【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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ちょっとだけ時間を巻き戻して、深夜に何の雑談をしていたかをお送りします。




成長中の私と深夜の雑談

 

 酔いつぶれた大人2人をそれぞれの部屋に運んだあと、夢希ちゃんの部屋に戻って、残りのご飯を食べながら少し雑談することになったっす。

 さっきは鬼灯ちゃんと喧嘩になりかけたっすけど、夢希ちゃんのおかげでなんとかなったっす。言われたときはカチンと来たっすけど、言われてみればその通りなんすよね。

 全部思い通りというか、うまくいくわけないですし、自分で何を選んだかどうかの方が大事っすよね。私の冒険者生活もそうですし。

 で、まあ、夢希ちゃんの部屋でテーブルを三人で囲んでるんすけど……

 

「……」

「……」

「……」

 

 いや、気まずっ。でも、多分気まずく思ってるの自分だけっぽいんすよね……夢希ちゃんは黙々とご飯食べてるし、鬼灯ちゃんはワイン飲んでるし。2人ともマイペースすぎっす。幼馴染なだけあるっす。

 というか、今ここで一番年上なの自分なんすよね……? となると、ここは自分で打破するしかない! というわけで何か話題を、話題を……

 

「……そういやさー」

「うん?」

「はい!?」

「? どした?」

「い、いや、何でもないっす」

 

 鬼灯ちゃんが声を上げたのにびっくりしちゃったっす。変な声出たっす。怪訝な顔されたっすけど、とりあえずスルーしてくれるみたい。よかった……

 

「その、陽向の後ろの電子レンジは何なの?」

「あー、これはっすね……」

 

 鬼灯ちゃんの視線は私の後ろにある魔素(マナ)レンジに向いているっす。まあ、気になるっすよね。自分だけで使ってるっすし。

 とはいえ、どう説明したものか。全部説明すると長すぎるんで、ちょっと短縮するとしてっすね。それに、なるべく私のスキルを話さないようにしないと。

 私のスキルはマジで特殊にもほどがあるんで、外部に話さないようにって口酸っぱく言われてるっすからね。鬼灯ちゃんも一応外部の人間ですし……

 

「食材に魔素(マナ)を付与するための魔道具っす」

「おん……?」

「私、スキルのデメリットで魔素(マナ)が付与されてない食材の味わかんないんすよ。それを解消するためのものっす」

「おーん……え、マジ? 大変じゃん。大丈夫か?」

 

 私の説明を聞いていた鬼灯ちゃんが、心配そうにしている。なんか鬼灯ちゃんのリズムというかなんというかを掴みかねるっすね……さっきの反応と今の反応がなんか違うような違わないような……?

 まあ、それはおいおい理解していけばいいっすね。時間はあるっすから。

 

「夢希ちゃんのおかげで何とかなったっすから、大丈夫っすよ。外食できないのが悩みくらいで」

「あー……外食は無理だわなぁ……で、なんで夢希?」

「私がモンスター食べてるから。モンスターなら問題なく食べられるんだよ」

「おん、なるへそ」

 

 本当に、夢希ちゃんには感謝してもしきれないっすよ。もし見つけていなかったらどうなってたか。想像したくもないっす。

 そういえば、この2人って幼馴染なんすよね? どう出会ったんすかね? マイペースなのを除けば結構別のタイプな感じするっすけど……

 

「2人はいつ頃であったんすか?」

「あー……三歳くらいか?」

「多分? 鬼灯にお母さんがお酒飲ませた時だからそのくらいじゃないかな」

「え?」

 

 首をかしげながらその時を思い出しているらしい夢希ちゃんの言葉にびっくりする。

 いや、夢希ちゃんのお母さん何してるんです? 三歳にお酒飲ませようとするのはおかしいっすよ? いや、多分鬼なのは生まれつきなんでしょうけども! それにしたって!

 口に出していいのか若干迷っている間、鬼灯ちゃんが何やら怪しげに笑ってるのが見えたっす。

 

「くくく……実はその前に会ってるんだよなー」

「え……そうだっけ……?」

 

 うーん……? なんて腕を組んでうなり始めてしまった夢希ちゃんを横目に、鬼灯ちゃんは楽し気にその時の話をし始めたっす。

 

「あれは、ボクが君のお母さんにお酒を貰う二日前の話だ」

「近いっすね」

「まあな。というか、どっかで会ってないと、そもそもボクにお酒届ける話にならねーじゃん?」

「……言われてみれば。でも、本当に記憶にないんだけど?」

 

 夢希ちゃん的には本当に記憶にない様子。とはいえ、確かに鬼灯ちゃんの存在をどこかで認知してないと、鬼灯ちゃんにお酒を持っていくという話にはならないっすもんね。

 

「あの頃のボクは体が弱かったから、『魔女の大鍋(コルドロン)』の病室で一日空を見上げるくらいしかしてなかったんだけどさ」

「え、そうだったんすか!?」

 

