【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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部署変更に伴う始業、終業時刻の変更に生活習慣がついていっておらず、まだまだ不定期になると思います。ご容赦ください。


配信に興味のない私と二日目

 

「あー、美味しかったわー……夢希っちマジで料理上手なんだね」

「お粗末様でした。水沼さんのお口に合ったようで何よりです」

「夢希っち他人行儀すぎん? もっとラフにいこー? 凉子でいいし」

 

 パスタを食べ終えた後、私は水沼さん改め涼子さんからちょっと絡まれていた。

 別に嫌ではないんだけどね。なぜなのかがよくわかんないだけで。

 

「涼子さん」

「涼子ー! あとため口でよろー?」

 

 さん付けしたら、不満そうに頬を膨らませて否定する涼子さん。

 いや、涼子。涼子ね。うん。

 距離縮めるの速いなぁ……ギャルっていうのは、みんなこんな感じなんだろうか? だとしたら、私も少し……いや、見習う必要ないのかな? 私は私なりにやればいい、はず。

 これまでもそれで問題になっていないし、問題があるなら愛依と凉に指摘されているはず。

 

「り、涼子」

「はーいおけー。よろしくね夢希っち」

「うん、よろしく」

 

 笑顔でピースしてくる涼子。なんだか彩音さんや花奈さんよりも私に対して距離を詰めてくるので、理由を聞いてみると年齢が近いかららしい。

 なお、今年から冒険者になった18歳。陽向と同じだそうだ。

 

「今年から冒険者になったのに、もう八王子の谷底まで来れるの?」

「まーねー。あーしの体これだから、物理攻撃ほぼ効かないんだよねー。ミノタウロスでもよゆー」

「え、どうやって……?」

 

 ミノタウロスですら余裕とは一体……? そもそもミノタウロスはかなり強い。いくら物理攻撃が効かないと言っても、核があってそれを潰されたら死んでしまうだろうに……それに、攻撃手段もないだろうし。

 と思っていたんだけど、全然そんなことはなかった。

 

「頭に取り付いてー、目とか鼻とか耳辺りから中に入ってー」

「う、うん」

「溶解液でドロッとやっちゃうワケ」

「うわぁ……」

 

 想像したくない倒され方である。

 頭に取り付いて内部に侵入の時点で大分アレだったのに、溶解液で体内から溶かされるのは……モンスターたちに合掌である。

 視界の端に、浜面さんと灰原さんが耳をぺたんと倒しているのが見えた。こちらの話が聞こえたらしい。灰原さんの顔が青いし。多分、浜面さんも青くなってるんだと思うんだけど、如何せん馬なのでわからない。

 涼子の物騒さにちょっと驚いていたら、笑顔がキリっとした表情に変わった。

 

「それでなんだケド、欲しいものとかある? あんまデカいのはきびしーかなー」

 

 涼子の発言に、私たち三人が勢いよく手を挙げた。

 

「お米!」

「お酒を!」

「コンロとフライパンを」

「飯のことだけなのウケる! 食い意地張りすぎなんですケド!」

 

 ご飯のことしか言わなかった私たちが面白かったのか、涼子がお腹を抱えてけらけら爆笑している。

 でも実際、欲しいものってエリクサーの予備くらいだし、それは持ってきてくれるそうだから、他ってなるとご飯関係に……

 肉は用意すればいいだけだし、野菜の類は今はいいだろう。そして、お米は彩音さんが希望したので、やはり私としてはコンロがもう一個とフライパンが欲しいのである。

 ずっと深鍋で炒めるのもやっていたから、もうフライパンがほしいのである。ちょっと無理だった。せめてスキレットだけでも欲しい。

 そして、花奈さんはいつも通りお酒を希望。

 うーん、私たちはいつも通りだなぁ……閉じ込められてるはずなんだけどね。

 男性陣も苦笑してるし。美弥子は……何してるんだアレ。なんかどこからともなく取り出したクリスタルを加工しているようである。

 

