【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と彩音さんの問題点

 

 下層に繰り出した私は、単体でいる迷宮イモリを索敵して、そちらに向かう。迷宮イモリは、中層にも出てくるモンスターだけど、中層にいるのと下層にいるのとでは、全然サイズが違う。中層の迷宮イモリは、大体70センチほどだが、下層の迷宮イモリは3メートルほどある。産まれた場所の問題なのか、それとも中層で成長すると下層に行くのかは不明だけど、両方とも特徴が一緒なので、同じ名前なのだ。ちなみに、イモリなのに水辺にいないのは、命名者がヤモリと間違えたせいらしい。なお、今のところ迷宮ヤモリは存在していない。そもそも、家守なのか…?いや、モンスターには、ダンジョンが家みたいなものか。

 目的地である小部屋に行く前に、まずはアレと彩音さんにタイマンで戦ってもらう。

 

「そういえば、他が衝撃的過ぎて聞くのを忘れてたけど、何でタイマンなの?レベリングって、大抵パーティで連携取ってやるものじゃない?」

 

 冒険者のレベリングは、大抵の場合、同格のメンバーと安全に行けるところでモンスターと戦うか、格上の人と一緒に少し上のモンスターと戦うか、の2種類に分けられる。

 今回の場合は、後者の方法に近い。彩音さんでは下層のモンスターはちょっと手こずるだろうからね。それが分かっていて、なお()()()()()という条件を付けたのは理由がある。

 ちなみに、私みたいにソロでモンスターハウスに突っ込むなんてレベリング方法を取る人はまずいない。これに関しては、浮遊魔法で制空権握ってから殲滅するのがひたすらに効率がいいからであって、命知らずなわけではないよ。……本当だよ?

 

「それはその通りなんだけど……多分、()()()()()()()()かな?」

「……?言わない方がいい?」

「うん。多分、体験した方が分かりやすいと思うんだよね」

「言葉で説明するよりも?」

「説明しても伝わらない。の方がより正確かも」

「え、どういうこと……?」

 

 こればっかりは本当に、伝わらないと思うんだよね。本人に自覚なさそうだし……パーティの専門家である彼女と違って、ソロの専門家である私にしか分からない事というか……私も、距離だの合図のタイミングだの、あのへんのことは言われただけだと、絶対に分からなかったと思う。それと同じで、彼女も体験しないと分からないと思うんだよね。あと、先に話をして、意識してしまうと、うまく伝わらないかもしれない。

 通路を抜けて、壁に迷宮イモリが張り付いている小部屋に到着した。こっちに気付いてるけど、様子見してる感じだね。

 

「アヤネさん、頑張って。もしもの時は私がどうにかするから」

「うん。分かった……よし、行くね!」

 

 彩音さんが迷宮イモリ目掛けて駆け出す。それに反応して、迷宮イモリが大きく口を開けて、飛びかかる。彩音さんは、それを横に避けて、地面に着地した迷宮イモリの左前足に、ハルバードのスパイクを突き刺した。踏み込んでではなく、遠心力を使って。本人は後ろ足辺りにいるのに、ハルバードって長いな……

 

「せいっ!」

「グギャァ!!」

 

 迷宮イモリは、大きな口を持ったトカゲ型のモンスターで、全身が硬めの鱗で覆われている。足が特に硬いものの鱗ではなく皮膚なので、突き刺すような攻撃はよく通る。そこを攻撃して隙を作ってから弱点を狙うのがテンプレートの戦い方だ。弱点は首で、そこだけ鱗も皮膚も薄い。

 足をぶすりと刺された迷宮イモリが唸り声を上げながら尻尾を右から左に振り回す。それをなんなく躱して……反撃はしないね。再度大きな隙を伺う感じか。これは長引きそうだな……

 そして、実際かなり長引いた。途中でモンスターが5体入ってきたので、撃ち抜く。動き回っている彩音さんは肩で息をしているし、迷宮イモリも、全ての足から血を流していてかなり動きが鈍っている。そろそろ決着だろうけど、うん。やっぱり彩音さんには悪癖があるね。確認しておいてよかった。

 決着は割とあっさり。彩音さんに、再度飛びかかって勝負を決めようと急いだイモリを躱して、足をぶすり。ついに動けなくなったイモリの首に《地砕き》を叩きつけて、首を切断。彩音さんの勝利だ。迷宮イモリが完全に動かなくなったことを確認して、彩音さんがため息とともに座り込む。

 

 "おお!やったぞ!”

