【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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全然引っ越しの話に辿り着けないので、サブタイトル変更!!


配信に興味のない私と着せ替えと恋バナ(?)

 

 『魔女の大鍋(コルドロン)』で依頼をいくつかこなした翌日の学校で、私はいつも通りに愛依と凉と一緒にお昼ご飯を食べていた。

 ちなみに、昨日やった仕事は全部、光源魔法関係のものだ。光を発生させるだけの魔法だけど、なんだかんだ面白かった。指向性を持たせてみたり、空中に浮かせてみたり、はたまた分裂させてみたり……正直、遊んでただけの感じがするんだけどね。でも、依頼は依頼。お金も後でもらえるし、いいことづくめである。

 

「そんな感じで、明日からダンジョンにはしばらく潜らないんだ」

「やっぱネットってアレね……」

「今のところ、夢希に辿り着けそうな情報は一切ないから大丈夫だとは思うなー」

 

 昨日の彩音さんたちと話したことを愛依と凉に伝えると、それぞれ反応が返ってくる。愛依は引いてるし、凉はやっぱり何か対応してくれてたのかな。

 凉は菓子パン片手にスマホを操作し、綾人さんたちが所属している『ダンらぼ』の公式SNSを見せてきた。

 

「それに、一部の暴走してる連中はともかく、『ダンらぼ』の人たちはそういう特定はやめるように呼び掛けてるし、そのうち落ち着くっていうのは間違いないと思うよー?」

「それならいいんだけどね……」

「ま、実際そういうのって一過性よ。すぐに別の話題で消えていくわ」

「そーそー」

 

 2人とも割と楽観的というかなんというか。とはいえ、実際そういうものではあるんだろうなって思う。たまに愛依や凉のSNSをちらっと見るだけだけど、毎回話題が全然違うから、変化が早いんだろうなって。流行り廃りが早すぎてついていけないよ全くさ……

 だからか、今回の休みは一週間ほどを予定している。ちょうど一週間後に寮が出来るそうなので、引っ越しが終わるまででちょうどいいよねって話になったのである。

 一週間で吹っ飛んだ寮が出来るってなんだよって言いたいけど、出来るものは出来てしまうのでしょうがないのだ。『魔女の大鍋(コルドロン)』だし。

 

「とはいえ、本気でやる奴は間違いなくいるんだから、これからも気を付けておきなさいよ」

「突撃してくるやつとかもいそうだしねー……昔ならともかく、今は荒らしも来そうだしねー」

「荒らし?」

 

 物騒な名前が出てきたし、来そうってなんだろうか。家まで突撃されたりは避けたいところだ。引っ越しした後なら大歓迎だけどね。むしろ、来れるものなら来てみろと言いたい気分である。小川さんをどうにかしたところで、次が怖いのが『魔女の大鍋(コルドロン)』である。私も知りたくはない。

 

「配信に変なコメントを連投するかまってちゃんな人たちー」

 

 凉がバッサリと切っていく。うーんなるほど、確かに。一気に話題になったところにはそういう人が結構いるイメージかも。それこそ玉石混交というか。

 ふんふんと頷いていたら、愛依が何を懐かしむようにつぶやいた。

 

「……アンタが全部無視してたもんだから、みんな消えてったものね……」

「スルーは大事だと証明されてたよねー」

「なんの話?」

「夢希の配信の最初期にいた荒らしたちの話ー」

 

 え、そんなのいたの? 私の配信のしかも最初期って。私が意図的に無視するようにしてた頃じゃないか。

 あの頃は……アルミラージの解体とかしてた頃かな? 多分、ひたすら画面真っ暗でぶつぶつ文句言ってただけじゃないかな……ずっと作業服でカメラ隠れてただろうし。

 

「全然知らない……」

「でしょうね」

「あ、もし長めに休むなら、ちょっとだけ配信してしばらく休むって伝えておいた方がいーんじゃない? 心配させちゃうじゃん?」

「あー……」

「今の現状くらい把握してるだろうし、適当に休みますだけでいいでしょ」

「それもそっかー」

 

 確かにそうかもしれない。陽向の関係で二日休んだ時だってあれだけ心配させてたみたいだし、今回に関してはもっと長い。どこかで休む連絡だけでもした方がいいかも。

 だとしても、ダンジョンに入ると普通にそのまま過ごしちゃいそうだし、どこでやろうかな……なんて考えていたら、愛依が私の腕を掴んでこう言った。

 

「……てことは、アンタ暇なのよね?」

「? うん」

「よし、服買いに行きましょ」

「いーねー」

「え、は? なんで?」

 

 いや待って前後が全然わかんない。なんで私が暇なことと服を買いに行くことがつながるんだ?

