もそれで何事もなく終わるはずだったんだ。

 

「うん?」

 

 突然後ろを振り向いて立ち止まった瑞希。何か探知したか?

 声をかけようとした瞬間、腕を掴まれてそのままダッシュし始めた。

 

「雄志逃げよう!」

「は? おいちょ、待て! 説明しろ説明!!」

「オークがめっちゃこっちに来てる! 50くらい!」

「はぁ!?」

 

 "なになに!?”

 "オーク50!?”

 "大群やんけ!”

 "逃げろ逃げろ!!”

 

 腕を掴まれて走りながら、後ろを振り向くと、通路の角から一面埋め尽くすほどのオークの大群が現れた。

 いくら群れることが多いからって、流石にこんなに大規模な群れにはならないはずだ。それに、俺たちには一撃必殺! みたいなスキルはない。あの大群に飲み込まれたらそのまま死ぬしかなくなる。

 

「マジかよ……!」

 

 "うわあああああああ”

 "やっばい!!”

 "逃げて逃げて!!”

 "通報はしておくから逃げろ!”

 "クランにも連絡入れるからな!”

 

 ドローンから聞こえてくるリスナーの声も焦燥を隠せていないが、一部のリスナーは冷静なようで、色々やってくれるみたいだ。

 

「サンキュリスナー! 瑞希、どういけばいい!」

「えっと、こっちに人がいる!」

 

 通路の向こうを指す瑞希に、なんだか違和感を覚えた。

 これだけの大群がいて、近くに冒険者がいる。なのに、未だに警報が鳴っていない? 通報してないのか?

 それに、今瑞希が指さした方からもオークが見えている。瑞希はこっち見てるから気付いてなさそうだが。

 最悪の想像が頭をよぎった。

 

「……なあ、そいつ、どこにいる?」

「どこって!?」

「モンスターと俺たちの間か? それとも向こうか?」

「えっと、モンスターの()()()()!」

「……くそが」

 

 最悪の予想が当たった。これは、イレギュラーじゃない。人為的なものだ。俺たちにぶつけるために、周辺からオークを誘導した連中がいる。このまま進めば思うつぼだ。

 

「《獅子炎刃》!」

 

 俺はユニークスキルを発動する。武器に炎をまとわせる付与魔法で、デメリットは使いすぎると武器が熱くなって持てなくなる程度という破格のスキルだ。あと、見栄えもするから配信向き!

 

「烈波!」

 

 追加の詠唱と主に、炎が一気に広がる。横道から出てきたホブゴブリンを一掃して、瑞希の手を逆に握り返して走り出す。

 

「こっちにこい!」

「え、待ってよ!?」

 

 "え、なんで横!?”

 "雄志!!?”

 "突然どうした!”

 "何が起きてる?”

 "今そっちに向かっている。耐えてくれ”

 "桐生パイセン!”

 "桐生パイセン頼む!”

 

 通路に出てくるモンスターを都度スキルで焼き払いながらダンジョン内を疾走する。後ろからのオークの足音はどんどん増えてる。近づかれてはないのが幸いか。

 耐熱手袋に新調して良かったぜ。おかげで何とかなってる。けど、剣はもう真っ赤だ。そのうち限界が来る。

 

「ちょ、ちょっと、どうするの!?」

「今考えてる!」

 

 どうすればいい? 先輩やギルドの応援が来るまで耐えるっていうのは絶対に無理だ。そんなことはできない。俺たちには対複数戦闘の手札がなさすぎる。

 逃げ続けるのも無理がある。体力的には持つかもしれないが、問題は下に下に誘導されていることだ。完全に上に戻る道をふさいできている。中層ならともかく、下層の品川ダンジョンは俺たちにはまだ早い。すりつぶされるだけだ。

 となれば、出来ることはただ一つ。今このダンジョン内にいる誰かに助けを求めることだ。最悪の場合、その人たちと一緒に死ぬことになるかもしれないがそれしかない。恨まれようが何だろうが、俺は絶対にこいつを死なせるわけにはいかねぇんだ。

 

「……他に冒険者いねぇか!? モンスターから離れてるやつ!」

「えっとええとね……」

「なるべく強いやつがいい!」

「強い人ね!」

 

 最低でも俺たちよりも強い人じゃないと無駄死になるし、それは避けたい。

 

「んんんー! いた! こっち!」

「了解! どけぇ!!」

 

 "誰でもいいから助けてくれ!”

 "巻きこむのはダメでしょ”

 "言ってる場合か!?”

 "死人が増えるじゃん”

 "おめーさてはアンチだな?”

 "助けてくれー!!!!”

 "どうにかなってくれええええええ”

 

 瑞希が指さした方に駆け出して、目の前に立ちはだかったアルミラージを焼き払う。今ので左手が完全に火傷したのが分かる。手袋とくっついてもいいからそのまま握り続ける。激痛が走るが知ったことじゃねぇ。

 最悪、手を切り落とすなりして回復してもらえば死にはしないはずだ。

 

「次右に曲がったところ!」

 

 瑞希の指示通りに右に曲がれば、行き止まりで結界石による結界が張ってあった。多分そこに人がいるんだろう。

 どうしてここにいるのかはわからないが、巻き込ませてもらうぞ。どのみち行き止まりに入った以上逃げるのは無理なんだ。

 

「た、助けてくださーい!!」

「無理言ってるのは分かってるっ! たのむ、助けてくれっ!!」

 

 俺たちの声が聞こえたのか、結界の中から人がとんでもない勢いで文字通り飛んできた。

 そして、どうやったのか分からないが、俺たちの後ろスレスレにそいつが投げたらしき杖が突き刺さる。

 

「うおっ!?」

 

 "え、攻撃された?”

