【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と馬と蜻蛉と人間2人⑸

 

 奥多摩ダンジョンのボスのいる広間は、他の奥多摩ダンジョンのエリアと違って、植物が生えていない。なので視界も良好である。

 どれだけ敵がいるのかわかりやすいし、逃げるときも楽。障害物がないっていうのはありがたいことだ。

 ただ、問題があるとすればそれは……

 

「……なんか多くねぇか!?」

「多いですね!」

 

 "す、すげぇ数いるじゃん…”

 "羽音うるっさ!?”

 "こんな量いんのか!?”

 "うへぇ…きも”

 

 敵の数が一目でわかってしまうことだろう。視界を埋め尽くしているキラーホーネットの群れ。羽音がめっちゃうるさい。ちょっと叫ばないと声が届かないくらいだ。

 この前来た時には上層では大蜘蛛が大量発生していたし、それと同じように大量発生しているんだろうけどこの数は流石にちょっと勘弁してほしいかな……数えるのを諦めるくらいの量だ。どうにか出来るのは間違いないけども。秋津さんもいるし。

 これはとりあえず、さっさと取り巻きを全部撃ち落として、早くボスまでの道を切り開かないと、地上組が飲まれたらマズイ。良くも悪くも私たちは攻撃に特化しすぎていて、他人を守るというのが苦手だ。花奈さんだって、流石にこの数のキラーホーネットをどうにかできるような力量ではない。どうにか出来る近接職がいるとも思えないけどさ。

 それと、奥にわずかに見えるホーネットクイーンのサイズが明らかに大きい。なるほど、変異種だったからこの数生まれてたのか……にしたって生まれすぎじゃない……? 前に倒しに来てた時よりも、はるかに多いよ? あの時だって最初の時点では100匹いるかどうかくらいだったのに、今の時点ではもっと多いのは間違いない。こちらに気付いてさらに召喚してくる前に、さっさと撃墜してしまおう。

 

二重詠唱(デュアルマジック)、《魔力の矢》」

 

 地上に降り、六門の砲台を用意して、一気に撃ち落としていく。

 もともと、私が《魔力の矢》を連射してキラーホーネットを撃ち落とし、数が減ってきたら浜面さんと背中に乗った2人がボスであるホーネットクイーンの懐に突っ込む。秋津さんには、その際に浜面さんたちの方へやってくるキラーホーネットを叩いてもらう。そういう作戦で行こうと、ここに来るまでに話し終えていたんだけど、さすがにこの状況は想定していなかった。

 でも、変異種だろうがなんだろうが、ホーネットクイーンさえ倒してしまえば、こいつらは新しく生まれなくなるので、あとはじっくり蜂蜜を探すだけだ。

 

「いやあ、えげつねぇ……」

「……サクッと用意できていい火力じゃない……」

 

 "だよなぁ!?”

 "お手軽魔法の火力では絶対にない”

 "深層のオーク軍団を蹴散らした攻撃だ、面構えが違う”

 "でもこれ多分本気じゃないんだよなぁ…”

 

 一気に数を減らしたキラーホーネットたちだったけど、また補充されていく。とはいえ、さっきよりは格段に少なくなっている。もうしばらくこれを続ければ、もともとの作戦で大丈夫かな。

 あと、浜面さんも秋津さんも、なんで引いてるのかな? あなたたちなんか素の身体能力と《身体強化》だけであれだけ暴れてたんだから、大差ないでしょ。お互いユニークスキルの性能だけで暴れてるんだからさ。

 彩音さんたちに引かれるならわかるんだけどさ。あの2人にはこの火力は用意できないし。一発の最大火力は彩音さんが一番だろうけど、武器が消えるしね。

 もし、料理とか一切関係ない冒険だったら、使い捨て用の槍を大量に私の収納魔法の中にしまっておけば、あの火力を何度も出来るのか……? となれば採用の価値はあるかもなぁ……本当は、彩音さんが収納魔法を覚えて自前でもって来るのがいいんだろうけど、習得難易度がね……結構シャレにならないからね。

