【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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どうしても年末年始の話が書きたかったんや……!

皆様よいお年を!


【閑話】配信に興味のない私と年末年始

 

「夢希は何してるのー?」

「かえし作ってる」

「かえし?」

「えーと……めんつゆの素、的な奴」

「え、そこから作ってるの……?」

「年に一度の行事だし、たまにはね」

「そっかー……」

 

 12月31日大晦日。私は凉の家に来ていた。

 高校に入って初めての年末、凉の家でみんなで年越ししないかと誘われたので、朝から凉の家に来ている。

 凉の家に着いた直後はあまりの寒さに、2人でこたつに入ってぼんやりとネットのライブ配信で凉の好きなアイドル? を見ていたのだが、体があったまったのでちょこちょこと準備を進めている次第である。

 愛依は用事があるそうなので、午後からの参加だ。多分、事務所に挨拶とかその辺だと思う。モデルって大変だよね。

 なお、このことをお父さんに伝えたところ、二つ返事でオッケーを貰えた。

 何故か、ダンジョンには行くなと念押しされたけども。いや、行かないよ? わざわざ装備とか全部家に置いていくところまで監視しなくてもよくなかった? そんなに信用ないかな? 

 ないか……ついこの前40回目の門限破りしたばっかだもんな……アイアンクロー痛かったなぁ……

 ま、まあ、そんなわけで、今年から一人暮らしを始めた凉の家の、ほとんど私しか使っていないキッチンで、年越しそばのかえしを作っているのである。

 凉はこたつの中にいるが。にしてもいいとこに住んでるよなぁ……床暖房、侮れん……

 それは置いておくとして、かえしを作り終わったので、今度は出汁の準備だ。まあ、簡単に昆布と鰹節で取るだけにする。あんまり凝ったもの作れると思えないんだよね。普段は顆粒出汁だし。

 ……よし、出来た。えっと今の時間は……お、ちょうどいい感じにお昼の時間だ。昼食と夕飯は何にしようかな……麺類は最後に食べるし、それ以外がいいよね。凉の意見も聞いてみるか。

 

「凉、お昼何にする?」

「えー、食べるのー?」

「食べないの……?」

 

 まさかの返答が返ってきた。食べないつもりらしい。どういうことだ……?

 あおむけに寝ころび、逆さまになりながら私に手に持ったこたつの上にあった冬の定番品を見せつけてくる。

 

「みかんでよくない?」

「栄養偏るなんてもんじゃないよそれ」

「えー、果物なんだし健康的じゃーん?」

「不健康だけど?」

 

 流石に1人暮らしを始めた凉の生活が心配になって……いや、常に心配だった。こいつ常にコンビニ弁当だしな……最近愛依に絞められてからサラダも食べてるけど。

 

「えー!? こんなに成長してるのに!」

「……横にね?」

 

 私の発言に心外だ! と言わんばかりに大声を出すが、お前の成長は基本的に胸……いや、最近はわき腹付近にいっているのを私は知っている。ちょっとくらいに私にくれ。ちょっとでいいから。

 私の発言にすっ、と目を細めた凉が、私に攻撃をし返してくる。

 

「……へー、何食べても成長しないくせにそういうこというんだー?」

「……あぁん?」

 

 なんだとぉ……? 剣呑な目で凉をにらむが、あちらも無言でにらみ返してくる。一触即発、手が出る直前の空気の中、部屋の鍵が回る音がしたので、2人でそちらを見る。

 

「邪魔するわ……何よアンタら」

「……いや別に」

「……なんでもなーい」

 

 部屋に入ってきたところで私たちから見られて固まった愛依に、空気が弛緩する。この決着はまたの機会だ……! まあ、すぐに忘れるんだけどさ。いつものことだよ。

 それにしても、愛依は真冬だっていうのに生足出したミニスカートって……正気じゃない……

 こたつに向かっていた愛依は、私の視線に気づいたのかそこで立ち止まってこちらを見る。

 

「何よ? 言いたいことがあるんなら言いなさい」

「寒くないのそれ」

「寒いわよ?」

「さむいんかーい」

「おしゃれってのは我慢なの。何かとトレードオフなのよ」

 

