【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
一か月以上空いてすみませんでした。またよろしくお願いします。
繁忙期なので、またある程度空くと思います……
早速肉を焼き始めた夢希だったけど……なんかおかしい。
肉が焼ける音がする。ということは、肉の焼ける匂いもしてるはずなんだよな……そのはずなんだが、なんかニンジンの香りがすんだよな……?
思わず周囲を見渡すが、ニンジンはない。とはいえ飯の時間だしな。俺も腹は減ったから後で食うとして……
マジでどういうことだ? あの虹色の肉の焼ける匂いなのかこれ?
「……なんか、中華っぽい香りが……」
「うん? 俺には肉の焼ける匂いがするが……」
灰原は中華っぽい匂い、金守はそのまま肉の匂いらしい。
マジでどういうことだ? でも、恐らくあの肉の匂いであることは分かった。
……大丈夫だよな? やべえ物質でもまき散らしてるんじゃねえか? 幻覚引き起こすような。
「私はカレーの匂いがします」
夢希にはカレーらしい。え、もしかして人によって香りちげぇのか? 本当にどんな肉だよそれは。
流石におかしいと思ったのか、花奈がスキルを発動した。これで幻覚作用とはおさらばのはず……だったんだが、においは消えない。
マジかあ……じゃあこれ幻覚とかじゃねえんだな……
「……そういえば、彩音さんと花奈さんは?」
夢希が二人の方に振り返って質問を投げると、ちょっと自信なさげな彩音と苦悶の表情を浮かべた花奈がいる。
花奈はどうしたんだよお前。
「私は唐揚げ……かな」
「わたくしは何故かワインの香りが致しますわね……」
全員が花奈を呆れ果てたような目で見た。
マジかコイツ……という空気が流れたが、まあ花奈だしな。
本人も流石に思うところがあったのか、ちょっと気まずそうにしてんだけど、手遅れだぞ。
「ちなみに俺はニンジンの匂いがすんぜ」
「焼けているか?」
「うんにゃ、生だな。そういや、生だな……」
金守に言われて思わずうなってしまった。
よくよく考えりゃ、なんで焼いている肉から、生のニンジンの匂いがすんだよ。百歩くらい譲っても焼けてる匂いだろ普通は。
いや、普通じゃないものを焼いてはいるんだけどよ。
「これ、本当に食べて大丈夫なの……?」
「さあ?」
さあ? てお前。いや、それを確かめるために食うんだもんな。しょうがねえよな。うんうん。
にしても、匂いが個人で違うのは分かったけど、食感はどうなんだろうな? もしこれで食感まで変わってたら、絶対に良くないものだと思うね俺は。幻覚ですらないなら、なおさらやべえやつだよこの肉。
「美弥子は……」
「! 呼びました!?」
さっきまでクリスタル弄り回すのに夢中だったくせに、突然反応するからビビったぜ。というか、あの状態から復帰できるんだな、『
いや、思ってたというか、大抵のやつはそうなんだけどな? 今も長谷川はずっとクリスタル弄ってるしよ。真横であの大声出されて無反応なのどうなってんだよ。
「物前君の声には反応するのか……」
「当然です! 妻の声を聞き逃すようでは務まりませんからね!」
「妻じゃない」
もう見慣れてきたなあの漫才。夢希のやつも付き合わずに無視してりゃよさそうなのに、そうしない辺り律儀だよな。
「美弥子は何の匂いする?」
「うーん……おそらく肉じゃがでしょうか!? 正確に言うなら醤油系の煮物の匂いがします! が、肉じゃがのような気がします!」
「見事に全員バラバラだね」
「好物の匂いがしているようではありますが……」
みんなマジでちげえなあ……秋津の場合どうなんだろうな? アイツの好物……肉だよな。金守と似た感じになるのか?
