【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
特に何事もなく終わった浅草ダンジョンの調査の後、次は秋葉原ダンジョンに行こうという話になった。
秋葉原ダンジョンは、下層まであるダンジョンで階層数は5層。上層中層が2層、下層だけが1層のダンジョンだ。私的には、目が痛くなるダンジョンって印象である。あと、食べられるモンスターがいない。
モンスターは全部機械系。アンドロイドやロボットから、ケーブルみたいな周辺機器の集合体まで色々いるのだ。流石にこれらを食べるのは無理だよ。
ダンジョン構造としては渋谷ダンジョンに近く、広場が通路につながっている感じだ。ここの最大の特徴が、壁がネオンで出来ていることだ。もうね、眩しいんだよ本当に。しかも、そのせいで視認性が悪いから、モンスターが奇襲してくると大分面倒である。ネオンの光が届かない暗がりにモンスターが潜んでいると、本気で見えない。
罠もあるのだが、その罠の内容が強烈な光か騒音なので、半分お化け屋敷みたいな扱いをされている。連携が分断されたり、周りのモンスターが集まってきたりで結構大変なんだけどね。毒や麻痺といった状態異常は特にないから、そこは安心できるダンジョンである。
「あー……目がいてえ……」
「ここはそうですね……」
浜面さんと調査班の男性が目を抑えている。私たちもそれぞれ目を何度も瞬きさせて目を慣らしていく。もう本当にここはさぁ……上層はそうでもないけど、下層まで行くにつれて段々そういう街みたいになっていくからね。読めない看板とか立ち始めるし。不思議なところだよ。
モンスターが食べられないのと目がチカチカする以外は面白いダンジョンなんだよ。だって異世界みたいだし。
目が慣れるまでしばらく待機した後、金守さんが指示を出す。
「今回は俺たちも戦闘に加わる。一定範囲のモンスターを倒したのち、全員で範囲内の調査だ。暗がりからの奇襲に注意してくれ」
「わかりました」
「おす」
私が《魔力探知》で探知してそれを伝えて、基本的には前衛のみんなで倒す。ここはそういう感じで行くそうだ。まあさっき全部私がやっちゃったもんね。装備品を痛めるとわかってて、これからも調査が続くのにわざわざやることじゃないからね。
とはいえ、入り口辺りにはモンスターがいなかったので、さっさとまたさっきの機械をもって計測していく。それにしても、浮遊魔法で浮いてるんだけど、なんだか安定しない。普段は調整とかしないでも問題ないんだけど、今は少しずつ調整し続けていないと危ない。こうなると、他に使えるのは1個が限界かな。
「すでに
「報告は少ないですがありますからね。気を付けてください」
む、
ダンジョンの層の区分は、空間の
その場合、中層のモンスターが出てくるか、上層のモンスターが強化されて出てくるか……どうなるかわからないけど、渋谷の迷宮イモリのことを考えると、かなりの強化がされる可能性はあると思うので、流石に看過していい問題じゃない。
かといって、原因がわかるかどうかとか、その辺は流石にわからないけども。聞いたことないしね。でも、調査班が当たり前のように反応している辺り、もしかしたら、意外とあるのかもしれないな。
「夢希ちゃん、何かある?」
「今のところ特には。でも、なんか変な感じはするかな。浮遊魔法が不安定」
「……魔法が不安定だって?」
「はい。なんだか……そうですね、魔力が分散しているような感じします。あと、この状態だともう1個が限界だと思います」
金守さんに今の状態を簡単に伝える。伝えておかないと、前と同じように求められたときに危ないだろうから、伝えておかないと。
前ならこういうこと思いつかなかっただろうなぁ……なんて、昔のことを思い出してしまう。二ヶ月くらいなんだけどね。パーティー組んだのって。その頃の私が今の私を見たら、なんていうんだろうか。
「物前君、それ以上不安定になった場合は降りてくれ」
「わかりました」
金守さんの指示があったので、その場合は遠慮なく降りさせてもらうことにしよう。後ろに行くか、荷台に乗るかはその時に決めてもらおうかな……後ろにいると、浜面さんが大きすぎてどうにもならないからね。
横では、花奈さんが荷台の上の美弥子に話しかけていた。
