【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
こんな感じの視点で書いてみたいなーって思いつきで書き始めたらめちゃくちゃむずかったです……
渋る夢希になんとか五着の服を買わせることができた後、美弥子のスマホが鳴った。いや、渋るって何よ。お金の事気にしてたけど、そもそもアンタが服2着しか持ってないとか言う非常識かましてなければそんなに買わせないわよ。
前からファッションに疎かったとはいえ、ここまでとは……もっと早く確認しておくべきだったわね。あと、誠二さんはもうちょっと夢希の普段の生活に口を出して。父親だから娘に言いにくいとかあるかもしれないけど、流石に口出していいと思うわこれは。
スマホの画面を見た美弥子が一瞬固まったあと、私たちを見て大声を出す。この子はこの子で声大きいわね……夢希が塩対応なの、それも理由の一つだと思うわよ? センス自体は夢希にもはまってたみたいだしね。
「あ、マズいですね! 私はこれで帰ります!」
「急だね。何かあった?」
「いえ、実験を途中で放り投げてきたので!!」
「さっさと帰れ」
あまりの理由に夢希の対応もさらに雑なものに。夢希は、この人は雑に扱ってもいいって理解したら雑に扱うタイプ。あれよ。仲良くなると口が悪くなるタイプ。だから、美弥子との仲自体は悪くなさそうなのよね。結婚はともかくとして、だけど。ま、夢希と結婚したいっていうのは分からなくもないけどね。相性だのなんだのは置いておくとしても、優良物件なのは間違いないもの。
それにしても、『
「自由すぎないかしら……」
「『
「こわー……」
陽向の発言に凉が引いている。私も引いてる。
アイツ、ホントにそんなところに入って大丈夫なのかしら……? いや、普段から入り浸ってるとは言ってたから、その辺は承知で入ったんでしょうけど。承知してるのもどうかしてるわね。
それにしても、仕事を途中で放り投げるのが組織の中で日常的ってヤバいでしょ。よく回るわね。好意的に見れば、研究の息抜き……ってことなのかしら?
「では、私はこれで! 今日はありがとうございました!」
「自分も一緒に帰るっす。今日は楽しかったっす!」
「じゃあまたね」
あら、陽向も一緒に帰るのね。最後にご飯でも食べて帰るかと思ってたのに。一個上のはずなのに後輩感あるのよね陽向って。可愛がりたくなるタイプ。大型犬みたいで可愛いし、髪型とかメイクとか全部弄ってみたいわ……
それにしても、今日だけで連絡先が4人増えたわ。あとで分類しておかないと。分類は……夢希の友人でいいかしら? 今にして思えば初めてだものね。夢希の友人と会うの。あとはホオズキって子くらいか。会ったことはないけどね。
2人いなくなったけれど、この後は……そうね、メイクの話もしたし、化粧品でも見ましょうか。
「ま、次は化粧品でも見ましょうか」
「ごめん、ちょっとトイレ……」
「……いってらっしゃい」
いそいそと服の入った紙袋を魔法で収納して、トイレに向かう夢希の背中を見送る。逃げたわねアイツ……結構時間潰してから合流するつもりね。
ま、いいわ。メインは彩音さんと花奈さんだし。と思っていたら、凉が提案を出した。
「あのさー、ここで別行動にしない? 夢希も疲れてたし、私も化粧品興味ないしさー」
「……そうね、そうしましょうか」
へぇ……大分珍しいわね。普段なら、夢希か私のどっちかに立ってもう片方を説得する流れなのに。確かに普段と違って5人っていう大人数での行動なのもあるかもしれないけどね。それにしても、こいつも中学で夢希に会うまでと今じゃ別人ね。いつも私の後ろを怯えるようについてきてたのに。良いことだけど……ちょっと思うところがないわけじゃないわ。
