【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とパーティの戦い方

 

 なぜだか怯えている彩音さんと一緒に上層を歩いていく。今日は1日時間があるから、のんびり行く予定だ。午前中に下層に付けばそれでいい。くらいの気持ち。しかし、彩音さんのレベリングをする以上、彼女に消耗されても困る。よって、道中は全て私が吹き飛ばすことにした。威圧するのも考えたけど、それで彩音さんの方に行かれても困るし。

 

「…………あのさ、ユキちゃん」

「何、アヤネさん?」

「それ、ホントに、《魔力の矢》……?」

「そうだよ」

「ホントに……?」

「うん。本当に」

「そっかー……リスナーさんたちー?」

 

 "諦めないでくれアヤネさん!!”

 "アヤネさんからしてもやっぱ意味分からんかー”

 "誰にも意味わからんやろ”

 "絶対遠い目してるゾ”

 "貴重なツッコミ要員なんだから負けないで!”

 

「リスナーさんたちからしても意味分かんないんだ……そっかー……」

 

 彩音さんがスマホ片手に遠い目をしている。あ。後ろからゴブリンが……蹴りで一撃。なかなかいい動きしてる。パーティで下層に潜っていただけあるね。でも、危ないよ?

 

「アヤネさん、スマホ見ながらは危ないよ」

「配信してる人にあるまじき発言だと思うな?それ」

「つい最近まで挨拶すらしてなかったし、平気だよ」

「それはダメじゃない!?アーカイブないから知らなかったけど!」

 

 "言ったれ言ったれー”

 "ツッコミが冴え渡るな…”

 "まぁ、配信の体は成してなかったな確かに” 

 "ユキちゃん配信自体あんま好きじゃなさそうだしね”

 "最近はちゃんと挨拶とかしてるから(震え声)”

 

 彩音さん……元気になってくれて良かった。疲れてるみたいだったら、レベリング辞めようかなと思ったけど、この感じなら大丈夫そうだ。安全性なら任せて欲しい。ソロでやるよりはずっと安全に出来る。

 

「これで上層は終わりだね。ここから中層だから、本当にスマホしまおう?」

「危ないからしまえって意味なのは分かるんだけど、なんか納得いかない……」

 

 何に納得がいってないんだ彩音さんは……?私は正しいことしか言ってないはず……やっぱり、他の人との価値観のズレを感じる…!私が悩んでいる横で、彩音さんはスマホをしまって武器を構える。身長より長いハルバードを、手首だけでくるりと回せるのスゴイな。私がやったら捻挫しそう。

 

「ここからは私が前行くね?」

「なんで…?」

「パーティの動きの練習。いきなり下層だと余裕がないでしょ?」

「……うん。分かった」

「それと、最初は私だけで戦うから、私がどう動くのかよく見てて?」

「うん」

 

 "納得いかねぇよなぁ!?”

 "この配信(?)に絶対必要な人材”

 "必要な人材(ツッコミ)”

 "パーティの練習かー”

 "アヤネさん、常識教えたってくださいよ!”

 

 とりあえず、彩音さんの後ろに移動。《魔力感知》スキルの感知範囲には今のところ50体くらいいるけど、彩音さんどうするんだろう?さっきまでと雰囲気が違って、ちょっとピリついてる。そこの曲がり角に3体いるんだけど、気付いてる…っぽいね。

 彩音さんが、おもむろにハルバードを横に倒した形で構えて、腰をひねる。そのまま曲がり角に飛び込んで一閃。同時に私も後ろをついて行く。

 

「せいっ!」

 

 お見事。3体同時に首をはねてる。撃破したのは、中層に一番多いモンスターのホブゴブリン。ちょっと大型のゴブリンって感じのやつ。時たま上層にもやってくるやつで、強さ的にはそうでもない。こうやって他人の動きを近くで見ることなんてほぼないから、結構新鮮だ。

 

 "おお、マトモだ……”

 "すげぇマトモにモンスター倒してる…”

 "普通こうだよなぁ…?”

