【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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最後だけちょっと夢希以外の視点が入ってます。


配信に興味のない私と緊急の仕事

 

 奥多摩ダンジョンから『魔女の大鍋(コルドロン)』に帰ってきた私たちは、金守さんから中庭に呼び出されていた。

 私たち3人と浜面さん、あともう1人男性が、金守さんの前に並ぶ。中庭に呼ばれたときは、なんで執務室じゃないんだろうって思ったけど、浜面さん居るなら中庭だよね。執務室に入らないもん。

 

「4人は帰って来たばかりだというのにすまない。少々急ぎの案件なんだ」

 

 金守さんが資料のようなものを私たちに配りながらそういった。本当に急いでいるらしい。どうしたんだろうか。

 もらった資料に目を通そうと思ったとき、金守さんがかなり不穏なことを口にした。

 

「先に言っておくが、今回の件に拒否権はない。申し訳ないが、物前君、君には学校を休んでもらうことになるだろう」

「……わかりました」

 

 む、まさかこんな形でちゃんと学校を休むことになるとは思わなかったな。いつも休むときはイレギュラーに巻き込まれた時だもんなぁ……

 

「さて、本題に入ろう。ここ最近、東京にあるダンジョンにおいて、変異種、強化種の発見報告が異常に多い。故に、我々『魔女の大鍋(コルドロン)』に対し、調査依頼が来た。明日から調査を開始する」

 

 金守さんに渡された資料に目を通す。えーと……うわ、東京のダンジョンだけで日本各地の全部のダンジョンと同じくらいの発生件数になってる。もともと、強化種はそれほどでないものの、変異種はそれなりに出てくる。一部だけ肥大化したモンスターなんかはちょくちょく出てくるからね。その中で強いのは一握りだけども。

 それにしたって、この偏り方はおかしい。東京には冒険者が多いけど、だからってダンジョンが多いわけじゃない。ダンジョンの数で言うなら北海道の方が圧倒的に多いからね。だから、確かにこの状況がおかしいっていうのは間違いない。それに、変異種といえば、今日のホーネットクイーンだってそうだったし……もしかしたら、大蜘蛛の大発生もイレギュラーだったのかもしれない。

 浜面さんが思い出したといった感じで、今日のことを口に出した。

 

「そういえば、今日の奥多摩のボスも変異種だったな」

「何? 無事だった……んだな。どういうものだった?」

「大型化してたぜ。本体は雑魚のままだったけど、取り巻きの数がすげぇいた。んだが……」

「全部夢希さんが撃ち落としてしまいましたわ」

「……そうか。無事で何よりだ」

 

 金守さんのその微妙な反応は何……? 少なくとも、今回の件については私は活躍しただけであって問題とか起こしてないと思うんだけど!? 遺憾の意を表明したいところであるが、今は真面目な話なので我慢することにする。話が進まなくなっても困るし。

 それに、下手に掘って爆発させたくはない。冤罪だとは思うんだけど……多分。

 

「話を戻すぞ。ここに集まってもらった5人は、明日からしばらくの間、調査班の護衛にあたってもらう。期限に関しては、今のところ判断できない」

 

 むむむ……一応、私たちの持ちまわりは東京にある全ダンジョンだ。渋谷、品川、浅草、お台場、八王子、奥多摩、小笠原、上野、秋葉原の9つである。小笠原には行ったことがないから楽しみだな。仕事とはいえ、景色を楽しむくらいはしていいだろう。多分船旅だろうしね。浜面さんが飛行機に乗れるとは思えないし。

 

「また、浜面君は今回、基本的に戦闘に参加しない。すまないが、荷物持ちだ」

「あー……あいよ」

 

 仕方ないな……みたいな感じで了解した浜面さんだけど、そうしたら5人じゃなくて4人になっちゃう。私たちの他にはもう1人しかいないんだし。

 

「あの、そうしたら4人しかいないと思うんですが……」

「今回の件は俺も参加する。それゆえの5人だ」

「わ、わかりました」

 

 金守さんも参加するのか……え、もしかして想像以上にマズい状況なんだろうか? そもそも荷物持ちって必要なのかな? 収納魔法で運べばよくない?

