【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とドラゴンの肉の祝勝会⑷

 

 ドラゴン肉の焼き肉が始まった。

 各々のグループごとにお肉の乗った皿を使って、好きに焼いていくスタイルである。クリスタル製の焼き肉プレートが大きいので、これだけの人数でも問題なく焼くことが出来る。私は、彩音さんと花奈さんと一緒である。冒険者男性組、女性組、調査班って感じの分かれ方である。浜面さんも、いつの間にやら用意されていたニンジンやジャガイモを端の方で焼き始めていたので、参加しているようだ。

 

「夢希さんも彩音さんも、最初はタンでよろしいですか?」

「いいよ」

「お願いします」

「かしこまりました」

 

 花奈さんの問いに彩音さんと2人で答えると、早速タンを焼き始めた。

 まあ、焼き肉の最初ってタン塩だよね。なんとなく、絶対にコレ! って感じがするメニュー。食べ放題なんかでも、最初の一品みたいな感じで出てくること多いし。

 それと、食材の用意を頑張ったということで、私と彩音さんの分はわたくしが焼きますわ! と花奈さんが気合を入れてくれていたので、お願いしている。

 …………餃子の件を思い出して、若干不安なのは内緒だ。

 

「ドラゴンのお肉、ドラゴンのお肉~♪」

「彩音さんご機嫌だね」

「そりゃそうだよ! だってドラゴンのお肉だよ!? ご機嫌にもなるって。夢希ちゃんはならないの?」

「うーん……楽しみではあるけど、そこまでじゃないかな……」

「えぇ!?」

「はい、出来ましたわよ」

 

 ご機嫌な彩音さんと話している間にお肉が焼きあがったみたいだ。花奈さんがお皿においてくれたタンの上に、薬味のネギ塩をたっぷりと乗せて、塩だれを付ける。

 さて、どんな味がするかなぁ?

 

「いただきます」

「いただきまーす!」

 

 彩音さんと一緒に、タンを口の中に入れる。

 ゆっくりと噛みしめると、肉汁があふれてくる。味自体はタンに非常に近いのに、全然タンっぽくない。噛み応えもある。旨味が噛めば噛むほど出てくる感じである。脂っぽくもないし、すごくさっぱりとした味がする。

 それと灰原さんの作った塩だれが美味しい。コクもあるし、タンの味に負けていない。これは他の部位にも合いそうだなぁ……

 

「次は……カルビ辺りでしょうか?」

「カルビ! ……は、どれ?」

「確かに、どれでしょうか……?」

 

 お肉の並んだお皿を眺めて、花奈さんと彩音さんが首をかしげる。

 うん、確かにわかんないよね。正直、私もよくわからない。初めて解体したし、何より、部位を牛とか豚で分類していいのか? っていうのもあるし。でも、それに当てはめるのであれば、この辺である、と思う。解体したときの色的に。

 

「多分、これかな……多分」

「確定ではないのですね……」

「ドラゴンのお肉の分類を完璧に出来る人がいるなら聞いてみたいね。翼の付け根のお肉とか手羽元っていうのかな?」

「それは()羽なのですか……?」

 

 ドラゴンのお肉の分類について話しながらも、手際よくお肉を焼いていく花奈さん。かなり手慣れている様子なので、私の不安は全くの見当違いだったみたいだ。

 それにしても、翼の付け根の肉を手羽というか否か、かぁ……部位的には正しいし、わかりやすいよね。でも、翼竜ならともかく、一般的な前脚が手としてついているドラゴンの場合、手じゃないもんね。位置的には肩肉に近いというか。金守さんの場合は手羽でもよさそうだけどね。腕だしさアレ。

 思わず金守さんの翼辺りを眺めていると、金守さんがこちらに気付いた。

 

「どうかしたか?」

「いえ、金守さんの場合は手羽だろうなって思って」

「……そ、そうか……」

 

 金守さんが翼を背中に隠すように縮こまらせてしまった。あ、あれ? なんか金守さんの顔が引きつっているような……?

 

「おい夢希、金守は食うなよ」

「食べませんよ!?」

 

 浜面さんが真顔でとんでもないことを言うので、悲鳴みたいな声が出てしまった。私に食人趣味はないよ!?

 あまりにも酷いので、ちょっと文句を言おうとしたとき、横から私に声がかかる。

 

「今のは夢希ちゃんが悪いよ……」

「夢希さんが悪いですわ……」

「え、ええ……?」

 

 まさかの彩音さんと花奈さんにも微妙な顔をされてしまった。なんでだ……私はただ知的好奇心と推測の元に意見を述べただけなのに……!