 "すごい疲れてるや…”

 "そりゃ下層のモンスターソロしてるわけだしね”

 "ユキちゃんで感覚麻痺ってんのよ俺らは”

 

「お疲れ様。はい、ウォーターボトル」

「はぁ……はぁ……ありがと……」

「ゆっくり息整えてね」

 

 大分お疲れだな。あれだけ動いてたし、そりゃそうか。彩音さんをそのままにして、私も迷宮イモリの死体を確認する。一発で綺麗に首を切断出来ている。やっぱり、悪癖と呼ぶべきものだと思う。……多分怒らせるだろうけど、最終確認しよう。

 

「そろそろ大丈夫?」

「なんとか……いや、キッツいよこれ……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そりゃキツいよ」

「…………は?」

 

 "え!?”

 "思いっきり煽りにいくやん!?”

 "めっちゃキレてる「は?」だったぞ今の”

 "そりゃキレるでしょ……”

 

 今の結構怒ってる「は?」だったけど、それで確信した。完全に無自覚なんだ。あの戦い方の問題点に。

 

「いきなり何?流石に怒るよ?」

「でも、事実としてそうなんだよ。そして、そのことに気づいてない」

「……どういうこと?」

「さっきとどめをさした《地砕き》の一撃なんだけど、すごい綺麗に首を切断出来てたんだよ」

「…………」

「それに、アヤネさんは、あの一撃を首に入れたら倒せるって思って戦ってたんだよね?」

「……そうだけど」

 

 彩音さんが怒ってるけど、とりあえず話を聞いてくれるみたいだから、理由の説明を続ける。今じゃないと伝わらないから。

 

「だからこそ、さっきの戦闘は、無駄なことばっかりしてるなって評価になるんだよね」

「いい加減にしてよ!そっちからやらせておいて何なの一体!?」

 

 彩音さんが立ち上がって、私を睨みつける。身長差があるから見下される形になるけど、私はそんなんじゃ怯まない。核心を告げる。

 

「あの一撃が出来るなら、その一撃で倒せると思っていたなら。なんで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「……え?」

 

 彩音さんがポカンと口を開くと同時に、彼女の怒りが霧散した。

 

「隙を見て首に一撃入れれば倒せるのに。首に向かって一歩踏み込めば、間違いなく首に届く位置にいたのに。そして、あの隙だったら差し込めたろうに。それでも、アヤネさんは、前足を狙ったよね。それはどうして?」

「…………」

 

 "言われてみれば……”

 "確かに、あそこから前足まで届くなら、踏み込めば首まで届くな…”

 "そう言われると、なんで前足狙ったんだ…?”

 

 彩音さんが完全に固まってしまった。私から見ての彼女の悪癖とも言うべきものは、パーティでしか戦って来なかったせいで付いたものだと思う。彼女は、他人の援護や攻撃あることが前提の戦い方しか知らないからこそ、今みたいなことになっている。

 

「……い、今まで、それでやってきたし……」

「そうなんだ。じゃあ、どうして、今までそれを選んできたの?」

「え……どうしてって……」

「理由があるんでしょう?いくらでも待つから、考えてみて?」

 

 混乱してるなー、彩音さん。でも、今考えて、どうにか自覚してもらわないとマズいんだ。この悪癖は。

 

「…………隙をつくるために、こうしてきた……?」

「なんの隙を作るため?」

「なんの隙って……味方が攻撃するための、だよ」

「うん。私からしても、すごく攻撃しやすい隙を作ってくれてるなって思ったよ」

 

 実際、あの攻撃は素晴らしかった。後ろ足付近から前足を突き刺したことで、迷宮イモリは後ろを向いたし、尻尾で攻撃出来る範囲にいたから、その場で立ち止まって攻撃することを選んだ。魔法職からすれば、絶対的な隙だった。でも、だからこそ()()()()()()()

 

「でもね?さっきの戦いはあくまでもタイマンなんだよ。アヤネさんのソロなんだ。だったら、存在しない味方のための行動は、全て無駄な行動でしかないよね?」

「……!そっか……」

「アヤネさんは、パーティで戦うこと前提の戦い方を、ソロでもやってしまってる。その結果が今の消耗した状態」

「…………」

「ちょっと他に言い方が思いつかないから、こう言うけど、他力本願なんだ。とっても」

「た、他力本願……?」

「うん。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よね?」

「あ……」

 

