【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とドラゴンの肉の祝勝会⑴

 

「なら、食べましょう!!」

「いやあ、ドラゴンの肉なんて初めて食べますよ」

 

 祝勝会にドラゴンの肉を使った料理を作ろうとしたところ、金守さんから条件を出されたので、その条件をクリアするために調査班の2人に話した結果がこれである。

 正直、想像出来ていた。『魔女の大鍋(コルドロン)』の研究者だよ? そんな未知のものを食べるってなったら、何が何でもオッケーを出すに決まっている。金守さんからの条件を聞いたとき、そんなものでいいんだーってなって、浮かれているのを隠さないといけないくらいだった。

 

「流石に、調査はしてくださいな……」

 

 調査班と一緒にいた花奈さんが呆れたように息を吐く。

 ドラゴンの血液にもクリスタル化の効果があるため、念のために花奈さんが調査班に同行していたのだ。

 私は血液もそんな危険物だと思っていなかったので、聞いたときは本当に驚いた。というか、凶悪すぎるでしょこのドラゴン。不意打ちでブレス食らったら即死、攻撃して返り血浴びても即死。なんてやつだ。

 

「それはもちろん! まあ安全なのは確定ですが!」

「というより、物前さんの言う通り、北条さんのスキルがあって安全でない食べ物なんて思いつきませんからねぇ……カエンタケでもテトロドトキシンでも問題なく解毒できたのでしょう?」

「ええ、まあ……」

 

 長谷川さんの指摘に、顔を逸らす花奈さんに思わず同情した。そういえば、目の前で飲まれたって言ってたなぁ……

 とにかく、そういうことになったので、花奈さんにスキルを維持してもらいつつ、その範囲内でドラゴンを解体して、その肉を2人に調査してもらうことにした。

 ただ、本気で問題があって……どうやって血抜きすればいいんだろう? という問題である。持ち上げるにも重すぎるし、どうやろうかな……こんな時に、液体操作魔法みたいなのがあればなぁ。今度発注しようかな。

 今のところ、そういう魔法って水限定なんだよね。もしくは自分の血液限定。でも、他人の血液操作できる魔法とか危険すぎるよね。作ってはくれそうだけども。いや、もしかしたらもうあるもしれないけど。

 そんなことを考え込んでいたら、それを美弥子に見つかった。

 

「どうしました!?」

「……いや、血抜きどうしようかなって」

「ふむ……でしたら、《グラビティ》で排出するのが良いのではないでしょうか? 物前さんなら細かい調整も出来るでしょうし」

 

 長谷川さんの提案に、それはそうだとなった私は、《グラビティ》を使って血抜きをすることにした。普通にやる時も重力利用してるしね。

 とりあえず……大きいので、前後で分けることにした。頭側はみんなで切り落としてくれた部分があるが、尻尾側にはないので、花奈さんと一緒に尻尾の先端を切りに行く。そのあと、手足の先も切り落とす。これで全身から効率よく血液を抜き取れるはずだ。

 お腹の前に陣取って、《グラビティ》を2つ発動する。お腹から頭と尻尾に分ける感じでね。どんどんとあふれ出てくる血液の一部を、長谷川さんが瓶に詰め始めたので驚いた。

 

「長谷川さん、それ大丈夫なんですか?」

「それはまだわかりませんが、魔封水晶製の瓶ですから、大抵のものはどうにかなりますよ」

 

 魔封水晶製の瓶らしい。何でも、それなりに魔素(マナ)の影響を無効化できるらしくモンスターの調査なんかだとよく使われているらしい。加工が大変だから、あんまり出回ってないんだってさ。

 血液だけじゃなく、袋の中の粉も回収していたので、地上に帰ったら存分に研究するみたいだ。どうなるかわからないけど、保存技術とか魔道具の部品なんかに役立てばいいね。

 そんなこんなで血抜きが終わったため、解体することにしたのだが、まずこれどこが食べられるんだろうか? 内臓と袋に関しては食べないとして、部位的には首、胴体、脚、尻尾辺りだろうか? ともかく、肉のブロックにしてしまおう。もったいないけど、全部とるのは無理だね。持ってけないし。

 もうすっかり調理器具として板についてしまったショートソードを抜き放ち、骨の位置を確かめながら解体していく。ぬめぬめしているように見えていた皮膚は、触れた感じはそういった感じはないが、手に吸い付いてくるような感触がした。切るときに滑るとかなさそうで安心である。

