【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
正直、これだけのダンジョンを一日で回るの無理じゃない? って思ってたんだけど、なんだかんだ余裕を持って回れている。行きは全域を調査するからある程度時間はかかるんだけど、帰りは浜面さんが走ってくれるのでめちゃくちゃ早かった。道中なんて轢いちゃって終わりだしね。
それに、行きにしたって、大抵私が全部先回りで倒してしまうので、他のメンバーは調査用の機材持ってるだけだったしね。何なら、浅草の途中なんて駆け足だったくらいだ。
そんなわけで、私たちは本日最後のダンジョン、上野ダンジョンの入り口に立っている。ここには元々公園があったそうなんだけど、ダンジョンが出来たので拠点になってしまったのだとか。昔は桜がたくさん植わってて、花見でにぎわっていたんだって。隣には、昔からある動物園が今でもちゃんと営業している。
そんな歴史のある上野ダンジョンは全1層。中層の階層が1層だけという、お台場ダンジョンみたいな構造をしている。そして、お台場ダンジョンと同じくここにも通称がついている。その名も「上野わんにゃんランド」である。
犬と猫とパンダしかいないからね、このダンジョン。パンダも大熊猫って書くから、にゃん側に入っているそうだ。ダンジョンに出てくるのでモンスターしかいないんだけど、見た目だけは可愛いからこんな通称だけども。犬と猫とはいえ、普通にサイズが大きかったりと凶暴だったりするので全然可愛くないです。見た目だけだよホントに。
クーみたいにもっと人懐こくあってほしい。特に犬。猫は攻撃性だけなくなってほしい。人懐こい猫はなんとなく嫌だ。彼らはもっと気まぐれであってほしい。パンダは……もっとだらけてていいと思う。うん。
ダンジョンに潜っていく途中、花奈さんがこんなことを言い出した。
「夢希さんは、上野ダンジョンには来たことはございますか?」
「あるよ」
「では、何か食べました? 弾丸コーギーなど美味し――」
「は?」
「ひっ」
え、なんだって? 弾丸コーギーを? 食べる??? 犬型のモンスターを私が?
花奈さんが何故かおびえているけれど、今の私はそんなことを気にしている余裕はない。
「私は犬が大好きだから、犬型のモンスターは食べないよ?」
「は、はい、わかりました……」
「夢希ちゃん夢希ちゃん、魔力漏れてるよ」
「む、ごめん」
彩音さんに肩を叩かれてようやく気付いた。思わず魔力で威圧してしまったらしい。申し訳ないことをしてしまった。頭を下げて謝る。いや本当にごめんね。
でもね。これからも犬型のモンスターは絶対に食べません。絶対にです。倒すのにすら、ちょっと気合い入れないといけないんだから。
「花奈ちゃんは好きな動物とかいる?」
「以前飼っていたのでインコでしょうか。彩音さんは?」
「ドラゴン!」
目をきらきらさせて彩音さんはそう言った。うん。分かってたけど、答えとしては何か間違ってる気がするよそれ。ドラゴンは動物っていうかモンスターだよ。さっきの反応的にはあってると思うんだけどさ。思わず花奈さんと顔を見合わせて苦笑してしまった。
「兄貴は何が好きなんです?」
「俺? うーん……雀?」
「す、雀?」
「おう。最近中庭とかにいると肩とかにとまってくるんだけどさ。丸くてちっこくて可愛いんだよなあ……」
「あー……なるほどそういう……」
「灰原は?」
「俺は猫が好きです。金守さんはどうです?」
「……俺は犬が好きだった」
肩に雀とまってる浜面さんを想像して和んでいたら、金守さんのすごく落ち込んだ声が聞こえてそっちを向く。目を右手で覆ってうつむいているので、本気で落ち込んでいそうである。どうしたんだろう。
「だった?」
「この体になってから、動物全般に避けられるんだ……」
「ドラゴンだもんな……」
「ドラゴンすもんね……」
あぁ……流石にドラゴンだと、動物には避けられるかぁ……いや、そういえばこの前クーは怖がってなかったから、クーだったら金守さんも触れ合えるかも。今度暇を見つけて執務室にクーをお届けしよう。
それと、クーで思い出したけど、今度本当にちゃんと物理型の使い魔を作ろう。今回も魔法に影響を与えてくるモンスターが出てきたし、作っておかないと、私が置物になってしまうかもしれない。
それにしても、ダンジョンの中には
上野ダンジョンの中に入っても、やることは変わらない。調査用の探知機を持って広く展開して、私が上から《魔力の矢》の雨を降らせる。そういう感じである。
上野ダンジョンに出てくるモンスターは3種類。広さもそんなに広くないし、エリアに面倒なギミックみたいなものがないので、難易度的にもそんなに高くない。
まず、犬型モンスターの弾丸コーギー。こいつは、見た目は普通のコーギーに近い。とてとてとて……みたいな効果音がしそうな感じで近づいてきて、そのあと、ドンッ! ってすごい音を出しながら突撃してくる犬である。見た目は可愛いけど、突撃が全く可愛くない。文字通りの弾丸である。初めて来たとき、とっても可愛くて油断してしまい、1回食らって死ぬかと思った。骨折で済んでよかったよ本当に。