 1つの案として考えておこうかな。こう、伸縮式の槍とかあれば、それなりに持っていけるだろうし。今度『魔女の大鍋(コルドロン)』に依頼しておこう。あと、魔素(マナ)ポーションも作ってもらおう。それくらいの援助はしてくれるはずだ。

 彩音さん強化計画を頭の中で思い描いている間に、キラーホーネットの数がかなり減ったので、浜面さんが2人を乗せ、秋津さんを従えて突撃していく。

 

「一気に行くぞぉ! 脚は折るからトドメは頼んだ!」

「任せてください!」

「念のために使っておきますわ。《不退の陣》!」

「……周りは気にしないでいい……!」

 

 "突撃ィ!!”

 "いけええええ!!”

 "マジで映画みたいな突撃だ”

 "ケンタウロスに人乗せて突撃すんのかなり無法じゃない?w”

 "背中にヒーラー乗せてんのがマジでえぐいwww”

 

 あの戦法どこでも使えて強くない? だってさ、あの状態の浜面さんって、常に回復してるし、状態異常も効かないんだよ? その上、彩音さんもユニーク武器込みならかなりの火力が出せるので、浜面さんの武器が2本に増えてるみたいなものだし……

 なんというか、人を乗せられる上に本人が強いっていうのが、どれだけ強いのか見せつけられてる気分だ。金守さんもドラゴンになったら、人乗せられるのかな。ドラゴンライダーかぁ……ロマンだなぁ……彩音さんがうっきうきでやりそう。ハルバードだから似合いそうだし。

 私は後方で弾幕の維持です。ホーネットクイーンがキラーホーネットを召喚させたそばから消し飛ばしています。

 …………私も浜面さんの背中に乗ってみたいなぁ……一緒に突撃するの楽しそう。

 その後、ボスまで突撃していった浜面さんが、ホーネットクイーンの脚をへし折り、倒れこんだところに彩音さんが渾身の《地砕き》を叩き込んで倒した。最初こそびっくりしたけど、まあこんなものだろう。それにしても、あの突撃本当に楽しそうだなぁ……

 

「いやあ、最初はどうなるかと思ったけどな」

「……やっぱり、夢希たちはパーティとして強い……」

「俺たちはマジで個人主義だからなぁ」

 

 残りのキラーホーネットを秋津さんと一緒に片付けた後、浜面さんがそんなぼやき方をし始めた。

 

「そうなんですか?」

「逆に聞くけどよ、俺たちと連携するの厳しくねぇか? 体の構造が違うから、普通の動きだと連携おかしくなるだろ」

「確かに、浜面さんの隣で動くのは難しいかも……」

「浜面さんが動くたびに地面が揺れておりましたしね……」

「だろ?」

 

 "サイズがサイズだもんなぁ…”

 "確かに、前衛同士で連携すんの厳しいか”

 "そういう意味では、アキツちゃんとは相性良いのね。空中にいるから関係ないし”

 "アキツちゃんも、本人が速すぎて他の連中が邪魔しかねないもんな”

 

 彩音さんや花奈さんの話を聞いて理解した。確かに、あの巨体だし鎧まで着てるから重いもんね。地面が揺れたら、動くの大変だもんね。私も空中に入れるから問題ないけど、地面から浜面さんに当てないようにするのは結構大変だ。

 それに、秋津さんに関しては、本人が動いてる間に下手に魔法を使うと当てちゃいそうだし。こっちから彼女の動きがよくわからないからこそ起きる問題というか。

 身体能力が他の人と違うからこその個人主義かぁ……確かに、これは金守さんも頭抱えるかも。少なくとも、今回私たちが連携して戦ったと胸を張って言えるのは最後だけで、それまでは浜面さん1人と、彩音さん花奈さんの2人、秋津さんと私の1人ずつ。みたいな感じだったしね。

 まあ、その辺の反省は後回しだ。蜂蜜探そう。そもそも巣があるのか問題は、天井を見たら解決した。天井近くに大きな丸い物体があったのだ。まさしく、スズメバチの巣みたいなやつである。それも、かなり大きいやつ。よくあれを壁と天井に固定出来てるな……それに、中に何もいないみたいだ。幼虫とかいられても困るけどさ。

