【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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飯テロになればいいな♡




配信に興味のない私と迷宮イモリ⑷

 

 テーブルの上に並んだ、迷宮イモリ料理たちとスープとお酒。

 2人が何から食べるか知らないけど、私はまずは棒棒鶏から行こうと思う。

 キュウリ、レタスと一緒にイモリをパクリ。おお、しっとりしているし、上質な脂を感じられて美味しい! 棒棒鶏の酸っぱめのタレのおかげで、脂っこいとかも感じないし。ふむふむいいぞこれ。本当に美味しい鶏肉って感じだ。

 まあ鳥じゃなくてトカゲ……というか、イモリだけど。いや、命名者が間違えただけだからヤモリ……? まあ、美味しいならなんでもいいか。

 くだらないことに思考がすっ飛んで行った間に、2人は楽しんでいた。

 

「うん、棒棒鶏が美味しい! 油淋鶏はどうかなー?」

「んんー……! 油淋鶏とハイボール。最高ですわね……」

 

 彩音さんはニコニコと食べ進めているし、花奈さんはお酒をメインに据えてるし。彩音さんの分のお酒を注がれているけど、今のところノータッチ。飲むよりも食べることを優先してるね。彩音さんは本当に、美味しそうによく食べるからね。こっちも作り甲斐があって嬉しいよ。

 さて、ちょっとコメント覗いてみようかな。最近になってやっと、スマホカバーの後ろについてるリング状のパーツを使って、机に斜めにおけることを知ったからね。見やすくていいよね。

 

 "やっぱこれよ”

 "マジで美味そうに食うからいいんだよ”

 "これが見たくて見てんだよ”

 "だから、ここをお預けとか許せんよなぁ?”

 

 ……うん。私にはその需要に対する感情は理解できないけど、需要そのものは理解したよ。今後はちゃんと食べるからね。変に詰め寄られるのも嫌だし。

 でもなぁ……自室で配信とかしたくないしな。どうしたものか。前みたく隠してしまってもいいかもしれないけれど、見たいのならダメだしなぁ……

 配信者の人ってよく自宅で配信とか出来るよね。プライベートな空間を見ず知らずの他人に見せるなんて、私には出来ないよ。まあ、それ用の部屋とかあるのかもしれないけどさ。

 さて、次は油淋鶏食べちゃお。さて、こっちはどうかな……ん。こっちも美味しいね。特にネギと相性がいい。レタスもいいけど、特にソースに使ったネギと相性がいいなぁ。あと、上手く揚げ焼きにできたおかげか、表面がパリパリでいい。皮目だけじゃなく、全体的にこんな感じということが分かったのは、結構な収穫かも。それに、茹でる感じじゃないからちょっとだけ不安だったけど、これなら問題なし。外に水分が出ないようにやれば美味しく調理できると。

 この感じだったら、次は唐揚げにしてもいいし。すごくジューシーな唐揚げが……そういえば、どこかには丸々一羽揚げる。なんて料理があったし、それに倣って大きく揚げてみようかな? これなら、そもそもの肉の塊のサイズが大きいから、調整もしやすいし。

 油淋鶏をパクパク、そして棒棒鶏をむしゃむしゃ、たまにスープで口をリセットして……と楽しみながらコメントを見ていたら、とあるコメントが目にとまった。

 

 "一人でサラダチキン食ってるのむなしくなってきた…”

 

 あー……一緒に食べるよって人たちも一定数いるみたいだね。それにしても、サラダチキンのみを一人で食べるのは、うん。せめて何か料理を食べようよ。サラダチキンだって、あくまでも材料であってそのまま食べるものじゃないよ。

 私から何か出来ることもないので、スルーする方向で。と思っていたのだが……

 

 "チキンニキぺしょぺしょで草”

 "チキンニキはやめてやれwww”

 "意味変わっちゃったwww”

 "あまりにも酷いあだ名で草”

 "お前ら、許さんからなぁ!!”

 "コケコ、コケッコケコッコー!”

 "やwめwろwww”

 "煽るな煽るなw”

 "あー、もうめちゃくちゃだよ…”

 

 コメントでリスナーさんたちが大盛り上がりである。もうさ、なんだろうね……鯉を思い出すよ。公園とかの池にいるやつ。餌をまくとすごい勢いでわらわら集まってくるあの感じ。人に向かって抱くには、あまりに失礼な感想だとは思うんだけどさ。

 まあ、それは置いておいて、流石にチキンニキってあだ名は酷いので、釘だけ刺しておく。 

 

「流石にそのあだ名はやめてあげてね」

 

 "はい!”