次に猫型モンスターのパンチャーラグドール。見た目は1メートルちょっとくらいにまで大きくなったラグドールである。のんびり動いているし、へそ天しながらゴロゴロしたりと、かなり可愛い。そして、その可愛さに油断して近づいてきた人に、超威力の猫パンチを叩き込んでくるモンスターである。
最後にパンダ型のプッツンパンダ。普段はおとなしいし、静かに笹みたいな何かを食べているモンスターで、近づいても全然こっちに攻撃したりしてこないんだけど、こちらから攻撃したり、笹みたいなやつを取り上げようとしたりすると豹変する。めちゃくちゃ攻撃的で、笹みたいな何かを振り回したり、その葉? みたいなのを口から飛ばしてきたりする。先手で一撃で倒すのがセオリーだ。
全体的にもふもふしていて、とっても可愛いのに、やっぱりモンスターだなってなるのが、このダンジョンのモンスターたちなのである。
そんなモンスターたちを消し飛ばしつつ調査を進めるのだが、あまりにも余裕なので雑談が捗る。
「そういやさ、ここに出てきたっていう変異種ってどんなのだっけ?」
「確か……小さいパンチャーラグドールとか、めちゃくちゃ大きい弾丸コーギーだったはずです」
「大きい弾丸コーギーはシャレになってませんわね……」
「花奈ちゃんからしても厳しい?」
「普通の弾丸コーギーですら、正面から直撃はしないように気を遣うくらいですから、それが大きくなっているというのはだいぶ厳しいですわ」
大きい弾丸コーギー……うーん、クーの方が可愛いんじゃないかなきっと。あ、パンチャーラグドールが2匹でイチャイチャしてる。悪いけど、調査中だから仕留めるよ。
「今回、強化種は確認されていませんね。過去の記録では、強化種のプッツンパンダが大きな被害を出したことがあります」
「プッツンパンダも、一撃で倒せないと大変ですもんね」
「ところで、あのプッツンパンダの持ってる、笹みたいな何かってなんなんですか?」
彩音さんが、調査班の男性に疑問を投げかける。確かに、アレ基本的にどんな図鑑とかにも「笹みたいなもの」って書いてあるんだよね。「バールのようなもの」じゃあるまいし……
非常に困った顔をして、男性は答える。
「アレはですね……笹みたいな何かとしか言いようがないのです」
「
「笹なの!?」
あ、そんなに笹なんだアレ……普通に殴ってくるし、口から飛ばしてくる葉っぱなんて、針みたいな感じだもん。それは「笹みたいな何か」という表現にもなるよね。
「うーん、じゃあアレ俺も食えるのかな」
「浜面君、そもそも普通の笹を食べたことがあるのか?」
「いやない。食べようと思ったことがねえ」
流石に私もあの笹を食べようと思ったことはないなぁ……他にもそういったモンスターはいるかもしれないけど、これからも食べようとは思わないかな。果実だったら、花奈さんの夢のこともあるし、そのために集めるくらいしそうだけど。
「それにしても、秋葉原と違って非常に平和ですわね」
「さっきがホラーだったから、凄く癒され……ないかな。うん」
「そうですか?」
「だって、可愛いなぁって思った瞬間に死んでるし……」
「それは……そうですわね」
彩音さんがちょっとだけ頬を引き攣らせると、花奈さんもそれに同意する。
まあ、そこはしょうがないと思って欲しいんだ。安全第一だよ。確かに、可愛いモンスターを倒し続けるのがちょっとだけ心に来てるけども。
「物前さんはモンスターを食べてるんですよね?」
「食べてますよ」
「今までで一番おいしかったモンスターってなんすか?」
ついこの間までだったら、砂ウツボもしくはジャンボイナゴの佃煮と言い切るところだったが、今は完全にあのモンスター以外にいない。
「オークキングですね」
「オークキング……」
灰原さんが遠い目をしてしまった。本当に美味しいんだからね? 今もう肉がないからどうにもならないけどさ。今度、金守さんたち上位陣を引き連れてオークキング取りに行こうかな……浜面さんは食べられないから、浜面さんに声かけるのはやめよう。食べられないのに流石にちょっとね。
「確かに、あの肉は美味そうだったな」
「美味しかったですよあのお肉!」
「へー、霜降りみたいな?」
「幸せの味がしました」
「ブルルヒヒン! 幸せたあ美味そうだなあ……俺も食ってみてえ」
「私たちが必ずやってみせますよ!」
「期待して待っていてください」
「おう!」
浜面さんに『
「美味しかったとは思うのですが、記憶がないですわ……」
「花奈さんは飲みすぎ」
花奈さんあの時の記憶ないのか……いや、ない方がいいのかもしれないけども。結構な痴態を晒してたと思うし……彩音さんはまだ可愛いで済む感じだったけどさ。
「どんな調理したんすか?」
「オーブンでローストにしました」
「あ~……めっちゃ美味そうだなそれ……」
灰原さんが遠い目をしてぼそりと呟く。
倒すだけならソロでいいんだけど、肉を確保するってなると前衛欲しいし、本当に金守さんにお願いしようかな。依頼料はお肉払いで。
最後までこんな感じの緩い会話をし続けて、今日のダンジョン調査は終わった。上野ダンジョンも、普段よりも
今のところ、全ダンジョンで