【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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なんかあんまりお口悪くならんかった。


配信に興味のない私と酒飲みたち

 

 テーブルの上の食材が、オークキングのロースト以外ちょこちょこと残っているくらいになった頃、いい気になって飲み続けていた大人2人が完全に酔っぱらってしまった。

 彩音さんに抱き着かれ、髪をわしゃわしゃと撫でまわされ、頬をすりすりとされている。

 シャワーを浴びた後だからか、シャンプーのいい匂いがする。あと、べったり密着されているせいで、色々と柔らかいところが当たってるんだけど……

 

「鬼灯、なんとかして」

「嫌に決まってんだろ」

「ゆきちゃぁん……」

「はいはい、お水飲もうね彩音さん」

「や」

「えぇ……」

 

 鬼灯に助けを求めてみたけど、ニヤニヤしながら断られる。まあ想定内。

 でも、まさか彩音さんが子供みたいに顔をプイってしながら水を飲むのを拒否するとは思わなかった。彩音さんって酔うと子供っぽくなるよね。

 

「ふっ、くくっ……ほい、お酒」

「えへへー」

 

 鬼灯が収納魔法からボトルを取り出し、グラスに注いで彩音さんに渡す。彩音さんはにこにこしながらそれをくぴくぴ飲み始めた。

 流石に、この状態の人にお酒を渡すんじゃないと鬼灯をにらむ。

 するとボトルのラベルを見せながらウィンクされた。ぶどうジュース。なるほどね。

 いや、というか、ワインとぶどうジュースの違いが判らないほど酔ってるのか彩音さん……流石に酔いすぎでしょ。明日大丈夫なのかな……

 

「んー、おいしぃ」

「それはよかった」

 

 けけけと笑いながら自分のグラスに、段ボールから取り出したワインを注いでいく鬼灯。いやそれ花奈さんのやつじゃないの?

 

「それ、もらっちゃっていいの?」

「事前にいいとは言われた。ちなみにこれが言ってた一万のやつ」

「遠慮しなよ……」

「嫌だね。許可出した方が悪い」

 

 あーうめー。なんて言いながら、その一万円のワインをぐびぐび飲んでいる。いいのかそれで。事前に許可出した方が悪いと言えばそうなのかもしれないけども。

 なお、そのワインはイタリアワインの女王なんて言われているらしい。さっきの女王に比べてずいぶん安いななんてちょっとズレた感想を抱いてしまった。

 

「あら、こちらのお肉は不思議なお味がいたしまわすね」

「それ肉じゃなくてジャガイモっすよ」

「そんなわけはございませんわよ鬼灯さん」

「私は陽向っす」

 

 反対側を見てみれば、陽向が面倒な酔い方をした花奈さんに絡まれていた。

 花奈さんはオークキングのローストの付け合わせのジャガイモを食べながら、それが肉だと誤認した挙句、陽向のことを鬼灯だと思っているらしい。

 陽向は呆れつつもなんだかんだ適当に対応しつつ、マイペースにご飯を食べている。チャーシュー丼を気に入ったのか、今のところ三杯目である。よく食べるね……

 

「陽向は無事?」

「無事っす。めちゃくちゃなこと言いながら話しかけてくるだけなんで」

「ならよかった」

 

 いや、よくはないんだけども。とりあえず、花奈さんにも水を渡す。彩音さんと違って普通に受け取って普通に飲んでくれた。

 

「不思議なお酒ですわね……?」

「水っす」

 

 ダメだこりゃ。お酒と誤認して飲んでいるらしい。まあ、それはそれでいいだろう。ちょっとでもいいから酔いを醒ましてくれ。

 

「んー、ほおずきちゃんー」

「おん、どしたー?」

 

 私から離れてぶどうジュースを飲んでいた彩音さんが、胡坐組んでいた鬼灯の太ももに頭を置いて寝転がる。

 鬼灯は鬼灯で、当たり前のように頭を撫でながら受け入れていた。

 彩音さんはそのまま、頭をぐりぐり、手でなでなでとすると、その感想を話す。

 

「ほおずきちゃんのふともも、もちもちで気持ちいぃ……」

「鬼灯、太った?」

「ぶっ飛ばすぞ」

 

