【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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投稿時間ミスって草ァ!


成長中の私と思ってもみなかった問題

 

 ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピシッ……

 

「……んー……」

 

 朝、目覚ましを鳴らしていたスマホを止め、とりあえず体を起こす。流石に床に寝るのは体バッキバキになるっすね……とはいえ、友達の家で雑魚寝なんて、やったことなかったんでいい経験したっす。

 うわ、適当に伸びしたら体からバキバキって音が……次やるときは、せめて布団なり毛布なりをしかないときついっすね……ちょっと床に寝るのは二度目は勘弁っす。

 

「んあー……あさぁ……?」

 

 横で鬼灯ちゃんも起きだしたみたいっす。自分と同じでめっちゃボケボケしてるっすね……寝転がったら二度寝しそうなんで、床に座るっすけど、いやこれダメっす。寝そう……

 床で寝るのはダメっすね。ベッドとソファで一人ずつ、最後の一人が炙れるからって、全員で床で寝たのは失敗だったっすね……

 そういえば夢希ちゃんはどこに……? あ、台所にいたっす……

 

「……ん? 台所?」

「あ、起きた? おはよう2人とも」

 

 台所で料理をしていたらしき夢希ちゃんが、こちらに振り返っておはようといってくる。いや待って、だとしたらいつから起きてたんすか……? その上、私はともかく、鬼灯ちゃんすら起こさずに料理を……?

 なんか一気に目が覚めたっす。夢希ちゃんって、本当にどういう技能を持っているのか理解不能っす。だって、鬼灯ちゃん起こさずに料理する方法ってなんすか……? いや、完全に気を抜いてるから音や気配では起きないのかもしれないっすけど、私と違って匂いは感じるはずなんすよ? 流石に起きないっすか?

 それと、普通に私たちの分まで作ってるらしき夢希ちゃんに、なんだか申し訳なくなる。今日は月曜日ですし、学校だってあるはずなのに……というわけで、いっちょ手伝うっすよ!

 

「自分も手伝うっすよ」

「そう? じゃあ食器お願いしていい? もうできるから」

「わかったっす」

 

 もうできるといった夢希ちゃんの手元では、フライパンでぐつぐつを煮られている鶏肉が。横には溶いた卵。ということは、おそらく親子丼っすね。いやあ、手のかかった朝ご飯で嬉しい限りっすよ。その向こうではおそらく出来上がった味噌汁がありますし。

 では、食器を並べてしまいますかねと、昨日洗った箸を掴む。

 バキッ!

 

「あっ!」

「大丈夫?」

「怪我はないっす。でも、ごめんなさいっす……」

 

 掴んだ瞬間、箸がバキッて音を立てて折れちゃったっす……くぅ、力加減間違えたっすかね……怪我こそしなかったっすけどね。

 なんにせよ、後で賠償するとして、まずは目先の仕事をやらないと。箸はダメでしたけど、今度はコップを慎重に……あっ。

 パリンッ!

 

「いった!」

「大丈夫!?」

「あー、ちょっと切ったっす……」

 

 今度はコップを割っちゃったっす。しかも手をちょっと切ったっす。うーん、痛いっすけど、それ以上に……

 こんなに力加減間違えるのなんて初めてっす。なんかおかしいような……?

 夢希ちゃんがどこからか取り出した絆創膏で手当てをしてもらって、申し訳ないっすけど、手伝いは辞退したっす。これ以上壊すわけ行かないっす……

 夢希ちゃんに何度も頭を下げながら、すごすごと退散。やっちゃったすね……

 

「なんかあったん?」

「力加減がうまくいかなくて色々壊しちゃって……」

「おん? 昨日はそんなことなかったのにな……?」

 

 鬼灯ちゃんも首をかしげる。やっぱりなんかおかしいっすよね……? ある日突然そんな力加減が出来なくなるとかあるんすかね? だって本当に昨日の今日っすよ?

 2人して首をかしげている途中で、ふと、朝止めたスマホのことが気になった。止めた時も力加減ミスってたら……あ、画面割れてる……凹んでいると、ちょっと寒気が。いや、寒気というかなんというか。トイレに行きたいので、テーブルに手をついて立ち上がろうと腕に力を入れた。

 

「へぶっ……あだぁッ!?」

「うぉう!? どうした!?」

「何事!?」

 

 突然の背中への衝撃。そして、そのまま()()()()()。い、いたいっす……というか、何が起きたんすか今……

 鬼灯ちゃんと夢希ちゃんがこっちに来てくれる。嬉しいっすけど、それ以上に今の現象が謎すぎて気になってしまう。

 もしかして、今()()()()()()()()()()()? そんでそのまま落ちてきた? 

 

「……大丈夫か?」

「ちょっと痛いだけっす。テーブルは無事っすか?」

「テーブルは無事だけど……本当に大丈夫?」

「とりあえず、私は今動かない方がよさそうっすね……」

 

 寝返りをうって仰向けになって、2人を見ながらそんなことを言うしかない。いや本当に今動かない方がよさそうっす。何が起きるかわかったもんじゃないっすから……

 夢希ちゃんには申し訳ないっすけど、朝ご飯は辞退させてもらったっす。何壊すかわかったもんじゃないっすからね。

 あー、親子丼と味噌汁美味しそうっすね……というか、親子丼から匂いがするんでそれモンスター使ってるっすよね……? くぅ、なんでこういうときにこんなことに……突然やってきた不幸に、心の中で泣いていたら、鬼灯ちゃんのスマホが鳴った。本人は飯食ってからと言って放置してたんすけど、何度もかかってくる。流石に鬼灯ちゃんもイラっとしたらしい。

 

「……もーなんだよ飯食ってんのに! はいもしもしぃ!? ……え? ……あー……はい。はい……なるほど……わかりました。えーっと、とりあえず、今ご飯食べてるんで、その……はい、すぐに戻りますので……はい。はい。失礼します……」

 

 最初のテンションはどこへやら、途中からどんどんしょぼくれていって、最終的には半分泣いてるみたいになってしまった。な、なにが……というか、敬語で話してる鬼灯ちゃんってレアじゃないっすか?