 "ハイ辞めます!”

 "お前らwww”

 "とても素直…”

 "この統率力が売りです”

 "どこに売るんだよ”

 

 リスナーさんたちがとても素直……ありがたい限りだけど、このままいくと、そのうち愛依みたいにママとか呼ばれたりしないか心配になってきた。素直なのはいいことなんだけどさ。

 

「本当に、統率力が素晴らしいですわよね、この配信は」

「カナちゃんから見てもそう見えるんだ」

「ホオズキもそんなこと言ってたね」

 

 花奈さんのしみじみとした感想に、彩音さんが反応して、私はいつぞやの鬼灯の発言を思い出していた。曰く、本来はもっと無秩序でたまに酷いのが湧いてくるのが一般的であると。

 

「わたくしから見てもというよりも、配信を見たことのあるものほど同じ感想を抱くと思いますわ」

 

 "それな?”

 "とはいえ、少人数のとこってこんなんじゃない?”

 "少人数でも、こういうところって少ないから…”

 "宗教染みてるところとかあるしな…”

 "リスナー同士でコミュ取っても何も言われない配信はここしか知らん”

 "少人数の方が統率取れてるのは間違いないとは思うが…なぁ?”

 

 花奈さんの意見に、リスナーさんたちも同意見と。それはそれとして、人数が少ないところの方が統率が取れているんだね……言われてみたらそりゃそうかって感じなんだけど、意外なような気もする。大人数の方が一体感すごそうだけどなぁ。

 それにしても、よくわからないのが、リスナー同士のコミュニケーションで何か言われるってどういうことだろうか? 特に何か言うことある? さっきみたいなのは別にしてもさ。

 

「そういえばさ、リスナーさんたちがコミュニケーションとっちゃダメってどういうこと? 別によくない?」

「よくありませんわよ、ユキさん。あくまでも配信の主体は配信者。それをそっちのけでリスナー同士で会話を始めたらどう思います?」

「……別にいいんじゃない? 端から見るだけでも楽しいよ?」

 

 どうって言われても……うん。別にいいんじゃなかろうか。他人の会話って端から聞くだけでも楽しいし……この場合は見るだけど。たまにちょっとだけ参加しながらお話すればそれでいいと思うけどな。

 

 "でしょうねぇ!?”

 "ユキちゃんに聞くのは間違ってるぞ実食ネキ”

 "そうだぞ。基本的に全部アヤネさんが会話回してたんだぞ”

 "挨拶し始めたのすら最近だぞ”

 

「カナちゃん、聞く人を間違えてるよ……」

「……ええ、そうですわね……」

 

 何故だか彩音さんから慰められてる花奈さんと、天井を向いてしまった花奈さん。私の答えってそんなにダメだったかなぁ……?

 

「そんなに変な答えだった?」

「はい」

 

 花奈さんに間髪入れずに断言された。そっかー、変だったかぁ……

 ちょっと落ち込んだけど、そのあとに花奈さんからフォローが入った。

 

「とはいえ、ユキさんは配信こそしておられますが、一般的な配信者ではないですし、それが味ですからそれでよいと思います」

「……じゃあ、一般的にはどうなの?」

「ユキさんにも伝わるようにとなりますと……そうですわね。教室の前で自分一人が発表をしているのに、誰一人として聞いておらず、クラスメイトが騒がしく話している……というような感じでしょうか」

 

 花奈さんの例えでわかった。それは嫌だ。疎外感がすごい。そうか、そんな感じなのか……私の感覚としては、とっても大きな食卓があって、そこに一緒に座ってる人たちというか。話し声も聞こうと思えば聞けるけど、別に気にしないというか。ともかく、距離が違うんだなって思った。

 配信者の人たちが前に立ってみんなに話すような距離なら、私は横に並んで座ってるみたいな感じなんだ。

 そっちはそっちで楽しんでね。私たちも勝手に楽しむから。たまに会話もしようね。くらいの距離だもん。それは一般的な答えとかけ離れた答えになるわけだ。

 と、ここまで話したところで、花奈さんのスマホが鳴った。音的にアラームかな?

 

「おっと、もういい時間ですわね。最後に火を、10秒ほど強火にするんでしたわよね?」

「そうだよ。でも、気を付けてね。勢いあまってターボになると大変だからね」

 

 "ターボ!?”

