【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と意気消沈

 

 

 陽向のアレコレを手伝った翌日、学校から帰ったらダンジョンへ行こうと思い彩音さんたちと待ち合わせることにすると、待ち合わせ場所に地下の実験場が指定された。どうやら、あの二人が陽向の実験に協力しているらしい。私も昨日手伝ったとはいえ、まだまだ色々試したいことだってあっただろうし、いくらでも出来そうだもんね。

 ちなみにだが、昨日2人から朝二日酔いで苦しむ二人を見捨てたことへの苦情を言われたけど、それに関しては完全に自業自得なのでスルーさせてもらった。

 部屋に戻ってダンジョンに行く準備だけ整えると、部屋を飛び出してさっさと地下の実験場へ。昨日と同じ12番にいるとのことだったので、すぐについた。昨日白石さんにそれとなく聞いたところによると、30を超える実験場が地下にあるらしい。いや、本当にどうなってるんだよこのクランは。どこにそんなスペースがあるの???

 それは置いておくとして、実験場についたので、扉を開けて中へ。すると、昨日と同じようにタブレットを持った白石さん。その横に2人並んでいる彩音さんと花奈さん。少し離れたところに煙を上げて大の字になって倒れている陽向と陽向をつんつんと突いている美月ちゃんがいた。その周囲にはふわふわと、いつか見た綺麗なシャボン玉がいくつも浮かんでいる。

 

「……えっと、どういう状況?」

「やあ夢希。見ての通りだよ」

 

 見てわからないから聞いてるんだよ。どこか楽し気な白石さんは放っておいて彩音さんに話を振る。普段は結構頼りになるのに、こういう時は全然頼りにならないんだから本当に。

 

「彩音さん、教えて」

「おや?」

「あはは……美月ちゃんのシャボン玉で陽向ちゃんが爆撃されたとこ……」

「綺麗な魔法でしたわね。少々どころではないトゲがございましたが……」

 

 困惑する白石さんと、そんな白石さんに苦笑いする彩音さん。そんな横で、美月ちゃんの魔法についての感想を述べる花奈さん。花奈さんの意見には大体同意するよ。見た目はすごい綺麗なんだけどね。触れたら爆発するからねアレ。ちなみにだが、美月ちゃん曰くサイズを大きくすればするほど爆発の威力が上がるとのことだったので、遊びで出しているあのサイズのシャボン玉は相当手加減しているはずである。

 

「……起き上がらないけど、大丈夫なのアレ」

「多分、凹んでるだけだと思うんだけど……」

「凹む?」

 

 それにしても、中々陽向が起き上がってこないので、万が一のことを考えたんだけど、彩音さん曰く、陽向は凹んでいるらしい。それも、こんな長時間地面にべったりと張り付くレベルで。

 それはそれでいったい何があったのかと思っていると、白石さんが説明してくれる。

 

「昨日のスキルたちを覚えているかい?」

「うん」

「なんというか、ちょっと発動条件と効果が大分ピーキーでね。検証が進んでいくごとに元気がなくなって行って、最後にああなった」

「最後にシャボン玉で爆撃されたら誰でもそうなるでしょ」

「まったくもってその通りだと思いますわ」

 

 説明になってなかった。花奈さんとまったく一緒の感想だよ。白石さんも笑ってるし、わざとなんだろうけどさぁ……

 まあ、でも、スキルの実験というか検証のせいでそうなったのは間違いなさそうだったので、とりあえずは一安心かな。

 そんな感じで話していると、美月ちゃんがこちらに気付いた。

 

「あ、夢希ちゃんだ、久しぶり。お魚ありがとう。美味しかったよ」

「久しぶりだね美月ちゃん。お口にあったようで良かったよ」

 

 以前約束していた魚のモンスターに関しては、ウニボーとビューンカジキを渡したのである。ビューンカジキが魚っぽいかというと若干審議はいるだろうけども。

 

