【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とユニーク装備

 

 日曜日の朝。引っ越し後初めての部屋で目を覚ました私は、ちょっとばかり混乱したものの、身支度を整えて朝ご飯を食べていた。今日はこれから品川ダンジョンに行く。そして、ハイオークを食べるのだ。

 上位種を食べるのは初めての試みなので、美味しいかどうかは分からない。味も上位種になっているなら嬉しい限りだ。そうじゃなくても楽しみであることに変わりはないんだけどね。食べ方も色々考えているし、久しぶりのダンジョンでテンションがちょっとおかしいのは自覚している。

 昨日の夕方に、装備品を取りに行ったのもあるかな。整備されてぴっかぴかになった装備品と、背中に新しく入ったエンブレム。これもテンションの上がる要因になっている。結構カッコいいんだからね。

 うーん、ちょっとばかり暴れたいような、そうじゃないような。深層に行く可能性もあることだし、その時は暴れさせてもらおう。半分、行くこと確定してるに近いけども。そもそも、2人の動きだって悪くないし、大丈夫と思うんだけどなぁ……もちろん、出てくるモンスターとの相性もあるけど、品川ダンジョンだったら問題ない。まあ、そこは2人次第なので、もし嫌がるようだったら、私がさっと行ってオークライダーとオークジェネラルを持って帰って来ようかな。

 それに、彩音さんの言っていた「楽しみ」も気になるしね。なんだろうな……調理器具とか? なんか違う気がするな。

 ま、その辺は合流したときにわかるでしょ。と思考を放り投げる。食事の後片付けをして、一度寝室へ。

 

「行ってきます」

 

 お母さんに挨拶して、私は部屋を後にした。さあ、冒険しよう。

 部屋を出てすぐに彩音さんと花奈さんに合流した私は、彩音さんの言っていた「楽しみ」に本気で驚いたが、とりあえずダンジョンに行こうということになった。

 久々のダンジョンで心が躍る。普段だったら、ちょっと面倒くさいなと思っているダンジョンに入る前の事前の確認とか、そういった事務手続きすら楽しい。私は、本当に冒険者でいることが天職で、ダンジョンが大好きすぎるね。別に悪いことだとは思わないけども。

 そして、いつものようにメインルートから外れた小部屋で配信の準備をする。胸の前でカメラを固定して、スマホの配信サイトのボタンを押す。少しの時間を空けて、画面の中にダンジョンの景色と、2人の姿が映った。

 

「……映像よし。音声よし。おはようございます、ユキです」

「アヤネでーす」

「カナです」

 

 私のいつものようなあいさつの後、2人の挨拶が続く。スマホを覗き込んだら、コメントがものすごい速さで流れっていった。

 

 "お前らを待ってたんだよ!!”

 "キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!”

 "おはよー!”

 "おひさー”

 "うひょー!”

 "よし、助かるぅ!”

 

「すごい反応してる……」

 

 あまりのリスナーさんたちの狂喜乱舞っぷりに若干引いていたら、彩音さんと花奈さんは微笑ましいものを見るような目でこちらを見ていた。

 

「1週間ぶりだもんね」

「ユキさんは愛されておりますわね」

「愛されてるって大げさな……」

 

 "愛してるんだぁ君たちをぉ!”

 "愛してなかったら毎日見てないんだよなぁ!?”

 "いっぱいちゅき”

 "お前らさぁwww 俺もだけど”

 

 リスナーさんたちってよくそんなに恥ずかしいこと言えるね? なんか顔熱くなってきた……そのうち慣れるとは思うけども。

 私が何とも言えない沈黙に入ってしまったら、彩音さんが大きな声を出しながら背負っていた「楽しみ」をカメラの前に出した。

 

「そうだ! じゃん、見て見て!」

 

 "お?”

 "武器変わってる!”

 "まさか、それは…!”

 "まさか、出来たのか…!?”