 愛依はみかんを剝きつつおしゃれについて語る。その言葉はよく聞く言葉だけど、大変じゃないかなぁ……? それに、体が冷えると健康に良くないし。

 

「健康とトレードオフしてどうするのさ……」

「夢と命をトレードオフにしてるアンタに言われる筋合いはないわ」

 

 私の少し呆れた発言を、愛依がバッサリと切って捨てた。

 ぐうの音も出ない一言だった。まったくもってその通りである。相変わらず私は口喧嘩が弱い。いや、喧嘩じゃないけど今のは。

 

「そういえば、愛依はお昼食べたのー?」

「軽くだけどね」

「そっかー」

「アンタらは?」

「私たちはこれー」

「……は? 夢希、アンタ人に健康がどうとか言ってる場合?」

「いや、それは凉だけだから。私は今から……食べるものがない……」

 

 冷蔵庫の中身が私が買ってきたものしかない……! 残り物をどうにかしようかと画策してたのに、何にもなかった。そばとおかずしかないじゃん。冷凍庫も見たけど、冷凍食品すらないんだけど!? こいつは一体何を食べて生きてたんだ!?

 

「うーばーっていいよねー」

「ダメ人間すぎるわねこいつ……」

「最低限の自炊くらいしなよ……」

 

 みかんをむしゃむしゃしつつ凉がのたまう。愛依と一緒にあきれ果ててしまうが、まあこれも凉の味だろう。だらだらのんびりしているからこそ、甘えられる側面もあるしね。

 結局、私のお昼はみかんになった。他に食べるものなかったし、わざわざ買ってくるのもね。

 こたつに入ってみかんを食べつつ、サブスクで映画を見ながらまったりと過ごす。こんなに何もしていないような日はすごく久しぶりだ。普段は何かやってることが多いからなぁ……ダンジョンで冒険とかダンジョンで料理とか。

 そんな感じでたまに雑談しつつ過ごしていたら、スマホを弄っていた凉が突然声を上げた。

 

「そうだ! 年越ししたらすぐに初詣行こうよー!」

「……年越し直後は人多くて嫌いって言ってるのに珍しいわね」

「寒いから冬は外出たくないって言ってたじゃん」

 

 この三人のうち、どこかに行こうと発言するのは大体凉だけど、人混みはあまりすきじゃないみたいだし、寒いのも嫌いだ。人混みはコミケで十分だとかなんとか。コミケが何だか知らないし、知らなくていいと愛依が言ってたから特に触れていないけれども。

 そんな凉が、初詣に年越し直後に行きたいと言い出すなんて……何かあったなこれは。

 

「だってさー、みんなで行くってなったらテンション上がるじゃん。楽しそうだしー?」

「……で、本音は?」

「ここの神社でアニメのコラボしてるからついでに行きたい!」

「はぁ……そんなことだろうと思ったわ……」

 

 スマホの画面をこちらに突きつけつつ胸を張る。ここからちょっと離れた、小さな神社らしい。何でも、アニメの聖地? なんだとか。聖地ってなんだ聖地って。

 とはいえ、コラボということでちょっとした屋台なんかもあるみたいで、結構楽しそうだ。冬祭りというかなんというか。

 

「でも、楽しそうだね」

「でしょー?」

「夢希、アンタも無理に付き合わなくていいのよ?」

「いや、無理はしてないけど」

 

 愛依に謎の心配をされた。本当に特に無理とかしてないよ? 強いて言うなら寒いくらいで。大体、誘われてここにいるんだから、無理も何もないのに。

 だが、私は次の愛依の発言で思考が停止した。

 

「それこそ、ダンジョンで年越しとかしていいのよ?」

「いやー、流石にやらないでしょー。ねー?」

 

 ダンジョンで年越し……!? ダンジョン内で年越しかぁ……お蕎麦食べてそのあとは甘酒でも飲んでまったりして、お餅でも食べようかな。

 どうせだし、七輪とかで焼いてみちゃったりなんかして……ダンジョン内なら煙とか気にする必要ないしね。

 うーん、次から次に発想が湧いてくる……

 