「ところで、これは何があったの?」

「陽向に攻撃してって言われたからしただけ」

「誰に言われたの?」

「陽向」

「……?」

 

 何故、陽向が自分を爆撃するように美月ちゃんに言ったんだ……? スキルの検証にしても、一体どういう理屈でその検証しようとしたのか謎すぎるよ。《金剛体》……は、昨日の時点で出来てたはずだし、一体何の……

 美月ちゃんの言葉の意味を掴みかけていたら、物理的に煤けた陽向が、こっちに来ていた。そして、そのままぶつぶつと呟きだす。

 

「夢希ちゃん、私、もうダメっす……《瞬間開放》が、アレがダメっす……」

「あの、どういうこと……?」

 

 《瞬間開放》がどうしたというんだ……? あれ結構えげつないスキルじゃなかったっけ……? なんて困惑していたら、横から白石さんが。今度こそちゃんと教えてほしい。三度目はないよ。

 

「まあ、説明するとだね――」

 

 白石さんが、簡潔に検証を行っていたスキルたちについて教えてくれた。

 《瞬間開放》は、攻撃に倍率をかけるようなスキルではなく、その瞬間に行っている行動の上限を瞬間的に引き出せるというスキルだったのだという。走るという動作に使えば、一歩目からトップスピードが出せ、殴るときに使えば、どんな体勢だろうと本気で殴ったときの威力が出るらしい。無理に威力を引き出している分の反動は当然あるのだが、《金剛体》で無視できるレベルであるとのことだった。

 私的には、どんな時でも100%が出せるなら十分なんじゃ? と思ったのだが、火力至上主義の陽向からするとダメだったらしい。昨日のあの検証でかなり期待していたらしく、このスキルの詳細が分かるにつれてこうなっていったのだとか。

 最初に全力で蹴っていた時は発動していなかったのではなく、ちゃんと発動していたのだが、キックの最高威力を引き出すも何も、静止目標に完璧に当てるのは今までの実験で慣れているので……と言った感じだったそうだ。一応、申し訳程度に、蹴り始めの速度は上がっていたらしい。

 そのあとのあの踏み付け実験では、普通に踏んだ時と、全力で踏んだ時の威力差がちょうど5倍だったみたいだ。その分反動もあったようだが、《金剛体》を発動し続けていたため無傷。それらが合わさった結果が昨日のあの記録だったみたい。

 そして、同じように検証していた《指揮》は、かなりピーキーな性能をしているようだ。なんと、指示した内容と行動の間に、思考が挟まると効果が消えるらしい。

 例えば、目の前にサンドバッグが3つあって、「サンドバッグを攻撃しろ」って指示を出したとする。そして、指示を受けた側が、「どのサンドバッグを攻撃しようかな?」なんて考えた瞬間に効果が消える。さらに、「どうやって攻撃しようかな?」でも消えるのだそうだ。

 昨日の場合、攻撃対象が一個しかなかったこと。攻撃方法まで指定されていたこと。この二点のおかげで効果が発揮できた。ということらしい。

 実践においては、指示された側が、タイミングを見計らう。その動作と思考で効果が消えるので、かなり使いにくそうとのことだった。

 

「逆に言えば、ボスへの一斉攻撃を行う。といった場面では圧倒的な性能を発揮すると言っていいだろう。何せ、一斉に攻撃しろ。と言うだけでその指示を聞いた全員に強化が入るのだからね」

「そう考えるとすごいね……」

 

 攻撃対象が明確で、各々攻撃を準備している。そういう状態なら、攻撃しろというだけで、効果が発動する。だから、オークジェネラルはオークライダーとホースサウルスに対して《指揮》の効果を発動できたのだろう。

 それにしたって破格の性能してると思うけどね、そのスキル。

 

「まあ、自分には入らないんだが」

「それはそうじゃない?」

「よくないっす……私にも恩恵を……火力が……」

 

 しおしお顔の陽向が、ぶつぶつ呟き続けている。いや、陽向はなんでそんなに火力を求めてるの……? 確かに昨日の蹴りはすごかったけどさ。

 

