【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
あのあと、誰も教えてくれなかったために、非常にもやもやしつつ学校を過ごし、放課後になったので『
収納魔法はあくまでも収納しているだけで、漫画みたいに永久に保存してくれるわけじゃない。冷凍してオッケーとのことだったので冷凍してあるけど、早く渡すに越したことはない。生肉だしね。何に使うのかわからないけど……食べるのかなぁ……? ゴブリンを……?
彩音さんも花奈さんも先に向かっているとのことだったので、あっちで合流だね。学校から『
冒険者用の車両で座ってのんびりと広告を眺めていると、ふと思いついた。学校から『
いや、どうせ冒険者用の車両なんて空いてるでしょ多分。そんな朝早くから活動してる人もいないだろうし。うーん、でもあれか? 節約のために走るべきか……?
なんて先のことを考えながら駅から出て『
やっぱり外部から見るとちょっと大きめの博物館とか美術館みたいなサイズと見た目してるよなぁ、あの建物。中身はダンジョンも真っ青の魔境だけども。
いつも通りエントランスで受付をやっている小川さんに挨拶だけして即退散。捕まるわけにはいかないのだ。
スマホで彩音さんに居場所を聞いたら、中庭にいるそうなので中庭へ。途中でドアが飛んできたけど、まあいつものことだ。あと、2人には相談するわけだから、前払いとして自販機で飲み物を買っていこう。こういうの大事だよね。
「あ、夢希ちゃん!」
「こんにちは彩音さん。花奈さん」
「こんにちは夢希さん」
中庭に行くと2人が待っていた。こちらにいち早く気付いて手を振る彩音さんと、とあるものを見ていて反応が遅れたのか、ゆっくりこちらを振り向いた花奈さん。2人とも武器こそ持ってないけど、防具は着ているからダンジョン帰りかな? いいなぁ、昼間からダンジョンに潜れる生活。高校卒業したら思う存分潜ってやるんだ……遠征とかもしたいし。北は北海道から南は沖縄まで。いろんなダンジョンに潜って、いろんなモンスターを食べるんだ。
それは置いておいて。2人に飲み物を渡して相談があることを告げる。まずは花奈さんからだ。
「花奈さんにちょっと相談があるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「昨日のことでさ……」
昨日、綾人さんたちにかなりひどい対応をしてしまった件について、ちゃんと謝罪したいんだけど、変にやると大変なことになりそうな気がしたので、まずは相談することにしたのである。相手は冒険者というよりも、事務所に所属しているタレントさんみたいなものだし、謝罪の手紙を送ったとしてそもそも届くのか? みたいなね。直接会うのも出来るだろうけどマナー違反だろうし。
私の話を聞いて、花奈さんは軽く何度か頷いた後、案を出してくれた。
「そういうことでしたら、金守さんにお願いするのがよろしいかと思います。昨日の一件についてのクラン同士のやり取りもございますでしょうし、そのついでという形でお送りするのがよいかと」
「そっか……分かった。ありがとうね」
なるほど、金守さんには後で昨日の依頼の肉を渡しに行くから、その時にお願いしよう。とりあえずこの話題はおしまいとして、次の相談に行かせてもらおう。
「あと、これは2人に相談なんだけど」
「うん、何?」
寮生活を始めるにあたって、1人暮らしで必要なものや気を付けることなどについてのアドバイスが欲しいと伝える。2人とも一人暮らし歴は長いそうだし、頼りになると思うんだよね、凉よりも。
だってあいつ料理しないんだもん。それに、部屋が大きすぎるし。
「1人暮らしの荷物かぁ……」
「確かに、夢希さんは初めてですものね」
「うん。いまいち想像付かないっていうか……友達に1人一人暮らしがいるんだけど、部屋のサイズが違いすぎて参考にならないんだよね……」
「どんな部屋住んでるのその子……」
「結構なサイズですわよここの寮も……」
えっと、リビングにダイニングキッチンがあって、他に部屋が3部屋あるから……
「4LDK……?」
「ファミリー用でしょそれ!」
「ご、豪邸ですわね……」
彩音さんと花奈さんが若干引いている。やっぱりあれかなりの豪邸だよね? たまり場にさせてもらってるから文句言うつもりはないんだけどさ、私の家よりも広いよ? 1人暮らしとは……?
