【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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感想、お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます。

感想見て、『魔女の大鍋(コルドロン)』への熱い信頼に笑いました。

そして、作中時間の経過のしてなさ! 117~129までで1日しか経ってないんですよ? どうなってんだこの小説はよ!!


配信に興味のない私と犬束陽向(過去最高におかしい女)

 

 サンドバックを壁まで蹴り飛ばした陽向を見てテンションが空の彼方へ飛んで行っていた白石さんが帰ってきた。

 

「さて、今使ったスキルを聞いていいかな?」

「《金剛力》、《金剛体》、《瞬間解放》、《豪脚》、《蹴撃》の五つっすね。あと《身体強化》もっす」

「待って?」

 

 いたって平常のまま陽向は答えた。でも待ってほしい。

 いや、スキルと魔法を同時は分かるんだよ。私も出来るし、結構一般的みたいだし。でもさ、スキルを何個も同時ってあんまり聞かないんだよ。花奈さんのアレは、発動したら一定時間あのまま維持されるタイプのやつなので別としてもだ。彩音さんだって、今《スマッシュエッジ》と《地砕き》を同時に使う練習をしているくらいだし、他の魔法使いはまず魔法を二つ同時に発動できない。だから、同系統のものを同時に何個も発動するのは難しいはずなのだ。

 私だって、今のところ3個が限界である。それを、陽向は5つ同時? それも、おそらく昨日の夜獲得したスキルも含めてである。日中に練習する時間とかあったのかもしれないけど、そんなに同時に使えないよ普通は。私だって3つ使えるようになったのは最近だというのに。何がどうなってるんだ……?

 混乱している私を無視して2人の話は進んでいく。 

 

「おお、それだけでこの威力とは……流石にボス由来のスキルは効果が凄まじいね」

「《金剛力》と《金剛体》がいい感じっす! すごい動けるっすよコレ。あと、《瞬間解放》は……蹴ったときに発動してたか怪しいっすね」

「ふむふむ……次は《瞬間解放》だけ除いた検査をしようか」

「はいっす!」

「だから待って?」

 

 白石さんからの指示に元気よく返事を返して、壁際に転がっているサンドバッグを取りに行く陽向。

 本当に待ってほしい。再現性まであるの? 一回こっきりとかじゃなくて? それに反動とかもないの? あれだけの威力を出しておいて?

 白石さんが、私の困惑にようやく、しかしめんどくさそうに反応してくれた。

 

「どうしたんだい夢希?」

「どうしたんだい? じゃないよ! 色々とおかしいでしょ!?」

「色々とおかしい。だなんて、夢希にしてはあまりにも稚拙過ぎる指摘だね」

 

 ため息までついて私の叫びをばっさりと切り捨てる白石さん。そして彼女は、どこか誇らしげに、そして呆れたようにこう言った。

 

「犬束陽向は、彼女は、過去最高におかしいよ」

「……えぇ……」

 

 凄まじい暴言に思わず引いてしまった。流石にひどく……なんだろうな、妥当な評価な気がしてきちゃったなぁ……陽向には悪いけど。

 

「聞こえてるっすからねー!」

「おっと失礼。過去最高にロマンにあふれている。と訂正させてもらおう」

 

 壁際でサンドバッグを拾おうとしている陽向から抗議の叫びが聞こえ、白石さんがお詫びと訂正を入れる。仲いいな。

 

「……いつもこんな感じなの?」

「そうだ。今日はそうではなかったが、朝食にモンスターを食べてもらって、そのスキルの確認と検証を行っている。今回は一気にたくさんのスキルが発動したからね。その分検証することも多い」

「そうなんだ……」

 

 普段からこういうことして過ごしてるのか陽向って。そりゃ慣れてるよね。

 それと、多分陽向も美味しそうな肉を前にテンションが上がってたんだと思うんだけど、報告とか入れてなかったと思うんだ。でも、特に気にせず、じゃあ実験しようか。になる辺りがおかしいよね。絶対に。普通そういうのって結構厳格にするものじゃないの?