 

「そう! あのトロルのドロップアイテムで作ったハルバード!!」

 

 彩音さんがカメラの前にだしたのは、青空のような澄んだ青色をしたハルバードである。特に装飾とかがあるわけではないけど、斧の部分に一筋の濃い青のラインが走っている。前まで使っていたものよりも、斧刃部分が広がってより斧として使いやすくなったみたいだ。ハルバードにしたのは、最悪を想定して投げられるようにだそう。ユニーク装備を使い捨てにすることもいとわない辺りが覚悟の証なんだろう。

 そう、これはあのイレギュラーのトロル、そのドロップアイテムの骨を使って作られたユニーク装備なのだ。私はその性能を知らないけど、後で見せてくれるそうなので楽しみにしていようと思う。皮に関してはまだ使い道保留だそうだけど、彩音さんはどうにかして花奈さんの盾の素材にできないかと頭を悩ませていた。

 まあ、普通に考えて一点ものすぎて受け取らないよね。でも、魔力を吸収するなんていうとんでもない効果があるわけだし、実際盾に向いてそうだよね。私もその案には賛成したのだが、結局どう渡そうかと2人で悩んでしまった。というわけで保留なのである。

 彩音さんは一昨日の時点で受け取っており、性能テストもしていたとのこと。これだけテンション高くなって自慢してるくらいなのに、よくもまあ私の前で我慢してたよね……

 

「後で性能は見せてあげるね!」

 

 "めっちゃテンション高くて草”

 "嬉しかったんやろなぁ”

 "頬ずりしてるやんw”

 "ユニーク装備ってことは、なんかあるんよな?”

 "楽しみにしてるで!”

 

 にっこにこの笑顔を見せながらハルバードに頬ずりしている彩音さんを見ていると、素直な気持ちがこぼれてしまった。

 

「……テンション高くない?」

「それだけ良い品ですものアレは」

「そんなに?」

「ええ」

 

 花奈さんに拾われたその呟きは、彩音さんに対するフォローで打ち返された。というか、その口ぶりだと花奈さんは性能を知ってるんだね? 知らないのは私だけと……楽しみではあるけどもやっとした。教えてくれてもいいじゃん。

 あ、それはともかく、何をするのか言ってない。

 

「今日はハイオークを食べるよ。可能ならオークジェネラルとオークライダーも」

「豚肉尽くしですわね」

「いっぱい倒しちゃうんだから!」

「余裕がありそうならオークキングも行きたいね」

 

 ハイオークとその他二体が順調に美味しくなるようなことがあれば、間違いなくダンジョンボスにしてオーク系最上位種のオークキングは美味しいだろうからね!

 そう思っての提案だったのだが、2人がぎゅん! って音がしそうなくらいの勢いで振り向いて私のことを信じられない目で見てきた。

 

「流石に深層のボスは無理だよ!」

「わたくしたちではレベルが足りておりませんわ!」

「わ、わかった……」

 

 "流石に厳しいか…”

 "そりゃねぇ”

 "2人ってそんなだっけ?”

 "下層が余裕でも、深層だとキツイってのはよく聞く話”

 "深層からだいぶモンスターが異次元の存在になるからな…”

 

 2人に押し切られた形にはなったけど、まあしょうがない。無理すると死ぬしね。それは避けないといけない。

 ……でもなぁ、美味しかったら食べたいよなぁ……

 と、そんな感じで始まった今回の冒険なのだが、中層で最初に見つけたオーク相手に彩音さんが武器のお披露目をしに行った。

 武器を構えて目の前まで走ると、そのまま頭に向かって武器を振り下ろした。いや、そんな大剣みたいな戦い方して大丈夫なの? なんて思っていたら……

 

「《地砕き》」

 

 "ふぁーwwwww”

 "流石ユニーク装備…”

 "威力やっばwww”

 "そんな漫画みたいに真っ二つになるもの…?”

 

 スパイクから魔力を放出することで加速したハルバードは、当たり前のようにオークを通過した。オークを通過した勢いそのまま地面に当たった瞬間、ハルバードが光ったかと思うと、斧刃から衝撃波のようなものが出て地面がぱっくりと割れた。今のは《魔力放出》に近かったけど、それを刃から出すことで圧縮したものらしい。

 つまり、武器に魔力をため込んで、任意のタイミングで放出することで威力を上げられるってことだよねこれ。めちゃくちゃ便利だ……! ちょっと消耗も早くなっただろうけど、見てる感じそんなにロスがあるわけでもなさそうだ。

