【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と茶封筒

 

 アイアンクローを貰った翌朝……いや、日付的には今日か? ……まあいいや。翌朝。

 私は、朝ご飯を食べながらニュース番組を見ていた。

 

「……」

「……夢希、どうした?」

 

 あんまりにも真剣に見ていたものだから、支度中のお父さんに声をかけられた。

 これから仕事で北海道まで行くんだってさ。毎日本当にお疲れ様です。お土産は期待してます。

 

「このニュース、昨日話した奴」

「ああ、これか……」

 

 昨日のあの配信者たちのニュースである。

 配信者グループ逮捕! のテロップがあり、昨日捕まえた3人の顔写真と名前。さらに7人の顔と名前が並んでいた。

 なんでもあの配信者たち、海外アングラサイトで1つのアカウントを10人で使っていたのだそうだ。毎回違う人がログインするし、配信場所も全国バラバラに変え、撮影メンバーも変え、スマホすらも変えてと、ひたすらわかりにくいようにしながら配信をしていたらしい。早期に配信自体は発見されていたけど、アングラサイトのある国が捜査に非協力的で、捜査が難航していたのだとか。昨日の3人から事情を聞いて、全員の逮捕につながったらしい。

 それと、撮影内容はぼかされてはいたけど、死者が出ていたことは話していた。

 これからも同様の事件について捜査していくそうだけど、中々厳しいみたいだ。配信サイトがある国が協力してくれないと、どうにも特定に時間がかかってしまうみたい。海外だと法律も違うみたいだしね。

 こういうニュースを見ると、やっぱり配信者は嫌いだ。本当に。でも、こういう連中だけじゃないってことも昨日わかった。私も、彼らのような側の配信者の端くれでいたいものだ。

 …………なんで私は配信者自認してるんだろう? 

 自らの認識に疑問を覚えて首をひねっていたら、お父さんに頭を撫でられた。

 

「……お前は、母さんによく似ているよ」

「……どんなところが?」

「ムカついたらとりあえずでぶっ飛ばすところが」

 

 半分笑いながらの声に、呆れが先に来てしまう。

 

「……褒めてないね?」

「褒めてるさ。あいつはやることなすこと全てが滅茶苦茶だった。でも、善良ではあった。正義の味方ってわけじゃないけどな」

 

 まあ、それはそうだろうなぁ。良くも悪くも、私の冒険者としての考え方の基礎となっているのはお母さんだ。出来ればでいいから人を助けるようにと言っていたのもお母さんだしね。

 助け方が暴力的なのは……冒険者だからということで。実際、力で押さえつけるしかないときの方が圧倒的に多いから、どうにもね。

 

「だが、人に暴力を振るうことに慣れるんじゃないぞ?」

 

 お父さんの言葉に振り返る。真剣にこちらを見つめる目を見つめ返した。

 

「その末路がアレだ。配信者として道を踏み外すだけが、アレになる道じゃない。それを覚えておけ」

「……わかった」

 

 その通りだ。配信者として、あんな風に人を集めようとするだけが、ああなるわけじゃない。配信してなくても、人を傷つけることを趣味にしているような人はいる。私もそうならないように気を付けないとね。 

 凉も、自分が正義だと思ってる人が一番怖いよーって言ってたしね。漫画かゲームのセリフな気はするけども。

 それからすぐにニュースは終わってしまって、この話題はおしまいになった。あんまり真面目な話を朝からするのはちょっと重いし、ちょうどよかったかも。

 のんびりと味噌汁をすすりながら、天気予報を見ていたら、お父さんが唐突に対面に座った。

 

「さて、本題の話があるんだ」

 

 さっきの話の続きをするつもりならやめてほしいんだけどな……いやでも、なら本題って言わないか。なんだろう?

 味噌汁を置いて、一応背筋を伸ばす。さあ、なんの話だ?

 

「クランの寮に入る話についてなんだが……」

「うん」

 

 ああ、引っ越しの話か。クランの寮についてはお父さんにもちゃんと話した。今はこうして二人暮らしだけど、これからは一人暮らしになるし。お父さんは片腕だから最初はどうかとも思ったんだけど、どうにかするから気にするなって言われちゃったので、ありがたく受けることにしたのだ。それなりに私も駄々こねたんだけど、全部笑って一蹴されてしまったので、白旗を上げた。が正確な表現ではあるんだけどさ。

 ここが解決してなかったら、私は『魔女の大鍋(コルドロン)』に入団していなかったかもしれないね。

 

「家具や家電についてはどうなってるんだ?」

「両方とも補助金が出るよ」

「それは、後で申請するタイプか?」

「そうだね。領収書取っといてって言われた」

 

 本来は、家具とか全部ついてたみたいなんだけど……吹き飛んじゃったから自分で用意してね! 後でお金渡すから! になってしまったそうだ。部屋の寸法なんかが凄まじく細かく書いてある図面を参考用にと貰ったので、それを参考にしながら家具や家電を見繕うつもりである。

 部屋の間取りとか見る限り、彩音さんの部屋よりもちょっと狭いくらいかな。無料で入れる寮としては、間違いなく広すぎるくらいだと思う。装備品とかを置く場所が別にあるので、その分部屋数が減ってる感じだ。