「さっきから、ずっとこんな感じなの」

「火力至上主義にもほどがありますわ」

「しおれてる理由は分かったけど、なんで陽向を爆撃する流れに……?」

 

 彩音さんも花奈さんも、流石に呆れている様子。そりゃそうだよ、私も若干呆れてるし。

 でも、そこからどうやって陽向を爆撃するなんてことになるんだろうか。

 

「自分に向けて攻撃の指示を出すとどうなるのかの検証だよ。ダメージは《金剛体》で無視できるしね」

 

 倫理観って物はないのかな? あるわけないよね、知ってる。

 

「……一応聞くけど、結果は?」

「上がっていた。指示さえすればなんでも……いや待てよ? それならもしかして、回復や強化も同じように倍率が上がるのか?」

「強化魔法の効果が上がるなら、間接的には恩恵がございますが……」

「おお?」

 

 花奈さんの発言を聞いて陽向が若干回復する。確かに、理屈の上ではそうだろうけど、実際にやるとなったらかなり難しいと思う。ただでさえ、強化魔法で強化された後って強化された身体能力に適応するのが大変なんだから、下手するとその《指揮》によって上げた効果のせいでまともに動けなく可能性はある。昨日の朝の陽向みたいになる可能性すらあるのである。

 しばらくぶつぶつと独り言をつぶやき続けていた白石さんだったが、何かを思いついたようで一つ頷き、ポケットに手を入れたので、その手を掴む。いやな予感しかしない。

 

「なんだい夢希?」

「何しようとしてるの?」

「いや何、ここに回復魔法が使える冒険者がいるんだ、その性能を試すのうってつけじゃないか」

「美月ちゃん居るんだから自重して」

 

 今絶対にこの手につかんでいるのは刃物だ。絶対に刃物だ。自分の体を切るつもり満々だよこの人。流石にそんなスプラッタな絵面を美月ちゃんに見せるわけにはいかないので、説得にかかる。視界の隅では、彩音さんが美月ちゃんと私たちの間に入って会話を始めてくれた。ナイスだ。

 しばらく、私と見つめあった白石さんは、体から力を抜いてくれた。

 

「……ふむ、それもそうだね」

 

 ポケットから出した手には、何もなく私も一安心である。まったく、油断も隙もあったものじゃない……白井さんから離れて美月ちゃんたちの方に向き直ると、お目目を輝かせた美月ちゃんがこんなことを聞いてきた。

 

「夢希ちゃん、夢希ちゃんは魔法なら何でも使えるんだよね?」

「うん、そうだよ」

「ビームって出せる?」

「ビーム?」

 

 ビームか。ふむ……ぶっちゃけ、《魔力の矢》も細めのビームっぽい見た目してるとは思うんだけど、そういうんじゃなさそうだよね。こう、太目のどでかいビームの方が受けそうだし……よし、あれにしよう。

 杖を誰もいない方に構えて、魔法を準備。流石にほとんど使ったことないから、発動にちょっとかかっちゃうけど……よし。

 

「《マジックブラスト》」

 

 杖先の魔方陣から、青白い太いビームが発射されて、そのまま壁に直撃。横から、美月ちゃんと陽向の歓声が上がった。

 本来なら、結構威力がある魔法なんだけど、使ったことがなさすぎるので熟練度が……私の魔法ってそんなんばっかりなんだよな……でも、喜んでくれてるみたいだしこれでオッケーなはず。ちなみに、《魔力の矢》を順当に強化していって大型ビームにしたものなので、本来なら私はこれがメインになっていてもおかしくなかったです。

 その後私は、やたらとテンションの上がった美月ちゃんと陽向から、あれやこれやとリクエストされて魔法を放つマシーンと化した。

 あの、ダンジョン、行きたいんだけど……もうちょっと? そっかー……

 

 

 




年下にはめっぽう弱い
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