 "そりゃそうでしょwwwwww”

 "うおおおおお!?”

 "ガイアウォール?”

 "え、あんな遠隔発動の仕方あんの?”

 "というか、飛行速度速すぎて見えねぇwww”

 "大当たり引いたんじゃねぇか!?”

 

 直後、そこから一気に地面が持ち上がって、俺たちとオークたちを分断する壁になった。

 その壁の上を人が飛んでいく。速すぎてよく分かんなかったが、多分女の子だと思う。その直後、壁の向こうから爆発音が連続して何度も聞こえてきた。

 あ、あんな魔法使い見たことねぇ……

 

「大丈夫ですか!?」

「《不退の陣》。回復スキルですのでご安心を」

 

 金髪の女性が2人、こちらに向かって走ってくる。そのうち長髪の一人は足元から円形に黄金色の魔方陣を展開した。回復スキルらしい。実際、範囲内に入ってから、痛みが徐々にだけど引いていってるのを感じる。

 それはありがたいんだが、そうじゃなくて向こうに行った一人の応援に行かねぇと!

 

「いや、あの向こうに一人!」

「うん? ああ……大丈夫だよ」

 

 なんだかよくわからないが、遠い目をしているハーフツインの女性に腹が立つ。そんなこと言ってる場合じゃねぇんだよ。100超えてんだぞ!?

 横で瑞希も危険性を訴えようとしていたんだが、途中で変に固まった。

 

「い、いや、オーク100頭くら、い……?」

「どうした!?」

「え、もういない……? 嘘でしょ?」

「…………は?」

 

 "ファーwwwww”

 "つっっっっっよ!?”

 "強すぎワロタ”

 "確かに爆発音消えたな…”

 "ど、どんな魔法職なんだマジで…”

 "そんなに強かったら話題になっててもおかしくないだろ!?”

 "本当に魔法職なんですかねぇ(震え声”

 

 は? え? 嘘だろ? いや強すぎんだろ!? 瞬殺とかいうレベルじゃねぇぞ!?

 あまりの衝撃に固まっていたら、遠い目をしていたハーフツインの女性が俺の左手を掴んでいた。

 

「えっと、怪我は……左手大丈夫?」

「え、ああ、はい。火傷してるだけなんで……」

 

 だけって言えるダメージじゃない気がしてるが、手袋外すのがこえぇな……そう思っていたら、その女性は奇跡で左手を治してくれ始めた。2つ分の回復効果で一気に痛みが引いていく。なんとか手を動かして剣を離すことができた。スキルを解いたってのにまだ赤いもんな……

 ふぅっと息を吐いたとき、横から腹辺りに衝撃が来た。驚いて下を向くと、瑞希が抱き着いてきていた。

 

「うおっ!?」

「……った」

「?」

「よかったよぉ! もお死んじゃうかと思ったぁ!!」

 

 "マジでよかった!!”

 "サンキュー! 知らない人たち!!”

 "感謝しかねぇ…”

 "助かってよかったホント…”

 

 うわーん!! と泣き叫ぶ瑞希に、俺の涙腺もちょっと緩む。泣くわけにはいかないんだが、助かった安堵で泣きそうになった。

 治療してもらっている左手はそのままに、右手で瑞希の頭を撫でてやる。俺たちは幸運だった。一歩間違えていたら、死んでいただろう。

 左手の治療が終わったのか、ハーフツインの女性が俺たちから離れて壁を飛び越えていく。もう一人を迎えに行ったらしい。

 

「さて、皆様はじめまして。わたくしたちは『魔女の大鍋(コルドロン)』所属の冒険者です。お見知りおきを」

 

 "流れ変わったな…”

 "おっと…?”

 "助かってない説ある…!”

 "やべぇとこ引いてて草”

 "どうすっぺこれwww”

 

 長髪の女性が、俺たちとドローンの間に入って丁寧なあいさつをした。カーテシーってやつだっけ。スカートつまんでやるやつ。様になっててすげぇ……なんて現実逃避をかます。

 ……やべぇとこに借り作ったな……どうしよう先輩、社長……

 

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ! なんだありゃあ!!」

「言ってる場合か逃げんぞ!!」

 

 ガキどもを楽しくいたぶって、その様子をいつもみたいに配信するだけだったはずなんだ。なのに、なんであんな化け物が出てくんだよ!!

 100以上いたオークはあいつの魔法で5秒すら持たずに消し飛ばされている。《爆破魔法(エクステンド)》となんだかわからない青い弾丸を発射する魔法でだ。あれだけいたって足止めにすらなりゃしない!

 さっさと逃げようと身をひるがえしたその目の前に、化け物が着弾した。

 

「ガッ!?」

 

 着弾の衝撃で一瞬身構えた瞬間に、地面に向かって引っ張られ叩き付けられる。身体に重圧がかかっているような感覚。重力系の魔法か? 切り替えと発動までの早さが異常すぎるだろこいつ……!

 次に見えたのは雷光。身体を貫いた電撃で、痺れて動けなくなる。何属性使えんだよ化け物が!

 そいつはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる途中で、俺たちが使っていたドローンを踏み砕いた。

 俺を、人形みたいに無表情な女が見る。その青い目に、何の感情も浮かんでいなかった。ゆっくりとこちらに歩いてくるが、体は痺れたままだ。逃げられない。

 

「……だから配信者は嫌いなんだよ」

 

 そんな吐き捨てるような言葉とともに、顎を蹴り抜かれて意識が飛んだ。

 





鬼灯「は? 夢希とボクのどっちが強いか? ……夢希に勝つなら初撃で仕留めないと無理。飛ばれた時点で終わる。お前、軍用ヘリに立ち向かって勝てる歩兵がいると思ってんのか?」
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