【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とペペロンチーノ

 

 秋葉原ダンジョンの調査が終わり、ギルドに冒険者の遺体の引き渡しとイレギュラーの報告をした後、少し遅めのお昼を食べることになった。お店で買ってこようかという話にもなったのだが、どうせだしということで、私が作ることにした。

 最悪の場合を考えて持ってきていた食材ではあるが、浜面さんだけ別メニューなの可哀そうだなって思ってしまったのである。

 野菜以外食べられないということで、基本的に外食不可能みたいだしさ。ハンバーガー屋さんのポテトのみとかになっちゃうのもアレだし。パンは行けるって言ってたから、パン屋さんっていうの考えたけど、シンプルな食パンを食べてる横で総菜パン食べるのもなんかね。

 今日作るのは、ペペロンチーノである。灰原さんは嗅覚が強力ではあるものの、にんにくくらいなら問題ないらしい。また食べられるものには制限がないそう。金守さんも、食べられるものには制限なし、味覚が変わっているものの、野菜そのものでなければ大丈夫で、にんにくと唐辛子くらいなら問題ないそうだ。

 浜面さんも穀物なら問題ないということで、ペペロンチーノにすることにした。オリーブオイルとにんにくと唐辛子と塩と胡椒だけだからね。唐辛子も乾燥した輪切りのやつなので、あらゆるものが日持ちする完璧な料理である。

 非常食の持ち物は、パスタにした。水がほぼ無限に生成できるから、パスタがいい感じだったのである。乾パン用意するなら、レーションでいいしね。でも、レーションだけとかにすると、精神的にキツイ。まっずいからね。

 さ、一気に作ってしまおう。まずはにんにくを……

 

「というわけで、ささっと……作ります。彩音さん手伝って」

「はーい。どうすればいい?」

「にんにくみじん切りにしてほしい」

「わかった」

 

 彩音さんに、にんにくのみじん切りを手伝ってもらう。えー、そうです。浜面さんの食べる量を考えたら、私ひとりじゃ厳しいことに今気づきました。というわけで、2人並んでひたすらにんにくをみじん切りにしていく。パスタを大量に茹でるのはこの後だ。若干、作るといったことを後悔しているのだが、万が一閉じ込められたらこれを毎回やることになるので予行練習だ。

 

「料理なんて、全然しねえもんなあ……」

「兄貴の場合、サイズが合うキッチンがないんじゃないすか?」

「それもあんだけど、それ以上に調理器具がさ……小さいよね。鍋がこれよ?」

 

 浜面さんが鍋を掴んで持ち上げているのだが、計量カップを持ち上げてるみたいになってるんだよね……サイズ感狂うなぁ。

 

「私も料理はしませんね! そうだ、夢希ちゃんは料理できる人の方がいいですか!?」

「もちろん」

「なら練習します!!」

 

 うん。美弥子は扱いやすくていいね。暴走してこっちに迫ってこないならとても素直だし。

 それに、一緒に料理できる方が楽しそうだしね。私が作ってあげるのも好きなんだけどさ。選択肢は多い方がいいよね。

 

「美弥子さんはそれで……よろしいのでしょうね」

「とても素直ですからね彼女は」

「素直で片づけていいものだろうか……?」

 

 花奈さんが1人納得しているし、男性がうんうんと頷いているし、金守さんが首をひねっている。まあ、それで片づけておきましょうよ。そうじゃないと大変なので。私が。

 そういえば、金守さんは料理とかするのかな? 勝手な想像だけど、ささっとオシャレな料理を作ってくれそう。

 

「金守さんは料理するんですか?」

「するさ。得意料理はステーキとハンバーグだ」

「んふ」

 

 思わず吹き出してしまった。凉と同じような感じじゃない? 金守さんって結構こういうところあるよね。

 そして、案の定灰原さんに突っ込まれてしまった。

 

「それ、料理なんすか……?」

「料理だろう? ちゃんとソースも作るぞ。グレービーだったりデミグラスだったり」

 

 前言撤回。ちゃんと料理してた。流石すぎるな金守さん。出来る大人すぎるよ。

 よし、にんにくみじん切り終わり! さてパスタ茹でるぞ。山ほどね! というわけで今からお湯を沸かす。鍋にいっぱいに水を入れてっと。

 彩音さんに手伝ってもらえそうな工程が終わったので、ここからは1人である。

 うん。明日から、鍋をもう1個追加しよう。同時進行出来ないのが大分つらい。コンロも二口のやつに変えよう。本当は2個欲しいけど、流石に場所がないし。やっぱり1回やってみるって大事だね。問題点の洗い出しが出来るし。

 