 衝撃的な過去に結構びっくりしたっす。鬼灯ちゃんは鬼であるが故に苦労もあるけど、体は強い。ってイメージっすからね。肉食べたら回復するのとか見てるっすから。

 まさか病室に入院するほどに身体が弱かったなんて想像してなかったっす。

 

「何が食えて何が飲めんのかわかんなくて、アレコレ試しては吐いたり腹壊したりで結構アレだったんだわ」

「点滴してた記憶あるよ」

「おん。おかげで注射には慣れたけども」

 

 カラカラと笑いながらワインをグラスに注いでいく鬼灯ちゃんにちょっと何を言えばいいのかわかんなくなったっす。

 私もスキルのせいで色々あった頃は、マジでキツかったっす。でも、体が出来上がった後だったすからあの程度でどうにかなったっすけど、幼い時にああなっていたらと思うと結構怖いっすね……まあ、生まれつきだったら、そもそも味覚がなくても問題ないとかいう変な解決策になった可能性はありそうっすけどね。

 グラスになみなみと注いだ後、それで口に含んでから鬼灯ちゃんは続きを話し始めたっす。

 

「まー、そんなある日よ。いつもみたいに空を眺めてたら、突然ガッシャーン!! って窓をぶち破って何かが部屋に飛び込んできたんだわ。んで、それが天井に一回ぶつかってから床に落ちたんだよ」

 

 こうべちゃっと。なんて言いながらテーブルに手を広げる鬼灯ちゃん。

 なんか、嫌な予感してきたんすけど……

 

「でまあ、それがもぞもぞ動いた後で顔を上げたんだわ。当然、窓ぶち破ったんだから、体中切り傷だらけで血まみれなわけ。顔も。で、それがボクと目が合った後でギャン泣きし始めたわけよ」

「……」

「それがめちゃめちゃ怖くてボクもギャン泣き。部屋に駆け付けた大人たちも惨状見てあたふたする地獄絵図」

「でしょうね……」

「で、飛び込んできた血まみれ人間が夢希」

「でしょうねぇ!!」

 

 そうっすよね! 話の流れ的にそうっすよね! 何やってるんすか夢希ちゃんは! いや、夢希ちゃんのせいではないかもしれないですけども。どうなんすかね? 

 夢希ちゃんの方を見てみたら、凄い顔をひきつらせてたっす。事実なんすね……?

 

「……あれだ、浮遊魔法で失敗したやつだ。あれ鬼灯の部屋だったんだ」

「おん、そうだよ。しばらく、夢に見て飛び起きてギャン泣きするくらいにはトラウマになったわ」

「ご、ごめん……」

 

 ジト目で当時のことを話す鬼灯ちゃんに、縮こまりながら気まずそうに謝罪する夢希ちゃん。

 そりゃそうっすよね。私もきっとしばらく夢に見るっすよそれ。いきなり目の前に血まみれの人間出てきたらマジで怖いっすよ……しかも、窓ガラスぶち破って登場とか、完全にホラー映画っすもん。

 

「というわけで、マジの初対面はその時。自己紹介とかしたのはそのあとだな」

「だから覚えてなかったんだね。ひたすら痛かった記憶しかないもん……」

「だろうな」

「でしょうね」

 

 鬼灯ちゃんと一緒にうんうんと頷いてしまう。そりゃ全身ガラスで切ったら痛いっすよ。というか、そんなに小さい時から浮遊魔法の練習って、流石っすね……私何してたっすかね? じいちゃんとベイゴマとかやってたような……

 

「まあ、そのあとはあれだな。夢希のお母さんに連れられてきたときだよ」

「私の記憶ではその時が鬼灯との初対面だったんだよね。あの時にお母さんがお酒渡して……? そのあとどうしたっけ?」

 

 またしても夢希ちゃんには記憶がない模様。いや、そこまで記憶ないんすか? いやでも三歳の時ですし、しょうがないんかね?

 

「まあ、おぼえてねーだろうなー」

 

 当時のことを思い出し笑いしている鬼灯ちゃんがいる。絶対なんかあったじゃないっすか……

 

「あの時さ、夢希のお母さんがお酒渡した後、それがボクの両親に無断だったせいでめっちゃ怒られてたじゃん」

「うん。お父さんにアイアンクローされてた」

「そうそう。宙づりになってたよな」

「大人たちが話してる間に、鬼灯と話してたことまでは覚えてるよ」

「いや、待ってくださいっす」

 

 待て待て待て! 無断で他人の子供にお酒渡すとか何してんすかマジで!! そして、アイアンクローで宙づりってどういう光景なんすかそれは!!

