【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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馬が暴れる回です


配信に興味のない私と馬と蜻蛉と人間2人⑵

 

 何はともあれ合流できたので、そのままダンジョンの中へ。入るときに、入り口にいたギルドの職員さんと、冒険者とかが浜面さんにおびえていたけど、当人は慣れているのかどこ吹く風だった。

 

「なあ、配信中って、下の名前で呼び捨てが基本……なんだよな?」

「そうなります」

「まじか……」

 

 何故だか、浜面さんが額に手を当てて天井を見上げてしまった。何か問題があっただろうか。

 

「えっと、練習、練習させてくれ。ユキ、あ、アヤネ、か、カナ……うおぉぉぉ……」

 

 なんだか、浜面さんが苦悩している。名前呼ぶだけじゃん、何でさ。その様子を秋津さんは白けた目で見ていた。

 

「……変なこと考えてる……」

「変ってなんだよ! 男子にとってなぁ、女子の名前呼ぶのは結構な大事なんだぞ!?」

「……理解不能……」

 

 浜面さんが力説するものの、秋津さんにばっさりと切り捨てられてしまう。

 そういえば、確かに学校でも男子から名前で呼ばれたことないかも? 女子だとたまに初手から名前で呼んでくる子とかいるけど。

 

「……そういうもの?」

「割と一大イベントだったりするかも?」

「恋愛描写の入り口になるくらいには大事ですわね」

 

 じゃあ大事だ。でも、苗字で呼ばれるとフルネームになっちゃうので浜面さんは下の名前で呼んでください。

 あ、平等になるように私たちも名前で呼ぶとか――

 

「やめてくれる???」

 

 なんだかすごく切実に止められたので、やめることにした。つぶらな瞳をウルウルさせて見つめないでほしい。大きさとのギャップが凄まじい。

 そんな気の抜けた会話をしながらダンジョンの中へ。いつも通り脇道に逸れて配信を開始する。

 

「……映像よし。音声よし。おはようございます、ユキです」

「アヤネでーす。おはようございます!」

「カナですわ。おはようございます」

 

 "おはー”

 "また奥多摩で草”

 "草しか見えねぇ”

 "また果実集め?”

 

 うーん、相変わらずみんないるね。そんなに私の配信が中心にある生活してて大丈夫なんだろうか……? 大丈夫だと信じたい。

 

「今日はホーネットクイーンを倒しに行くよ。そして、蜂蜜を探す」

 

 "蜂蜜かぁ…”

 "あんのかなぁ?”

 "というか、当たり前のようにボス倒す気で草”

 "レベリングで眷属召喚してこなくなるまでボコボコにしたボスだぞ”

 "そういやそうだったwww”

 

 今日の目標まで話終えたので、今日のゲストを紹介する。いや待て、浜面さん大きすぎて入らないかも!? え、えっと、こうして、こうすれば多分……入った!

 カメラの視界にちゃんと浜面さんを入れるのに四苦八苦しつつ、なんとか全身を入れることに成功する。

 

「それと……今日はゲストがいるよ」

「よお、ハマヅラだ。よろしくな!」

「……アキツ。よろしく……」

 

 "え!?”

 "でっっっっっか!?”

 "見た目が魔王軍すぎる”

 "アキツちゃんちいさ…いか?”

 "分からん。ハマヅラがデカすぎる”

 

 浜面さんは片手を上げながら、秋津さんは直立不動で。性格が分かりやすいね。

 リスナーさんたちも浜面さんのインパクト満点な姿に驚いているし、確かに話題にはなりそうだよねぇ……まあ、この配信にはそういう要素は必要ないので、あんまり関係ないけども。

 

「2人とも『魔女の大鍋(コルドロン)』の探索部門の冒険者だよ」

「他の連中は分からんが、たまに出るかもしれんからよろしくな」

 

 "今更なんだけど、ハマヅラさんはこれ…ケンタウロス?”

 "アキツちゃんはなんぞ?”

 "人外系いいぞ~”

 "羽は虫系っぽいけどな”

 

「おう、ケンタウロスだぞ」

「アキツさんはトンボだよ」

「……ぶい……」

 

 両手で小さくピースする秋津さん。やっぱり、この人はマイペースなんだと思う。しかも結構ノリで生きてるタイプ。

 

 "ピースかわよ”

 "マスクと衣装がくのいち感あっていい…”

 "メンバーカオスすぎんだろ”

 "ハマヅラさんサイズなんぼなん?”