 

「………あのさ、ユキちゃん」

「なに?」

「なんでそんなぴったりくっついてるの……?」

「……?よく見ててって言ったよね……?」

「言ったけど、近いって!せめて武器の範囲の外にいて!?」

「あ、ごめん」

 

 確かに。危ないもんね。私は別にダメージ通らないけど、彩音さんが振り抜けないのはマズい。なので5メートルくらい離れる……いや遠いかな。3メートルくらいに……

 

「もうちょっと離れて」

「はい……」

 

 大体5メートルくらいの距離で付いて行くことになった。後ろに下がることも考えると、このくらいがいいそうで……勉強になることばっかりだ。

 

 "予想以上にダメだこれwww”

 "ソロ専な上に魔法職だもんなぁ…”

 "想像以上に近接職のこと把握してないな…”

 "そもそも、魔法職はソロするもんじゃない定期”

 "それはマジでそう”

 

「あの、索敵頼める?」

「周囲に47体いるね。ホブゴブリンの群れが4つと、ハウンドドッグの群れ3つに、ダンジョンブーブーの群れが2つ。あとはバラバラに迷宮イモリ」

「そ、即答……えっと、どのくらいの範囲索敵してるの?」

「大体半径250メートルくらい」

「……それ、常にやってるの?」

「うん」

「……ものすごくありがたいけど、戦闘中にその範囲で索敵した情報伝えないでね?絶対混乱するから…」

「……?そうなの?」

「こっちに向かってきてるモンスターとか、移動方向にいるモンスターの情報だけでいいから」

「わかった」

 

 索敵についての指示はよく分からないけど、そんなに混乱するものなのかな?普段からこうだし、下層や深層だと、もっと範囲広げてないと危ない気がするんだけど……。とりあえず、彩音さんの指示には全部従う。彩音さんはパーティで冒険することのベテランなのだから。

 

 "そんな範囲常時索敵してんの…?”

 "頭パンクせん…?”

 "俺たちが知らなかった異常性が暴かれていく…!”

 "多分だけど、《魔力感知》のスキルだろうから、処理する情報自体はそこまで多くない……はず”

 

 その後、ダンジョンブーブーの群れに会いに行った。パーティとして連携するのに、すごくちょうどいいらしい。私が止めるから、そこを仕留めてねって言われた。ダンジョンブーブーは、簡単に言ってしまえば、ただのでっかい猪である。基本的に4、5匹で群れになっていて、こちらを見つけると突進してくる。突進以外何もしてこないけど。

 あと、こいつらは鍋にすると美味しい。いつか、こいつらで生ハムを作りたいものだ。ダンジョンブーブーがこちらに気付いて突進してきたところを、彩音さんが彼らの目の前にハルバードを叩きつける。

 

「《地砕き》!!」

 

 ハルバードを叩きつけた地面が砕けるほどの一撃が、目の前で炸裂したことに驚いて、ダンジョンブーブーの突進が止まった瞬間に《魔力の矢》を連射して殲滅する。にしても、ホントに斧系スキル使うんだ……《地砕き》は斧系スキルの中でも使い勝手がよくて、振り下ろしの威力をあげるって効果のはず。結構な威力になるんだねあれ。あと、連携前提な使い方が上手だ。

 

「ありがとう、完璧!でも、魔法使う時は何か言って?突然飛んでくると怖いから…」

「あっ、ごめん」

「撃つよ!とかの一言あると嬉しいな。《魔力の矢》以外のときは、スキル名でお願いね」

「うん。そうするね」

 

 "おお、ちゃんと連携してる!”

 "合図無し連射はこえぇよw”

 "あの威力だしな……”

 "《魔力の矢》以外ってなんか使ってたっけ?”

 "《ライトニング》は何度か見たけど、それだけだな”

 "攻撃は全て《魔力の矢》って感じだもんね”

 

 そんな感じで、中層を危なげなく踏破していく。彩音さんの動きも想像以上にいいし、すごく戦いやすい。前衛いるだけでこんなに違うとは……時々、彩音さんからアドバイスを貰いつつ、パーティとしての動きに慣れてきた。基本的に、彩音さんが足止めして、その隙に私が差し込むみたいな戦い方である。

 中層を突破し、下層に降りるための階段で、彩音さんと少し話し合いをする。階段にはこっちが見つかってない限り、モンスターはやってこないので、一応安全地帯として使えるのだ。

 

「基本的に、パーティの動きはこれでいいんだけど……」

「どうしたの?」

「下層からは一人で足止め出来ると思えない。ごめんね」

「うん。分かった」

 

