【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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前話が好評そうでよかったです。これからもよろしくお願いします。


配信に興味のない私とお知らせ配信

 

 あの後、解散して自宅に帰ってきた私は、自室でカメラを机の上に置いて、配信の準備をしていた。

 

「えっと、一回配信しないといけないんだよね」

 

 やるべきことはさっさとやってしまおうの精神で、凉に言われた通り、配信をしばらくしない旨の連絡を配信で行うことにしたのだ。心配させるのも嫌だしね。

 したのだが……いや、どこでやろうか? ダンジョンに行ったら本末転倒だし、そもそも今装備品預けちゃって丸腰だし。丸腰でも上層くらいなら余裕ではあるんだけど、流石に自重するべきだろう。ダンジョン入ったら、冒険したくなっちゃうし。

 となると……自宅でやるのが一番いいか。という結論を出したので、自宅でやることにした。もしかしたら、『魔女の大鍋(コルドロン)』の方がいいかもなって思ったんだけど、途中で何が映りこむか分かったものじゃないしね……そういった安全性も含めての自宅での配信である。

 とはいえ、カメラに何か映るのは嫌なので、カメラのレンズを塞いでっと。よし、これでいいだろう。

 時間がいつもと違って夜だが、あの人たちのことだ。すぐに集まってくるだろう。早速、配信ボタンをぽちっとな。

 ……あれ? 映像が映らないな……?

 

「…………あ、そうだ。映像はないんだった。音声よし」

 

 自分でレンズを塞いだにも関わらず、画面が真っ暗なことに首をかしげてしまった。いつもと違うことをすると、すぐこうだよ。

 音声は問題なく入っているので、確認はよし。スマホの配信画面を確認すると、本当にいつもの人たちが集まってきていた。本当に君たちはどういう生活をしているの……?

 

 "こんー”

 "あれ? 映像無し?”

 "音声のみ?”

 "昨日大丈夫だった?”

 "大分珍しい時間だけどどうした?”

 

「こんばんは。今日は、お知らせがあるからこの時間にしたよ」

 

 コメントが流れていくのを眺めながら、この時間に配信している理由を簡潔に告げると、コメント欄がざわつき始めた。何故だ。

 

 "お知らせ…だと…!?”

 "お知らせ…”

 "ユキちゃん、嘘だよな!?”

 "おまえら、おち、おちちちち”

 

「リスナーさんたちどうしたの……?」

 

 尋常ではない様子に首をかしげてしまう。またネット特有の文化か何かだろうか?

 

 "だってお知らせとか言うから…”

 "お知らせ怖い…”

 "と、トラウマが、ががが”

 

「なんでお知らせにそんな恐怖心を抱いてるの……?」

 

 理解ができないよ……お知らせってそんなに怖いものじゃなくない?

 

 "配信界隈だと、お知らせ=配信やめます宣言の可能性がですね…”

 "重大なお知らせ! につられて見に行ったら、引退します配信で心が死ぬとかよくあるんで…”

 "ぶっちゃけ、マイナスイメージが酷いのだ…”

 "過剰反応なのは認める”

 

「えぇ……」

 

 リスナーさんたちのコメントで理解はした。けど、納得はしてない。うーん、お知らせって本当にお知らせの時に使うものじゃ……? あと、引退宣言もそれはそれでお知らせだと思うよ。

 愛依や凉のアカウントから流れてくるお知らせだと、大体イベントの企画もしくは参加の告知、あとは商品宣伝なんかが主だから、そんなイメージないんだよね。普通はこうだと思うんだけども。

 でも、悲しいお知らせばっかりで、嫌になっちゃうのはよくわかるので、今後は気を付けようかな。覚えてたら、ね。

 さ、気を取り直して本来のお知らせに戻らせていただこう。

 

「えっと、それでお知らせなんだけど……昨日の件で、カナさんとアヤネさんが声をかけられたりして、私の特定までしようとしている人たちがいるみたいなんだよ」

 

 "マジ???”

 "うっそだろと思って掲示板見てきたら、マジで特定板立っててアカン奴やこれ”

 "え、マジか”

 "想像以上に大事になってんだよなぁ…”

 "ネットの治安の悪さよ”

 

 リスナーさんたちも把握してなかったみたいだけど、本当にそういうことしている人たちがいるらしい。怖いよ本当に。何が彼らをそこまで駆り立てるのか……

 

「それでね。顔はモザイクかかってるけど、2人の装備品とかから特定されるかもって話になったので、ほとぼりが冷めるまで配信しません」

 

 "りょ!”

 "そうしてくれー!”