 混乱していたら、ビシッと目の前に人差し指が突きつけられた。

 

「彩音さんたちも呼びなさい」

「いやあの」

 

 流石にちょっと……と言いかけた言葉は、愛依のにらみと圧でかき消された。

 

「呼べ」

「はい……」

 

 

 

 放課後、近場のショッピングモールに行くと、彩音さんたちがすでに待っていた。いやなんか人数多くない? 声かけたの彩音さんと花奈さんだけのはず……

 

「夢希ちゃんを好き放題着せ替え出来ると聞いて!!」

「同じくですわ!」

「同じくっす!」

「同じくです!」

「一緒に徹底的にやりましょう!」

「そうだね!」

「やりますわ!」

「やるっす!」

「任せて下さい!!」

 

 テンションたっか!? これは間違いなく数時間は着せ替え人形にされそう……愛依は愛依で全員焚き付けないでお願いだから。

 唯一、私のそばで普段通りな凉に助けを求める。

 

「凉、助けて……」

「無理ー。がんばー」

「薄情者め……!」

 

 スマホを弄りながら手をフリフリ。こいつ本当に……! 後でそれとなく誘導してお前も着せ替え人形にしてやるからな……!

 それはそうとして、とある2人に声をかける。

 

「というか、なんで陽向と美弥子もいるの?」

「彩音さんに誘われたっす」

「そんな気配がしたので来ました!」

「ああうん……」

 

 陽向はともかく、美弥子はもう妖怪か何かなのか? いや、それに近い気がしてきた。普段からそんな感じだし。

 

 

 

 

 

 

「次はこれ!」

「うん……」

 

 かれこれ2時間ほど彼女たちによって着せ替え人形にされているわけだが……疲れてきたよ。体力は別に良いんだけど、精神力がね。

 ガーリーがどうだの、フリルがなんたらと言われても何を言っているのかさっぱりわからないし、変に露出があったり、着るのが大変な服を渡されたりで結構大変だった。ボタンとかチャックの量がおかしい服とかたまにあったし。力が強いから、変に力入れちゃうと壊しちゃいそうで、凄まじく気を使うんだよこういうの……あと、写真撮りまくるのやめて。比較用なのは分かってるけど苦手なんだよ写真……写真写り悪いし……

 最初の方はさ、結構ゆったりめのパーカーとかカーディガンに合わせた服だったんだけど、なんだか段々露出が増えていったんだよね……お腹丸出しのやつとかさ。

 正直、たまに凉がおふざけで持ってくる着ぐるみパジャマみたいなやつが、着やすいし肌も出ないしで精神的に楽だった。可愛いし。

 そして、初対面の面子も多かったはずなのだが、私の着せ替えをしている間にかなり打ち解けたようで、もはや長年の友人のような距離感である。美弥子ですらそこにいるのがかなり違和感あるな……。あと、それをみていて思うけど、やっぱり私ってコミュニケーション能力低いな……こんなに早く打ち解けられると全く思えない。

 なお、私が気に入ったら、とりあえずでかごに入れろというので、今のところ5着ほど入っているのだが……いや、こんなにいる?

 

「ねえ、こんなに服っているの?」

「アンタはこれから寮で生活するんでしょ? 他の人に会う機会が増えるんだから、服はないとダメでしょ」

「いや2着あるし、バトルクロスもあるよ?」

「少なすぎなのよ冗談じゃなく!!」

「流石にどうかと思うな……」

「いくら何でも私服が2着というのは……」

「よ、4パターンになるし……」

 

 上下取り換えれば4パターンあるんだし良くない? あと、『魔女の大鍋(コルドロン)』の中でこんなにオシャレな服なんか着ないよ。基本的にジャージ辺りの動きやすくて洗いやすい服で過ごす予定だ。あそこにいると、汚れるどころじゃすまないからね! 何着あっても足りなくなりかねないよ本当に。

 そんなことを言ったら、彩音さんと花奈さんから苦言を呈され、陽向からはちょっと引いた目で見られた。美弥子はそんなところも可愛いです! といつも通りだった。

 凉? なんかまた着ぐるみを……なんだあれ。トナカイ? 顔までついてるけど、目が怖い……

 そんな私を見て、愛依はというと。

 