 まずは、首の肉からはじめて、だんだん尻尾の方に向かっていくことにした。調査班が持ってきていた機材用のカバーシートを置き場所にして、一抱えくらいの肉を各パーツから取っていく。

 最終的に、刃を入れて美味しそうな部位のみを並べると、7個になった。首、肩、腰骨のそば、あばらのところ、前脚の付け根、お尻辺り、尻尾である。ドラゴンの肉は、ほとんど白に近い色をしていて、脂身との差が分かりにくい。

 牛肉とかの部位で言うと、ネック、リブロース、ヒレ、カルビ、ミスジ、ランプ、テールかな。脚の腿の部分も使ってみたかったんだけど、ものすごく硬かったので今回は断念した。流石に、この状況で長時間煮込むのはね。

 全部焼くだけでも美味しそうなんだけど、尻尾の肉はスープにしてみたいなと思っている。テールスープってやつだ。ドラゴンの。

 浜面さんは肉を食べられないけど、これならいけるだろうし。肉の脂の問題も、人参を煮込んだ後で表面を軽く洗うか切れば、味だけが染み込んだ状態になると思う。他の根菜は厳しいけど、一番好きな人参だけで我慢してもらうしかないかな……そこだけが申し訳ない。

 

「どうやって食べますの?」

「とりあえず、全部焼いてみて毒味してみるよ。その味で決めることにしようかなって」

 

 一枚ずつ焼いて並べて、食べていくことにする。首から順番に行くことにした。

 

「いただきます」

 

 はむ……む、歯ごたえがすごいなこの部位。食べられないような硬さではない。筋肉質な感じだ。そして、噛めば噛むほど旨味が出てくる。うん美味しい。味に関しては、結構あっさりした感じだ。旨味こそあれど、脂っこくはない。

 次に、肩の辺り。リブロース的なところ。肉の見た目としては、火を通したらなんかちょっと紫色になったので、大分アレだが……んー……! 美味しい! しっかりとした肉の味と、その中にちょうどよく混じっている脂の旨味。見た目がちょっとアレなところ以外は文句なし。ステーキにすると間違いなく美味しい感じ。

 その次は……

 そんな感じで全部位を食べた私は、料理の内容に困っていた。だってもう、全部焼くだけで美味しいんだもん。旨味をどんな表現するべきなのか迷うが、牛とも豚とも鳥とも違う不思議な味がする。全体的な肉質は牛に近いのだが、牛よりももっとあっさりとしていて、どんどん食べられてしまうような……そんな感じだ。

 焼いただけだけで、とても美味しいんだけど、流石に焼くだけで終わりっていうのはなぁ……

 そうだ、灰原さんにも相談してみようかな。早速もう1枚ずつ焼いて、灰原さんの元へ。

 

「灰原さん、料理のアイデア出しを手伝って欲しいので、味見してもらえますか?」

「え、ああ、わかりまし……」

 

 肉が乗った皿を灰原さんに手渡す。灰原さんはその皿を見て、肩の肉を見て固まった。

 

「あの、これ、ヤバい見た目してますけど……」

「見た目はともかく、味は美味しいので……」

 

 思わず目をそらしてしまった。

 うん、見た目に関しては本当に擁護できないからね……紫だもん。本当に食べるのに勇気がいるビジュアルしてるんだよね。でも、味は、味は本当に美味しいから。

 灰原さんが意を決したようにその肉を口に含んで、何度か噛みしめると、顔がほころんだ。

 

「本当に美味いすねこれ」

「ですよね? ただ、それだけで美味しいので、どうしたものかと思って……あ、尻尾はテールスープを作る予定です」

「ああいいですね。でも、そうなると……」

 

 灰原さんも考え込んでしまった。そうなんだよね、どうしたものかなぁ……というか、付け合わせの選択肢が根菜しかないので作れる料理が少ないんだよね。いや、ダンジョン内で閉じ込められている状況で考えることじゃないんだけどさ。せっかくの祝勝会だし、美味しいもの食べたいじゃん。

 

「……いっそ、焼き肉にしちゃうのはどうすかね?」

「やきにく……?」

 

 つい、灰原さんの提案をオウム返ししてしまった。

 

「ええ、どれも焼くだけで美味いですし、付け合わせの材料もないんだったらちょうどいいんじゃないですか? 調味料はあるんですよね?」

「ありますよ一通り」

「じゃあ、それでタレ作りましょうよ。みんなで食べるんですし、祝勝会らしいじゃないっすか」

 

 なるほど……確かに、わいわい出来るし、調理も簡単。タレも用意すれば個人の好みに合わせられるし、量も自由。焼き肉か……ちょっと盲点だったな。

 ステーキとかはしたことあるけど、焼き肉みたいに薄い肉で食べたことってないかもしれないな……匂いキツイモンスターとか多かったしね。最近のオークなんかは今度やってみようかな。美味しそうじゃない?

