【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

125 / 173
感想、お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます。

大変申し訳ございません。食べるところまで行きませんでした。

○○にも食わせてやりたかったんです…!

30万UA達成しました!ご愛読ありがとうございます!


配信に興味のない私と今日一のファインプレー

 

 品川ダンジョンを今までで最速で駆け抜けて地上に帰ってきた。間違いなく世界記録出してるね。誰もやってないだろうから。

 変なテンションになってるのは認める。

 そのまま、全員無言のまま『魔女の大鍋(コルドロン)』まで走る。流石に地上で全力を出すわけにいかないので、何とも言えないもどかしさがある。でも、これを乗り越えたら、あの美味しいお肉が食べられるんだ……!

 『魔女の大鍋(コルドロン)』の敷地に入ると、入り口に人影が見えた。あれは……陽向?

 

「ちょーと待つっす!」

「待たない」

「え!? ちょ、ホントに待つっす! 待って!!」

 

 両手を広げて邪魔をして来たので無視して通り抜けようとしたら、腕を掴んで必死に止めてきたので、一応止まることにした。なんだというのだろう。

 

「どうしたの?」

「配信見てたんで知ってるんすけど、今からみんなで夢希ちゃんの部屋に行くんすよね?」

「うん」

「鬼灯ちゃんは入れないっすよ」

「はぁ!? 何でだよ!?」

 

 鬼灯は入れないと言う陽向に、鬼灯が目を剝く。

 いや待てなんでそんなことになる? 私の部屋に入れるのに何故私以外の許可が――

 

「そもそも、全寮制なのは機密保持するためっすよ? 部外者が入れるわけないじゃないっすか……」

「あ」

「おん……」

 

 ぐうの音も出ない理屈だった。そりゃそうだよね、機密保持のために全寮制にしてるわけだしね。そもそも、寮までの道で研究機関の横通るしな……え、でもさすがにここでお別れはあまりにも可哀そうだ。

 鬼灯も一瞬でテンションが急降下している。反論のしようがないと理解してしまったからだろう。

 どうしようかと固まっていたら、彩音さんたちが少し前に出た。

 

「ど、どうにか出来ないの、陽向ちゃん」

「そうですわ、流石にこれは……」

 

 陽向に言い募るけど、そもそも陽向は言っちゃ悪いが新人の部類の平団員である。役職があるわけでもないのだから、職権でどうこうするみたいなこともできないだろうし。うーん、どうしよう。どこかレンタルキッチンでも今から借りるか? 流石に時間が厳しいだろうか。実家にしても、オーブンが小さい上にちょっと古いせいで温度が安定しない。流石に却下だ。

 鬼灯を除いて食べるという選択肢は存在しない。オークキングの討伐は鬼灯なしではできなかった。あそこまで単騎でオークキングの注意をひきつけ、なおかつ完璧な隙まで作ってくれたのだから、その功労への報酬は絶対にこの肉であるべきなのである。

 どうにか鬼灯込みで食べる方法はないかと頭をひねっていたら、陽向が怪しく笑った。

 

「ふっふっふ。実はっすね。申請を出せば裏口から寮にだけは入れるんすよ」

「え、そうなの?」

「……そういえば、そのような説明がありましたわね」

「じゃあ、その申請を出せば……!」

「で、その申請なんすけど、締め切りが16時なんすよ」

 

 陽向の言葉にバッとスマホで時間を確認。現在時刻は――16時17分。終わった……

 膝から崩れ落ちる鬼灯と私。くっそ、どうにもならないじゃないか……! い、いや待て。鬼灯は下手な団員よりも『魔女の大鍋(コルドロン)』に入り浸っていた。私と同じかそれ以上にここにいたんだ、白石さん辺りに話せばなんとかなるかもしれない。

 どんなに最悪の状況でも思考をやめてはいけない。それが悪あがきでしかないとしても、それをやめたら私は冒険者ではなくなってしまう。何か、何かあるはずだ……! 

 思考を巡らす中、陽向が懐に手を入れ、何かを取り出した。

 

「そして、ここに、その申請書があるっす」

「え、でもそれ意味ないんじゃ……」

 

 陽向が懐から出した一枚の紙。その寮に入るための申請書らしいけど、申請期限終わってるんだから意味ないだろ……! 煽りか? 流石に怒るよ?

