【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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犬束編後半です。


【閑話】成長中の私と『魔女の大鍋(コルドロン)』での日常・後編

 

 

 完全に白石さんの助手みたいな扱いされてますけど、本来私って探索部門の冒険者なんすけどね。今資格停止中なんで何もできないっすけど。

 というわけで、『魔女の大鍋(コルドロン)』一周するっす。地下はともかく、地上は一周しないといけないっすからね。基本的には書類を集めて、それを持ってくだけっす。たまにトラブルに巻き込まれるっすけどね。じゃあ、気合い入れていきまっしょう! あ、鞄持ってこなきゃ。

 最初はただ紙集めてただけだったんすけど、量が結構シャレにならなくて鞄を買ったんすよね。茶色の学生カバンっていうんすかね? 昔の学校もの映画とかで男の子が持ってるような、蓋がぺろってめくれるやつっす。ついでに分類できるようにファイルも買ったっす。というか、ここの人たちって自由なんすけど、こうしてくれるとこっちが楽できるんでーみたいな話でも、納得したら協力してくれるんすよね。ありがたい限りっす。

 ちなみに、パソコンじゃなくて紙媒体でやり取りしてるのは、しょっちゅう爆発しているようなところにパソコンなんか置いたらすぐに壊れてお金がかかるしその場で記録とか出来ないからダメってことだそうで。

 なら、結界とか張ればいいじゃんって思ったんすけど、張ったらキーボードが打てなくなるとか。タブレットも一部では使ってますけど、結界は張ってないっす。こっちもタッチが反応しなくなるんだとか。

 なので、その辺の調整も研究してるそうっすよ。うまく実用化されたら地上のスマホなんかもめっちゃ頑丈になるんじゃないっすかね? 

 と、まあそんなわけで。

 まずは東に赴いて扉を開けて挨拶をし。

 

「こんにちはー! 犬束でーす! 書類とか届けるものあるっすか?」

「おお、陽向さん! これ頼むよ!」

「はーい」

「いつもありがとね! あ、試供品飲む?」

「いえ、遠慮しておきます! じゃ!!」

 

 南に行って吹き飛んだ扉から声をかけ。

 

「こんにちはー! 持ってくものあるっすか?」

「あ、じゃあこっちの頼むよ!」

「はいなー! どれっすか?」

「よい、しょ! っと」

「oh……」

「頼んだよ!」

「は、はいっす……」

 

 西に走っていけば爆発に巻き込まれ。

 

「こんにうぎゃあ!?」

「お? おお、悪いね! 大丈夫かい?」

「だ、大丈夫っす……あー、いつものやつっす」

「いつもありがとね! これ頼むよ」

「はーい……」

 

 北に辿り着けば実験のお手伝いをすることになり。

 

「こんにちはー……」

「お!? 陽向いいところに! こっち持ってくれ!!」

「え、あ、はい?」

「よーし、実験開始だ! みんな計測機器もったな行くぞ!」

「先に何の実験かくらい教えてくれないっすかねぇ!?」

 

 …………いやこれがいつもの日常なんすよここの。ホントに。誇張とかじゃなくて!

 みんな自由すぎるっす……というか、私なんでこの日常に適応しちゃってるんすかね? 人間ってすげぇなってちょっと思うっす。

 パンパンに膨れ上がった鞄を両手で抱えながら歩いていると、前の方からぱからぱからと蹄の音が。お、これは。

 

「あ、馬面さんこんにちはっす!」

「馬面じゃねぇわ浜面だよ! よっ、犬束……えっと、元気……か?」

「元気っすよー」

 

 ユニークスキルでケンタウロスになってしまった馬づ……浜面さんである。本人が「馬面って呼んでくれ」って言うんで、そう呼ぶことにしてるっす。会話の開始にこのやり取りがしたいだけっぽいっすけどね。普段は浜面さんって呼んでますけど、たまに馬面さんって呼んであげるとこんな感じで笑顔になってくれる気のいい人っす。

 ちなみに顔も馬。胴体と腕以外馬になってるんで、正確にはケンタウロスじゃないかもしれないっすけど。身長が3メートルくらいあるんで、下を見ないと私のことが見えてないっぽいんすよね。一応160あるんすけどね私。