でも、それは私が触れるべきだとは思ってない。中学以降、私がモデルの仕事でいないときは夢希と一緒にいたはず。その時間の積み重ねの結果でしかないことに文句をつけるなんてしないわ。
いやそれにしても、あの会話の後に2人きりだなんて、アンタに耐えられるのかしら? ふふ、楽しみになってきたわね。
これからのことに胸の内で笑っていると、彩音さんから提案された。
「ご飯は食べる……よね?」
「そうですわね、良いでしょうか?」
「いいわね! あとでレストラン街で合流しましょ」
「じゃあ、1時間後くらいにレストラン街で」
「あーい」
凉がトイレに向かっていったのを確認して、私は2人に笑いかける。
「さ、あとをつけましょ」
「え? 化粧品は……?」
私の提案に彩音さんがシュンとした雰囲気になる。
く、彩音さん結構本気で見たがってたのね。それは悪いことをするけど、でもね。それは後でも見れるけど、これからの景色は今からしか見えないのよ。
「気にならない? あの会話した後に2人きりで何するのか」
私の発言で2人は顔を見合わせた。話を聞いてる限り、夢希は2人とそこまで話していない。正確には、日常生活の話をほとんどせず、冒険者としての話しかしていない。
そういうやつではある。こっちから聞かないとろくに話しない。そういう意味では、今回のこれで、普段の夢希がどんな感じか見てもらえるっていうのも、一応理由にはある。さっき夢希が学校生活ちゃんと送れてることに安心してたみたいだから、その補強ね。
ま、そんなのは全部建前よ。本音はあれだけ慌ててたあいつがどれだけ醜態晒すのかが見たいだけ。性格が悪いのよ私は。
「気になる……」
「ふふ、初めてですわねこういうの」
「じゃ、そういうことで」
さ、とりあえず、トイレの出口を見れるこのファンシーショップに隠れてっと。店内をちょっとだけ冷やかしながら、トイレから2人が出てくるのを待つ。
その間に、先ほどの美弥子の巻き起こしたアレの話をちょっと聞いてみたくなった。
「……お2人は結婚とか考えてます?」
私の質問に、2人は少しだけ考えこんだ後、思い思いの内容を口にしてくれた。
「私は……夫婦で冒険者出来たらなぁ。なんて思ってるよ」
「わたくしは夢を叶えた後で……でしょうか? 冒険者を引退した後に。という感じですわね」
ふんふん、なるほどね。彩音さんは、お相手がそもそも冒険者であることが条件になってる感じ。花奈さんは配信見てた凉から聞いたから知ってるけど、それモンスターのお酒を造ることよね? ということは、冒険者でいることはそこまで気にしていないと……こうやって聞いてみると全然価値観違って面白いわよね。
「愛依さんは?」
「私はそうね……今の活動に文句言わなくて、家事全部してくれる旦那が欲しいわ。忙しくて自分で出来なくなるくらいには有名になるんだから」
「す、すごい……」
「夢への熱量が凄まじいですわね……流石夢希さんの友人……」
大口を叩いてる自覚はある。けど、口だけで終わるつもりなんて全くないし、駆け抜けてやる覚悟でいるわ。それに、これは熱量とかじゃないのよね。私が私を好きでいるためにやることよ。全力を尽くして、そのうえで負けたなら納得も出来るけど、そうじゃないなら、一生引きずるわ。それだけはごめんっていうだけ。
夢希のあの情熱はどこから来てるのか。という話は置いておく。あれは多分、夢希の贖罪みたいなものだから。何も悪くないのに、自分で悪いと思い込んで、その分の何かをするためにあの情熱が燃えている。一部だけどね。
でも、今はその割合が減ってると思う。ここに、夢希の夢を一緒に追いかけてくれる人たちがいるから。それは、私にも凉にも無理なことだから。
「彩音さんは冒険者を引退するならいつの予定なの?」
「引退かぁ……子供が出来たらかな」
「愛依さんは引退のビジョンありますの?」