「つか、お酒はダメっしょ花奈っち。ダンジョンの中で飲むんー?」

 

 にやにやとした笑みを浮かべて、花奈さんにちょっと絡みに行く涼子。

 まあ、常識的な感覚を持っていたら、それに触れますよね。

 花奈さんはというと、すまし顔で答えていた。

 

「もちろん。スキルで酔いは覚ませますから」

「いや、飲むのがダメっしょ」

 

 真顔の涼子によってバッサリ斬られた。かなり常識的な人だな涼子……『魔女の大鍋(コルドロン)』で浮いてないだろうか? 本人が大分懐に入るのが上手そうだから大丈夫……だと思いたい。これからは私たちもいるしね。

 

「お酒はわたくしの命ですのよ?」

「アル中じゃん。ウケる」

「違いますわよ!?」

「一歩手前だと思うぞ」

「浜面さんまで!」

「北条君の話は無視してもらって構わない」

「金守さん!?」

 

 もう、花奈さんは全員から弄り回していい人扱いされていないだろうか……?

 あまりの扱いに、よよよと私の背中に抱き着いてきたので、頭をポンポンと撫でておく。彩音さんも苦笑しながら背中をトントンと叩いていた。

 口には出さなかったが、あれだけ飲んでる人ってアル中って呼ばれるんじゃないのか……? でも、流石に本人が嫌ならやめておきたい。

 が、きっとリスナーさんたちは容赦がないだろう。実食ネキのあだ名が変わる日も近いのかもしれないな……

 

「お米とフライパンとコンロね。おけまるー! ……金守っちたちはいいの?」

「今のところは、エリクサーがあれば問題ないだろう。それに、食事のクオリティが上がるのは士気にとっても良いことだからな」

「りょ! じゃ、エリクサー人数分とお米とフライパンとコンロ持ってくるね」

「よろしく頼む」

「頼んだぞ!」

「あの、わたく、もごもご……」

「お願いね涼子ちゃん!」

 

 花奈さんの口を後ろから彩音さんが塞いだ。良い判断だと思う。それにしても、花奈さんも本当にお酒に関してはネジが外れる人だなぁ……

 そうだ、鍵渡さないと部屋は入れないじゃん。

 

「あ、これ私の部屋の鍵です。中においてあるので、それをお願いします」

 

 収納魔法から鍵を取り出して涼子に渡そうとすると、にやにやした顔で手を横に振って拒否されてしまう。

 

「いやいや、初対面の相手に鍵渡すのはダメっしょ夢希っちー。セキュリティゆるゆるじゃーん」

「だったら、白石さんにでも話してくれれば入れると思うので」

 

 そういうことなら、白石さんに話してくれれば完璧である。そう思ったんだけど……

 

「あのね? 今日初対面の人を、本人不在の部屋に入れようとすんなっていってんのね? わかる?」

 

 目の前まで顔を近づけてきた涼子からものすごい圧を感じる……!

 でもなぁ……いいかなって思うんだよね。ここまで接した限り涼子はかなりまともだし。今の私の部屋に貴重品らしきものってないんだよね。

 財布は収納魔法の中にあるし、スマホも持ってるし……通帳なんかは実家においてある。手元にあったら、お金際限なく使っちゃいそうなんだもの。

 

「……なら、白石さんを部屋に入れてください。もしくは陽向でも構いません」

「……まー、そーいうことならいい、か……? ほんとに? あーしもゆるゆるになってない……?」

 

 一応鍵を受け取ってくれたのだが、なんだか口を押えてぶつぶつ呟いている。どうしたんだろうか。

 しばらくそんな様子だった涼子だったが、切り替えたらしい。

 

「んじゃ、帰んね。すぐ戻ってくるからちょっち待っててねー」

「よろしく頼む」

 

 壁の近くで服を脱ぎ捨て、そのまま液体として壁の中に消えていった。

 例によって、男性陣は目を背けていた。まあ、そりゃそうなる……ん? あれ? ダンジョンで身体を液体にして戦うときって服は……よし! 考えないでおこう。本当にやめておこう。でも、やっぱり裸……

