【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
次回予告でネタバレしてすいませんでしたぁ!!
そして、今回蜂蜜を味わうといったな? あれは嘘だ…
秋津さんの殲滅劇を見た後、しばらくの間下層を進んだ時、彩音さんがこんなことを言い出した。
「私たちって、平凡過ぎるね……」
「それなりに自負もございましたが、上には上がおりますわね……」
"下層に安定して潜れる時点で上澄みのはずなんだがなぁ…”
"マジで上には上がおる”
"パーティの中に天井組がおるからな…”
"まさか『
花奈さんもそれに同調しているし、確かにこれは自信をなくしてしまうかもしれない……とはいえ、2人が上澄みなのは事実なんだけどね。
大体の冒険者は中層くらいでその冒険者時代を終えるのだから、下層に安定して潜れて、条件次第では深層に潜れるくらいの2人は、それはもう上澄みなのである。
まあ、その、さらに上に私が言うことじゃないのかもしれないけども。
「俺たちやアキツを基準にすんなよ。『
「……地上2番目と空中2番目。今はユキがいるから、3番目かも」
「1番は誰なんです?」
「副部長」
「……ドラゴンには勝てない……」
"ドラゴンまでいるんか!?”
"『
"副部長がドラゴン…え、部長は?”
"部長は…?”
"もっとヤバいわけでない…?”
浜面さんたちのフォローが入る。うーん、確かに『
それにしても、金守さんってやっぱり強いんだね。ドラゴンなだけある。でも、あの秋津さんよりも強いって中々凄まじくない……?
ちなみにだけど、私が秋津さんに勝てるか? と言われるとかなり微妙なラインである。負けないとは思うが……周囲に《グラビティ》を発動して地面に押し付けてしまえば勝てるだろうが、そもそもその範囲に入ってくれると思えないし。かといって、遠距離戦になったら、秋津さんの魔法は防げるが、私の魔法は当たらない。って感じになりそうなんだよね。もし勝つとするなら、お母さんの魔法を使うしかないかな。
秋津さんに勝つならどうしようかななんて考えていたら、話は探索部門の部長に移っていた。
「そういえば、部長さんって……」
「俺たちもあったことねえんだよな……」
「……いつも不在……」
「ユキさんはお会いしたことありますの?」
「1回だけあるよ。多分、今日本で1番強いんじゃない?」
「え、マジ?」
"『
"流石、最も恐ろしい未探索領域…”
"掘れば掘るほどありえない話しか出てこねぇ…”
"というか、ドラゴンよりも強いってなんぞ?”
冗談でなく、今の日本最強はあの人だろう。純粋にレベルが高いからね。それに、ユニークスキルの魔法もえげつないし。私も教えてもらったから使えるんだけど、かなり凄まじいのである。時間はかかるけども。
魔法を充填することのできる器を召喚する魔法なんだけど、充填した魔法を同時に発動することが出来るので、大規模魔法を4、5個同時に発動するくらいのことはできるのである。充填した魔法の数が増えれば増えるほど威力が上がるおまけつきだし……その分、時間も魔力も必要だから、それがデメリットなんだろうけど、それにしたって本当にえげつない魔法なのである。
「純粋に、ダンジョン出てきてから今の今まで現役だから、レベルの暴力が……」
「待て待て待て! ダンジョン出てきてから52年経ってんだぞ!?」
「……流石に引退してる歳のはず……」
「私と大差ないと思いますよ。見た目」
「え、えぇ……?」
「冗談でなく、何故『
「日本各地のダンジョンにひたすら潜って研究してる人だもん。まず地上で会うことすらないと思う」
あの人と会ったのも、本当にたまたまだったしなぁ……それにしても、御年72歳のはずなんだけど、私と本当に見た目は大差ないはずなんだよねあの人。初めて会ったときで60超えてたはずだし、その時ですら今の私と大差なかった。耳と尻尾は生えてるけども。
純粋に経験とレベルの暴力で戦ってくるタイプである。それでも、お母さんの方が強かった辺り、お母さんが如何におかしいのかがよくわかる。
「……なるほど、ユキさんのような冒険を52年続けた方ですのね?」
「なら、納得かも……」
"なるほど、そりゃ強いわ”
"ユキちゃんの冒険を52年続ける冒険者とか、そりゃバケモノになるわwww”
"むしろ、それに勝ってた『女帝』って…”
"あの人はマジでバグだから…”
彩音さんたちに変な納得をされてしまったけれど、まあそういうことである。強くならないはずがないのだ。
だが、浜面さんはこんなことを言い出した。
「ま、将来の1番はアイツだろうけども」
「……魔王がいる……」
"魔王!?”