 酔っ払いを作り上げた鬼灯に、仕返しのつもりでジャブを入れたら結構な殺意が返ってきた。そ、そこまで怒らなくてもいいじゃん……

 彩音さんはというと、そんなことも気にせずそのままごろごろとし始めてしまった。このまま寝てしまうんじゃなかろうかこれ。そうなったら、その時はタオルか何かかけて放置でいいかな。それとも、部屋の鍵を勝手に拝借して送り届けるべきだろうか? 隣だしね。そうするか。鬼灯にも手伝わせよう。

 

「夢希さん……あら? 髪を染めたんですの?」

「ボク鬼灯だぞー?」

「いえ、このサイズ感は間違いなく夢希さんですわ」

「おん、サイズ感はほぼ一緒だけども」

 

 花奈さんが鬼灯にまで絡みに行った。あの人はもう駄目だ。酔いすぎている。

 鬼灯は鬼灯で対応に慣れすぎているのか、もはや平常だ。彩音さんの頭を撫でながら、ワインを飲みながらの対応である。慣れすぎでしょ……

 

「あら、どうなされましたの? こんなたんこぶが……」

「それ角な? 角」

「ふっく……」

「んふふ……」

 

 花奈さんが心配そうな顔をして、鬼灯の額に生えた角を撫でながらたんこぶだとか言い出すので、陽向と2人で笑ってしまう。いや、それは無理あるでしょ。どういうミスなの?

 しばらく角を撫でていた花奈さんだけど、そのうち鬼灯の前にあったワインボトルを自分の席にもっていってワインを飲み始めた。自由すぎるな花奈さんは。

 花奈さんにワインを持ってかれた鬼灯は、しばらく固まっていたけど、後ろの段ボールからまた新しいワインを取り出して飲み始めた。本当に遠慮ってものをしないね……

 

「そういやさ、彩音さんは夢希に言いたいこととかないの?」

「えー、ゆきちゃんに?」

「おん。不満とか」

「んー……」

 

 突然何聞いてるの鬼灯は。ちょっと気になるけど、何言われるのか怖いなぁ……でも、正直、ちょっと気になりはする。だって、彩音さんは本当にたまたまあの日に出会ったから始まった仲だから、何とも言えないし。どうなんだろうか? 出会ってから日も浅いし。

 さて、どうなるかと思っていたんだけど……

 

「顔が素でアレなのがゆるせない」

「ぶほっ……」

「えぇ……」

 

 彩音さんの発言に鬼灯が噴き出した。私はちょっと引いた。真っ先に出てくるのそれなの……? どれだけその部分が許せなかったのか。いや、なんか周りから言われてそうなのかもしれないと思いはじめこそしたんだけど、そうなるとお母さんも美人になるんだけど、お母さんに美人のイメージないんだよな……

 私の顔はお母さんからの遺伝なので、お母さんも美人だったはず……なんだけどどうにも美人のイメージがない。豪快、破天荒。そういう言葉が似合う人だったからね。なんていうか、漫画とかだと、主人公のピンチに笑って駆けつけて、最後まで笑って勝つような、そういうかっこいいって言われる姉御肌な感じの人。綺麗とか美しいじゃなく、かっこいいのイメージなんだよね。

 そして、この会話を聞いていたもう一人の酔っ払いが来た。

 

「わたくしも許せませんわ!!」

「うわっ」

 

 花奈さんが陽向を乗り越えて私の横にきた。そして、そのまま私の顔を触り始める。

 

「この肌のハリツヤ、バランスのいいお顔!! 許せませんわ……!」

「もごごご……」

 

 いろんな触り方をされるせいで変な声が出るけど、もうどうにもならない。というか、花奈さん結構手がごつごつしてるな。マメが潰れた人特有の感じだ。

 しばらくそうやって私の顔をぐにぐにと触り続けていた花奈さんだけど、お酒が飲みたくなったのか、自分の席に戻ってグラスにワインを注いで飲み始めた。この酔っ払いはさぁ……

 

「言動がめっちゃくちゃっすね……」

「本当だよ……」

 

 そして、その一杯を飲み干すと、机に突っ伏して寝始めた。酔っぱらいすぎる……どうすんのさこの後……

 あまりの自由さに陽向と2人で引いていると、鬼灯が笑いながら彩音さんと会話を続ける。

 

「くくくっ……他にはねーの?」

「ほかぁ……? ちっちゃくて可愛いのが羨ましい」

「あぁん?」

 

 んなぁんだとこのスタイル抜群な人はさぁ……!! わ、私がどれだけ身長が欲しいと思ってるんだ。それこそ、彩音さんから身長を奪い取る装置を『魔女の大鍋(コルドロン)』に依頼出してやってもいいんだぞ……!?