 そのまま続けてしゃべろうとしたら、妙に遠い目をした二人に遮られたっす。

 

「やめとけ陽向。夢希のお母さんの行動に一々ツッコミなんか入れたら過労死するぞ」

「お母さんの行動に常識求めると胃に穴が開くよ」

「えぇ……」

 

 今、私の心の中は、友達のお母さんに対しておおよそ抱いてはいけない感情で埋め尽くされてるんすけど……

 というか、それが当たり前みたいな空気なのヤバくないっすか? 夢希ちゃんのお母さんどんな人なんすかマジで……あと、せめて夢希ちゃんは擁護するべきだと思うっす。

 

「夢希のお母さんは《天啓》っていうユニークスキルを持ってて、それでお酒だったら飲めるってわかったから渡したって言ってたんだけどな」

「どんなスキルなんすかそれ」

「お母さん曰く、超すごい直感らしいんだけど、初見で大抵の物事の正解は引き当ててたね。過程は無視して」

「意図して発動できなかったっぽいけど、発動したらパスワードとかも一発だったよな」

「そうそう」

 

 なんすかその無法すぎるスキル……未来予知とかそういうレベルの話じゃないっすか。《天啓》っていう名前からそのままの効果なのは分かるんすけどね。

 ……? そういえば《天啓》って確か、『女帝』が持ってるスキルだったような気が……い、いやまさかそんなわけ……ないない。苗字も違うっすし。

 

「まあ、そんなわけでボクはその時初めて缶チューハイのミカン味を飲んだわけだよ」

「よく覚えてるね」

「そりゃ初めてまともに飲めた飲み物だからな」

 

 私が頭に浮かんだ考えを振り払っている間に話は進んでいくっす。でも、ここまで聞いてると、夢希ちゃんが覚えていない理由になっていないような。

 そんなとき、鬼灯ちゃんが悪い笑みを浮かべて、人差し指を立てる。

 

「さて、ここで陽向に質問だ」

「? なんすか?」

「今までずっと一人だった子供がいます。その手にはとても美味しいジュースがあります。目の前には同い年くらいの子供が、そのジュースを気にしているようです。さて、その一人だった子供はどう動くでしょう?」

 

 うーん、自分だったら、手元のジュースをその子にも渡して、一緒に飲んで友達になろうとするっすね。美味しいものを一緒に楽しむっていうのは仲良くなる理由にしては十分っすから。

 そう結論をだして、答えを伝える途中でふと気づく。

 

「……それは多分、そのジュースをわた、し……て……」

 

 そうだ。質問の中ではジュースとはいったけど、実際のその時の鬼灯ちゃんの手に握られていたのは、夢希ちゃんのお母さんからもらった()()()()()()()()()()()で……

 

「正解! その子供たちは2人で仲良くジュースを飲んだのさ」

「……もしかして……」

「おん、酔っぱらった夢希が部屋で魔法ぶっぱなし始めて大惨事になった」

「おぉう……」

 

 夢希ちゃんが頭抱えちゃったっす。大惨事が過ぎるっすよ本当に……というか、その始まり方してよく幼馴染まで持ってこれたっすね!? 普通だったら距離置きそうなものっすけど。

 

「よくそこから幼馴染になれたっすね」

「両親的には距離置くつもりだったみたいだけど、ボクがめっちゃ駄々こねた。それこそ、飲み物が分かって回復した本来の身体能力で暴れた。ベッドぶん投げるくらいのことはした」

「……三歳っすよね?」

「おん、三歳」

 

 身体能力ヤバすぎないっすか……? ベッド投げるってどういうことっすか? 三歳っすよね?

 

「そこまでする理由あった……?」

「さあ? そこまでは覚えてないからわからん。でも、結果論で言えば、あの時暴れて正解だった」

 

 頭を抱えたままの夢希ちゃんの質問に、すがすがしい顔をして答える鬼灯ちゃん。確かに、今の関係を見れば、結果論で言えば正解だったんでしょうけども……

 

「……鬼灯ちゃんのご両親の胃が心配っす……」

「それが原因でお父さんの前髪が後退しちゃったからなぁ……」

 

 けらけら笑いながら言うことじゃないっす!! 男の人にとってそれってめっちゃ大事何すよ!? 爺ちゃんが言ってたっす!

 その後もツッコミどころ満載の幼馴染エピソードが山と出てきて、流石に途中からツッコミを放棄したっす。

 私も前髪が後退しそうっすからね……まだあったことも見たこともない2人のご両親に、そっと労いの言葉を心の中でつぶやいたっす。

 

 

 

 




地味にリクエスト第三弾の夢希と鬼灯の初対面エピになります。

次も犬束視点でお送りします。


『女帝』……《天啓》で察知したことは大抵のことに首を突っ込む。過程を全無視する上に即行動するせいで、意味不明な行動取りまくる女。だが、そのすべてで物事が好転する変なやつ。

「なんでこんなことするのかって? だって、この方が気分がいいだろう?」
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