"本っ当にお前ら研究系クランの看板おろせwww”
"魔法使いと蜻蛉とケンタウロスとドラゴンの上がいると…?”
"し、将来的の話だから…”
「ま、魔王……?」
「いるだろ? 成長速度がおかしいのが」
「あ、あぁ、なるほど。あの方ですわね……」
なるほど陽向かぁ……確かに、あのペースで成長されたら、将来的には間違いなく魔王だろうなぁ……モンスターのスキルがメインだし。まさしく。
それに、今のペースで成長となると……来年には2600レベルくらいになってるわけで。それもあくまでも今のペースでの成長速度だ。自分でダンジョンに潜ってレベルを上げれるようになったら、さらにペースは上がるはずだ。となれば……
「それに、俺たちみたいなのは身体能力おかしいからなぁ……比べちゃいけねぇよ」
「……そもそも、亜音速飛行なんて普通の人間は出来ない……」
秋津さんの発言の後、彩音さんが私の方を見て、恐る恐る聞いてきた。
「……ユキちゃんは出来る?」
「出来るか出来ないかなら、出来るね。直線で飛ぶだけなら」
「……実は1番ヤバいのユキなんじゃねぇのか?」
「……ヤバいかも……」
「私がアキツさんみたいな挙動したら吐きますよ」
"吐くだけで出来るんだな…”
"出来ないとは言わないの草”
"浮遊魔法って極めるととんでもねぇんだな…”
"なんでこの期に及んで意味わかんない要素増えるんだよユキちゃんはw”
間違いなく吐くが、それでも出来はするだろう。そもそも浮遊魔法は、魔法で浮かせたものを操作しているのであって、別に飛んでいるとか、そういうのではない。だから、体への負担を無視すれば、亜音速くらいで自分の体は動かせる。でも、慣性は無視できないのでその……うん。
ちなみに、下層でここまでのんびり話が出来ているのは、秋津さんと私がキラーホーネットを全部吹き飛ばしているからだ。地上組も、ヴェノムセンチピードとアウラウネ程度じゃ障害にすらならないからね。あくまでこの階層で大変なのはキラーホーネットとヴェノムセンチピードの毒であって、そこが潰せるのなら、そこまでのダンジョンじゃない。
「そういえば、最近蛇目のやつがやたらとテンション高いんだけど、何か知ってるか?」
「……すごくうるさい……」
「あー……」
「わたくしがモンスター産の果実でお酒を造ろうとしておりまして、そのお手伝いをお願いいたしました」
「モンスター食とモンスター酒かぁ……」
「……面白い子達。彩音は……?」
話を振られた彩音さんはちょっと言いにくそうだった。いや、この後だと言いにくいよね。インパクトが足りないというか……
「わ、私は面白い冒険がしたくて……」
「面白い……か? イカれてるの間違いじゃねぇのか?」
「アヤネさんの面白いの基準によるのでは?」
「それはそうだけどよ」
"ハマヅラァ! その通りだぞぉ!”
"申し訳ないが、本当にいかれてるとは思う”
"今まで冒険を面白いと思ってるってことだからな”
浜面さんの歯に衣着せぬ発言にちょっと傷ついた。流石にひどくないかなぁ……
「私は『サンケン・エルムの秘密』とか『グレイスに捧ぐ』とかにあこがれてただけで……」
「悪い、知らないわそれ……」
「……私も知らない……」
「ユキさんはご存知です?」
「知ってるよ。ほぼ全編ギャグの冒険譚。『サンケン・エルムの秘密』なんかは、実話なのに最初ライトノベルの棚に置かれてたなんていう話があるくらい」
"なんでそんなにギャグ話にあこがれてんだよ!!”
