【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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寝落ちしました。すみません。

浜面のナイトキャップは実用性3割、ネタ7割くらいのやつです。
耳がいいせいで夜眠れねえな。でも耳栓じゃつまらんな。せや! くらいの産物。
使ってみたところ、秋津が撃沈したのでそのまま使っています。


配信に興味のない私とダンジョン調査・浅草編

 

 調査開始初日。私たちは、なんと大型トレーラーで移動していた。浜面さんが余裕で乗れるくらいのサイズである。なんていうか、特撮映画とかに出てくる秘密基地みたいなやつである。

 いろんな機材とかモニターとかがたくさんあるやつ。すごいいろんなところがいろんな色に光っている。きっと、これもロマンだって言ってノリノリで作ったんだろうなぁ……

 調査班の人たちは2人で、1人は美弥子だった。なお、トレーラーに乗り込むまでの間にいつものやり取りはした。もう1人は壮年の男性で、美弥子を微笑ましそうに見ていた。姪を見守る叔父さんの目だアレは。私もたまに誠一さんからされているのでよくわかる。

 浜面さんと金守さんは笑ってたけど、灰原さんは顔を引き攣らせて目を見開いていた。完全にドン引きしていた顔だった。彩音さんと花奈さんは、もはや仲のいい姉妹を見守る顔だった。暴走したら止めてね?

 今日は、浅草ダンジョンに向かい、そのあと秋葉原、上野に向かう予定であるらしい。途中でイレギュラーが発生した場合は後ろに倒れるそうだけど、基本的には一気に行くらしい。小笠原に行くときは1日かかるみたいだけども。そりゃそうかって感じ。

 それと、金守さんに頼んでおいた槍は、問題なく用意されていた。まあ、本数が3桁に到達していたのだが、持ってきたのは10本である。それ以上入らなかったよ……

 金守さんも今日だけで使うのではなく、調査中に使う分ということでこの本数を用意してくれたらしい。足りなくなったらまた言ってくれって言われたんだけど、流石に大丈夫です……

 

「で、なんで最初が浅草ダンジョンなんだ?」

 

 全員が乗り込んでトレーラーが発進した後、浜面さんが金守さんに質問をする。昨日貰った資料で見た限り、一番多いのは渋谷、次いで品川、そのあとが八王子って感じだったんだけど、なんで浅草からなんだろうね?

 

「ここは、唯一なんのイレギュラーの報告も上がっていないダンジョンだからだ。ここが普段とどう違うのかが、基準になると判断した。死亡者に関しても、今のところ報告はない」

 

 金守さんはモニターにグラフを映しながら説明をしてくれる。いやあ、ロマンだなぁ……まるで映画みたいだよ。『魔女の大鍋(コルドロン)』らしいにもほどがある光景だ。

 それにしても、東京全体のイレギュラー発生数がこれだけ増えてるのに、まったく報告がないってすごいな……死亡者もいないなら、本当に何も起きていないのかもしれない。

 そう思っていたのだが、灰原さんが疑問を投げかけた。

 

「そもそも潜っている冒険者が少ないだけなんじゃないんすか?」

「まあ、それもあるだろう。だがその場合、ダンジョン内にイレギュラーが発生した上で放置されている可能性もある。手が付けられなくなる前に対処するべきだ」

「よくわかりました。あざす」

 

 金守さんに頭を下げてお礼を言うところを見るに、礼儀正しい人っぽいんだけどな。朝のあいさつしたときもなんかよそよそしかったし……これ、本当に変な印象持たれていないだろうか。大丈夫だと思うんだけどな。気づかないうちにやらかしてたりするしね……

 そして、浅草ダンジョンに到着すると、浜面さんの背中に荷台を取り付けた。うん、見た目は完全に軽トラみたいだけど、圧縮した馬車みたいなもの……なのかな? 動力的には。

 その荷台に機材を乗せた後、調査班の人たちが乗る。私たちは、花奈さんと金守さんを先頭に、左右にそれぞれ彩音さんと灰原さんが。そして私が、()()()()()という配置である。

 効率はいいんだけど、これでいいんだろうか……? 実際、浜面さんのサイズから考えても上の方がいいんだけど、普通後ろでは? って思ってしまう。

 ダンジョンに入ってしばらく。私たち以外誰もいないダンジョンを見て、調査班の男性がぼそりと呟いた。

 

「昔は賑わっていましたが、今はこの通りですからねぇ……」

「賑わっていたことがあるんですか?」

「上層に生えている薬草がポーションの材料になるので、その採取に来ている冒険者が多かったのです」

「それなら、今でも賑わっていそうなものですが……」

「いえ、地上での栽培が可能だということが確認されまして、わざわざここまで取りに来る物好きはそういないのです」

 