「思いつく限りのことやり切ったら辞めるわ。もしくは賞味期限が来たらかしらね」
モデルって、いつまでも出来る仕事じゃない。見た目にどうしようもなく傷が出来たら引退するしかないし、年齢との戦いにもなるしね。それも含めての全力疾走よ。でも、それだけじゃ疲れちゃうもの。こういう日も必要よ。
その時、2人が並んで出てきた。そのまま、少し手を伸ばしたら触れあいそうな距離のまま2人並んで歩きだす。
おかしいわね……さっきの反応的にも、あんなに距離が近くなったら顔赤くするとかすると思ったんだけど……というか、そもそもあんなに近くで過ごせないかと思ったのに。
3人で2人のことをつけていくと、家具屋の中に入っていった。
「家具、ね」
「1人暮らしするんだもんね」
「わたくしたちも意見を求められましたものね」
これに関しては私って何も出来ないのよね……一人暮らししてないの私だけだし。凉と違って夢希は家事全般出来るし、心配こそしていないけどね。
いや、心配だわ。主に、あの物騒な耐性が付与された建物のせいだけど。どんな人外魔境なのかしら『
少し離れてついていくと、どうやらソファを見ているようね。聞いた話だと、寝室とリビングダイニングの二部屋構成だそうだから、リビング用かしらね。不思議とあいつがソファに座って何かをしてる絵面が……ご飯食べるくらいかしら?
あとで、部屋のコーディネイトの話もしようかしら……いや、確か夢希の部屋に前に行った限り、そんな変な部屋ではなかったはず。というか、物がほぼなかったからかもしれないわね。
とはいえ、アイツは地味な色が好きで、それで統一しようとするから、変な思いつきでもしない限りは大丈夫か。まあ、統一しすぎてのっぺりとするから、差し色入れさせようかしら。
「夢希ちゃん、大体単色で統一してるよね?」
「そうね……特に地味な色が好きね。茶色とか」
「戦闘衣も地味目だもんね」
「……もしかして、ところどころの差し色は……」
「私が入れたわ」
あれは、夢希が冒険者になる少し前に、普段は常に勉強しているのに、珍しくなんか描いてるなーって思って覗き込んだら、戦闘衣のラフ案だったのね。だけど、アイツ単色でしか考えてなくて、白と茶色しかなかったのよ……流石にひどかったもんだから、タイをピンクにしたり、ローブの下にちょっと暗めの青を入れたりしたのよね。
昔のことを思い返していたら、急に2人からレスポンスがなくなった。違和感を覚えて振り向いたら、2人して手を合わせて私に頭を下げていた。無言で感謝するのやめてくれないかしら……結構不気味よ?
そんなやり取りをしている間にも、夢希と凉はいくつかのソファに並んで座って、ソファの座り心地を確かめている。そんなよくある光景に、彩音さんが少し不満そうに呟いた。
「なんかさ、ナチュラルに隣に並んで座ったよね?」
「当たり前と言わんばかりでしたわね」
「……」
言われてみれば、あれはいつからかしら? アイツらの距離があそこまで近くなったのは。多分高校に上がってからな気はするんだけど、明確にいつなのかがわからないわね。
ま、どうでもいいわね。何も悪いことじゃないんだから。
……これはあれかしらね。親離れする子供を見守る気持ちってやつなのかしら……? 誰がママよ。
「夢希ちゃん、私が隣に座ろうとするとちょっと避けるのに……」
「流石にそれは気を使っていらっしゃるだけでは……?」
後ろの2人は2人で、夢希との距離感がどうなんだかよくわからない。会ったばかりだしね。けど、多分友達だとは思ってないと思うわよ。あくまでもパーティメンバー。初めての。っていう枕詞はついてもね。
少なくとも、あいつの『友達』のラインはとんでもなく高い。あのホオズキって子が友達だと思われてなかったレベルなのよ? 夢希の友達として接する最低ラインはおそらく、家族のことを――特に母親のことを――話せるか否か。そんでもってアイツ自身がそれに無自覚なのがタチ悪いのよね……。