 とはいえだ。にらんだところで相手はぽやぽやの酔っ払い。効くわけもない。

 

「どうして羨ましいんすか?」

「だって、可愛いもん……」

「彩音さんは可愛いのがいいの?」

「……可愛い服着て可愛いっていわれたいもん……」

 

 陽向と鬼灯の深堀りに、可愛いのがいいのだと言い募る彩音さん。言われてみれば、彩音さんが可愛いと言えるような服を着ているのを見たことがないかもしれない。普段からカッコいいって感じだ。

 なんていうか、スタイルに合わせたカッコいい系の服か、シンプルな感じの服だ。それでしっかりとオシャレに見えるんだから、そのスタイルが羨ましくてしょうがないんだけども。

 

「……そういえば、この前の時も可愛いって言われてすごい嬉しそうだったすね」

「おーん……ああ、うちにもいるわ。可愛いって言われたいって愚痴ってるの」

 

 陽向の言う通り、確かにこの前の時に嬉しそうにしてたような……? もう疲れていたからあいまいだけど、そうだった気がする。

 でも、なんというか彩音さんは可愛いと思うんだけどなぁ……本人の中では、何かあるのだろうか?

 

「私には似合わないもん……」

 

 彩音さんは不貞腐れたようにそう言って、鬼灯の太ももに顔を埋めて寝てしまった。

 ちょっとしんみりとした雰囲気になった中、鬼灯がいつもの調子でつぶやく。

 

「そんなん、着たければ着りゃいいのになー」

「……それはどうなんすかね?」

「だってよー、オシャレって自分のためにするもんなんだろ? 別に誰に何言われてもよくねーか?」

 

 まあ、確かに鬼灯の言う通りではあると思う。他人の迷惑にならなければ、別に何しててもいいんじゃなかろうか?

 

「それは暴論じゃないっすか? 似合ってないって言われるの結構傷つくっすよ?」

「おん、だろうな。で?」

「で? ってなんすか、でって」

「それ以外いうことねーだろ」

「そこまで。それ以上は喧嘩になる」

 

 喧嘩になる前に止める。鬼灯は本当に、ズバズバ言い過ぎというか、なんというか。

 一応、2人とも止まってくれたので一安心。でも、陽向は納得できなかったのか、私に改めて話を振った。

 

「……夢希ちゃん的にはどう思うっすか?」

「どっちも正しい。その上で、自分でどっちを選んだかの話だと思う」

 

 鬼灯の言うように、自分のための物なんだから、誰が何と言おうが好きにすればいいっていうのも正しいし、陽向の言うように、その結果として傷つくのも正しい。

 でも、結局のところ、どっちを選んだかの話でしかない。傷つくのを承知で好きにするか、傷つくのを恐れて好きを諦めるか。それだけだ。

 

「わかりやすく言うなら、私は何を言われてもモンスターを食べるのをやめない。そう自分で選んだから。そういうことだよ」

「……なるほど、そういうことっすか……」

 

 陽向も一応納得してはくれたらしい。ちょっとだけ残っていた照り焼きを食べ始めた。

 

「鬼灯はもうちょっと言い方考えて」

「……おん」

 

 ばつが悪そうに目をそらして返事はしたので、一応悪かったとは思っているようだ。

 

「もうちょっと残ってるけど、食べられそう?」

「んー……多分いけるっす」

「ボクももうちょい食えるから、ここにあるもんはどうにか出来ると思う」

「じゃあ、まずは2人を部屋に運ぼう」

「おん」

「そうっすね」

 

 寝てしまった大人2人を部屋に運んでベッドに寝かしつけ、私の部屋で再びしゃべりながら残りのご飯を食べた。結局、日付が変わるくらいまで三人で雑談をしていた。

 その後は、鬼灯も言い方を考えていたし、陽向は陽向で考え方が違うのが分かったからか、引っかかってもそういうものだと思うことにしたみたいだ。

 

 

 翌日、大人2人は二日酔いで苦しんでいたし、鬼灯は外泊届を出していなかったとかで怒られていた。

 お酒は飲んでも飲まれるなってね。

 

 




産まれた時から冒険者な2人と、一般家庭育ちの違いというか。

夢? 掴めば? くらいの温度感なのが冒険者だよなって思っているので。
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