 なるほどなぁ……そんな変遷があったんだねこのダンジョンって。確かに、薬草採取の依頼がギルドにあったのを見たことがある。

 怪我を治したり、魔力を補給したりするポーションの類は、今のところあんまり一般的じゃない。生産技術もまだまだ発展途上だし、原料の薬草の栽培もまだまだ研究が必要みたいだ。

 今までの学問に喧嘩売ってることがあまりにも多いからね、魔素(マナ)のせいで。そもそも魔法ってなんだよってところから始まったみたいだしね。魔法で言うなら、魔力固めて土作って、魔力が消えたらそれが消えるとかね。作った土は機材で確認すると普通の土にしか見えないそうなので、本当に初期は大変だったみたい。

 

「とはいえ、量産自体はまだできておりませんので、需要自体はあるのですが……以前よりも買取金額が下がって、スライムの相手をしつつやるには割が合わないくらいの値段なのですよ」

「装備品が痛みますもんね……」

「整備費でトントンになるなら、やる意味がございませんものね……」

 

 うーん、何とも言えない。やっぱりお金って大事だよね。何するにも必要だし。私はほとんど整備費をかけていないので実感はないけれど、近接職の人ってお金かかるんだなぁ……

 なお、魔法職は杖に付ける魔導結晶が貴重なため、すごく高い。なので、それでトントンくらいになるはずだ。近接職の武器の数倍とかの値段が付くのも珍しくない。

 近接職とスライムの相性の悪さを改めて感じていたら、金守さんから指示が出る。

 

「というわけで、ここは物前君に任せようと思う。頼めるか?」

「はい。任せてください……全部倒していいですか?」

「変異種らしき個体がいた場合のみ報告を。他はすべて倒していい」

「わかりました」

 

 見つけたモンスターは全部倒していいと。涼風に言うなら、サーチ&デストロイってやつね。というわけで、近くの草むらに潜んでいたスライムを片端から《魔力の矢》で打ち抜いていく。

 その間に、下では美弥子が何やら大型化したマイクのような機材を4人に配っていた。

 

「では! 夢希ちゃん以外の方にはこちらの器具を持っていただいて、周囲に散っていただきます! 広範囲を一気に調べたいので!」

「これってどういう機材なんですか?」

魔素(マナ)の濃度を調べるものです! 濃度が上がるとイレギュラーが起きやすいので、その確認ですね!」

「何か注意点などございますか?」

「あまり強く握りしめると壊れますのでご注意を!」

「わかりました」

 

 四方に散っていく前衛のみんなのさらに外にいるスライムたちを、片っ端から打ち抜いていく。うーん、前に来た時よりも数が多いな。とは思うけれど、ダンジョン内に誰も入らないとかでモンスターが放置され続けると、その分増えるのは間違いないからなぁ……あまりにも人気のないダンジョンは、定期的に討伐依頼がクラン宛てに出されるくらいである。放置し続けて町までモンスターが出てきてしまった。なんていう事例も海外じゃ確認されているから、当然の措置だ。

 そのまま進み続けて、上層、中層、下層を特に問題なく通り抜け、間もなくボス部屋に差し掛かろうというところで、調査班の人たちが首をかしげる。

 

「……うーん……本当に異常らしい異常は見当たりませんね。わずかに魔素(マナ)濃度が高いくらいでしょうか?」

「それは異常なんじゃねえの?」

「皆さんがいることや、夢希ちゃんが魔法を使用していることを考えると許容範囲です! あと、夢希ちゃんの使用魔法が《魔力の矢》なので、そこまで影響も出ませんし!」

「ふむ……今のところ、変異種の発見もないようだしな」

「気付かずに倒している可能性はありますよ。《魔力探知》で変異種かどうかは完璧には分からないので」

「その程度の変異種なら、気にする必要もないだろう」

 

 金守さんの意見に、それはそうかも、と納得する。変異種って言っても、強くなって被害で出るのはほんの一握りで、あとは普通に倒されてしまうことが多いのだし。見ている限りはいなかったし、変な反応もなかったから本当にいないのかもしれない。

 

「……あの、兄貴。ずっと気になってたんすけど……」

「おう、どした?」

「当たり前のように浮きながら魔法使ってますけど、魔法って2種類同時に使えるんでしたっけ……?」

「……なんかわからんが、この前は6個使ってたぞ」

「6!?」

 

 灰原さんが私の魔法行使数に驚いているけど、浜面さんも嘘を教えないでほしい。私は6個も使えないよ。

 