「灰原君は、料理するの?」

「ま、まあ……それなりに……」

 

 彩音さんの質問に答える灰原さん。ふむ。私の少ない人生経験において、それなりと答える人は料理をやっている人か、出来ないけど見栄を張っているかのどっちかである。

 灰原さんの場合、彩音さんに話しかけられた時点でちょっと顔がこわばったので、判断が出来ない。

 

「店で売ってるやつだと味が濃いんで、基本的に自炊なんすよ」

「へえ、そうなのか。何作ってんだ?」

「大体和食です。味の調整もしやすいので」

 

 おお、ちゃんとしている人だ。しかも和食メインとは、鬼灯と話が……合わないな。うん。鬼灯が特殊すぎる。確かに、和食って味調整しやすいんだよね。出汁メインだし、水の量変えるだけでいいしさ。あと、めんつゆっていう最高の調味料があるからね。あれ1本あるだけで大体のもの作れるし。

 

「めんつゆがかなり便利ですよね」

「そうすね。あれ1本あれば大体何とかなりますし」

「他の料理にも使えますもんね」

「パスタとかチャーハンなんかにも使えますね」

「和風パスタ、いいですよね」

「きのことベーコンのパスタとか特に好きですよ。ほうれん草も入れたりして……あ、ナッツ入れるといい感じですよ。クルミとか」

「……食感よさそうですね。今度やってみます」

 

 たまにああいう和風パスタを無性に食べたくなる時があるんだよねぇ……今度作るときにやってみよう。食感よさそうだしさ。美味しそうだ。

 あれ、灰原さん料理トークなら挙動不審にならないのか? なんか普通に会話出来てる。さっきまで顔こわばってたのに、普通に笑顔だし。

 

「物前さんは何か得意な料理とかあるんです?」

「そうですね……これっていうのはないですけど、中華料理が好きですね。野菜も一緒に取りやすいですし、ご飯にも合うので」

「回鍋肉とか青椒肉絲辺りですか?」

「はい、その辺です」

「俺も回鍋肉が好きなんですけど、ちょっと味が濃いんでたまにしか食べないんですよね」

「回鍋肉だったら、肉に先に片栗粉をまぶして味をつけるとか、野菜に火を通した後に鍋から出して最後に加えるとかするといいですよ。水分が減るので、味濃くしなくても大丈夫なので」

「え、そうなんすか。今度試してみます」

 

 あー……こういう料理トークを身近に出来る人がいなかったから、ものすごく楽しい。愛依も料理は出来るんだけど、趣味というよりも仕事の一環に近い感覚なようで、こういった話にはあんまり食いついてくれないのだ。何でも、レシピから逸脱するのが怖いらしい。過去になんかやらかしたみたいだ。

 よーし、このペペロンチーノを過去最高に美味しいものにして、さらに料理トークするための足掛かりにしてやるぞ。

 

「私たちも本格的に料理するべきかな……?」

「そうですわね……これからも共に冒険するわけですし」

「私にも教えてください!」

「夢希ちゃんに教わらなくていいの?」

「びっくりさせたいです!」

「ふふ、では、3人で頑張りましょうか」

 

 彩音さんと花奈さんは別に料理できないわけじゃないでしょ。普段しないだけで。いや、本格的に料理し始めるなら、それはそれですごく嬉しいよ。楽しいからね。

 あと、美弥子は声を落とさないと私に丸聞こえだよ。びっくりしようがないよ。いやでも、美弥子がいきなり美味しい料理片手にやってきたら、びっくりするかも。

 

「犬束君にも教えてあげたいが、彼女は料理出来ないだろうしな……」

「うん? 出来るぞあいつ」

「それは過去の話じゃないのか? 今の彼女には味覚がないだろう?」

「いや、なんか普通に作ってたぞ。野菜炒めを食わせてもらった。どうやってんのか知らんけど」

「そうなのか……よし、伝えておこう」

 

 女性が苦手って感じだったら、そりゃあ陽向も苦手だよね……でも、この感じだと普通に料理トークなら話せそうだし、陽向も料理するって言ってたからきっと大丈夫だと思う。

 でも、確かに陽向って味見できないのに、なんで作れたんだ? この前は無理だって言ってたし……何かしらの方法を見つけたのかな? だとしたら、お隣さんとのおすそ分けをしあうという私の些細な夢が結構早く叶いそうである。

 この後、出来上がったペペロンチーノを食べながらパスタ料理について灰原さんと話し合って、結構仲良くなれたと思う。少なくとも、私と話すときだけは緊張とかしなくなってた。

 さあ、腹ごしらえも終わったし今日最後のダンジョン、上野に行くぞー!

 

 

 

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