 でも、それをやるにはちょっとした問題があるんだよね。

 

「……確かにいいですね。ただ、その場合問題があって……」

「どうしました?」

「その、鉄板がですね……」

「ああ、調理器具の問題もあるんすね……」

 

 そう、焼くための鉄板がないのだ。フライパンで焼いても焼き肉感出ないしさ。なんかいい方法はないかと頭をひねっていたら、横から美弥子が飛び出してきた。

 

「鉄板があればいいんですね!?」

「う、うん……」

「では! 機材を分解して《錬金》してもらいましょう!!」

「それはダメでしょ」

 

 自信満々で言い放つ美弥子に、思わず真顔になってしまう。美弥子……流石にそれはダメだよ。というか、手段選ばなすぎだよその方法。最終手段としては考えておいてもいいかもしれないけどさ。

 

「それは冗談として!」

「ホントに冗談でした……?」

「冗談です!」

「は、はい」

 

 思わずポロっとこぼした灰原さんの目の前までずいっと美弥子が迫る。灰原さんがその勢いに押し切られてしまった。

 じゃあ本命を聞かせてもらおうじゃないか。

 

「ここのクリスタルを加工して焼き肉プレートにします!」

「……え?」

「……は?」

 

 灰原さんと一緒に固まってしまう。

 えっと、それは一体、何……? クリスタルで焼き肉プレートを作るって何……? お肉焼けるの? 衛生面とか、そもそもここのクリスタルって大丈夫なの?

 無限に疑問が湧いてくる中、美弥子は胸を張り、人差し指を立てて解説し始めた。

 

「そもそも水晶による焼き肉プレートというのは以前より存在しています!水晶つまり二酸化ケイ素(SiO2)は熱すると原子の振動によって強力な遠赤外線が発生するため肉の内部も同時に火を通すことが出来ます!これによって短時間で肉に火が通るためジューシーさをより残すことが可能になります!さらに水晶は表面が非常に滑らかなため小さな穴のある鉄板に比べて焦げ付きにくいです!少量の油さえあれば焦げ付くことなく焼くことが可能!さらに表面に温度差がほぼないため煙も出にくいといいことずくめです!当然問題もあります!まず水晶はとても脆いです!これで焼き肉プレートを作った場合落とした瞬間粉々になります!また天然の水晶は不純物が多く一部内包物があると爆発する恐れがあります!」

 

 ここまで一息である。正直、途中から何言ってんだかわからなくなってきたけど、問題があるんだったらそのアイデア使えないじゃん。しかも爆発するとか危なすぎて使えないよ。

 やっぱり、焼き肉は結構厳しいのか? と思っていたんだけど、美弥子はさらに続ける。

 

「しかし!! ここにあるクリスタル群、とりわけドラゴンによってクリスタル化させられたモンスターを覆っているクリスタルは、サイズもあるうえに内部に不純物がないです! そして、強度もあります! つまり! あれを加工すれば完璧な焼き肉プレートの完成です!!」

 

 おお、問題点をすべて解決している……! まあ、問題はそれの加工が出来るのかという問題はあるけども。

 

「加工できるの?」

「もちろん、お任せを!! 加工には時間がそれなりにかかりますが!」

「じゃあ、お願いね」

「はい!!!!!」

 

 うるっさ!? なんで最後にそんな大声出したのさ……

 というわけで、私と灰原さんの肉用意する組と美弥子と長谷川さんのクリスタルの焼き肉プレートを作る組に分かれることになった。他のメンバーには申し訳ないけど、用意が出来るまで周辺の警戒をお願いすることになった。

 よし、やるぞー!

 

 




バカでかいクリスタルの焼き肉プレートでドラゴンの焼肉をしようぜ? の会
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