 

「……どうしたの?」

「……外泊申請してなくて怒られるのが確定した……」

「あー……」

「ドンマイっす……」

「ちくしょう……」

 

 何でも、外出申請こそしていたものの、外泊申請をしておらず、今の電話も事務員さんからだったそうっす。

 しかも、一番説教が長い人の日に当たった……なんて、しょぼくれながら、親子丼の親子の部分を食べていく鬼灯ちゃん。ペースは遅い。そうっすよね、それ食べて帰ったら説教が待ってるんすもんね……

 とはいえ、夢希ちゃんの登校時間も迫ってきたので、鬼灯ちゃんと私は部屋の外に出ないといけないんすけど……

 うつ伏せから起き上がろうとして、また軽く浮き上がったので、これはダメだと、床と一体化する。もーマジでなんなんすか。どういう状況なんすかこれは。

 

「うーん、どうしようか……」

「鍵だけ置いていけば?」

 

 頭を悩ませる夢希ちゃんとあっさりと見捨てる宣言をかます鬼灯ちゃん。鬼灯ちゃんのシビアなラインと、そうじゃないラインがわかんないっす……

 あ、そうっすよ。こうすればいいんす。

 

「白石さん呼んでもらっていいっすか?」

「そうだね。それがいっか」

 

 夢希ちゃんにスマホで白石さんに呼んでもらう。私のスマホ、割れてるだけじゃなくて内部にまでダメージがあったみたいで、うまく動かなかったんで……買い替えかぁ……どうせなら最新の機種にしたいっすね。冒険者用のめっちゃくちゃ硬いやつ。

 夢希ちゃんが登校するついでに白石さんに鍵を預けてくれることになった。いやもう本当に申し訳ないっす。

 

「いってらっしゃいっすー」

「いってきます」

「いってきまー……」

 

 起き上がるのが怖かったので、寝転がったまま2人に手を振って見送る。いつも通りな夢希ちゃんとテンションだだ下がりな鬼灯ちゃんが、大体同じくらいのテンションな気がするのなんだかおもしろいっすね。

 昨日何やったっけなぁ……なんて考えながら白石さんを待っていたら、白石さんはすぐに来てくれた。

 

「おはよう、大丈夫かい?」

「おはようございます白石さん。大丈夫っす」

「とりあえず……昨日の夜何したか覚えてるかい?」

 

 まあ、それは聞かれると思ってたんで考えてたんすけど……料理食べたくらいしか思いつかないんすよね……

 

「夢希ちゃんの料理をご馳走になったくらいで、他は何も……」

「では、その料理の材料は?」

「材料……オークキングとオークライダーとオークジェネラルだったはずっす。あ、あとブレイクレッグキング」

 

 オークキングのローストはマジで美味しかったっすねぇ……チャーシューも美味しかったですし、青椒肉絲も美味しかったっす。もちろん照り焼きも。

 そんなことを思い出していると、白石さんがお腹を抱えて笑い出した。

 

「ふっ、く、くくっ……はっはっは!」

「どうしたんすか?」

 

 突然の爆笑に、びっくりしたっすけど、いつものことだなってスルーする。昨日の幼馴染トークでも思ったっすけど、スルースキルって人生においてマジで大事なんだなって。

 しばらくして、笑いを納めた白石さんは私にその理由について話し始めた。

 

「いや何、考えてもごらんよ。ミノタウロスを食べて君はいくつレベルが上がった?」

「12っすね」

「たかが下層のモンスターでそれだけ上がるんだよ? 深層の、それもボスの肉なんて食べたらどれだけ上がると思う?」

「……え」

 

 え、これってそういうことなんすか? つまり、いきなりとんでもないレベル一気に上がったせいで力加減が出来ていない……? そんなに上がるものなんすか!?

 

「とりあえず、記録水晶も持ってきたのは正解だったようだね。ほら、見てみよう」

 

 白石さんが私の右手に記録水晶を触れさせ、その数値を読み取って。固まった。

 え、固まった!? あの白石さんが!? 何があろうが固まるよりも先にロマンだ!! って叫びそうな人が!?

 

「……あー、陽向。覚悟をしてから聞いてくれ」

 

 凄まじく真剣な顔で言う白石さんに、深呼吸をすることにした。正直めっちゃ怖いっすけどね……!

 

「……どうぞ」

「上昇幅は1()8()0()。スキルも5つほど増えている」

「…………はい?」

 

 なん? え? ひ、ひゃくはちじゅう……? ひゃくはちじゅうっていくつだっけ……?

 あまりのことに思考が宇宙までぶっ飛んでいく。帰ってくるのにしばらくかかった。

 目の前の現実が本当に納得できない。いや、そんな上がります? いくらなんでも。レベル倍くらいになってるじゃないっすか。そりゃ力加減なんかできるわけないっすよ。

 納得は出来ないけれど、とりあえず何が起きたかは分かったのでちょっと安心。ともかく、スキルを確認して、力加減を練習すればどうにかなる。

 ふぅー……っと深く息を吐く。なんとか、落ち着いたっす。そしたら、別の現実が私に迫ってきた。

 

「……とりあえず、なんすけど」

「なんだい?」

「……トイレ行きたいんで運んでもらってもいいっすか……?」

 

 

 

 ……めちゃくちゃ恥ずかしかったっす……

 

 

 




そらあんだけ深層のモンスターをたくさん食べたらこういう問題も出ます。
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