 気付いたらしい彩音さんが俯く。でも、これが彼女の問題点で、絶対にどうにかしないといけない、考え方。

 パーティを組む前に指摘された、自分勝手な私の考えと、ある意味対極な考え方。自分が全てなんとかするから、それに合わせろっていうのと対極な、自分が隙を作るから、あとは全部なんとかしてくれっていう考え方。

 

「格上相手になっちゃうけど、中層のモンスターだとアヤネさんは余裕だろうから、それじゃうまく伝わらないと思ったんだ。だから、下層で、タイマンっていう形をとった。それに、その考え方を直さないと、万が一私たちが分断されたとき、アヤネさんが危ない」

 

 最大の懸念点はそこだ。彩音さんが1人で戦うということが出来ない以上、分断されたら間違いなく死に直結する。これは例え中層でも同じことだ。動きを見てて欲しいと言ったあとの、ホブゴブリン3体に斬り掛かった時もそう。あれは、後方のカバーや、外したあとの対処を私に丸投げしていた。無意識に、後衛がいる前提で動いてしまっている。分断され、1人で戦うしかないときに、後方の警戒をしないなんて、自殺行為でしかない。

 

「……そんなに危ない?」

「危ないというか、間違いなく死ぬって断言出来る」

「……どうして?」

「さっきの戦闘中に、モンスターが5体来た。つまり、私がいなかったら、アヤネさんは、6体同時に戦うことになってた。そうなったら、勝てないよね?」

「…………うん」

「勝てないなら逃げればいいと思うかもしれないけど、アヤネさんは感知系のスキルも持ってないから、逃げた先にモンスターがいる可能性がある以上、逃げる選択も出来ない」

「…………」

「アヤネさんは、今までパーティで戦ってきたし、これからもそうするだろうけど、でも、それでもソロで戦わないといけない場面は必ず来る。絶対にイレギュラーに巻き込まれないなんて、思わないほうがいい」

「なら、どうしたらいいの…?」

 

 彩音さんが、俯いたまま、震えた声で問いかけてきた。そんなものは決まっている。練習すればいい。

 

「ソロでの戦い方が出来るようになるまで、いくらでも付き合うよ。私がアヤネさんに、パーティでの戦い方を教わったように、私がアヤネさんに、ソロの戦い方を教えるよ」

「……出来るかな?」

「もちろん。練習しても出来ない。なんてものはあんまりないよ」

「お願いしてもいい?」

「任せて」

 

 目元を拭って、顔を上げた彩音さんの目をしっかり見つめて断言する。ソロの戦い方なら任せてくれ。ソロしかやってこなかったんだから。一通り終わったので、謝罪しないとね。頭を下げる。

 

「煽ってごめんなさい」

「……カレー大盛り」

「おかわりも用意するよ」

「許す!」

 

 彩音さんが笑ってくれたので一安心。もっとうまく言えると良かったんだけど、私じゃこんな感じしか思いつかなかった。

 私は、彩音さんに死んでほしくない。私の冒険を、一緒にしたいと言ってくれた人だから。だから、まぁ、その……

 

「……スパルタになるのは許してね」

「……え!?」

「とりあえず、もう一回迷宮イモリ倒そうか」

「い、今から?」

「今から」

「あの、もうちょっと休みたいなって……」

「ソロでは疲労状態で戦うことが多いから、それに慣れてもらう」

「嘘でしょ!?」

「大体さっきの通りに避けて、隙に見て首を狙えばすぐ終わるから。ほらいくよ」

「ちょっと引っ張らな……力強っ!?た、助けてー!」

 

 

 

 "イイハナシダナーで終わらせろや!”

 "らしいっちゃらしいけどw”

 "いやぁ、女の子2人の喧嘩は怖かったっす…”

 "結構ビビったわ。ユキちゃん突然喧嘩売るんだもん…”

 "お前無駄ばっか。はかなりキツい言い方だったけど、言われてみれば……って感じだったしな”

 "確かに、ユキちゃんの言う通り、パーティ分断されたらソロ前提で戦えないと死ぬよな”

 "ソロ専じゃないと気付かないこともあるんやなって”

 "とりあえず、丸く収まって良かった良かった”

 "ホントに丸く収まってんのか…?”

 "アヤネさんは犠牲になったのだ…”

 




なんか、どうしても主人公がパワハラしてるみたいになってしまって、めっちゃ書き直ししました
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