【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とパーティ結成

 

 砂ウツボ丼を食べてから大体1週間後。ついに、連絡が来た。そう、美空彩音(みそらあやね)さんからである。丁寧な文面で、お詫びの件について相談があるので、ここに来てほしい。ダンジョンに行く準備はしなくていいからと、渋谷にあるカフェのURLが貼ってあった。なので約束の日時に、お詫びする側だし、ちょっと早めに着いておくかー、とお父さんが用意してくれた菓子折り片手にカフェに行くと、彼女が先に待っていた。思わず時間を間違えたかと、スマホを見ると、まだ15分前……早くない!?

 

「すみません、遅れてしまって!」

「大丈夫。予定が空いたから、先に来てただけだよ」

 

 ……?なんだか前よりも元気がないような…?笑顔に疲労が隠せていない。前の時のようなにっこり眩しい笑顔にはほど遠かった。相談があるって言ってたし、まずは話を聞こう。その前に

 

「あの、こちらつまらないものですがお詫びに……」

「え、わざわざいいのに!……ありがとうね」

 

 菓子折りは受け取ってもらえたので、とりあえずここはクリア。受け取ってもらえずに帰ったら、アイアンクローが待っているところだった。土下座してでも受け取ってもらうつもりだったけど。

 とりあえず席について、コーヒーを注文。しばらくしてコーヒーが届いたのだが……お、重い。なんか空気が重い…!彩音さんが一言も話さないのもあって大分辛い。私、会話得意じゃないし、どう切り出せばいいのかわかんないよ!?若干パニックになっていたら、助け舟が来た。

 

「あの、ごめんね、突然呼び出すみたいになって」

「い、いえいえ、基本的に予定ないので……」

「そっか……ありがとう」

「あの、相談があるって言ってましたけど、その……大丈夫ですか?大分お疲れのように見えますけど……」

「あー……ごめんね、心配させちゃって。うん。ちょっといろいろあって疲れてて、その件で相談……というか、まずは愚痴を聞いてほしいの」

 

 ほ、本当にどうしたの!?あの時の眩しい笑顔はどこに!?とりあえず、彩音さんの言葉を待つ。私で解決できる悩みであればいいけれど……愚痴を聞くだけなら幾らでも聞くよ。

 

「私は専業で冒険者をやってて、男2人、女3人の5人でパーティを組んで、そのパーティで3年間やってきたの」

 

 冒険者は、大抵3つに分けられる。彼女のような専業の人、兼業の人、そして、私みたいな未成年だ。

 専業っていうのはそのまま、職業冒険者な人たち。稼ぎもいいけど、怪我とかしたら引退がちらつくって感じで、将来設計として見るなら大分アレな感じ。スポーツ選手とかが近いかも。お父さんみたいに現役の時に有名だとその後も仕事があるけど、そうじゃないなら、結構大変みたい。装備品とかでお金使っちゃって貯金なし。なんて珍しくもないみたいだし。

 兼業の人っていうのは、加工スキル持ちの人に多い。例えば町工場で働いてる人が、冒険者の装備も手掛けているみたいな感じだ。スキルを持っていて、冒険者として登録していないとその辺りの仕事を受けることが出来ないので、仕方なく登録しているだけ。みたいな感じなので、彼らはほぼ冒険者じゃないといっていい。あと少数派だけど、休みの週末だけ仲間内で冒険を楽しむために潜る人もいる。

 で、最後に私みたいな未成年。どこかのクランにインターンとかで研修してるか、部活よろしく同年代でパーティを組むのが主流。なんで同年代かというと、成人と未成年のパーティだと、未成年に何かあった時に成人側に責任が来るので、彼らはあんまり組みたがらない。だから、未成年相手に積極的に組みに来る連中は、十中八九ヤバい人たちである。まぁ、私みたいなソロ専もいるけれど。そういう子たちは大抵どこかネジが外れてる。私みたいに。

 

「そのパーティがこの前解散したの……」

「……」

 

 パーティの解散は、はっきりいって珍しいことじゃない。メンバーが怪我して引退したとか、それこそ死亡したとか。そもそも、この依頼やるので、臨時で募集します。なんていうのもあるくらいだ。正直、解散したってだけならそんなに疲れるようなものでも……?

 

「原因がね、パーティ内の痴話喧嘩なの……」

 

 パーティの解散理由としては、それこそ2番目くらいに挙げられる理由だ。だって気まずいよね、振った側と振られた側が一緒に過ごすの……多分、巻き込まれて仲裁とかしてたんだろうなぁと予想する。ただ申し訳ないけど、恋愛経験もパーティ経験もない私に、解決出来る悩みでは無さそーー

 

「ある男が私以外の2人に二股かけて、挙句に私にまで手を出そうとして、その結果色々やってたのがバレて、他の2人に刺されたの……!」

「刺された!?」

 

 そんな事あるの!?というか、刺すまでいったの!?えぇ……?そんなことある……?