「美弥子さん、魔法が不安定になる要因として考えられるのはなんでしょう?」
「一番多いのは、他の魔法による影響ですね! 大規模魔法のそばで魔法を使おうとすると乱れるというのはよく聞きます! 次はモンスターの特性ですね!」
「有名なのはアンチマジックシェルや
「良くも悪くもシンプルなモンスターしかいないよな。パワーはあるから面倒なんだけどよ」
へー、そうなんだ……基本的にソロでしか潜ってなかったから、大規模魔法の近くだと魔法が乱れるなんて知らなかったよ。となると、大規模なクランの魔法部隊って結構大変なのかな? 一斉砲撃したいのにズレちゃったりしそうだもんね。
アンチマジックシェルはいつもの二枚貝、
もしかして、灰原さんも音とか匂いとか苦手なのかもしれないな。ちょっと気を付けておこうかな。ご飯作るときにね。
上層を進んでいくものの、あまりモンスターに会うことがなかった。まあ、ここってそこそこ人気のダンジョンだしね。パワーはあるけどシンプルなモンスターが多いため、攻略だけでなく、金策やレベリングにも使いやすいのである。
と思っていたら、前方からモンスターの群れ。これは、ケーブルバイパーとカメラアイか。
ケーブルバイパーは、テレビなんかのケーブルがヘビ型に絡み合った姿をしている。特に変な行動はしてこず、プラグの先端で刺してくる。牙の代わりなんだろうけど、見た目が大分めちゃくちゃである。それに、貫通力もないので、噛んでくるよりも締め付けてくる方が厳しんだけど、あんまりしてこない。
カメラアイはテレビマンが持っているような大型のカメラにドローンのプロペラがついてるモンスターで、フラッシュで目くらましをしてくるので面倒。でも、攻撃手段が体当たりしかないので怖くない。
両方いても、大した脅威にならないのが悲しいモンスターたちだ。上層なんてそんなものかもしれないけども。
「前方から来ます。15体ほど。ケーブルバイパーとカメラアイの群れです」
「任せてもらおう。書類仕事でなまっている体をほぐしておかないとな」
金守さんが前に出る。武器も何も持っていないけど、やっぱりその体自体が武器なんだね。
モンスターの群れに突っ込むと、殴り飛ばし蹴り飛ばし、翼でも殴りつけて尻尾で薙ぎ払う。うーん、瞬殺。でも、大分手数多くてすごいな。腕4本と足3本あるみたいなもんだもんね。私にあっても使いこなせると思えない。
「準備運動にもならないな、流石に」
モンスターを軽く蹴散らしたあと、ため息をつく金守さん。まあ上層のモンスターだしね。流石にね。
「格闘戦が主なのですね」
「ああ、基本的にはそうしている。本気を出すなら剣を出すがね」
剣? 金守さんは普段のっていうとおかしいけど、スーツに近い姿で特に変化もないし、持っている武器もない。収納魔法の中にあるんだろうか?
「でも、剣なんて持ってませんよね? 収納魔法の中ですか?」
「いや、こうする」
金守さんが軽く手を振ると、腕に炎がまとわりつき、手の方に動くにつれてそのまま剣の形に変わっていく。そして、バチバチと雷らしきものまでそこにまとわりつき始めた。え、何それすごくカッコいい。魔法だったら教えてほしい。威力がどうとかどうでもいいからそれ使いたい。カッコいいもん。
「わ、炎が剣の形に……! それに雷まで!」
「素晴らしいですわね。ロマンを感じますわ」
「それ魔法だったら教えてください」
「ははは、俺も気に入ってるんだ。物前君には申し訳ないが、これはスキルでも魔法でもないからな。教えるのは無理だ。ユニークスキルのおまけのようなものさ」
彩音さんが目を輝かせ、花奈さんが称賛し、私が詰め寄る。
が、金守さんはそれを笑って流してそのままの自然体である。魔法じゃないのは残念だなぁ……そっかぁ……
……もしかして、灰原さんって、女性が苦手なのかな……? なんか慌ててる感じだったし、金守さんとの差を考えるとそうな気がしてきた。浜面さんも名前で呼ぶのに躊躇があったし、もしかして。くらいだけどね。
その灰原さんと浜面さんは、後ろで金守さんを見ながら顔を引き攣らせていた。
「……おまけの性能じゃないすよねあれ」
「本体じゃねえのがやべえよな。でもまあドラゴンだしな」
「確かに。ドラゴンすもんね」
それでいいのか男性陣……気持ちは分かるけどさ。
久々に何の予定もない休みなので、筆が進む進む。