【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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ちょっと短いです。


配信に興味のない私と迷宮イモリ⑴

 

 今日は、渋谷ダンジョンに行くことにした。

 今まで食べていなかった、迷宮イモリを食べようと思っているのだ。最初は黒焼きにしてみようかなって思っていた。だが、流石にサイズがね。70センチのトカゲを丸焼きにするのは中々難しいので諦めた。中層と下層のイモリをそれぞれ解体して、食べ比べをしてみようかな。

 今日の夕飯はそういう計画だ。それと、今回はもう一つやりたいことがある。ナイフの製造である。

 私の使っているナイフも切れ味が落ちてきてるし、2人の分も必要だから、いっそみんなの分作ってしまおうかと思ったのである。お揃いになるしさ。

 素材はミノタウロスの角を使う。今回は、切れ味よりも耐久性を求めてるのでこのチョイスだ。元よりミノタウロスの角は、短剣や片手剣の武器素材として非常に人気の素材である。使うと、非常に強度が上がるんだそうだ。それにあやかろうと思う。ついでに、皮も集めて握りにしてしまおうと思ってる。鞘も角で作るつもりなので、全部ミノタウロスのドロップアイテム性のナイフになる予定である。

 鞘に掘り込みとか出来たらオシャレなんだろうけど、そんなことはできないので、今回はそのままである。『魔女の大鍋(コルドロン)』に趣味でやってる人はいるかもしれないけどね。

 というわけで、三人で渋谷ダンジョンへ。いつも通り、メインルートから外れた小部屋で配信を開始。

 

「……映像よし。音声よし。こんにちは、ユキです」

 

 "よし、助かる”

 "来たぜ…”

 "こんー”

 "今日は渋谷か”

 

 いつも通りだけど、本当にいつもいるよね、リスナーさんたちって。どうやってるんだろうか? 確かに、私の場合、配信の時間は結構固定されている。放課後にやるか土日にやるかだから、始まる時間はほぼ一緒ではあるんだけど……それでも、開始した瞬間にいるのはなんかもう、そういうスキルでも持ってるのか? と疑いたくもなる。

 実はずっとパソコンの前に張り付いています。なんてオチな気はするんだけどさ……

 

「今日は、迷宮イモリの食べ比べ、ミノタウロスのナイフ作りをするよ」

「おそろいのナイフ作ってくれるんだって」

「なんだか、悪いですわね、いつもいつも」

「私としては、一緒に冒険してくれるのが嬉しいよ」

 

 ニコニコ笑顔の彩音さんと、ちょっと遠慮しているような花奈さんが対照的。私としては、別に一緒にモンスター食べてくれるだけで嬉しいんだけどね。それに、今回のナイフ程度だったらなんの負担にもならない。元値はタダだし、ミノタウロス倒すのも2人だしね。私は多分その後ろで迷宮イモリを解体している。流石に彩音さんがあの武器を持っている上に花奈さんまでいたら、それだけで十分である。

 渋谷ダンジョンの下層は、そもそも迷宮イモリとミノタウロスしかいない。正確にはMr.クマもいるけど、あれは水の中にしかいないし。どちらも単体で動いていることが多く、たまにミノタウロスが数頭群れている程度である。個人的に、ミノタウロスの強さよりも、中層のホブゴブリンの群れの狡猾さの方が怖いと思っている。ミノタウロスには絡め手がないからね。

 ヤバくなったら私も参戦するし、撤退の判断が出来ないような人たちじゃない。そして、私の援護があるまで耐えられない人たちでもないし。

 

「ふふふ、みな同じですわね」

「うん、私もだよ」

 

 "てぇてぇ…”

 "友情!”

 "楽しく飯食っててくれ”

 "飯食ってるところ見せろ”

 "配信終わらせるなよ”

 "絶対だからな”

 

 この前のオークキングの食事風景を配信しなかったことを未だに根に持っているリスナーさんたちまでいるみたいだ。そんなに根に持たなくてよくない?

 

「根に持ちすぎでしょ……」

「まあ、今後もある可能性はありますし……」

「そんなことあるのかな? ローストした方が美味しそうなお肉とかってことでしょ? うーん……」

 

 彩音さんが、そんなことあるのか? と聞いてくるが、割とすぐに答えられる。そのモンスターはある意味、私の冒険の山場であるはずだからだ。

 

「ドラゴンかな」

「それはローストの方がよさそう!!」

 

 反応はや。でもそうだよね。ドラゴンはローストした方がよさそうな気がするよね? もちろんステーキでもいいんだけど、ローストの方がさ、低温調理の柔らかな感じ出ていいよね……

 

 "ドラゴンも食うのかぁ…”

 "まあ、ドラゴンは食うよな”

 "なんで当たり前みたいになってんだよ”

 "創作物だとありがちだしな、ドラゴン肉”

 "ファンタジーの定番だよな”

 