 装備品は預けて置いたら整備くらいはしてくれるとのことで至れり尽くせりなんだけど、勝手に改造されないか不安でしょうがないのは内緒。

 

「そうか。なら、これを使え」

 

 そう言ってお父さんは鞄から茶封筒を取り出した。結構な分厚さの封筒である。

 いや、さっきの流れから察するに多分中身はお金だと思うんだけど……手に取ると、分厚さとその重さが手にずしっと来る。結構はいってるよねこれ……

 

「……なんか、分厚くない……?」

「中に50万入ってる」

「ごじゅっ!?」

 

 50万円!? い、いやそれは多くないかな!? あまりの衝撃に落としそうになったけど、必死に掴む。というか、封筒に入れてあるとはいえ、朝に突然渡さないでくれるかなぁ!?

 大混乱の私をよそに、お父さんは真面目な顔をしている。

 

「家具や家電を全部そろえると30万はかかるんだ。少し色を付けたから、いいものを買いなさい。長い付き合いになる」

「お、おお、そうなんだ……ありがとう……」

「及び腰すぎるぞ、どうした?」

「こんな金額持ったことないもん!」

 

 私の叫びをはははっ! と笑い飛ばすお父さん。笑わないでほしいんだけどなぁ! 50万円なんて持ったことないよ!? 

 いや確かにイレギュラーでそのくらい貰ったことはあるけど、それは銀行口座に入ってるから直接手に持ったことはないし……

 

「パーティーの二人や凉からもアドバイスをもらいなさい。先人の知恵は大事だからな」

 

 大真面目なアドバイスなので、ちゃんと聞いておこう。実際、1人暮らししてる人のアドバイスは大事だよね。余計なもの買うわけにもいかないし。

 ん? そういえば……

 

「お父さんって一人暮らししたことないの?」

「ないな……実家に住みながら冒険者になって、家を出たのが結婚したときだったからな……」

「こう、お試しで同棲とかは……?」

 

 なんだか遠い目をしているお父さんに、私は問いかける。だってさ、結婚する前ってこう同居しても大丈夫かどうかみたいなのをきちんと確かめるものでは……?

 同居後の価値観の違いで別れたら離婚したりって話はそこそこあるみたいだし……あ、情報源は愛依が出ている雑誌ね。若い人向けファッション雑誌だからか、恋愛とかについて結構書いてあるんだよね。せっかく買ったんだしって思って読んでるんだ。色々なことが書いてあって中々面白いんだよね。

 服に関しては特に見ていない。私には彼女らのような身長もスタイルもないから。

 そんな風に考えていたら、お父さんから当たり前のような口調で返答が来る。

 

「母さんがそんなまどろこっしいことをすると思うか?」

「あぁうん……」

 

 やらないだろうね。なぜなら、お母さんは即断即決、やると決めたらとりあえずやってから考える。そういうタイプだ。ぶっちゃけた話をするなら、非常に『魔女の大鍋(コルドロン)』向きな思考をしていたのがお母さんである。

 

「まあ、母さんだしな」

「確かに。お母さんだもんね」

 

 お母さんのことで2人で笑い合って、自分のことに戻った。時間的に、私はちょっと急いで食べないとマズいねこれは。

 朝からこんな話するから……いやこれ、昨日の夜に話そうとしてたのに私が門限ぶっちぎったせいだね? 全面的に私が悪いやつじゃん。

 そんな感じで、いつもよりも少しだけあわただしく身支度を整えて玄関へ。

 

「じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 ドアを開けて振り返り、お父さんに見送られて家を出る。

 このやりとりも、あとちょっとかぁ……

 

 

 というわけで、昼休みにご飯を食べながら凉にアドバイスを求めることにした。早くしないと完成しちゃうしね。

 

「というわけなんだけど、アドバイスとかある?」

「コンセントの位置と家電置くところまでの距離の計測! これは必須ー」

「そういえばアンタ、電子レンジが棚に置けないって、しばらく床に置いてたわね……」

「ああ、あったね……」

 

 私の質問に、びしっと指を立てながら凉が力説する。

 何度かつまづいて、脛を強打したっけ……あれは痛かったかなぁ……確か同じ理由で炊飯器も床置きだった気がする。棚が高すぎたたんだよね。

 

「あとはー、カーテン」

「カーテン?」

「明るいと寝れない! みたいな人は遮光カーテンじゃないとーとかあるし。個人的に断熱カーテンおすすめー。あったかいからー」

 

 私の場合、明るかろうが暗かろうがとりあえず眠れるので大丈夫である。大きな音とかは勘弁してほしいけども。

 でも、いいこと聞いたな。カーテンで断熱できるなんて。あったかくすごせそうだ。

 

「そういえば、防音とかどうなの?」

 

 愛依の質問に、ちょっとだけ笑みが浮かんでしまう。

 聞いて驚くがいい。コルドロンの技術力を存分に使った謎の耐性の数々を!