 思考が変な方向に行きかけた時、金守さんの手を叩く音でちゃんと帰ってくることが出来た。

 

「さて、これからの話をしよう」

「助けが来るまで、拠点の防衛じゃねえのか?」

「その通りだが、この階層の探索も行う予定だ。あのドラゴンが複数体いないことを確認したい」

「それはホントに確認しておきたいですね……」

「また、彩音君の槍の補充もしたい。そのためのドロップアイテムの回収もだ」

「わかりました」

 

 ドラゴンがいないことを確認しつつ、ドロップアイテムを回収していく感じか。そういえば、拠点はどうするんだろう?

 

「拠点はここにするが、防衛隊は残さない」

「いいんですか?」

「ああ。北条君がいない場合にドラゴンに出会ったら、その時点で終わりだからな。むしろ一塊になった方が安全だ」

「それは……そうですわね」

 

 確かに。言われてみれば、花奈さん居ないとあのドラゴン相手にどう立ち回るかって話になるもんね……クリスタルになり切った後でも治せるかがわからない以上、全員で行動したほうがいいか。

 金守さんは少しだけ表情を困ったような顔に変えながら、私を見て言いにくそうにこういった。

 

「それと、食糧なんだが……」

「とりあえず全種類食べます」

 

 前にも言ったが、これは絶対である。カニもヤドカリもカメレオンも全部食べる。美味しければよし、不味かったら、そのときはそのときである。もし仮に全部美味しくなかったら、涼子に地上から何か持ってきてもらおう。

 

「断言するんだな……」

「迷いなかったですね……」

「夢希ちゃんですから……」

「夢希さんらしいですわね……」

 

 なんか後ろから聞こえてくるけど無視だ無視。何を言われようが食べるんだから関係ない。

 とりあえず、拠点の姿はそのまま、装備だけ整えて私たちは探索に乗り出すことにした。

 ダンジョンは中にあるものをすべて飲み込んでしまうけれど、流石に半日くらいでは飲み込まれない。それに、なんだか死体が優先されているようなので、普通の荷物は結構放置しておいても平気なのである。たまに移動させれば時間がリセットされるみたいだし。少なくとも、渋谷の時は、敷きっぱなしだったレジャーシート以外は飲み込まれなかったしね。

 でも、あれいつ起きたんだろうな……誰も気づかないうちに無くなってたんだよね。上に寝ていた人すら気付いて無かったし……

 

「では、クーさん。またよろしくお願いしますね」

 

 長谷川さんがクーを撫でながらそういうと、クーは尻尾をぶんぶん振りながらわふっと返事をしていた。仲いいね本当に。

 そして、何故か美弥子が浜面さんの背中に乗っていた。なんでだ?

 

「美弥子はなんで俺の背中に乗ったんだよ」

「万が一の時には、盾にも矛にもしてください!」

「ええ……夢希、どうなんだ?」

 

 美弥子の発言に困惑している様子の浜面さんが、助けを求めるように私を見てくる。

 だが、美弥子の性能という話をするのであるならば。

 

「盾としての性能は前に見た通り、矛としての性能は『魔女の大鍋(コルドロン)』の研究用サンドバッグを破壊するほどです」

「アレ壊れんのか!?」

 

 浜面さんが驚愕すると、その背中で美弥子が胸を張って誇らしげにする。

 

「私と叔母さんだけしか壊していないそうです!」

 

 美弥子の叔母さん。つまり、私のお母さんも壊していたらしい。そりゃそうか。

 だとしてもである。美弥子はアレなの? 浜面さんに足でも掴んで振り回してもらおうとしてるの? 足ちぎれない?

 

「だとしても、流石に人振り回すのはちょっとな……」

「それは残念です!」

「残念でいいんですのそれは……?」

 

 どうにも締まらない感じが、私たちらしかった。

 

 

 

 

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