 

「アキツさん、一緒にアレ見に行ってもらえます?」

「……わかった……」

 

 "でっか…”

 "二階建てくらいないか?www”

 "家だろこれもうw”

 

 近づくと本当に大きいなこれ……二階建ての家くらいのサイズだよ。周りを2人で見て回ったところ、下に穴が開いていたので、そこから侵入させてもらった。

 中に入るとそこには、規則正しい配列で並んでいる大量の六角形のものがあった。おお、完全にハチの巣だ。これは期待できそうだぞ。

 秋津さんと2人で、その六角形の真ん中を軽く触ってみたのだが、どうにも硬い。中に何があるのかはよくわかんない感じである。なので、とりあえずで秋津さんに切り開いてもらったのだが、中身は空だった。うむむ……

 

「……残念……」

「上にもいきましょうか」

 

 内壁を伝って上に向かうと、先ほどと違って、色が一段濃い六角形のものがあった。もしかして……!

 秋津さんが切り込みを入れ、中から黄色い液体のようなものが見えた瞬間、秋津さんに抱えられて巣の外にまで連れていかれる。か、慣性でお腹がぁ……!

 

「……ハマヅラ! 2人を……!」

「おうよ!」

 

 "なになになに!?”

 "何が起きた!?”

 "一気に外に出たな”

 "カメラがブレた次の瞬間に外にいるんだが!?”

 "なんだ!?”

 

 秋津さんが今日一番の大きな声を出して浜面さんを呼ぶと、それに反応して浜面さんが彩音さんたちを掴んで走り去る。な、なんでそんなことに……?

 なんて思っていたら、巣の中から蜂蜜と思われる液体が一気に流れ落ちていく。もはや滝に近い量である。あ、あれは確かに飲まれたらまずかったと思う。ドロドロしてるし、下手したら窒息してただろう。

 

「あ、ありがとうございます」

「……どういたしまして……」

 

 "すげぇ量www”

 "あれは飲まれたら死ぬわな…”

 "とんでもないことになってるw”

 

 しばらくすると、その滝がなくなったので、穴に近づいて、残りの蜂蜜を瓶に詰めて持っていく。地面がもう黄色い池になってるよ……

 でも、これって中々いいのではないかな? ちゃんと蜂蜜の匂いがするしさ。あとは毒がなければ完璧だ。

 

「よし、取れたよ」

「おお、ちゃんと蜂蜜じゃねぇか」

「……味はどうだろうね……?」

 

 とりあえず、まずは毒見ということで私から。

 

「いただきます」

 

 "どうだ?”

 "美味いといいが…”

 "そもそもなんの花の蜜なのか…”

 

 蜂蜜をぺろっと舐めてみる。お? 意外とちゃんと甘いぞこれ。うんう、ん? あ、なんかよくわかんないけどピリッとする!? なんか山椒とかそんな感じのスパイシーさだ。舌がしびれる感じ。耐性スキルは発動していないので、毒はなさそう。

 

「美味しいけど、後味が独特。毒はない」

 

 私の感想のあとで、みんなが一口ずつ舐めていく。

 

「うおっ!? 確かにこれは後味が独特だな!」

「……美味しい……」

「わ、舌が痺れるけど、ちゃんと甘くて美味しいかも」

「これは中々……ふむ、いいですわね」

 

 各々反応が返ってきたが、全員好意的だ。他にもあるならということで、秋津さんと一緒に探してみるとまだあったので、瓶に入れられるだけ入れて帰ることにした。

 このために色々置いてきて、瓶をたくさん持ってきたので、10本分ほど取れた。これで花奈さんのお酒が出来たらいいな。

 私も、これを使ったレシピを考えないと。結構独特な味してるからちゃんと考えないとね。

 

 

 

 




こそこそ話。『魔女の大鍋(コルドロン)』において、もっとも強いのは探索部門の部長だけど、もっとも理不尽なのは小川だぞ!
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