 『魔女の大鍋(コルドロン)』の探索部門って、こういう人の受け皿的なところも兼ねてるっす。異形になるスキルって、迫害一歩手前みたいなところまでいったりするみたいなんで……昔のヒーロー漫画と一緒っすね。おかげで単独行動する人がめっちゃ多いんすけども。

 そんな中でも、浜面さんとは結構仲いいっす。前は食べられてたものが食べられなくなった仲間として。他にもそういう人はそこそこいるっす。リザードマンになって魚のみになった人とか、ライカンスロープになって肉のみになった人とか。

 今、探索部門には冒険者が15人いますけど、半分くらいの人がこの感じっすからね。私も、見た目は普通の人間っすから、最初はちょっと距離あったんすけど、食べ物に制限あるとわかったら一気に距離縮まったっすね。苦労の共有とでもいえばいいのか、それが人を繋ぐこともあるんだなぁ……なんて思ったっすよ。残り半分くらいは、みんなして異形と化した人たちにカッコいい! とか、可愛い! って反応するタイプの人たちなので、結構仲はいいっす。たまに地雷踏んでえらいことになってますけど、概ね良好だと思うっす。多分。

 ま、みんなして寿司が食べられなくなったことを嘆いてて笑っちゃったっすけどね。米と魚のどっちか行けるけど、もう片方がいけないって人が多かったっす。

 そんな中でも、私はかなり自由度高いんで、ちょっと申し訳なくなるっすけどね。レンチンすれば基本何でも食べれますし。浜面さんは完全なベジタリアンと化してしまって、肉も魚もダメみたいっす。代わりにお酒にめっちゃ強くなったとかなんとか。

 あ、前に背中に乗せてもらったっすけど、めっちゃ快適だったっすよ。そういえば、一回体も洗ってあげたんすけど、それ以降一回も誘われないっすね……?

 前に体がデカすぎて洗えないって言ってて、一回手伝ったんすけどね。なんかダメなところとかあった感じっすかね。あれ結構楽しかったんすけどねー、車の洗車してる気分でしたよ。

 そんなことを考えていたら、浜面さんに心配そうな顔(多分)されながら声を掛けられる。

 

「元気なのはいいけど、なんでそんなぼろっぼろに……」

「『魔女の大鍋(コルドロン)』なんで……」

「その理由言うほど万能じゃねぇよ……? それに、なんでそんな状態で無事なんだよ……」

「多分ギャグほせ――」

「それ以上いけない」

「もごご」

 

 大きな手で口を塞がれてしまったっす。とはいえ、絶対に……なんか背中が寒くなってきたのでやめましょう。触れちゃいけないものな気がするっす。

 

「それ、持ってくの手伝うか? 重いだろ」

「冒険者に何言ってんすか。余裕っすよ余裕」

 

 鞄は重いっちゃ重いんすけど、持つのが重いというかひもが肩に食い込んで痛いだけなんすよね。なので、重さ的には余裕っすよ。マジで。冒険者になって一番日常で役に立つなぁ……って思うのが荷物の運搬なんすよね。家電だろうが家具だろうが、基本的に一人で持てるようになったんで、模様替えとか簡単にできるんすよ! 箪笥の中身を出さずに動かせるっすからね。

 

「それもそうか、じゃまたな」

「はい、またっす」

 

 私に軽く手を振って、また蹄の音を鳴らしながら浜面さんは去って行ったっす。装備とかつけてなかったんで、今日はお休みの日なんすかね? ダンジョンに潜るときは、鎧着て……乗馬槍っていうんすか? 大きな槍持ってくので、めちゃくちゃかっこいいんすよね! RPGとかにいる敵キャラみたいな見た目になるっす。一緒に冒険できる日が楽しみっすねぇ……

 さらに他の人と一緒に行くと、もはや魔王軍みたいな見た目になるのでは……? それはそれで面白そうっすけども。この場合、魔王は金守さん……いや、ここは側近金守さん、魔王夢希ちゃんでいくっすか。夢希ちゃんに絶対に合うと思うんよね。黒系のドレスで、ゴスロリみたいなやつとか。人形系のお顔立ちっすし。

 あと、金守さんがめっちゃ執事服似合いそう。なんていうか、ああいう服のときに着てる薄い手袋似合う男性って中々いないっすよね。あとやっぱドラゴンは魔王というか四天王のトップって感じしません?