 

「この前測ったときは312センチだった」

「わたくしのほぼ倍ですわね……」

「私とユキちゃんが縦に重なったら、ギリギリ勝てるね」

「本当にギリギリだけどね」

 

 いや、改めて数字で示されると、本当に大きいね。いや、312センチって……

 花奈さんは158とのことだったので確かに倍くらいだし、彩音さんと私は足したら315だから、本当にギリギリだよ。

 

「ちなみに、バスケのリングが305な」

 

 "でっかwww”

 "そらでかいわ”

 "持ってる槍ですらアヤネさんよりでかいもんな…”

 "サイズ違いすぎて笑うわマジで”

 

 浜面さんからの補足情報で、どれだけ大きいのかがよく分かった。あれより高いのか浜面さん。ということは、バスケのゴール前に浜面さんが居たらもう勝ちなのでは?

 

「ま、雑談はこの辺にしてだ。とりあえず……上層は突っ切るか。面倒だしな」

「そのつもりですけど……」

 

 くっだらないことを考えていたが、浜面さんの声で現実に帰ってくる。

 上層を突っ切るのはもう考えていた。ここの本番は下層なので、そこまでに余計な消耗は避けたい。そのために、上層は一気に駆け抜けるつもりでいた。

 私の発言をどうとらえたのか、浜面さんが蹄を鳴らしながら自分の背中を指さす。

 

「ああいや、そうじゃなくて。あ……アヤネとカナは俺の背中に乗れ。アキツと、ユキは飛んで来い」

「……了解……」

 

 "え、名前呼びなんですか!?”

 "そらお前、苗字言ったらフルネームバレるし…”

 "それな???”

 "それはそれとびっくりはしたけどな”

 "お前らな、俺たちも名前で呼んでるだろ…”

 "俺らはいいんだよ”

 "何様だよwww”

 

 浜面さんの指示のもと、彩音さんと花奈さんが浜面さんの背中に乗る。背中も鎧で覆われているので、座ったら痛そうだから、立ったままなんだけど……それでも、2人と頭の位置が大体一緒って本当にサイズ感がおかしいよ……絵面だけ見たら軽トラに乗ってる感じだもん。

 秋津さんも羽を軽く動かして宙に浮いたので、私もそれに倣う。うん? 今、秋津さんが飛ぶとき、音しなかったよな……?

 

「しゃ、いくぜっ!」

「えっ!?」

「は、はやっ!?」

 

 秋津さんに気を取られていたら、浜面さんが早々に走り出し、秋津さんもそのあとを追うように低空で飛び出した。慌てて後を追う。

 

 

 凄まじい速さで中層へ続く階段へと到着した。いや、本当に速かった。一瞬追いつけなくなるかと思ったもん。

 

「到着だな」

「す、凄まじい速さでしたわ……」

「ブルヒヒンッ! だろぉ?」

「すっごい楽しかったです!」

「なら機会があったらまた乗せてやるよ」

「ホントですか!?」

 

 "くっそ早くて草”

 "あまりの速さに驚愕を隠せない”

 "全身鎧+あのサイズの槍+装備品込みの冒険者2人乗せてあの速度はやばい”

 "あれ? 想像以上にバケモノなのでは…?”

 

 花奈さんが速さにびっくりして足が震えている一方、彩音さんは目をキラキラさせている。彩音さん、こう言っちゃあれだけど、『魔女の大鍋(コルドロン)』適性高いよね……?

 ちなみにだが、道中、すべてのモンスターは浜面さんが()()()()()()()()。文字通りに轢いたのである。フラーラも悪魔のトゲも、全部轢き殺して終わりである。大蜘蛛に至っては、落ちてくるのが遅すぎて通りすぎちゃったしね。

 大きなケンタウロスって、それだけであんなに強いんだね……びっくりしちゃったよ。

 ともかく、上層はとんでもない速度で突破する事が出来たため、中層攻略に向かう。

 奥多摩ダンジョン中層は、上層からさらに植物が成長したようなエリアで、大きな樹とか花がそこかしこにある。花なんて、1メートルくらいはザラである。ただ、何故か果実を実らせたりはしないので、本当にただ咲いているだけのよくわかんない花である。花粉には毒があるものの、別にまき散らしてくるとかでもないので、やっぱりただ咲いている感じだ。また、天井がさらに高くなり、樹の上まで飛ぶことが出来る。1人で来ていた時は、上からびゅーんと下層まで飛んで行ったものだ。