「ダンジョンで年越し……いいかも……」

「愛依ー、どーすんのこれ……」

「藪蛇だったわ……」

 

 そんな未来を想像していた私に、2人の声は届いていなかった。

 

 

「はい、出来たよー」

「わーい」

「海老天2本なんて贅沢ね」

「6本入りだったからね」

 

 そんなこんなで夕飯の時間になった。年越しそばの出番である。

 用意していたかえしと出汁を合わせて、上に付け合わせをのせただけのシンプルな奴だ。海老天にネギ、かまぼこというシンプルさである。

 

「おー、お出汁が美味しい」

「へー、確かに美味しいわね……あとでレシピ教えて?」

「うんいいよ」

 

 各々のペースで食べ終えたころには、もうすぐ年を越しそうだった。なので、外に出る準備をして、神社に向かう。どうせなら年越しも神社でしてしまおうということになったのである。暇だったし。

 ちょっと遠いのもあり、歩いていったのだが、かなり寒かったのでみんなでくっついて暖を取りながら歩いていった。30分ほど歩いてその神社につくと……

 

「いや、多くない……?」

「ごった返してるね……」

「おー……帰りたくなってきたー……」

 

 めちゃくちゃ人がいた。いや、神社に入り切ってないじゃん。どういうことなんだ……あと、かなりの割合で同じようなキーホルダーだとかのちょっとしたグッズを身に着けている。こ、ここにいる全員、コラボ目当ての人なのか……

 

「ま、さっさと用事済ませて、お参りしておみくじでも引いて帰りましょ」

「そうだね」

「えー、ここにいくのー?」

「アンタが誘ったんでしょうが! 夢希、連行して」

「うん。ほらいくよ」

「うわー」

 

 人混みにしり込みしている凉の手を掴んで引きずっていく。力は私の圧勝なので、抵抗しようが無駄だ。とはいえ、この人混みだと潰れそうだなぁ……

 と思っていたのだが、別にそんなことにはならなかった。なんだか異常なほどに統率が取れており、列が乱れないのだ。思ったよりもスムーズに進んでいく。

 

「というか、何が目当てなのよ?」

「んー? 御朱印帳」

「使うの?」

「使わないよー。観賞用」

「あ、あれじゃない?」

「そー、あれあれ」

 

 先頭を歩いていた愛依が指さしたのは、本殿のすぐ横に建てられた簡易テントだった。コラボグッズ発売中! というのぼりが立っていて、あそこで買えるみたいだ。何かいいのがあったら買おうかなと思っていたのだが、コアなものか神社関連のものばかりでやめた。そもそも何のアニメか知らないしね……

 グッズを買ってほくほく顔の凉に愛依と2人でちょっと呆れた目を向けてからお参りをする。お賽銭を投げて、手を合わせる。

 願い事はいつも一緒だ。ダンジョンから生きて帰れますように。そして、私の周りの人が健康でいられますように。

 2人は何を願ったんだろうか? 人に教えると叶わないらしいから聞かないけど、結構気になるな……

 お参りが終わると、おみくじを引きに行く。何が出るかな?

 

「ただの吉だった」

「はい、大吉ー」

「末吉ね……」

 

 私はただの吉、凉は大吉、愛依は末吉だった。吉と末吉ってどっちがいいんだっけ? まあ、大事なのはそこじゃないけども。みんなで自分のくじとにらめっこを始める。私たちはちゃんと全部読む派閥です。

 えーと何々……ふんふん、良くも悪くも……ん? 待ち人、すぐ来る? 今まで来ないとか、希望は捨てるなみたいな、ほぼ来ませんよ的なことばっかり書いてあったのに。

 

「あ、年明けたー」

 

 おみくじの内容に集中しすぎていたらしく、全然気が付かなかったが、いつの間にか年が明けていた。

 

「……あけましておめでとうございます」

「あけおめー」

「あけましておめでとう」

 

 3人で新年のあいさつをして、おみくじを結んでから帰った。

 待ち人かー……どんな人かな?

 

 




多分、ここ読むころには日付変わってると思うので、あけましておめでとうございます。
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