 心のうちに怒りをため込み始めた時、その紙を花奈さんが受け取り、内容を読み上げた。

 

「…………申請者、犬束陽向。訪問者、童部鬼灯。上記の者の訪問を許可する。なるほど。押印も済んでおりますし、正式に受理されたものですわね」

「……おん?」

「え」

 

 え、それはまさか……鬼灯と2人で、地面から顔を上げ、陽向を見上げる。

 私たち二人の視線を受けて、陽向がいい笑顔でビッと親指を突き立てた。

 

「申請、出しておいたっす!!」

「じゃあ……!」

「よくやったぞ! 存分に褒めてやろう!!」

「うわぁ、突然のタックル!?」

 

 テンションの上がり切った鬼灯が陽向に飛びついて頭をわしゃわしゃと撫でまわす。それ褒めてるの……?

 なにはともあれ、これで鬼灯も食べられる。陽向は本当にファインプレーだよ。

 

「とりあえず、裏口から入ればいいんだな?」

「そうっす。でー、その……っすね……」

 

 陽向がちらちらとこちらを見ながら、なんだか言いにくそうにしている。鬼灯に撫でまわされてぼっさぼさになった髪すら気にせずに。

 ……ああ、なるほど、そういう……

 

「鬼灯?」

「ボクは構わんよ。作るの夢希だしな。そっちの問題じゃね?」

 

 鬼灯の許可は出た。ならば文句はない。私としても、どうせ作るなら4人も5人も大差はない。途中から増えるならともかく、最初からなら。

 というわけで、このファインプレーの報酬に、要望を叶えてあげようじゃないか。

 

「よし、陽向も一緒に食べようか」

「ぃやったっすー!! ふぅー!」

「いぇーい!」

「いぇーい!」

 

 あっという間に仲良くなった鬼灯と陽向がハイタッチを交わしているのを、彩音さんと花奈さんが微笑ましそうに眺めていた。

 さ、家っていうか部屋に帰ろう。

 ………………そういえば、裏口ってどこだ……?

 

 

 私の部屋に戻ってきた。のだが……流石に私の部屋にある家具だけでは5人分の諸々は乗らないということが分かっていたので、ダンジョン内で使っているテーブル類を取り出す。椅子は……床でいいだろう。薄いカーペットしかなくて申し訳ないけども。

 私のリビングには、本当に何もない。どのレベルで何もないかというと、テーブルとソファ以外の物が存在しないレベルで。である。テレビも普段朝ごはん食べるついでにニュースみてたくらいだし、別に全部スマホでいいかなって。

 ただ、テレビがないと凉からゲームを借りた時に何もできないということに気が付いたので、何か買う予定であるが今はまだない。つまり、みんなしてやることが話くらいしかないんだよね。本当にさ。集まるにはちょうどいいんだろうけども。5人入っても余裕だし。

 キャンプ用品を出すだけ出したところ、陽向がセッティングはしておくっす! とのことだったので、その間に私たちは着替えさせてもらうことにした。ささっと汗だけ流して身軽な服に着替えてキッチンへ。

 彩音さんはともかく、鬼灯と花奈さんは時間がかかるだろうし。花奈さんのお酒コレクションから今日のご飯に合うお酒を選んでくるんだってさ。何本持ってくるのかな……

 鬼灯の着替えは私の高校のジャージである。体のサイズほとんど変わらないからね。

 ま、その辺の人たちは置いておいて。私は料理を始めよう。時間かかるやつばっかり作る予定だしね。

 

「よし、じゃあまず……さっさとローストの下ごしらえをしちゃおうかな。時間かかるし」

「手伝うっすよ。あ、味見が必要な工程は無理っすけど……」

 

 セッティングが終わった陽向が手伝ってくれるということなので、手伝ってもらおうかな。本人が言う通り味見するものは多分無理だろうけど、ローストに関しては関係がないからね。肉に対して行うアレコレはやってもらおうかな。その間に私は付け合わせを用意しないと。

 

「さ、下ごしらえしようか。陽向、これこのボウルに削りまくって」

「岩塩と胡椒っすか。よーし、ゴリゴリやるっすよー!」

 

 とりあえず、岩塩と胡椒のミルを渡す。削るだけだけど、結構な塊肉なので、結構な量になると思うので、肉に直接ゴリゴリするんじゃなくて、一旦ボウルにためてもらう方式にすることに。