「ま、まあそんなわけで2人にも聞きたいなって」
「そうだなぁ……」
「ふむ……」
渡した飲み物に口をつけつつ、2人が少し考える。その間に私はさっきから気になってる後ろの光景に目をやった。さっきまで花奈さんが眺めていた、
うーん、ホログラム……にしては匂いまでするしなこれ。よくわからないけど、そんなものはここにたくさんあるだろうし、細かいことはスルーしておく。気にするのは、アレが爆発してこっちに被害が出ないかどうかだ。
先に彩音さんの方が考え終わったらしく、口をひらいた。
「コンロのサイズをちゃんと測ってから鍋やフライパンを買う。かな……」
「入らなかったの?」
「二口あるのに、大きすぎて一個しか置けなかったんだよね……夢希ちゃんは料理するだろうし、気を付けた方がいいかなって」
ああ、確かにそれは考えた方がいいかもしれない。そもそも大きすぎるものを買ったら、それで作っても処理しきれない気がする。まあ、多分彩音さんや花奈さん、それに陽向とも部屋は近いだろうし、おすそ分けっていう手もあるね。
……いや待てよ? 大きめの冷凍庫が付いている冷蔵庫を買って、そこに入れておけば作り置きし放題じゃない? 家の冷蔵庫の場合、お父さんのツマミの一部とか冷凍食品とかも入ってたけど、私一人ならもっとスペース使えるし……いっそ、冷凍庫を別で買うという手も……
なんて妄想を繰り広げていたら、花奈さんも考えがまとまったらしい。
「掃除のしやすさを考えた家具を選ぶこと。でしょうか」
「掃除のしやすさ?」
「ええ、例えばベッドですわね。下の掃除をするにあたって、隙間が狭すぎて掃除がしにくい。なんてこともございますので。わたくしは結構苦労いたしましたわ」
「あぁ、なるほど。確かに大事だね」
確かにありがたいアドバイスである。ベッドの下なんて、特にほこりがたまりやすいし、ほっておくと健康に良くないしね。大事なアドバイスだと思う。私にとっては有益ではないという点を除けば。
なんと、この点に関しては浮遊魔法でどうとでもなるので、そこまで気にすることでもないのだ。普段から、タンスやらベッドやらを掃除するときは、浮遊魔法で浮かせて掃除機をかけてしまう。こんな感じで、何かと浮遊魔法はとっても便利なんだけど、制御がかなり難しいからか、使う人がいないんだよなぁ。もっとみんな使えばいいのにね。練習しよう練習。
そうだ、2人が引っ越しするときは手伝いに行こうかな。掃除なんかもするだろうし。重いもの持つにしろ、細かいもの集めるにしろ、全部任せてくれてオッケーだからね。
「あとは、棚やタンスの数をあらかじめ決めた個数から変えないこと。でしょうか」
「? どういうこと?」
「前のパーティにいたのです。服を買うのが趣味なのですが捨てられないと言って、タンスを買い足し続けた子が。最終的に部屋というか、タンスがある通路になっておりましたわ」
「そ、そんなに買い込むことあるんだ……」
「好きとかの次元じゃない……」
彩音さんと二人で引いてしまう。それはもう駄目な奴だよ。ごみ屋敷一歩手前じゃん……それと、タンスのある通路はもうホラーの絵面なんだよね。
花奈さんもその反応に頷きつつ話を続ける。
「物を増やしすぎない工夫。という観点からも、収納する場所そのものを増やさない。というのは大事だと思いますわ。わたくしも、苦渋の思いをしておりますがワインの棚は二つまでと決めておりますので……」
「いや、十分多いからね?」
彩音さんがあきれ果てたような顔をして花奈さんを見ている。花奈さんに対して遠慮がなくなったよね彩音さん……
一方、私たちはというと顔を見合わせていた。
「……多いかな?」
「……多いでしょうか?」
「多いよ! あと、夢希ちゃんはなんでそっち側なの!?」
彩音さんが叫んでいるが、そんなにびっくりすることだろうか? それと、私がこっち側な理由は単純明快である。
「鬼灯の収納魔法の中身を見るに、あいつの部屋に棚二つくらいなら余裕でありそうだから」
どう考えても鬼灯の部屋の方がお酒はある。これは確定事項だ。賭けてもいい。
この前の時ですらあれだけお酒を持ち歩いていて、その上で部屋の中にもあるとなったら、全部で一体何本のお酒があるのやら。いやまあ、お酒=水みたいな状態の人間と比べるなよって話ではあるんだけど、花奈さんのお酒好き具合を見てるとあれくらいを想定してもよさそうなんだよな……