 "まだあったのかそのコンロwww”

 "出ました。武器です”

 "調理器具じゃねーもんな”

 "返してきなさい!”

 

 花奈さんがお焦げの作り方を聞いてきたので肯定するついでに、注意事項を話した。すると、花奈さんは火力調整用のツマミをつまんだままこっちをにらんでくる。

 

「……何故、そのコンロをわたくしに渡したのですか……!」

「だってそれが一番大口のコンロだし……」

「それは、そうですが……!」

 

 花奈さんが苦し気に顔をゆがませているけど、こればっかりはどうしようもないので諦めてほしいなぁ……

 いや、白石さんに返そうとも思ったんだけど、これはこれで、今あるコンロ三台のうちで一番大きいコンロなんだもん……料理前に《錬金》用の大鍋温めてたのもこれである。一応、ターボ機能を外したもの作ってほしいとはお願いしたんだけど、いつになるのやら……今の白石さんは陽向の研究でうっきうきだからね……

 そのあと、特に火炎放射とか発生することなく、土鍋を開けるときが来た。緊張するなぁ……

 えい。わ、いい匂い! イモリとネギと生姜で、こんなに中華風の香りがするのが不思議だ。

 

「あ、いい感じ」

「わーいい匂い!」

「これは美味しそうですわね……ところで、この後どうするのです?」

「え、混ぜるんじゃないの?」

 

 まあ、ご飯の上にどでかい切り身がデンと置いてあるわけだしね。当然の疑問だと思うよ。だがしかし。これは混ぜないのだ。結構意外だけど。混ぜないのである。

 まず、こちらの切り身をよけまして、まな板の上に置きます。次に、ネギと生姜を取り除きます。これらは申し訳ないが食べない。臭み消しだしね。そして、いつものようにご飯をよそって……最後に、切り身を適当なサイズに切って、ご飯の上に並べて完成! あとはお好みでこっちのソースをかけて味を調整してもらう。

 中華風カオマンガイの完成である。材料が迷宮イモリだけども。とりあえず、カオマンガイということにしておこう。タイ語でイモリのことなんていうのかわかんないし。そもそも何が鳥なのかもわかんないけど。

 

「これで完成。こっちはお好みでかけてね」

「わー!! 本当に美味しそう……」

 

 "いや美味そうだなこれ”

 "調理法簡単だし、美味いぞカオマンガイ”

 "どこの料理それ”

 "タイ。鳥の脂すった米を甘辛味噌だれで食うやつ”

 "ガチで美味いやつじゃんそれ”

 "それの中華風ってことね”

 

「ふふふ。では……」

 

 花奈さんが手を合わせるのに合わせて、私と彩音さんも手を合わせる。いや、さっきやったんだけどね。様式美というかさ。

 

「 実 食 」

 

 肉は……あとでいいか。まずはお米! おお、肉の脂をまとっているからか、輝いている……こ、これは美味しそう……はむ。

 

「!」

「おいひい~……」

「美味しいですわね……くぅ、これもハイボールが最高ですわ!」

 

 "美味しいとわかった瞬間、無言で掻き込み始めるユキちゃん”

 "幸せそうに噛みしめながら食べてるアヤネさん”

 "酒を飲んでる実食ネキ”

 "うーんこの”

 "いい感じに分担出来てるやん”

 "それはそう”

 

 いやこれ、お米が本当に美味しい。肉の脂とか旨味とか、全部吸ってる。噛みしめるごとに旨味が出てくる感じ。ちょっとだけ脂っこいけど、チャーハンみたいなものだと思えば気にならない。お米だけでも食べられちゃうけど、あくまでもメインは肉。肉と一緒に食べてみよう。

 うん、肉と一緒に食べても美味しい。肉自体からは、味こそするものの、お米ほどの旨味は感じない。お米に全部吸い取られたか……でも、おかげでお米の脂からしつこさが消えていく。うーん、美味しい。お焦げのパリパリ感もいいアクセントだ。美味しい。

 最後にソースもちょっとかけてみて……む? これは味が全然違うぞ。一気に中華になった。さっきまでは、中華風の香りがするだけだったのに、これは完全に中華料理である。ちょっと味は濃くなったけど、これはこれで……あぁ、スープとよく合うなぁ……

 食べ終わるまでほぼ会話もなしに食べてしまい、食べ終わってからゆったりと食休みとして、雑談をしてから渋谷ダンジョンを後にした。今回は大成功だね。陽向へのお土産も出来たし。

 

 

 




次回は炊き出し(謎)になる予定です。
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