 彩音さんの実力と下層のモンスターの実力を鑑みると、そうなると思う。きちんと把握出来てるのがスゴいのである。私は、初見のときは調子に乗って死にかけた。見てる感じ、彩音さんが事前に言っていた攻撃と防御はそこそこ。というのが本当に当てはまる感じだ。ただ、攻撃力だけは下層でも通用すると思う。特にあの《地砕き》。もう一人前衛がいれば、足止めも出来るんだろうけど、ここには私しかいないから、私なりの方法でどうにかするだけである。それに

 

「ここからはアヤネさんのレベリングするつもりだから、気にしないで」

「…………どうするつもりでいるの?」

「一体だけのモンスターを探して会いに行くか、一体だけ残すように撃ち抜くから、アヤネさんはタイマンして?」

「…………わ、わかった……もし、追加が来たら?」

「全部撃ち抜くから安心していいよ」

「……そっかー……」

 

 "お、おう……”

 "あ、あんたほどの実力者が言うなら……”

 "いや、確かに安定してそうなレベリング方法だけど!”

 "実力差あり過ぎでは?って言いたいけど、まぁそうよね…”

 "ユキちゃんレベルいくつなんやろ?”

 

 彩音さんが、一応って感じでスマホを取り出した。一応安全地帯とはいえ、危ないんだけど……配信ってことを考えてくれてるみたいだし……ここは黙認の構え。私が警戒すればいいし。いや、本当は私が考えるべきことでは……?

 

「……ねぇユキちゃん」

「なにアヤネさん?」

「聞いてなかったけど、ユキちゃんのレベルって……いくつなの?」

「レベル?毎年の更新の時に測ったら、3200ちょうどだったよ」

「………え?」

 

 "…………は?”

 "ふぁーwwwwwww”

 "なんか納得してる自分がいるんだよな……”

 "そりゃ強いわ……”

 "トップクランの幹部クラスやんけwww”

 

「そういえば、アヤネさんのレベルは?」

「…………990」

「パーティだと、そのくらいで下層安定するんだ……スゴイなぁ」

 

 私なんて、1500くらいまで上げないと下層全然安定しなかったのに。1000にも到達してなくても行けるんだ……というか、複数人いるってやっぱり違うんだな……中層まででも、今までにない快適さだったし、パーティって、スゴイ…!

 

「……リスナーさん、これ煽られてる……?」

 

 "多分違います、アヤネさん!”

 "(ソロの自分はもっとレベル上げないといけなかったのに)パーティだと行けるんだースゴイなー!的な感じっす、きっと!”

 "本人はおそらく、純粋に褒めてます!”

 "全員、断言できないの草。俺もだけど”

 

「そっかー……」 

 

 なんかまた彩音さんが遠目してるな……前もスマホ見ながらそんな顔してたし……まさか、リスナーの人達がなんか言ったんじゃないだろうな……?

 

「アヤネさん、リスナーの人達に何か言われでもした……?」

「え!?ううん!何にもないよ!」

「…………本当に?」

「うん!ホントに!」

「……わかった」

 

 ここは、彩音さんを信じるとしよう。うむ。ただ、もし本当に、リスナーさんたちのせいなら、色々と考えねばなるまい。凉に相談しておこう。配信関係は彼女に聞くのが一番だ。

 とりあえず、下層で彼女のレベリングを始めよう。下層で料理をする時にいつも使っている小部屋があるので、そこまで移動しつつである。本当に、端っこの方にあって、誰も来ないからね、あそこ。

 

「打ち合わせ通り、小部屋に向かうよ」

「その道中で、ミノタウロスを1頭調理用にするって話だったよね?」

「うん。アヤネさんのレベリングしながらね」

「が、頑張るね……!」

 

 若干声が震えてるけど、大丈夫だろうか…?

 

 "突然の命の危機!”

 "アヤネさんマジありがとう”

 "心臓止まるかと思ったわ……”

 "原因はお前じゃい!!”

 "本人が濡れ衣着せてくるのは反則ですよね???”

 "いやでも、アヤネさんが常識人で良かったー”

 "ユキちゃんと同レベルだったらどうしようかと……”

 "ユキちゃんを異常者みた……異常者だったわ……”

 "ユキちゃんはユキちゃんでホントにパーティのことわかってないし、いい相方見つけたよね”

 "一緒にモンスター食べてくれる人だしな”

 "2人でニコニコ飯食ってくれー”

 




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