 これくらいで最初の雑談は終わりにして、ささっと中層まで降りる。今回は2人を抱えて落とし穴へダイブする。浮遊魔法で落下速度を落とし、そうして稼いだ着地までの時間で《爆破魔法(エクステンド)》を乱射する。2人くらいのレベルになったら、そんな事気にしなくても着地で怪我とかしないんだけど、その場合殲滅するのが間に合いそうになかったんだよね。流石に爆発に巻き込むわけいかないしさ。

 爆音が何度か響いて、部屋の中のモンスターが居なくなったのを確認して通路に出る。うん。やっぱりこれが一番早い。

 

「なるほど、こんな方法で毎日回っておられたのですね?」

「うん。あの当時は下に降りないでまた上に戻ってたけどね」

「これは本当に真似できないよ……」

 

 "マジで誰が出来るんだよこの方法”

 "出来そうな人思いつかねーけど、いてもおかしくなさそうではあるんだよな…”

 "浮遊魔法使わなくても、落とし穴開けて、中に適当な魔法ぶちまけるだけで行けそう”

 "落とし穴を落ちずに開けるのが無理という罠”

 "そこはこう、がんばってもろて…”

 

 同じようにショートカットを繰り返して、あっという間に中層へ。部屋から出たところにちょうどよく迷宮イモリがいたのでサクッと仕留める。よし、これで片方確保。さ、また落ちるよー。

 そんな感じであっという間に下層までたどり着き、いつも使っている池のある小部屋を目指す。道すがら、下層の大きな迷宮イモリが出てきたので、彩音さんに任せる。

 

「……なんだか懐かしいですわね」

「うん?」

「迷宮イモリにタイマンで挑むアヤネさんというのが、ですわ」

「ああ……でも、あの時と全然違うよ」

「そうですわね」

 

 "なつかしいわー”

 "今思えばあれ一か月前なんだよな…”

 "めっちゃ近くて草”

 "ここ最近が濃すぎなのよ”

 "あの時は喧嘩になるんじゃないかと怖かったぜ…”

 "ユキちゃんズバズバ言ってたなぁ…”

 

 花奈さんはリスナーとして見ていたみたいだ。初めて彩音さんと潜ったとき、彼女にタイマンをさせたことを。あの時はかなりぐだぐだな戦いになってたけど、今は違う。

 視線の先では、迷宮イモリが彩音さんにとびかかろうとぐっと力を込めたところだった。そのタメを隙と見た彩音さんが一気に距離を詰めて、頭にハルバードを振り下ろす。

 迷宮イモリの頭はそれなりの強度があるから、今までだったら無理だったろうけど、今なら多分……

 

「《地砕き》!」

 

 武器の能力まで使ったその一撃は、迷宮イモリの硬い頭を両断するだけではなく、余波でそのまま尻尾の方まで切断してしまった。やっぱりあのユニーク武器とんでもないなぁ……《地砕き》に合わせて魔力の刃みたいなのが飛んでったよ。

 それにしても、彩音さんは本当に迷いがなくなったよなって思う。鬼灯から、色々考えちゃってその分遅れてるって聞いてたし。あの時とは本当に大違いである。

 

 "つっよ!?”

 "あの時とはマジで違うなぁ…”

 "武器性能と本人の殺る気でここまで違うか…”

 "まさかの一撃である”

 

「あっ、ごめん! これ食べられないよね!?」

「そうだね、もう一頭行こうか」

「うん!」

 

 慌てている彩音さんだけど、そのペースだったら別に気にしなくていいくらいだよ。あ、次はミノタウロス。これも、前は苦戦してたけど、今じゃ《地砕き》で一撃だもんね。武器性能の差が凄まじい……

 ミノタウロスはドロップアイテムが複数必要なので、花奈さんと2人でどんどん狩ってもらうことにした。そもそもハイオークの群れを2人で捌けるんだから、心配するだけ無駄だったかな。迷宮イモリも、今度は首を切断して仕留めてくれたので、これで晩御飯は確保。

 そして、ミノタウロスの方なんだけど……

 

「また皮だよぉ!!」

「角が落ちませんわね……」

 

 "まさかの物欲センサーw”

 "今どんな感じだっけ?”

 "角1、皮12”

 "こーれはやってますわwww”

 "ひっでぇ偏り方で草”

 

 もう本当に角が落ちない。最初の方にポロっと1個落ちただけで、あとはずっと皮。こんなに要らないよ。持って帰れないんだから! 素材の回収の依頼とかなんでか私たちのところに回ってこないんだから! 今度、金守さんに直談判しようかな……

 彩音さんも花奈さんも、流石にウンザリしてきてるし。まあ、文句言いつつ、今やってきたミノタウロスを当たり前のように撃退してる辺り、たくましい限りだよ私のパーティは。今度は何もなし。うーん、この。

 

 この後、角があと2本落ちるまでの間に皮が10枚落ちた。倒した頭数は……うん、聞かないでほしい。良いレベリングになったと思おう。

 

 

 

 




金守「君に任せると、それにかこつけて凄まじい量持ってきそうだから止めてる」
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