 ここに出てくるモンスターは、トレント、フラワーマンティス、アーマービートルの3種類である。たまに、下層からキラーホーネットがやってくるけど……

 アーマービートル以外のモンスターは待ち伏せが基本のモンスターなので、結構面倒くさい。トレントは普通の樹に見えるように擬態したモンスターで、近づいた獲物を手でつかんで食べる。地味に口がある。しゃべったりはしない。フラワーマンティスは、まんまハナカマキリだね。巨大な花に擬態しているモンスターで、本当にカマキリが巨大化した感じである。鎌攻撃には注意は必要だけど、そこまで脅威じゃない。待ち伏せしているのが面倒なだけで、そんな変な行動してこないし。アーマービートルは、2メートル近い巨大なカブトムシである。巨体を生かした突進攻撃が主体のモンスター。甲殻が硬くて、生半可な攻撃だと弾かれてしまう。地面をのっしのっし歩いているのだが、甲殻が深緑なせいで意外と見えにくいとかいう面倒なモンスターである。

 総じて、面倒くさいエリアなのが、奥多摩ダンジョン中層なのである。いや、このダンジョンに面倒じゃないエリアってないんだけどさ……

 

「さて、俺の力ってやつをちゃんと見せますか……」

 

 槍をぶんっ、ぶんっと振り回しつつ、浜面さんが前に出る。いや、十分示してませんでした……?

 

 "あれだけ暴れたのに!?”

 "背中だけでも威圧感ヤバ…”

 "ま、まあ走っただけやし…”

 "だけって言っていいのかなぁ…?”

 

 それはともかく、私たちからしても、浜面さんがどれくらい強いのかを確認させてもらえると嬉しいから、暴れてくれるなら文句はないんだけどね。実際どうなるのやら。

 

「ふむ……よし、やるか」

 

 しばらく浜面さんを先頭に、その後ろに花奈さん彩音さんの順で地上組が歩き、その上を空中に浮かんだ私と秋津さんが左右に分かれて見守るという、中々見ない陣形で移動していた。特にモンスターと出くわすこともなく、暇なのか秋津さんが両刃剣でバトントワリングをし始める中、前方に花が密集して生えているエリアを発見して、浜面さんが立ち止まる。

 あれは、フラワーマンティスが密集してるのか……6体もいるけど、どうするつもりなんだろうか?

 

 "槍構えるのくそカッコいいなマジで”

 "重装騎兵だもんなぁ…”

 "人馬一体とはまさにこのこと…”

 

「《グランドスイング》!!」

 

 浜面さんがいきなり前にとびかかって、スキルを使った大槍の横一閃。擬態していたフラワーマンティスたちは轟音とともに()()()()()()。一匹残らずである。ついでに、風圧で周囲の樹が何本か折れた。

 ち、力任せすぎる……あまりの光景に彩音さんたちも固まってるし。秋津さんは未だに武器で遊んでるけども。あの、その、羽動かしてるのに無音なのと、まったく動かないでホバリングしてるの、どういう原理なんです……?

 

 "パワーありすぎぃ!!”

 "槍叩き付けて爆散させるのやばぁ…”

 "ふぁーwwwwww”

 "あ、他にも来てんぞ”

 

「ん? ふんっ!!」

 

 音につられたのか、アーマービートルが3匹やってきて、1匹がすぐに浜面さんに突進した。が、それをものともせず、体で受け止め、そのまま投げ飛ばしてしまう。残りの2匹のうち1匹を飛び上がって踏みつぶし、もう1匹は槍で叩き潰し、投げ飛ばした1匹に槍を投げつけて串刺しにしてしまう。

 あまりの無法っぷりに唖然としてしまう。え、えぇ、浜面さんってこんなに強いの……? アーマービートルの突進で微動だにしないのは本当に何……? 2メートルの突進だよ? 軽トラにぶつかられるみたいなもんだよ?

 

 "つっよ…”

 "踏みつぶせるんだアレ…”

 "すげぇグロい音したぞ…”

 "あいつの突進ノーダメはヤバすぎて草”

 "マジで魔王軍幹部でしょこれwww”

 

 大槍を回収した浜面さんは、今朝のように、歯を見せてニッと笑い、こちらに親指を立てた。

 えっと、もしかして、『魔女の大鍋(コルドロン)』の探索部門って、とんでもない人材の宝庫だったりするのだろうか……

 

 




次回は蜻蛉が暴れるところを書きたい!

もしかしたら、明日はお休みの可能性があります。
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