なんて考えていたら、彩音がちょっと眉をひそめて夢希に声をかけた。
「長谷川さんには聞かないの?」
「うん。どうせ反応しないから」
「でも、美弥子ちゃんは反応してくれたよ?」
「『
「ああうん。そっか……」
呆れたような、何かを諦めたような声が彩音から聞こえる。
うん。そうしとけ。『
それにしても、マジで腹減ってきたな。先に食うかどうかはともかく、ニンジンの袋持ってきとくか。
そう思って他の連中を差し置いて、仕切りの向こうにあるリュックに手を伸ばしたとき、壁の中から液体のうごめく音がした。
リュックを抱えたまま目をそらして、金守と灰原に合図する。2人も気づいたのか、目を背けた。
長谷川は……いいだろ。クリスタルに夢中だし。
「はろはろー。荷物持ってき、た……え、なんでシュークリームの匂いすんの?」
「お前はシュークリームなのか……」
「え、どゆこと???」
壁から出てきた涼子は、『
というか、シュークリームて。そんなんまでいけんのかあの肉……
それはともかく、涼子に事の次第を軽く説明してやると、ケラケラと笑い出した。
「マジ!? めっちゃウケるじゃん!!」
笑いながら肉を焼いている夢希の元まで行くと、腕を肩に回した。
「モンスターってそんなに面白食材なんだ?」
「流石にこんなに意味が分からない食材は初ですよ」
「ウチの分もある? あ、これコンロとフライパンと米ね」
「ありがとうございます。これだけあるので大丈夫ですよ」
「サーンキュ! いぇーい!」
「い、いぇーい」
突然テンションを上げてハイタッチを要求した涼子に、夢希がなんとか対応している。
涼子、ちょっと加減してやれな? 夢希がタジタジになってんじゃねえか。
渡すものを渡したからか、涼子は次に長谷川の元へ。
そして、エリクサーの入っている試験管の蓋を開けると。
「長谷っちー。エリクサー飲ん――で!」
「ふごっ!?」
クリスタルに夢中な長谷川の顎を、何の躊躇もなく掴んで口を開かせ試験管を口に突っ込んだ。強引だなあおい。
流石の長谷川もそれでこっちの世界に帰ってきたのか、目を白黒させている。
「ん、んん? ああ、水沼さん! ありがとうございました」
「どもども~」
長谷川に手を振り、涼子が夢希のそばに戻ってくるタイミングで、肉が焼きあがったらしい。
色は全く変わっていないというか、さらに虹色の輝きが増したな。脂のせいか?
マジでゲーミング色って感じになりつつある。本当に食って大丈夫なのかそれ……?
「さて、食べますね。いただきます」
虹色の肉を何の躊躇もなく口に入れる夢希をちょっとだけ尊敬しそうになった。
いや、尊敬しちゃいけないとは思うんだけどな? でも、何の躊躇もなく、自ら率先して食えるかどうかわからないものを口に入れられるのってすげえと思うだろ?
こういうやつが多分生き残るんだろうな。実際、今のこの状況だって、夢希がいなかったらちょっとやべえだろうしな。
虹色の肉をゆっくりと咀嚼していた夢希の眉が、段々と下がっていく。
「……食感は鳥肉に近いけど、味が完全にカレー……」
「私もいただきまーす……あー、私の場合は普通に衣がない唐揚げって感じで美味しいかも。なんだか物足りないけどね」
夢希の食レポを聞いて、即自分も口に入れる彩音。お前ら本当にお似合いだな……
それと、彩音のは美味そうだ。唐揚げだもんな。普通に肉料理だしな。
俺も腹減ってきたし、ニンジン食うか。ぼりぼり……う、美味い!
「? 夢希ちゃんどうしたの?」
「んー……」
夢希が隣にいた彩音に抱きついている。何があったんだ?
夢希は抱きついたまま、肩のあたりに顔をぐりぐりとしている。なんだか、ぐずってる幼児みたいな動きだぞ……?
おいそこの自称夢希の旦那(否定済み)は血涙流しそうな顔してんじゃねえ。
「あーしももーらお。うわ、意味不なんだケド!!」
焼きあがっていそうな肉を涼子が口に含み、けらけら笑い始めた。
「そんなか?」
「食感が肉で味と匂いがシュークリームとかマジで意味不。肉汁すら生クリームとカスタードの味するし……」
「マズそうだなあ、おい」
「マズいっていうか、違和感がすごいの。美味しいのに気持ち悪いって感じ?」
涼子の顔から表情が抜け落ちた辺り、マジですごかったんだろうな。
想像するだけでも大分口の中が変なことになってそうだしなあ……
涼子に続いて口に入れた灰原と金守はというと、なんだかうまそうに食っている。こっちは当たりだったみたいだな。
「回鍋肉の味がしますね……久々に食べた気がします」
「俺はどうにも普通の肉なんだが……いや、恐らくこれはこれで何かしらの肉なんだろうがな。いやしかし何の肉だ……?」
灰原は目を閉じて噛み占めているし、金守は首をかしげて何の肉なのか思い出そうとしているようだが、どうにも思い出せないらしい。
まあ、肉だけしか手掛かりがないなら流石にわかんねえわな。
カメレオンの肉は十人十色の味がする変な肉っていうことでいいみてえだな。しかも基本的には当人の一番好きなもの。
だが、食感との取り合わせなんかはまったく考慮されない。マジで変な肉だな……
「噛めば噛むほどワインが溢れてきますわね……流石にアルコールは感じませんが」
「感じたら怖えよ」
花奈、お前は本当にブレねえなあ……