 って思ったんだけど、そもそもモンスターを食べたらレベルが上がってスキルを獲得するとかいうユニークスキルを前に、そんな常識を掲げたところで意味がないと気づいた。だって、何かしら食べた瞬間にもう以前のデータと差異が出るんだよ? 無理じゃんそんなの。しかも、下手したらスキルまで生えてくる。

 

「あいたー!」

 

 陽向の悲鳴が聞こえてそちらを見る。サンドバッグを持ってひっくり返っている陽向が見えたので、浮遊魔法と《魔力放出》で一気に彼女の元へ。

 

「大丈夫!?」

「あちゃー、またやったっす……」

 

 打ったらしい後頭部をさすりつつ、陽向が起き上がる。ぱっと見以上はなさそうだけど、大丈夫だろうか。

 

「まだ力加減がうまくいかないっすね……」

「……サンドバッグ戻すの手伝おうか?」

「あはは、ありがとうっす。でも、力加減の練習も兼ねてるんで大丈夫っす! それに、《金剛体》のおかげで怪我しない感じなんで本当に平気っすよ」

 

 陽向いわく、《金剛体》はオークキング由来のスキルらしく、身体強度が跳ね上がっているらしい。その強度の上がり方たるや、包丁で刺そうとしたら逆に包丁が折れるレベルであるという。なので、さっきみたいにひっくりかえっても特に痛みもなかったのだとか。でも、つい癖で声が出ちゃったんだってさ。

 まあ、そういうことなら安心かな。手伝いの申し出も断られてしまったし、今はおとなしく白石さんの横にいよう。手伝いを頼まれたら手伝うことにして。

 うん?……いや待って、なんで包丁が折れるくらいの強度になるって知ってるんだ? 一度包丁で刺す実験したってこと? 何してるの??? 

 

「準備出来たっすー!」

「……いつでもいいよ!」

「はいっす……っし!」

 

 私の困惑なんてどこ吹く風で、再度壁までサンドバッグが吹き飛ばされる。

 …………とりあえず、今は考えるのやめた方がよさそうだ。スルーしないと無限にツッコミどころが出てくるねきっと。

 

「ふむふむ……先ほどと数値が変わっていないね」

「……発動したまま放置してみるっすねー! ストップウォッチ欲しいっすー!」

「ああ分かった。夢希、ストップウォッチを頼めるかい? 今の彼女だと壊しかねなくてね」

「わ、わかった」

 

 早速手伝いを頼まれたので、陽向の元へ。といっても、陽向が《瞬間解放》なるスキルを発動し、その時間を計測するだけだけど。そもそも、それ何から得たスキルなんだろうか?

 今の陽向だと、精密機器類は破壊しかねないということで、発動の合図として手のひらを開閉することにしたのだけれど……

 

「いやこれ無理っす。マジで一瞬すぎるっす……」

「計測というか、連打してるだけだもんね……」

 

 もはや筋トレでもしてるのかと言わんばかりの速度でぐっぱーし続けることになったため、測定を中断。多分0,1秒とかそのレベルだと思う。私はただひたすらストップウォッチを連打していただけです。《瞬間解放》の名の通り瞬間である。

 

「ところでさ、それ何から得たスキルなの?」

「ブレイクレッグキングだと思うっす。他のスキルがオーク系由来っぽいので消去法っすけどね」

 

 聞いてみると、先ほどの《金剛力》、《金剛体》のほかに、《騎乗》と《指揮》というスキルも発現しており、そちらはそれぞれオークライダーとオークジェネラル由来だろうという予測が出来たため、《瞬間解放》はブレイクレッグキングじゃないか? ということらしい。

 今までの実験の話を軽く聞いてみると、やはりモンスターの特徴や行動に関係したスキルが出てくるそうで、最近ではそういったスキルが出てくるか予測してみる。というちょっとした遊びもしているらしい。

 そこを遊びにするのはどうなんだろうと思いつつも、楽しく過ごせているのならいいかと思い直した。

 それにしても、ブレイクレッグキングか……となると、やはりインパクトの瞬間に使っている感じなのだろうか? あいつの蹴りの威力はとんでもないからなぁ……そしてきっと、《豪脚》と《蹴撃》も持っていると。

 こうして考えていくと、陽向の貢献度とんでもなくないか……? 人類史に名前を刻むレベルじゃないのかこれは。

 

「さ、サンドバッグを持ってきたよ。次はそうだね……」

 

 いつの間にかサンドバッグを抱えた白石さんが傍まで来ていた。サンドバッグを置きなおし、タブレットを見つめ始めた彼女に、思い付きを提案してみることにした。

 

「これってさ、蹴った威力を測定してるの? それとも飛んでった速度とか?」

「蹴った威力だ。あと、壁に当たった威力や速度も計測している。だが、それはこの実験室そのものの機能であって、サンドバッグとは関係ない。サンドバッグはあくまでも蹴った威力を計測している」

 

 サンドバッグを軽くたたきながら質問すると、白石さんから詳細に答えが返ってくる。この部屋そのものが、なんだかとんでもない性能をしていることをさらっと暴露された気がするがスルーだ。スルーったらスルーだ……!