 

「しかも、その……片方の女の子、リーダーと付き合ってた子で……」

「待ってください、混乱してきました!」

「私だって混乱してるの!!」

「すみません!」

 

 いやまってドロドロすぎないそのパーティ!?えーと、つまり……どういうこと?普通に男女カップルが二組いて、そっから拗れ……?いや、それだと普通に解散して終わりになりそうだし、何か変なような……?

 

「まずそいつは、リーダーから寝取ったらしいのよ、その子を。で、表向きはリーダーと付き合ってるように見せかけて裏では……っていう」

「………………」

「でさ?そうやって偽装してるわけだから、やっぱり一緒に過ごす時間減るじゃない?で、その空いた時間にもう片方の子を……みたいな感じで……」

「えぇ……」

 

 そんなの可能なのかな?…………私の周りで考えるなら、最初に愛依と付き合っておいて、愛依がモデルの仕事に行ってる間に凉とよろしくやってるみたいな感じなのだろうか?時間的には可能だと思うけど、めちゃくちゃ難しいんじゃないかなそれ……というか、その上で彩音さんにまで手を出そうとするって、もうなんかとんでもないなその男……欲望に忠実過ぎる……ちなみに、愛依と凉相手にそんなことをするやつがいたら、私は刺す程度で止まれる気がしない。

 

「それでね……私、ほぼ蚊帳の外じゃないこの話」

「そうですね……」

「ここ1週間くらい、パーティのフォローやらないといけなくて……!」

「お疲れ様でした……!」

 

 彩音さん……!そりゃ疲れるって!というか、男もヤバいけど、リーダーさんの彼女も大分ヤバい女じゃない?完全な被害者ってリーダーさんともう一人の女の子、そして彩音さんでは…?

 

「リーダーがホントに見てられないくらい凹んでて……慰めるのホントに大変で……」

「お疲れ様です……」

 

 彼女寝取られた挙句、その彼女と共謀されて笑い者にされてたんだから、そりゃそうだよ……人間不信になるってそんなん……もう一人の子はどうなったんだろう。二股かけられてた……というか都合の良い女扱いされてた訳だし、大分凹んでそうだけど……

 

「あの、女の子の方は……?」

「……その子なら、『刺したらすっきりしました!』って返り血で血塗れの顔で笑ってた……」

「おぉぅ……」

 

 怖い怖い!完全に振り切れちゃってるよ!!というか、知りたくなかったなぁ、こんな怖い世界があるってこと!!

 

「ごめんねこんなこと話して……ただその、今回の件で色々噂が広がっちゃって、話をできる相手もいなくて……でも、誰かに聞いて欲しくて……弱みにつけ込むみたいでホントにごめんね……」

 

 彩音さんがついに泣き出してしまった。なんかもう、本当に彩音さんが可哀想だよ……なんでこんな良い人がそんなことに巻き込まれてるんだ…!向かい合わせに座っていたけど、隣に移動して頭を抱き寄せる。泣き顔なんて周りに見られたくないだろうし。これで落ち着いてくれればいいんだけど。あの時とは構図が逆だな……しばらくそのままでいると、彩音さんも落ち着いたらしい。目の周りが赤くなっちゃってるけど、スッキリした顔で、笑ってくれた。

 

「ごめんねホントに!でも、吐き出せたら大分スッキリしたよ」

「いえいえ、愚痴くらいなら幾らでも付き合うので……」

「流石にそんなに甘えてられないかな、あはは」

 

 多分、それは年上としてのプライドってやつなのだろうとは思う。けど、噂とやらのせいで、大分肩身が狭そうだし、私としてもほっておくのは嫌だ。赤の他人ならともかく、色々と知ってしまったわけだし。

 

「それで相談なんだけど……」

「…………はい。なんでしょう?」

 

 もう完全に忘れてたよ。相談があるって言われてたんだよ。愚痴のインパクト強すぎだよ……というか、ここから相談されて私が何かできることなんてある?

 

「私とパーティ組んでくれない?」

「…………はい?」

 

 え?どういうこと…?私未成年だよ…?パーティを組む利点がない。ちなみに、パーティを組んだら、そのパーティ自体にドロップアイテムの換金禁止が付与される。じゃないと、未成年だけ働かせてお金を巻き上げるみたいなのが出来ちゃうから。つまり、成人済みで、かつ専業で冒険者をやってる彩音さんが私とパーティを組んだら、支出はあるけど、収入がないとかいうことになる。

 

「あの、私未成年なので……」

「うん。分かってるよ」

「えーと、では何故……?」

「私、冒険者になってから、パーティ以外で活動したことがなくて、以前あなたにあった八王子ダンジョンが初めてのソロだったんだ」

「……」

「なんだかすごく寂しくて、やっぱりパーティで冒険したいって思ったんだけど、噂とかのせいでさっぱりで……」

「それは……」

「それに、私ね、冒険譚がすごく好きで、自分もあんな冒険してみたいなって冒険者になったの」

 

 それは痛いほど分かる。私がそうだから。でも、だからってそれとどうつながるんだろう?