「椅子はお高いのじゃないと、腰やるよ」
凉が大きな声を出したからこっちにまで聞こえてきたわね。
そのめちゃくちゃ実感のこもった声で伝える凉に夢希がちょっと引いてるわ。でも、実際腰やると大変みたいだしね。これを機にいいもの買うのもいいんじゃないかしら? 夢希もクランの仕事でレポート書かなくちゃって言ってたし、多分そういう仕事が増えるのよね? 座る時間が増えるならいい選択だと思うわ。
「実感こもってたね」
「アイツは配信者やってるから、そのせいよ」
「なるほど……では、夢希さんのチャンネルは」
「アイツが管理人」
「あ、そうなんだ」
納得したような2人の反応に呆れてしまう。夢希は最低限その辺説明しておきなさいよ……聞かれないと答えないんだからホントに。夢希の中の、これくらい説明しなくてもいいだろう。のラインが大分高いのよね。勉強教えてもらってるときもそう。
でも、逆に言うと、聞けば大抵のことは教えてくれるのよね。教えたくないことは教えたくないっていうし。もしくはめっちゃ渋るか。凉がコミュ障と言い切るだけのことはあるのよねホント。
2人は会話をしながら、椅子のコーナーを通り過ぎてベッドのコーナーへ。
椅子は買わないのね……ま、ベッドは実家にも1個欲しいから、そりゃ新しく買うわよね。それに、ここの家具屋で買うよりも、椅子なら別のところがいいと判断したのかもしれない。
ベッドコーナーにつくと、キングサイズのベッドを冷やかしたのち、夢希がダブルベッドに寝ころんで、遠慮がちにごろごろと確認し始めた。すると、何を思ったのか、凉も隣に寝ころんだ。そしてそのまま何やら会話し始める。
……え、アンタってそんな大胆なことできるの!? 結婚するならアンタとか言われてた相手よ!?
「ナチュラルに一緒に寝転び始めたけど!?」
「だ、大胆ですわね……」
「……」
そして、すぐに隣のセミダブルベッドにまた2人で寝ころぶ。あー、なんとなく距離感が近くなった理由がわかったわ。多分、私がいないときに凉の家でお泊りでもしてるわね? しかも一緒のベッドで寝てると。
見た目はだいぶ微笑ましそうだし、実際今見てる限りもそうだし。
それにしても、ここって最近にしては珍しく寝転がっていいのね。ちょっとびっくりだわ。
「というか、なんでアイツらは寝たままその会話してるわけ?」
「まさに、ピロ――」
「花奈ちゃん?」
「んん! あ、怒られましたわね」
ぶっこもうとした花奈さんを彩音さんが刺す。なるほど、こういう力関係なのね……多分、暴走しがちな2人を彩音さんが振り回されつつも締める。そういう感じね。
視線の先では、流石にやりすぎだったのか、店員に注意されている2人の姿が。そりゃそうよね……って、時間がそろそろマズいわ。一緒に行くとバレかねないし。
「そろそろ離れないとマズいわね。ちょっと遠回りしてレストラン街に行きましょ」
「はーい」
「ふふっ、初めてでしたが、こういったことも楽しかったですわ」
にこにこと楽し気な2人と一緒に尾行を切り上げる。思ったような絵面は見れなかったけど、それはそれでいいわ。収穫がなかったわけじゃないしね。
「もう行ったー?」
「うん。私が《魔力探知》を常時してるって2人とも知ってるはずなんだけどなぁ……そもそも、近くて普通に見えてるし」
「ふひひ、まーいいんじゃない? 後で請求しよ?」
「そうだね。…………あのさ、言おうか迷ってたんだけどさ」
「うんー?」
「凉、耳真っ赤だよ」
「……誰のせいだと思ってるのかなー?」
「美弥子」
「お前じゃー!!」
「むももももも」
リクエストもらった内容も少しずつ書き始めているので、もう少しお待ちください。