"やっぱり大分おかしいよアヤネさんも…”
"【悲報】アヤネさんもまともじゃなかった”
"あまりにも当然の話”
いや、彩音さんもかなり変な冒険譚に憧れて冒険者になったんだなぁ……中々ないというか、まずあんなギャグな冒険譚起きないよ。死ぬもん。
私の説明に興味を持ったらしい浜面さんが話を広げる。
「え、どんなやつ? 概要だけ教えてくれよ」
「簡単に説明すると……えっと、6人パーティの冒険譚なんですけど、主人公がものすごく優秀なヒーラーで優しくて……」
「おう」
「他のメンバーの面倒を見ているような感じなんですけど」
「……うん……」
「その結果、他のメンバーが即死しなければこいつが治してくれるって信じてて」
「良い信頼関係ではないですか」
「…………その結果、罠とか敵とかを、全部ごり押しの力業で突破していく話、で……」
「ん?」
「……あれ……?」
「んん……?」
"流れ変わったな…”
"途中まではいい話だったのにな…”
"全員首傾げてて草”
"かしげたくもなるわwww”
うん、そんな反応にもなるよね? 本当にひどいのである。正直、冒険者としてダンジョンに潜る前は結構笑いながら読んでたんだけど、今読み返したら、主人公が不憫すぎて読めないんじゃないかと思う。
「主人公が面倒見よくて責任感あるばっかりに貧乏くじ引いて、常に叫びながらツッコミ入れ続ける話だと思ってくれれば……」
「……なんだろうな、端から見てたら確かにめっちゃ面白そう」
「……当事者には絶対になりたくない……」
「その……そのお話は実話なんですのよね……?」
「そうなの……」
"現実は小説よりも奇なり…”
"そこまで奇であってたまるかw”
"良かったじゃん。ツッコミ役には成れてるよアヤネさんwww”
"煽ってるだろそれwww”
"完全に煽りで草”
そうなんだよね、これ実話なんだよね……なのに、伝記とか自伝じゃなくて、ライトノベルの棚に置かれるくらいにはその……
「ここまで来たら、もう一個の『グレイスに捧ぐ』も聞かせてくれよ」
「えっと、主人公がヒロインのグレイスさんと婚約していて」
「ここまではいい話ですわね」
「グレイスさんに送る宝石を探しに冒険に行くんですけど」
「……中々夢がある話だと思う……」
「ロマンティックだよな」
「何故かグレイスさんもついてきていて……」
「なんでだよ!」
「何故本人が!?」
"本人いんの草”
"なんで本人いんだよwww”
"何故いい話になりそうな導入から明後日に飛んでいくのかw”
『グレイスに捧ぐ』もなぁ……純愛の話としては満点だと思うんだよ。冒険者の主人公が、ヒロインに結婚を申し込むときの指輪に使う宝石を自分で取りに行く話だからさ。でも、その道中が……
「えっと、グレイスさん含めたパーティメンバーに助けられながら、最終的にちゃんと宝石を手に入れて、グレイスさんにプロポーズして終わるんですけど……」
「絶対道中めちゃくちゃやってるやつだろそれ……」
"はじめと終わりだけ聞いたら結構よさげな話なのにwww”
"王道路線じゃん”
"めっちゃ王道で草”
"なお、道中…ってことか”
何がダメって、まず主人公がめちゃくちゃ弱い。本当に弱い。その上ナルシスト。漫画とかにいる、バラを咥えて女性を口説きに行く変な奴を想像してくれれば大体あってる。でも、性格はものすごくいいし、人のことをよく見ているタイプだ。
「基本的に主人公は何もしません。強いて言うならマスコットです」
「すっごく性格がよくて、周囲のフォローとか活躍を褒めるみたいなことは徹底してやるんですけど、戦闘はその……」
「……逆に興味が出てきた。読んでみたい……」
「わたくしもですわ」
「今度貸しますね」
「それ、映画とかない?」
「『グレイスに捧ぐ』はありますよ」
「マジか。見て見よ」
"マジであったわ”
"後で見よ”
"飲み物を口に含んでみような!”
"絶対やらねぇw”
そんなくだらない話をしている間に、ついに私たちはボスであるホーネットクイーンのいる広間に足を踏み入れたのだった。
次回、次回こそ多分蜂蜜の話になるはず……