 

「収納魔法で持ち運んじゃダメなんですか?」

「収納魔法内の魔素(マナ)によって、計器に狂いが生じることを危惧している。今回の調査では、わずかな差も見落とすべきではないからな」

「それに、俺の背中に荷台乗っけてそこに調査班と機材乗っけた方が、護衛もしやすいだろ?」

「なるほど、わかりました」

 

 金守さんと浜面さんの説明で納得した。確かに、今回の調査において計器類に誤差や感度異常が発生しかねないのはよくないか。ダンジョン内の魔素(マナ)濃度を調べるって書いてあるしね。万が一そうなってしまったら、機材の修理とかで時間もかかるしね。

 それと、浜面さんはそれでいいの? 扱いが完全に軽トラじゃない? とはいえ、彼の背中に護衛対象が全部集まるなら、こっちはそこだけ守っていればいいし、最悪浜面さんだけが撤退したっていい。実に合理的な案だと思う。絵面に関してはノーコメントで……

 

「護衛が5人だけ、というのは少ないのでは?」

「現状、東京のダンジョンに限定されている現象ではあるが、近隣県にも調査が行くことになっている。人数を分担した結果だ」

「であるならば、今度は過剰戦力ではありませんか?」

「確かに、少々過剰なのは否定しない。だが、以前物前君たちが遭遇した特殊個体のトロル。あのレベルのモンスターとの遭遇を想定したメンバーだ。ないとは思うが最悪を想定しておくべきと判断した」

「お答えいただきありがとうございます。承知いたしました」

 

 花奈さんが金守さんに質問をぶつけ、それに金守さんが返答していく。

 なるほど、確かに過剰戦力な感じしてたけど、そういう理由なら仕方ないかな。少なくとも、彩音さんに一撃をぶつけてもらわなくてもあのレベルが倒せるメンバーではあるのだろうから。浜面さんと秋津さん曰く、2人よりも金守さんの方が強いみたいだし。最悪のことを考えるなら、彩音さんの投擲用の槍を何本か、収納魔法内に準備しておこうかな? 用意できるかどうかが微妙だけども。

 花奈さんの言葉を最後に質問が途切れたため、金守さんがまとめにかかる。

 

「他に質問はないか? ……よし、ないのなら解散。明日に備えてくれ」

 

 金守さんの言葉で解散になり、とりあえず彩音さんに槍の予備を収納魔法内に放り込んでおくかどうかの相談をしようとしたとき、浜面さんが前を横切って、発言しなかった男性に向かっていった。

 

「おう灰原、久しぶりだな」

「お久しぶりです兄貴」

「だから兄貴はやめろって……紹介するぜ、灰原(はいばら)荒太(あらた)だ。あ、こいつは狼な」

 

 浜面さんを兄貴と言った男性をよく見る。髪は灰色で目が金色。精悍な顔つきで、こちらをにらんでいるような鋭い眼光をしている。体もがっしりとしていて、鍛えられているみたいだ。最大の特徴は頭の上に生えた耳と腰から生えている尻尾だろうか。耳はピンと立っていて、警戒しているような感じがする。背中には大きな斧を背負っているので、彩音さんと似たタイプかもしれない。

 浜面さんが頭をポンポンと叩いているけど、彼も多分180はあると思う。浜面さんのせいで身長の高さが把握しにくい……!

 とりあえず、明日からしばらく一緒ということで自己紹介を……

 

「物前夢希です。よろしくお願いします」

「美空彩音です。よろしくね」

「北条花奈と申します。よろしくお願いいたしますね」

 

 私たちの自己紹介のあと、灰原さんはしばらく目線をさまよわせた後、少しだけ頭を下げた。

 

「……うっす」

 

 そして、浜面さんに向き直ると、若干上ずった声で告げる。

 

「じ、じゃあ俺、明日の準備あるんで、また明日っす兄貴」

 

 そのまま逃げるように中庭から去ってしまった。どうしたんだろうか?

 

「え、お、おう。また明日なー。どうしたんだあいつ……?」

 

 浜面さんも困惑気味である。ということは、普段はああじゃないんだろうか?

 

「普段はああじゃないんですか?」

「もうちょい尖ってる感じだな。一匹狼気取ってるおこちゃまだ」

「人見知りさん……とか?」

「いや、どっちかってーと、初対面の方がかみついていくタイプ。上下関係をはっきりさせたいタイプって感じかね」

 

 浜面さん曰く、普段はあの感じではないらしい。人見知りでもなく、嚙みついていくようなタイプ……うーん? なんであんな反応だったんだろうか? 何かしてしまっただろうか……?

 あ、もしかして、変な噂だけ品種改悪されて出回ってるとかだろうか!? だとしたら、誤解は解かないといけないね。明日絶対に解いてみせるぞ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っはぁー……」

「ん? 荒太じゃないっすか、大丈夫っすか?」

「あ? お、おう犬束か……なんでもねぇよ。つか名前で呼ぶんじゃねぇ」

「えー、いいじゃないっすか。それより、荒太も私のこと名前で呼んでいいんすよ? 同い年なんすから!」

「呼ばねぇよ! お前も呼ぶんじゃねぇ、わかったな!」

「行っちゃったっす……うーん、なーんか仲良くなれないっすねぇ……」

 

 

「んなハズいことできっかよ……! というか、なんであんなに女子多いんだよくそっ!」

 

 




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