 "装備は流石に変装とかできんもんなぁ…”

 "『ダンらぼ』さんからめっちゃお怒りのメッセ出てる…”

 "関係者3人からも怒りのメッセが出てる”

 "『魔女の大鍋(コルドロン)』公式からガチギレメッセージ出てて草”

 "関係者全員キレてて草。骨も残らんやろ”

 

「え!?」

 

 リスナーさんたちのコメントで初めて知ったけど、そんなことになってたの?

 綾人さんたち3人に、所属している『ダンらぼ』さんまでそんな風に言ってくれているとは知らなかった。ありがたいことだよ本当に。

 そして、『魔女の大鍋(コルドロン)』は何をしているの? というか、あなたたちの公式アカウントなんてあったんだ……縁遠いと思ってたのに。

 

 "要約。クランに所属している冒険者に対して、ネット上でふざけた行動してる連中がいるから法的措置するね”

 "『魔女の大鍋(コルドロン)』相手にしたいやつとかいんの…?”

 "お前ら絶対に許さんからな宣言で草”

 "数々の特許や技術について争い続けてきた連中だ。面構えが違う”

 "判断が早い”

 

「おぉ……本当に大事に……」

 

 ま、まさかの法的措置……え、そこまですることなのか……いや、することか。個人情報の問題だもんね。

 いや、してくれるのはありがたいんだけど、速度がおかしいでしょ。報告したの今日だよ? たとえ昨日の段階で把握していたとしても、そんな即行動できるものなの?

 

「ま、まあ、そういうことなので……」

 

 なんだか、思っていたよりもはるかに大事になっていそうな様子にびっくりしながらも、配信を切り上げようとしたところ、リスナーさんたちが遠慮がちに要望をコメントし始めた。

 

 "も、もうちょいお話せんか?”

 "ざ、雑談しませんか?”

 "よ、よかったらでいいんで…”

 "挙動不審すぎだろお前らwww”

 

「……確かにこの後暇だし、少しくらいならいいかな」

 

 いや、本当に暇なんだよね。普段よりも2時間くらい前に帰ってきてるし、いつもやってる料理後の掃除とかもない。装備の手入れもする必要がないし……最近は凉から漫画もゲームも借りてないから、本当にやることがないんだよね……

 私ってこんなにダンジョンに依存した生活してたのか……って、今ちょっと愕然と……はしてない。いや、そりゃそうだよ。ここ数年で睡眠時間を除けば、地上よりもダンジョンで過ごした時間の方が多分長いんだぞ私は。冒険中心の生活になってなきゃおかしいに決まっている。

 あと、本当に挙動不審だよそれ。

 

 "やったー!!”

 "うれしいうれしい……”

 "雑談するのも貴重だしなぁ…”

 "1年2ヶ月やってて、会話し始めたのが2か月前の配信者だからねw”

 

 そ、そんなに喜んでもらえるんだこれ……真っ暗画面でちょっと雑談するだけだというのに。

 あと、私は配信者だとは思ってないよ。配信してるだけの一般人です。なんていうか、配信者っていうと、登録者数を増やすために頑張ってます! みたいな人たちのことだと思うから、私みたいなのが名乗ったら真面目にやってる人たちに失礼だと思う。

 

「まあ、自分のこと配信者だと思ってないしね。今回のこれも、心配させちゃうの悪いなぁってだけだし」

 

 "そうだとは思ってた”

 "ぶっちゃけ、一般的な配信者として活動しないでほしさある…”

 "この空気が居心地ええんや…”

 "人数が少ない配信でしか取れない栄養がある”

 

「そういうものなの? 人数多い方が楽しそうなイメージあるけど」

 

 少人数の方がいいとは一体どういうことなんだろう。いわゆる配信って、大勢でわいわい騒ぎながら見るのが醍醐味とかではないの? それこそ、アイドルのライブみたいなさ。ファンで一体感を味わうイベントというか。

 

 "ワイワイしてるのはそうだが、玉石混交になる感じ”

 "切り抜きから来ただけで、そのネタしか話さんやつとか湧き始める”

 "空気読めない人はめっちゃ増える”

 "そのネタしか知らんから、そのネタ以外の話になるとつまらんとか言い出す奴とかな”

 

「お、おぉう……やっぱり、人が増えるって良いことじゃないね……」

 

 なんだその怖い人たち……会話が成立してないじゃん。

 思わぬところでインターネットの闇を感じてしまった。最近、インターネットの良くないところにたくさん触れてしまっている気がするよ。最近というか、この2日間だけどさ。

 

 "ユキちゃんは休みの間なにすんの?”