 さて、肉を取り出して……何度見ても美味しそうなお肉だなこれ。

 脂身の部分にちょっとだけ切れ込みを入れておく。これをやらないと、脂がなくならないらしいからね。

 切れ込みを入れ終わったくらいで、陽向が塩コショウを用意し終わったようだ。

 

「で、それを肉に丁寧に擦り込んで」

「おお、頑張るっすよ。えっと、こんな感じに……」

「適当にやると美味しくなくなるから気を付けてね」

「急に脅さないでほしいっす!」

 

 脅してるつもりはないけど、本当に美味しいんだから気を付けてほしい。下味をつけるのって大事なんだからね。料理は、時間をかければ美味しくなるわけじゃないけど、手間はかければかけるだけ美味しくなるんだから。

 丁寧に丁寧に擦り込んでいる横で、私は野菜を切る。ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリーあたりでいいだろう。これは肉の付け合わせだ。鬼灯は食べれないけど、そこはしょうがない。

 

「で、これを熱したフライパンで焼き目をつける」

「……もう、いい匂いするっす……」

「モンスターの肉だと、陽向も匂いわかるもんね」

 

 陽向が横でだらしない笑顔を浮かべる中、くるくるとひっくり返して全体に焼き目をつけていく。ここは表面だけをしっかり焼いて、肉汁を閉じ込めていく。

 

「全体に焼き目がついたら、クッキングシート引いた鉄板の上に置いて、その周りに野菜を配置。オリーブオイルをかけて、ハーブソルトをぱらぱらと」

「ジャガイモとかマジで美味そうっすねこれ……」

「で、これを100度に温めて置いたオーブンに入れて1時間くらい焼く」

「おお……!」

「まあ、出した後に休ませたりするから、食べられるのは1時間半くらい後だと思っていいよ」

「いやあ、楽しみっすねぇ……」

 

 とりあえず、これでオークキングのローストは出来たも同然。さて、フライパンに残っている油でソースを作るぞ。

 バターを一欠と小麦粉少々、水で少し薄めて、コンソメを投入。最後に塩コショウで味整えてっと。隠し味で色々入れてもいいだけど、今回はシンプルに食べたいのでなし。

 その様子を陽向はほへー……なんて感心しながら見ていた。

 

「迷いなさすぎじゃないっすか……?」

「まあ慣れてるし。肉汁あったら作れるからさ」

「マジっすか……今度、料理教えてもらっていいすか?」

「うんもちろん」

 

 ソースも完成したから、一回フライパンとか洗ってっと。

 さて、メインができるのが一時間後。チャーシューにしたってそれくらいかかるから、それまで何もないから、何かしら前菜作っておきたいな……

 オークジェネラルの肉を取り出して、タコ糸で縛らないといけないので、そこは陽向にお任せする。私も一回しかやったことないし、これからも色々やるからね。

 陽向も流石にこれをやらされると思ってなかったみたいでちょっと驚いていたけど、もともと器用なのか、結構な速度で肉を縛っていく。

 とりあえず、冷蔵庫から常備している漬物類を取り出しておく。まあちょっとだけだし、他にも何か用意しておきたいね。とはいえどうしたもんかな。

 

「前菜どうしようかな……」

「焼き鳥とかじゃダメなんすか?」

「何度もやってると芸がないし……」

「こだわるっすね……あ、照り焼きとかどうっすか?」

「なるほど……いいね。そうしよう」

 

 陽向の意見で照り焼きを採用。付け合わせはレタスかな。個人的に、照り焼きとはレタスが合う。キャベツも美味しいけどね。

 これだけだとちょっと少ないから……あ、そうだオークライダーの肉をサイコロステーキにしてしまおう。下にもやしとキャベツを引いて、味付けは塩コショウと醤油をちょろっと。こういう時にスキレットあるといいよね。便利だし。

 

「……よくそんな何品もポンポン作れるっすね」

「それこそ慣れだよ。それに、モンスター食べるために練習してたら、料理するのが楽しくなってきちゃって」

「あー、なるほどっす。今度、何か作ったら持ってくるっすよ。お返しのおすそわけっす」

「本当? じゃあ私も何かおすそわけしなきゃ」

 

 それじゃお返しにならないじゃないっすかー。なんて陽向と笑いあった。

 




次回こそ、食べると思います。多分。きっと。めいびー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。