 

「なら、踏んでも計測できる?」

「可能だよ」

 

 よし、そういうことならやってみよう。《瞬間解放》は、本当に一瞬だから測定が困難。となれば、変に行動の多い蹴るよりも、踏むの方が楽なはず。

 

「踏む瞬間にスキル使ってみようよ。蹴るよりもやりやすいでしょ?」

「お、いいっすね」

「よし、なら少し離れようか、念のためね」

 

 白石さんに言われて離れる。念のために《魔力障壁》の準備もしておこ……

 そして、陽向がまずは普通にサンドバッグを踏む。さくっ。みたいな、砂を踏むような音がした。特に異常なし。

 次に、踏む瞬間に《瞬間解放》をしようして踏む。ずどむっ! 本気で蹴ったときってこんな音だよねって音がした。

 

「おぉう……」

「踏むだけで出ていい音じゃないっすよコレ……」

「いやはや、実にロマンだ。実に5倍もの威力が出ている」

 

 5倍って……なんかもうどういうスキルなんだそれ……というか、つまり、最低でも上層のブレイクレッグに比べて5倍くらいの威力で蹴ってきてた可能性があるのアイツら……? でも、それくらいじゃないと、ミノタウロス以上の威力の蹴りなんて搭載できないか。なんて謎の納得を得た。

 

「てことは、さっきの時に成功してたら、アレの5倍出てたってことっすか?」

「うーん、どうだろうね。筋力を5倍にしているのか、威力を5倍にしているのか……はたまた他のスキルに加算して5倍にしているのかで変わるからね。何とも言えないな」

 

 つまり、計測を何度もしないとわからないということらしい。強化するにも色々あるみたいで、軽く説明してくれた。

 まず、身体能力を引き上げるもの。これは《身体強化》の魔法なんかがこれだそうだ。あと、体に関係するスキルも大体これに入るんだって。今でいうと《金剛力》とか。

 次に、行動に対してかかるもの。これは彩音さんの《スマッシュエッジ》とか、鬼灯の《縮地》みたいな感じだそうで、大抵速度に関係あるものはここに入る。

 最後に威力の底上げ。大抵の近接職の攻撃スキルがこの枠。彩音さんの《地砕き》とか、鬼灯の《紫電一閃》とか、花奈さんの《シールドバッシュ》とかあの辺だね。

 で、これらのどこに入るのかがわからないので、安直に5倍になるかどうかは分からない。ということだった。

 それらの説明を終えた後、白石さんはタブレットを軽くたたいて画面を点すとこういった。

 

「さて……《瞬間解放》の研究を最後までやりたいところだが、せっかく夢希がいるんだ。《指揮》の方を試してみようじゃないか。こちらは協力者がいないと試しようがないからね」

 

 まあ確かに言われてみればそうかもしれない。言い方は悪いが、そっちは一人で蹴ってても出来るけど、これは無理だもんね。

 といっても、《指揮》って……指揮すればいいのだろうか。陽向が私に。

 

「えっと、どうするの?」

「じゃあ、とりあえず……夢希ちゃん! サンドバッグに《魔力の矢》っす!」

 

 私は使い魔か? ともかく一応試してみようと思って、サンドバッグに《魔力の矢》を発射。

 流石に貫通するかと思ったら、貫通せずに吹き飛んで行っただけのサンドバッグを見て、思わず遠い目になる。一体あのサンドバッグにどれだけの技術とお金がつぎ込まれているんだろうか……

 

「どうっすか!?」

「いやいや、そもそも指示を出される前のデータがないと比較が出来――」

 

 吹き飛んで行って壁に当たり、地面に落ちたサンドバッグにさっきと同じように《魔力の矢》を発射する。先ほどと同じところにあたったはずだ。これでデータは取れただろう。

 

「これでいい?」

 

 仕事をささっとスマートに済ませたなと思って振り向いたら、2人とも引いた目でこちらを見ていた。何でさ。

 

「夢希ちゃん……流石にどうかと思うっす……」

「流石にあれはないよ夢希」

「えぇ……?」

 

 2人曰く、追撃するのはあまりにも酷い。だそうだ。いやでもこっちに持ってきても同じことするじゃん。別に今打ち込んでもよくない?

 そう言ったら、それが大事なのだと言われた。どういうことなんだ……

 なお、指示を出したときの方が威力が高かったそうなので、《指揮》にはそういう効果があるのだろうという結論が出た。大体2割増しくらいになるらしい。道理でオークライダーの騎馬突撃があんな威力になるわけだよ。

 そのあとも夕食の時間まで実験に付き合ったが、やっぱり陽向のスキルって化け物だよ……今後も、時々実験に付き合いに行こう。ちょっと心配だしね。

 

 

 




スキルの設定がTHE・ゲーム脳で申し訳ないけど、でもこういう感じの設定こねくり回すの好きなの……
オリジナルの魔法とか考えてみて、ゲームバランス壊れないかとか計算してみたりするのがとても……
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