 "確かに? 冒険以外してるの想像つかねぇのだよなぁ”

 "この機会に友達といっぱい遊ぶんやで”

 "お前はユキちゃんのなんなんだよ”

 "それが一番健全ではあるか”

 

「友人たちと遊ぶ時間と、クランの仕事の時間になりそうだね。今日は着せ替え人形にされてきたよ……疲れた……」

 

 今日は本当に疲れた。楽しくなかったわけではないけどね。もうちょっと加減してほしかったな……

 とはいえ、本当に時間が空いているのは事実。愛依や凉と一緒にどこかに出かけるのもいいかもしれない。2人の予定が合えばだけどね。クランの仕事もだけど、今はまだ学生身分なので遊ばせていただきます。全部遊ぶわけじゃないけども。仕事もしますとも。

 そういえばこういうのって、休みはこの日でー……みたいなのありそうなんだけど、特に何も言われてないんだよね。いいんだろうかそれで。

 

 "めっちゃ楽しそう!”

 "ユキちゃん美人らしいし、楽しそうだな”

 "は? 呼べよ”

 "ホオズキちゃんwww”

 "呼ばれてないのかw”

 

 コメント欄に鬼灯が現れた。君は金策で忙しいんじゃなかったのか?

 確かに、今日鬼灯は呼んでいない。理由としては、そもそもいつ休みとか知らないから、連絡入れたらダンジョンの中っていう可能性がありそうだから。ぶっちゃけ取れないし気は散るしで最悪な上、後で確認して誘われてたんかい! ってなるの嫌じゃない? という感じ。

 とかではなく。いくつか理由があるが、そのうち一つは。

 

「ホオズキいると、そのあとのご飯の選択肢が減るからなぁ……」

 

 "それは…なんとかしてくれ!”

 "てか、肉嫌いな奴いないだろ!!”

 "それはそうかも”

 "ワイワイ食うなら確かにそうか”

 "でも、野菜ダメなんでしょ? 付け合わせはとか?”

 "付け合わせはユキに食ってもらうから大丈夫”

 "丸投げで草”

 

「野菜好きだから別にいいけどさ。正直な話をするなら、私がいるときにカナさんと会わせたくない」

 

 もうぶっちゃけた話をしてしまうが、これが理由の8割くらいである。この2人を会わせたら絶対ろくでもないことになるじゃないか。酒飲み2人とか悪夢だよ。

 

 "なんでだよ”

 "それはそう”

 "絶対に暴走するゾ”

 "暴走するからやろなぁ…”

 "実食ネキの信頼性の高さよ”

 "酔っ払いが暴走しないわけねぇからな”

 "それボクのせいじゃないじゃん!”

 

 リスナーさんたちからの花奈さんの評価が酷い……ある意味では信頼されているんだろうけどね。ある意味ではね。

 それに、そこまで花奈さん自身はお酒に強いし、スキルもあるから大丈夫だと思うじゃん? でもね、鬼灯がそれでやめてくれるわけないじゃん。愉快犯だよこいつは。今までの付き合いでわかる。

 

「うん、でも君は絶対にグダグダになるまで飲ませるでしょ?」

 

 "? 当たり前だろ?”

 "当たり前www”

 "否定しろやwww”

 "否定しないの草”

 "酒飲みと酒飲みが出会ったら飲むだろ”

 "加減して???”

 "自重しろw”

 

 ほらやっぱり。そのあとの行動まで全部予想がつくよ。今のところその予想の状況になったことはないけど、それでも予想はつく。

 

「そして、アヤネさんにも飲ませるでしょ? それでどれだけその場が混沌としても、ホオズキは煽るだけで何もしないでしょ? 酔っ払いの人たちの被害全部私に来るじゃん」

 

 "おん”

 "お前wwwww”

 "当然だが??? と言わんばかりで草”

 "こいつwww”

 "ホンマ草”

 "こいつはひでぇ”

 

「……というわけだから、会わせたくない」

 

 こいつ本当にさぁ……! 絶対に会わせたりしない。しないからな……! 少なくとも、私のいるところでは絶対に。被害が全部こっちに来るのは勘弁してほしいよまったく。

 この後、30分くらい話して、全部合わせて1時間ほどで配信を切り上げた。鬼灯も最後までコメントしていて、中々面白かったね。途中で電話すればいいんじゃないか? って思ったんだけど、それはそれで大変そうというか、切り上げ時が分からなくなりそうだったのでやめた。

 それにしても、意外と話せるものだね。ダンジョンの中とか彩音さんたちがいなくても会話できるようになってるとは思わなかったなぁ……鬼灯はノーカンで。あいつは欲望を話し続けてただけだから。

 

 




後で会わせます。酒も飲ませます(無慈悲)
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