あと、お父さんがすでに棚一つ分埋めているので、二つくらいだったら埋めててもおかしくないんじゃないかなっていうのもある。
「……確かに……」
鬼灯を引き合いに出された彩音さんは、妙に納得したようだった。納得せざるを得ない。の間違いかもしれないけども。
その横では、花奈さんが微笑みを浮かべていた。何とも綺麗な大人の女性って感じであるが、お茶目通り越してるからなこの人……
「あぁ、鬼灯さんには早く直接お会いしてみたいですわね……きっと話が合いますわ」
「
彩音さんとハモった。まあ、そういう感想になるよね。どう考えても話が合うと思うよ。とことん合うと思う。そして、多分どっかで喧嘩する。
鬼灯が言ってたんだ。酒好きはどこかで派閥違いを起こして喧嘩するって。だから、多分どっかでそうなる。その時は……放置でいいか。関わるとめんどくさそうだし。
そんな話をしていたら、私のスマホが鳴った。断りを入れて確認すると、金守さんから連絡が。これは早々に向かった方がよさそうだ。
2人に別れを告げて金守さんのもとへ向かう。怒られたりは……しないよね?
「どうぞ」
「失礼します」
ノックをして、返答があってから中へ。正直これが慣れない。『
金守さんは前と変わらず書類のたくさんある机に向き合っていた。お仕事ご苦労様です。
「呼び出してすまないね」
「いえ、大丈夫です」
金守さんに手で促されソファに座る。金守さんも紙とペンを持ってこちらに移動してきて対面に座った。初めての時と一緒だ。2人がいないけども。
「早速だが本題に。昨日の件について、君の視点からの報告が欲しいんだ」
「私の視点からのですか?」
「ああ。君が壁を作ってしまったので向こう側については分からない。と2人には言われてしまってね」
「あー……」
午前中に2人が話していると思ったけど、そうか。確かに《ガイアウォール》で分断したから見えてないのか。どう答えるのが正解なのかわからないから、そのまま話すしかないか。
「えっと……《ガイアウォール》で壁を作って、浮遊魔法で犯人たちの方に加速するだけ加速して、途中から慣性で滑空。空中で《
こうだな。我ながら簡単に話せたと思う。うむ。
「……すまない、なんだって?」
「あれ……?」
ペンを片手に、金守さんが困惑したような顔をしている。何故だ……?
その後、金守さんに何度か質問を挟まれつつも昨日のことについて説明した。私、もうちょっと簡潔かつ分かりやすくまとめる技術を学ぶ必要があるかもしれない。
とりあえず、昨日の事件についての報告は終わったので、依頼についての話をさせてもらおう。なんだか金守さんが疲れている気もするから、今度蜂蜜レモンでも用意してあげようかな……いや、味覚の問題で植物系ダメなんだっけ? 何か考えておこう。
収納魔法から凍った肉の入った大鍋を取り出す。
「あの、昨日受けた依頼の肉なんですけど」
「……分かった、確認しよう。中層までのものだと北条君から聞いているが、間違いないか?」
「はい。中層までのモンスターで間違いないです」
「……よし。下層のものも後日頼むよ」
「わかりました」
金守さんから確認を取ってもらって、これで私の初めての依頼はとりあえずオッケーってことかな。ともかく初仕事が終わったわけである。完璧じゃないのがアレだけど、そこはもうどうしようもない。期限も特に決まってないしねこれ。次に行ったときに用意しよう。いや、何で決まってないんだ……?
「さて、報告ありがとう。何か他にあるかい?」
思考の海に意識を投げそうになっていたところ、金守さんからそんな言葉が。
「えっと、昨日の件と関係があるんですけど……」
「ふむ、なにかな?」
金守さんに、昨日の綾人さんたちへの自分の対応と、その非礼を謝罪する手紙を送りたい。という話をすると、快く引き受けてくれた。
謝罪文の添削までしてくれて、結構勉強になった。いい上司に恵まれてるなぁ私は。
金守さんにお礼を言って退室し、再び中庭に向かう。遅くなっちゃったけど、2人と合流してこれからダンジョンだ!
ワインの棚が二つまでと言っただけで、酒の棚が二つまでとは言っていない