 彩音さんが武器を持ち直してこっちにピースしてくる後ろで、オークの体がゆっくりと左右に割れて倒れていく。

 ……多分、ミノタウロス辺りでも一撃なんじゃないかなこれなら。ユニーク装備恐るべし……

 

「すごいでしょ!?」

「うん、凄い……!」

「真っ二つですものね……」

 

 ご満悦っていうのはこういう感じのこというのかな? っていうくらい嬉しそうにしている彩音さんを見ていると、なんだか微笑ましくなってくる。

 真面目に考えると、今までと違って魔力を消費することが増えたかわりに火力が上がった。というふうに考えた方がよさそうだねこれは。となると、彩音さんの魔力量にちょっと気を使った方がいいかもね。多いと言えるわけじゃないから。でも、今までの彩音さんは私の指示でレベリングがてらに暴れるとき以外は魔力を温存して戦っている。最終手段の《乾坤一擲》をいつでも使えるようにするために。だから、その分魔力は余っていると言っていいわけで、この武器はその余っているものを使っている感じだろうし。相性のいい武器でよかったと思う。

 

「魔力の消費ってどれくらい?」

「実はね……」

 

 念のために聞いた私に、もったいぶったように一瞬だけ焦らした彩音さんから、衝撃の発言が飛び出した。

 

「ほぼゼロなの。周りから魔素(マナ)を吸収する機能もついてるから。魔素(マナ)の濃いダンジョンの中だと、連続で使用し続けない限りは勝手に使える魔力が補充されるんだ」

「え」

 

 "強すぎて草”

 "化け物性能過ぎる…”

 "まさかの自動回復付き!?”

 "確かに魔力吸収してたなぁ、あのトロル…”

 "吸収と放出。言われてみればまんまかぁ…いやでもさぁw”

 "加減しろバカwwwww”

 

 予想の遥か上を性能に固まってしまう。いや、確かにあのトロルにはそういう性質はあったけど、それは皮の方の話じゃないの!? 骨にまであるなんて聞いて……いや、少しだけ皮を混ぜたとかそういう……?

 流石に私に還元とかはされないけどね。なんて言ってるけど、そんなことができるなら私が欲しいよその武器。周囲から魔素(マナ)を吸収して自分に還元するなんて、お母さんじゃあるまいし。

 

「ただあれだね。自分でやっといてアレだけど、これは食べたくないね……」

「断面が地面についてしまいましたものね」

 

 私がユニーク装備の説明に固まっている間に、花奈さんと一緒に今倒したオークについて話してるし。花奈さんは知ってたからか全然気にしてないし。

 私だけが遅れてるみたいじゃないかまったく……!

 その後も、テンションの高い彩音さんはオーク相手に試し切りをし続けていた。何でも振り回す練習しかしていなかったとのことで、モンスター相手に使うのは今日が初めてなんだそうだ。『魔女の大鍋(コルドロン)』には試し切りとかできる訓練場みたいなところはあるから、そこでは使ったことがあるみたいだけどね。

 

「《スマッシュエッジ》! おっとと」

「大丈夫?」

「まだ完璧に使いこなせてないんだよね……たまにこうやって振り回されちゃって。まだまだ練習しないと」

 

 "おお!?”

 "すげぇ加速したもんな”

 "使いこなせたらとんでもないことにならんか?”

 "ユニーク装備は全部とんでもない定期”

 "それな?”

 

 数体のオークを一気に薙ぎ払うために大きく横なぎに振りぬくと同時に武器の加速を使った結果、勢いが付きすぎてふらついた。彩音さんからしても、未だこの装備はじゃじゃ馬みたいだ。私も、《魔力放出》での加速は結構練習した。方向性間違うと、頭から地面にダイブするしね……何度鼻血を出したことか。

 

「とりあえず、オークは確保したから、ハイオークとブレイクレッグキングも確保しちゃおう」

「オッケー!」

「絶好調ですわね……さて、わたくしにもちゃんと獲物をくださいな」

 

 彩音さんの暴れっぷりを後ろで見ていた花奈さんもモンスターたちに襲い掛かり、一気に中層を駆け抜ける。

 今日の本番は下層だからね。試し切りはここまでだ。

 

 




特殊個体の一点ものなのでこの性能ですが、普通のユニーク装備はもうちょっと弱いです。
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