「ホントにもうこいつは終わってるので、この際徹底的にやりましょ」

「うん、流石にひどいと思うよ夢希ちゃん」

「せっかく可愛いんすから、もっとオシャレするべきっすよ!」

「……いや、可愛くはないでしょ」

 

 可愛いわけないでしょ。私が。無表情の人形が可愛いと思うのはおかしいでしょ。綺麗とかならまだ分かるけどさ。

 お母さんみたいによく笑う人なら、可愛いっていうのは分かるけど。あとお母さんは美人だったよ。身内贔屓もあるけどね。

 

「は?」

「ひっ」

 

 私の発言に思うところが多分にあったのか、能面のような顔で私の顔を覗き込み、あまりにもドスの効いた声を出す愛依に悲鳴を上げてしまった。こ、怖い……

 

「夢希はさー、いい加減自分が美少女であることを自覚するべきだと思うなー」

「美少女って、大袈裟じゃない?」

「顔が良ければ美少女!」

「えぇ……?」

 

 ガッツポーズをしながら力強く言い切った凉に呆れる。こいつは本当にさぁ……

 次はこれっすー。なんて言いながらもこもこのフリースパーカーを持ってきた陽向が、私に疑問を投げかけてくる。

 

「……夢希ちゃん的に、ここにいる中で一番美人だって思ってるのって誰なんすか?」

 

 なんか一瞬周りの空気が固まった気がしたけど、まあ特に気にすることじゃないかな。

 

「花奈さん」

「じゃあ、可愛いなって思ってるのは?」

「彩音さん」

「愛依はー?」

「カッコいいと思う」

 

 次々と投げ込まれる質問に答えながら陽向の持ってきた服に着替える。うーん、見た目は可愛いなって思ったけどちょっと首周りがチクチクして嫌だなこれ……フリースなのに何故……? もはや思考を停止して服を着がえるだけの機械と化している私は、着替え終わるとささっとカーテンを開ける。すると、横からにょっきりと美弥子が首を出した。

 

「私、私はどうですか!?」

「美弥子は……」

 

 改めてじっくりと美弥子のことを見てみる。うーん……そうだなぁ……

 頭から足先まで何往復か見た後、私は結論を出した。

 

「まあ普通?」

「くっ、なるほど……!」

 

 悔しがっているような、納得したような反応をしている美弥子の後ろで、彩音さん以外の他の面々がなんだかこそこそ話し合っている。

 

「美弥子さんも十分可愛いですわよね……?」

「現役のモデルさんが近くにいたら感覚バグるんすね……」

「それなー?」

「美弥子はもうちょっと化粧の勉強したら化けるわね」

「!? ぜひ教えてください!」

 

 愛依は何目線なの? モデル目線か。あと、美弥子は食いつきすぎでしょ……いや、普通のこの年代の女の子はこういうものなのか……? 私があまりにも興味がないせいで本当にわからない。凉も興味なさそうだけども。

 あと、花奈さんはさっきからドレスみたいな服持ってくるのは何? 人形感が出て似合ってる? 褒めてるのそれ……? 着やすそうでいいけども。

 花奈さんからドレスワンピースを受け取っている間、後ろで彩音さんが頬に手を当ててうねうねしていた。

 

「わ、私可愛いかな……」

「彩音さんは可愛いと思うっす」

「笑顔が素敵ですわ」

「彩音さんはもっと自信もっていきましょ。チークとリップの色をちょっと変えるともっと良くなると思うわ」

「え、教えて愛依ちゃん」

「くっ、やはりライバルは彩音さんでしたか……!」

 

 何のライバルだよ。美弥子はどこまで行っても従妹から変わらないよ。あと、愛依はみんなからの信頼勝ち取りすぎじゃない? いや、現役のモデルなんだから当たり前か。

 そして、ついに美弥子の言動に違和感を覚えたらしい凉が、ニヤニヤしながら美弥子に質問を投げた。

 

「美弥子ちゃんは夢希の何になりたいのさー?」

「? なりたいも何も、未来の嫁です!」

「え」

 

 あまりの発言に凉が固まった。愛依も目を見開いて私にぐるん! って音が出そうなほどの速度で振り向く。

 私は花奈さんから渡されたドレスワンピースに身を包み、多分本当にそういうお人形みたいな見た目になったまま、2人に言い放つ。

 

「美弥子の虚言は無視して」

「虚言!? 私の気持ちは本物ですよ!!」

「私の意見が全部無視されてるから虚言なんだよ」

「これから振り向かせるんですから問題ありません!」

「そんな未来はない」

 