 くだらないことを考えながら一通り回り終わったので、一旦トイレへ。身だしなみを整えないといけないんで。うーん、髪ぼさぼさ、服ぐちゃぐちゃ、顔は煤まみれ。確かに何でこれで無事なんすかね……? あ、今日は《剛体》があるからっすかね? 使った記憶はないっすけど!

 いったん全部ちゃんと整えて……あ、鞄は無事っすよ。めっちゃ付与魔法とかつけてもらって頑丈すぎるくらいなんで。軽く叩けばぴっかぴかっす。

 とりあえず、まずは金守さんのとこに行くっすかね。執務室の扉をノックして、「どうぞ」の声が聞こえたんでささっと入るっす。いやあ、今日もカッコいいっすね金守さんは。そう、ドラゴンだし! でっけえ翼とか!

 

「こんにちはー! 『魔女の大鍋(コルドロン)』中から集めて来たっすよー」

「いつもご苦労様、犬束君……まったく、ここの連中ときたら、毎日毎日飽きないもんだ……」

 

 渡した大量の書類を受け取りながら苦笑する金守さんに、内心で激しく同意する。いや、ホントに毎日この量集まるのおかしいっすよ……クリアファイルに何とか入るギリギリくらいっすよ? それが毎日。ホントに、一体どんな頭をしていたら、そんなに色々要望が思いつくんすかね……

 よし、次は事務員さんたちのとこいくぞーっと帰ろうとしたら、金守さんに呼び止められてしまった。

 

「……ちょっと待った犬束君」

「なんすか?」

 

 振り返ると、金守さんが眉間を押さえながら一枚の紙を見ていた。うーんなんすかね? なんか私宛の実験とか……?

 手で促されてソファに座ると、金守さんも近くの椅子に座る。尻尾のせいでソファに座れないんすよね、金守さん。

 

「これは、君のここでの活動記録をまとめてもらったものだ。探索部門(ここ)が出来る前から犬束君はここにいたからな。それで、確認したいことがあるんだが……」

「はいっす」

「この、レベルの上がり方についてなんだが……資格停止中、だったよな?」

「あー……」

 

 そういえば、金守さんって私のユニークスキルでレベル上がるの知らないんですっけ……? あれ、伝えて……ないかもしれなっすね。デメリットの話はした記憶はあるんすけど、メリット側の話はしたことがないような気がして来たっす。

 ま、まあ、あの時はみんなで普通のご飯食べられなくなった愚痴を言いあって結束高めようの会。みたいな感じだったんで……

 

「ユニークスキルのメリットで、モンスター食べるとレベル上がるっす」

「めちゃくちゃすぎないか? あと、スキルが増減しているのはなんだ? 増減するものなのか?」

「それもユニークスキルのせいっす。食べたモンスターの種類と量でスキルが増えたり消えたりしてるっす。多分これからも毎日そうなるっす」

「…………」

 

 金守さんが頭を抱えてしまった。いや、その気持ちはよーくわかるっすよ。このスキルマジで意味わかんないっすよね! 私もっす!!

 どうしたものかと悩み始めてしまった金守さんをどうにもできなかったので、部屋を出たっす。慰めるにも元凶が慰めてもなぁ……話ですし……。そんで、この後事務室に書類届けに行って小川さんに捕まったっす。マシンガントークが止まらねぇ!?

 私の毎日は退屈しないし楽しいし、いい感じっすよ。トラブルもまたスパイスって感じですし。だから、爺ちゃんも心配しないで大丈夫っすよ。

 

 

 

 なお、後日夢希ちゃんたちが入団してきたときに、夢希ちゃんの規格外さにまた金守さんが頭抱えてたっす。流石にちょっと可哀そうになったんで、ちょっといい豆をみんなで買ってったっす。

 

 




爺ちゃん「心配な要素しかないんだが???」



活動報告の方でリクエスト、ネタ募集をしていますので、よろしくお願いします!

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