「あれは魔法で増やしただけで、限界は3個ですよ」

「へえ、そうなのか……いや、3個もおかしいけどな!? あと魔法を増やすってなんだよ!?」

「ど、どうなってんだよアンタ……」

「練習したので」

 

 それこそ、物心ついたころから魔法とともにあったのだから、私にはそれはもう潤沢な練習時間があったわけで。飛びながら魔法使いたいなー、使えるようになったら、もっと色々してみたいなー。みたいな感じで今3つ同時である。4つ目までいけそうでいけないので、もうちょっと別の練習法を考えた方がいいのかもしれない。

 私たちの会話を聞いて、金守さんが額を抑えながらため息をつく。

 

「……練習でどうにかなる話なのか……?」

「金守さんもそんな反応になるんですね……」

「流石にな。だが、犬束君もかなりの数のスキルを同時に行使していたし、ユニークスキルの内容にもよるのかもしれないな」

「ユニークスキルは本人の才能の具現化。などと言われていますが……実際のところどうなのかはわかりませんね。50年経ってもまだデータが足りません。初期からずっと想定外が増え続けているくらいです」

 

 『魔女の大鍋(コルドロン)』の人たちからしても、ユニークスキルは複雑怪奇なものであるらしい。同じスキル名でも効果違ったりするもんね。それにしても、記録水晶ってどういう仕組みなんだろうか本当に。まったく新しいスキルが、名前を持ってこの世に出てくるのよくわからないよなぁ……

 ユニークスキルが才能の具現化という話を聞いて、浜面さんがぼやきだす。

 

「その説が正しいってんなら、俺の才能は馬か。持久走は得意だったけど……なぁ?」

「馬は持久力に優れてはいますが、どうなのでしょうねぇ……そこのあたりも詳しく調べてみたいところです」

「わたくしの範囲回復かつ状態異常回復は一体何の才能なのでしょう……?」

「そりゃ聖女様だろ。生まれる時代を間違えたのかもな」

「時代ではなく次元では?」

「はっはっはっ! そうかもしれねえ!」

 

 浜面さんと調査班の男性、花奈さんが何やら盛り上がっている傍ら、金守さんと灰原さんが静かに話していた。

 

「俺はドラゴンの才能か……ある意味、時代に即した才能かもな。人間に生まれたのは間違いだったかもしれないが」

「金守さんがドラゴンとして生まれてたら、誰も勝てなくなりそうすね……」

「どうだろうな。脳の性能が落ちそうだからな……」

 

 確かに、人間に生まれながらドラゴンの才能があるのなら、もともとドラゴンに生まれたらすごそうだな金守さん……でも、金守さんの言う通り、人間の脳ってかなり性能がいいみたいだから、そこの差がどう出るかにもよるか。

 うーん、となると、私は普通に魔法使いの才能があったというだけなのだろうからいいとして、灰原さんは狼……狼か。なんていうか、群れで生きている生き物だし、そういう才能があるのかもしれないな。

 

「……灰原さんは狼ですから、リーダー気質なんでしょうか」

 

 ふと、思いついたことを口に出してみると、灰原さんが私を凝視して固まった。

 

「……は、え?」

「確かに、群れで生活してる感じだもんね」

「あー、まあ、そっすね……」

「前衛ですし、武器も斧なのでなおさらそんな感じがします!」

「いやこれは別に……」

 

 その後、彩音さんと美弥子からも話しかけられ、灰原さんはなんだかやりにくそうである。なんだろう? やっぱり人見知り? 浜面さんが違うって言ってたし、なんだろうな……?

 

「あの、浜面さん、もしかして彼……」

「俺も今、もしかしてって思ってる」

「犬束君が唯一仲良くなり切れないと言っていたが、そういうことか……」

「青春ですねぇ……」

 

 何やら大人たちが何か言っていたが、私には聞き取れなかった。

 この後、ボス部屋に入ってブラックスライムをハチの巣にしたが、そこでも特に異変は見当たらなかったので、浅草の調査は終わった。ブラックスライムは属性魔法が効きにくい上に物理攻撃にも耐性があり、また2メートルほどのサイズがあるので強敵扱いだが、《魔力の矢》は属性魔法じゃないので関係ないし、連射で押し切ってしまえばどうとでもなる。動き遅いしね。

 あ、ボスのドロップアイテムは回収したよ。研究するのに必要なんだってさ。

 調査依頼を受ける代わりとして、未成年がいてもドロップアイテムを好きに持ち帰っていいっていう条件を飲ませたんだってさ。抜け目ないよね……

 

 

 

 




灰原、バレる……!
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