 もはやいつのものやり取りと化した会話をしながら、美弥子から服を受け取る。えっと、これはなんだ? セーターか? カーディガン……? どっちだこれ。

 でもさっきから、美弥子のチョイスがやたらと好みに近いのが本当になんか……買いに行ったりしたことないのに、なんでこんなに的確に選んでくるの……? いやありがたいけどね。

 ちなみに、かごに入っている5着のうち、2着が美弥子が選んだものだ。あとは陽向と凉が選んだやつ。愛依と大人2人は露出度とか値段とかを考えてほしい。多分、そもそも着せ替えしたいだけで、そういうところは考えてないんだろうけどさ……数万円するものを持ってこないでほしい。切実に。破いたらどうしてくれるんだ。

 

「ほんとーのところはどうなんですー?」

「美弥子ちゃんが一方的に言い寄ってるだけだね……」

「出会う度に求婚されているそうですわ」

「わぁおー」

「その度にあんな感じと……」

「実はまんざらでもないとかあるっすか……?」

「流石の夢希でも、まんざらでもないならそれなりの反応するわ。あれはただ雑に扱ってるだけ」

「そーだよねー。こー、虫を適当に手で追い払ってる感じー」

「虫……」

「悪い虫とは申しますが……」

 

 虫て。流石にそこまで思ってないよ。近所のやたら懐いてる犬くらいの扱いだよ。というか、こんな感じで扱わないと、どこまでも踏み込んできそうじゃん。

 美弥子のチョイスした服を着てカーテンを開けた時、美弥子が変なことを言い出した。

 

「でしたら夢希ちゃんはこの中ならだれと結婚したいんです!?」

「何その質問……」

「強いてでいいので!」

「必死すぎでしょ……」

 

 もう、答えないと美弥子は多分引かないだろうなって思えるくらいには、目の前でふんすふんすと興奮している。どんだけだこいつ……あと、そう聞けば自分が選ばれると思ってるな……そういうのはどうかと思うけど、そう聞かれても選ばないぞ私は。

 そもそも女性と結婚するつもりはないから全員ないんだけどなぁ。いや、まず結婚の想像すらしてないけども。強いてでこの中から選ぶ……となると。うん。

 

「……だとしたら、凉かな」

「はへ?」

 

 まあ、凉になるね。少なくとも、この中で一番一緒にいて苦にならないというかなんというか。他の人が苦になるとかでなく、すでに気の置けない仲なわけだし、趣味嗜好も外れているわけじゃない。あと、金銭感覚はちょっとズレてる気はするけど、相手に合わせるくらいのことはしてくれるしね。

 私の発言で全員の視線を一身に受け止めた凉はというと、変な声を出して固まった直後に顔を真っ赤にして両手をぶんぶん振り始めた。

 

「い、いやー、ちょ、ちょっとそーいうのは私にははやいかなーって、ふひひー!」

「あんなに焦ってる凉初めて見た」

「私もよ。……面白いわね」

「わかる」

「人の乙女心で遊ばないでくれないかなー!?」

 

 愛依と顔を見合わせる。うん、同じこと考えてるね多分。

 

「「……乙女心あるの?」」

「おいこらー!」

 

 あ、真っ赤な顔のまま愛依につかみかかりにいった。こっちに来る前にカーテン閉めて逃げよ。他に持ってこられた服がないから、今のうちに元の制服に着替えて即試着室から出る。流石に出てしまえばだれも追加で持ってこないはずだ。

 そして、そのまま彩音さんたちの後ろまで退散する。さっきまで散々私を弄んだんだ。せめて壁くらいにはなってくれ。

 

「夢希ちゃんの普段の生活ってこんな感じなんだね」

「楽しい学生生活を送れているようで何よりですわね」

「2人は夢希ちゃんのことどう思ってたんすか……」

「逆にお聞きしますが、あれだけダンジョンに潜り続けている子が、まともに学生生活送れていると言って信じられますか?」

「あー、まー……それは……そうっすねぇ……」

「ひどくない?」

 

 彩音さんたちの私への偏見が酷い……ちゃんと学校生活送ってるし、友達もいるって話しただろうに。信じがたいのは否定しにくいのでアレなんだけども。実際、ダンジョンに入り浸ってるのは事実だし……

 なお、この会話をしている後ろで、美弥子はがっくりとうなだれていた。

 

「お、思わぬところにライバルが……! 負けませんよ……!」

 

 そもそも勝負が成立してないんだから不戦敗だよ。

 




多分、一度に書いたキャラ数最多な気がするんですけど、書き分けできてるのかこれ……?
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