 

「防音はばっちり。あと、完成したら耐熱、耐震、防炎、耐雷、対爆、対衝撃、対魔法完備の予定だって」

 

 正直な話をすると、もはや要塞である。私が本気出しても壊れないくらいにするって言われたし。そして、彼らならそれが出来る。

 でも、これが外部の、例えばモンスターとかじゃなくて身内に対しての対策なのが何というか……

 私の発言に愛依が仰天する。ちょっと楽しい瞬間だ。

 

「後半の物騒なのはなんなのよ!?」

「耐雷、対爆、耐衝撃、対魔法……さっすがマッドサイエンティストのクラン……」

「爆発で吹き飛んで建て直しになってるから、その辺はしっかりやるってさ」

「さらに情報を増やすんじゃないわよ!」

 

 すぱーん! といい音を鳴らしながら愛依が私の肩を引っぱたいたが、特にダメージはない。

 あと、凉はナチュラルにマッドサイエンティストって言わないでよ。事実だけどさ。

 そんな感じで騒いでいたら、隣でご飯を食べていた男子二人組が話しかけてきた。確か……大石くんと菊池くん……だったはず。

 

「え、物前そんな物騒な物件に引っ越すの?」

「う、うん。クランの寮なんだけどね」

「寮なのかよ!? えぇ、こわぁ……」

「冒険者って大変なんだな……」

 

 彼らからしみじみと、嚙みしめるような、同情の視線が向けられる。いや、そんな反応しなくてよくない? そんな悲惨な状態じゃないよ?

 そして、彼らにちょっと思うところがある中で、後ろからも味方が切りかかってきた。

 

「アンタら、忘れちゃダメよ。夢希は外れ値だってこと」

「そーそー。何もかもがおかしいんだから夢希は」

「何もかもがって酷くない?」

 

 外れ値も大概だと思うけど、何もかもがおかしいはいくら何でも言いすぎじゃない? 怒るよ?

 

「そういやそうだったな」

「なら大丈夫か」

「なんで納得したの? ねぇなんで?」

 

 君たちもなんで納得したの。あー、安心した。じゃないんだけど? 心配してくれるのは嬉しいけど、そうじゃないよね?

 彼らに向けてジトっとした目を向けていると、何やら2人が顔を見合わせた。

 

「いやぁ、それにしてもさ」

「な?」

 

 ちらっとこちらを見たけど、一体なんだろう? なんか顔についてるとか……?

 そんなことを考え始めたころ、彼らが理由を話し始める。

 

「いや、最近物前がこう……接しやすい雰囲気になったというか」

「ちょっと砕けた感じになったよな」

「……そう?」

「前まで結構壁みたいなのがあったというかさ」

「拒絶まで行かないけど、話しかけるなオーラみたいなの出てたよな」

「わかる」

「え」

 

 2人が笑いながら話す内容に驚愕する。

 そんなオーラ出した覚えはないんだけど!? もしかしてあんまり話しかけられないのってそのせい? こう、日常雑談みたいなのは振られないけど、頼み事はされるのってそのせいか? それが悪いって思ったことはないけど……私が、用事がないなら話しかけるな。みたいなオーラ出してたのか……?

 

「自覚はなさそうだねー」

「あるわけないでしょ。夢希よ?」

 

 おい裏切者。2人は分かってたなら教えてよ! いや、言われてもどうしようもなかった可能性の方が高いけども。

 だって、どうしてそんなオーラが出ていたかも、今それが砕けた感じになったのかもよくわからないのである。

 とはいえ、最近になってというのなら……彩音さんと出会ったあたりだろうか? それなら納得が……いかないよ。そんなオーラは出してない。はず……

 

「あと、男子人気高いことにも気付いてなさそうだよねー」

「あ、倉橋お前!」

 

 大石(暫定)くんが何やら慌てているけど、そんなわけないでしょ。私が男子人気が高い? そんなことあるわけがない。こんな寸胴ボディの無表情で愛想のない人間を誰が好むというのか。もうちょっと身長があったら、スレンダーって言い張れたんだろうけども。

 念のため、菊池(多分)くんに聞いてみる。

 

「……そうなの?」

「えっ!? あー……。まあ、クラスの女子の誰と付き合いたいか。みたいな話になると上位にいるよ物前は」

「……ええ……?」

 

 なんと、事実であるらしい。嘘でしょ? なんでだ……? 美弥子とかいう外れ値がいるだけだと思ってたのに、何かある……?

 うーん……? と、悩み始めてしまった私を、他四人がそうそうこれこれ。みたいな視線で見ている。どういう感情なんだそれ……

 

「アンタたち、これどう思う?」

「そこが魅力じゃんか物前の場合」

「無自覚だからいいんだろ」

「それはそー。いや、もーちょい自覚はした方がいい気がするー」

「ま、でもこれでいいでしょ。自慢されてもウザいし」

 

 褒めてるのかけなしてるのかはっきりしてくれ。というか、教えてよ気になるじゃん。

 この後も一切教えてくれなかった。私が自覚していないからこそいいんだと力説された。

 いや、気になるんだけど!? 誰か教えてよ!

 

 

 

 

 




年末年始の繁忙期を乗り越えた私は自由だー!!

頑張るぞい。
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