 

「あのあとね、あなたの配信……配信?を何度か見たんだ。すごく楽しそうだった。……意味のわからないこともたくさんしてたけど、それでもすごく楽しそうだなって思ったの。昔読んでた冒険譚みたいだって思った」

「それは……その……」

「だからね、あなたと一緒に冒険させてくれないかな?」

 

 ヤバい、なんか照れる!隣に座ってて顔が目の前にあるのもあってめっちゃ照れる!!いやでも、ちゃんと確認しないといけない。

 

「……未成年とパーティ組んだら収入なくなりますよ?」

「貯金があるからそこは大丈夫。どうしても足りなくなったらその時はソロで潜るよ」

「……配信しますから、顔が映るかもしれません」

「そこは覚悟の上だよ。あなたと一緒で名前も出す」

「…………モンスター食べますよ?」

「事前に言ってくれれば、食べるよ。美味しかったし、食費も浮くし」

 

 断る理由が全部なくなった。正直、すごく嬉しい。一緒に冒険してくれる人なんていなかったから。両親以外にいるわけないとも思ってた。でもそれはあくまでも、ただの『物前夢希』としての話。冒険者の『物前夢希』として、この点だけは言っておかなくてはならない。

 

「そういっていただけると、すごく嬉しいです。ただ……」

「ただ?」

「それはあくまでも私個人として見た場合の話です。一人の冒険者として見た場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……え?」

 

 予想外の返答だったらしく、彩音さんが固まるが、こればっかりはどうしようもない。言っては悪いが、本当にないのだ。パーティを組んで2人で冒険して……確かに楽しいだろう。けど、それはあくまでも友人たちと遊ぶことの延長と変わらない。しかし、私たちは冒険者。命の危険がある以上、遊びではいけないんだ。そして、あくまでも冒険者として見るなら、()()()()()()()()()()()()()()。単純な話として、魔法職だから前衛が居てくれるのは嬉しい。が、弱い前衛がいても、射線を塞いで邪魔なだけだ。一瞬の躊躇が死につながるダンジョン内でそうなれば、私はともかく、彩音さんが死にかねない。

 

「冒険者としての私にとっての利点。提示できますか?」

「……一緒に冒険を楽しむ。が利点にならないの?」

 

 すごく悲しそうな声だけど、申し訳ないがそれは利点にならない。その感情を優先して、それであなたを殺すわけにいかないのだ。

 

「申し訳ありませんが、なりません。感情の話ではないからです」

「じゃあ、どういう話?」

「パーティとして組んだ場合、彩音さんは私に比べて非常に弱いです。私が前衛で彩音さんが後衛なら、それでも何とかなるかもしれません。でも、私は後衛で彩音さんは前衛です。つまり、私の魔法の速度に彩音さんがついていけずに、射線を塞ぎかねないんです」

「…………」

「ダンジョン内で、その一瞬は死につながります。それを私は許容できません」

「……ねぇ、質問なんだけど」

「なんでしょう?」

「それ、何をすることを想定しているの?」

「……?もちろんダンジョン探索です」

「どこを?」

「どこって……?」

「中層?下層?あと何相手?」

「……?どこでも、何相手でも、変わらないでしょう?」

「…………なるほど。うん。あなたはパーティ組んだことないのね?」

「……はい?」

 

 確かに、パーティを組んだことはないが、それにしたって何か間違っているだろうか…?ちょっと呆れたような、腑に落ちたような顔をした彩音さんが話し出す。

 

「確かに、あなたの言う通り、多分私のほうが弱いんだと思うの。だから、きっとあなたには迷惑をかけると思う。それは、申し訳なく思うけど……」

「……」

「でもね?凄まじく自分勝手なの、あなたの言い分って」

「……自分勝手なのは自覚がありますが……」

「性格とか、趣向とかそういう意味じゃなくて。いい?そもそも、あなたのタイミングに前衛が合わせるんじゃなくて、逆。()()()()()()()()()()()()

「……?」

「だってそうでしょ?目の前のモンスターに前衛が集中している間、その後ろで()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「あ……」

 

 なるほど、そういうことか。確かに凄まじく自分勝手な言い分だったな……モンスター目の前にして、後ろで準備してる私の魔法に合わせて動けってそりゃ無理だよね……パーティでの動き、なんにもわかってなかったなと萎れていると、彩音さんに頭を撫でられた。やっぱりちょっとお母さんみたいだ。

 

「成人したあとって、クラン入ったりする予定あるの?」

「……ソロだと未探索領域に行けないので、どこかには籍を置きたいと思ってます」

「そっか。そういうことなら、冒険者としての利点は提示できるかな」

「……?」

「パーティでの戦い方、教えてあげる♪」

 

 にっこりと笑う彩音さんに、反論が何も思いつかなくて、私は、参りましたと両手を挙げた。

 

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