 なんだか腑に落ちないまま、花奈さんの焼いてくれたカルビを食べる。うん、ここは脂がのっているからとっても美味しいね。不思議と鶏肉に近い感じがする。あっさりとしている感じじゃないんだけど、食感が似ている。味は牛とも豚とも違うんだけど、とても美味しい。少しだけ脂の甘みがあって、でもくどくない。とても美味しい。

 だからこそ、醤油だれがとても合う。ニンニクがガツンと効くと、なおさら味が引き締まる。いやあ、これ美味しいなぁ……

 ここで、口の中の脂を流すためにテールスープを一口。濃厚な旨味が脂を洗い流しながら広がっていく。我ながら、完璧な出来である。ここまで焼き肉に合うとは……うーん、今度から彩音さんに毎回汁物用意してもらおうかなぁ? こういう食い合わせもあるよね。普段は全部白米でどうにかしちゃうからね。

 

「カルビ美味しい……テールスープも美味しい」

「あ、逃げた」

「いいではありませんか。夢希さんらしいですわよ」

 

 2人の辛辣な言葉を聞き流しながら、花奈さんの焼いてくれているお肉を眺める。

 クリスタル製の焼き肉プレートは、先ほどからまったく焦げ付いておらず、キラキラとした輝きを保っている。脂でなおさら光っているのもありそうだけど、それにしたって綺麗である。それに、先ほどからお肉の表面に焦げが全然つかないのだ。焼き色がとても綺麗で黒い部分が全くないという、とても素晴らしい焼き加減で肉を食べることが出来ている。

 これを作る前の美弥子が説明していたけれど、こうして目の当たりにすると、地上にもクリスタル製の焼き肉プレートはあるというのがよくわかる。こんなに美味しく食べられるなんて思わなかったよ。

 こう考えると、この未探索領域は結構稼ぎがいいダンジョンなのかもしれない。適当に壁をつるはしとかで叩いて、クリスタルの欠片を持って帰るだけでもそれなりに稼げそうである。宝石としても使えるだろうし、大きめなサイズを持って帰ることが出来れば、こうやって別の物にも加工できる。いい稼ぎ場になりそうで、冒険者で賑わうかもしれないね。

 とはいえ、ただでさえ面倒なダンジョンとして有名な八王子ダンジョンのそのさらに下である。降りるだけでも一苦労だし、持って帰るのも一苦労。その上、このダンジョンのモンスターは深層相当であると思われるので、脅威となるモンスターを警戒する必要もある。そう考えると、手間に見合わないかもしれないし、どうなるかちょっと未知数だな。

 

「ホントだ、テールスープ美味しい!」

「はぁ……ほっとするとは違いますが、落ち着く味ですのに、非常に旨味が強いですわね」

「ね」

 

 彩音さんたちにもテールスープは好評らしい。嬉しい限りである。焼き肉が美味しいのは、料理の感想じゃないからね。これが褒められると嬉しいね。各種たれの感想は灰原さんへどうぞ。

 そうしている間に、今焼かれているのは紫色の肉である。肩ロースあたりの部位である。もしあのドラゴンに翼が生えていたら、手羽元だったかもしれない。

 

「強烈な色ですわね……」

「焼くと紫色になるの本当によくわからないね……」

「なんでなんだろうね? でも、美味しいよここ」

 

 花奈さんも彩音さんもちょっと引いている。周りを見て見ると、見たことのある灰原さんと調査班の二人以外はちょっと引いていた。まあ、そうだよね。私もちょっと引いたもん。紫色の肉って、もはや腐ってるでもない限り見ない色だもんね。でも、本当に美味しいんだよ。

 焼きあがった肉をちょっと躊躇しながら彩音さんたちが口に入れて、ひと噛みした直後から笑顔になった。美味しいよねぇここ。

 今度は……よし、醤油だれを付けて、上に味噌だれを乗せて……うーん、美味しい! ちょっとピリッとするのがいいアクセントになるね。サンチュが欲しくなる味である。あと白米。

 笑顔で食べ終えた彩音さんが、テールスープを一口含んだあと、ため息をつくようにつぶやく。

 

「……はぁ、ご飯欲しい……」

 

 そんな切なげな顔と声で言わないでほしい。内容が雰囲気と合ってなさすぎる。

 思わず反対側を見ると、花奈さんも似たような雰囲気で言葉を落とした。

 

「あぁ、ビールが欲しいですわ……」

 

 こっちはあまりにも平常運転すぎる。彩音さんと同じような顔をしているのに、何故だかいつも見ている気分になるのはなんでなんだろうね? というか、ちょっと意外だったんだけど、お酒持ってきてないんだ? まあ、流石に花奈さんも今回の仕事中は飲まないよね。緊急事態なわけだし。

 そう思っていたんだけど、私は花奈さんのお酒に対する愛情を見誤っていたらしい。

 

「いえ、持ってきてはおりますわよ? 赤ワインを……2本ほど」

「持ってきてるんだ……」

 

 彩音さんと2人でドン引きしてしまった。いや、流石にさぁ……ちょっとどうかと思うんだよそれは。仕事なんだよ? いや、普段の冒険も一応仕事ではあるんだけど、それにしてもである。しかも、クランからの依頼とかじゃなく、国からの依頼である。通常運転がすぎるでしょ……

 というか、ふと気になったことがある。

 

「花奈さんって、休肝日とか作ってるの?」

「そんなものはわたくしの辞書にありませんわ」

「花奈ちゃん、それはどうなの……?」

「そもそもお酒の飲めない日など……わたくしに死ねとおっしゃっておりますの?」

「筋金入りすぎるでしょ……」

 

 いくら何でも筋金入りが過ぎると思うんだそれは。お酒を愛しすぎている。

 うーん、でも、こういう思いを持っているからこそ、酔いそのものを回復できるようなスキルが芽生えたのかもしれないし……悪影響な気がするけども。

 でも、今この状況においては、お酒が少しだけでもあるっていうのはいいことなんだよね。だって、ちょっとした気分転換に使えるもの。渋谷の時のほんのちょっとだけ残っていた味噌みたいなものだ。それに、そのレベルで毎日飲んでいるなら、余裕がある今のうちに飲まない方がいいと思うんだよなぁ……

 

「とりあえず、今日は飲むの禁止ね」

「そんな!? ご無体なことをおっしゃらないでくださいな!!」

 

 そう思って禁止令を出したら、花奈さんが本気で縋りついてきた。そ、そんなに飲みたいのか……いやでもダメだ。ここで許可したらずるずる行ってしまうと思う……!

 

「……ダメ。いつまでここにいるのかわからないのに、初日から手を付けるわけいかないでしょ?」

「そうだよ花奈ちゃん。私嫌だからね? 後半になって廃人みたいになってる花奈ちゃんの介抱するの」

 

 彩音さんからの援護もあり、花奈さんの顔が悔し気にゆがむ。実際、ここにどれだけ閉じ込められるかわからないんだから、ペース配分というか、そういうのも大事だし、あるなら他の大人たちにも必要になるときはきっとくる。

 しかし、それで止まるような花奈さんではない。止まるんだったら、モンスターでお酒を造ろうだなんて思わない。

 

「そ、それは……! で、ではコップ一杯だけ! 今日はそれだけで諦めますから!」

「花奈さん、そういって一本行きそうだからなぁ……」

「一本で済むかな? 全部飲みそうじゃない?」

「わたくしへの信頼のなさはなんなんですの!?」

「お酒以外は信頼してるよ。お酒以外は」

「花奈ちゃんお酒のことになると色々どっか行っちゃうし……」

「普段のわたくしの行いがこんなところで……!」

 

 私たち二人に追い詰められていく花奈さんに、意外なところから援護射撃が来た。

 

「まあ、物前君、美空君。今日は彼女のおかげでみんな無事なんだ。それくらいは飲ませてやってもいいじゃないか」

「金守さん……!」

 

 金守さんからの援護射撃に花奈さんの顔がぱあっと輝く。確かに、そういわれるとそうなんだけど……だが、金守さんの発言はそこで終わりではなかった。

 

「代わりに、ワインに関しては俺が責任をもって管理させてもらう。それでどうだろうか?」

「金守さん!?」

「わかりました。お願いします」

「夢希さん!? ああ、返して! 返してくださいな!!」

 

 結果、ワインのボトルを2本ではなく4本も持ち込んでいた花奈さんのワインは、すべて金守さんの管理下となり、花奈さんはコップ一杯のワインを飲むことになった。

 花奈さんは半泣きでワインを飲んでおり、非常に哀愁が漂っていたが、これに関しては、普段の彼女の行いの結果である。その姿を見て、私は思うところがあった。

 …………私も、ちょっと自分の行いを見つめなおそうかな。こうなりたくはないしね。

 その考えが手遅れだったのは、地上に帰ってから思い知ることになる。あんな思いをするなんて思ってなかったんだ。

 

 

 




??「あいつ無事かしら……」
??「大丈夫だと、思いたいなー……」
夢希「ドラゴン美味しい」
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