【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信みたいなことしてる…!


配信に興味のない私と雑談配信(1)

 

 彩音さんが気合を入れて釣りを始めたので、私も下処理をしてしまおう。水から茹でると、とんでもない量のアクが出てくるので、沸騰してから数分待つ。アクしか見えなくなった鍋の水を穴に放り捨て、鍋と肉を洗ってから、ネギと生姜をいれて再度水から茹でていく。再度沸騰したら、弱火にして、4時間ゆっくり茹でる。普通の牛スジだと2時間くらいでいいみたいだけど、ミノタウロスの肉はかったいので、こうでもしないと噛み切れない。ぶっちゃけ、ダンジョン内で食べるのは向いていない。結界石を貰うまでは、たまに来るモンスター倒しながら煮込んでたしね……

 

 "家庭的だよなー”

 "見た目はそのまま食っても美味そう”

 "下処理しないと硬すぎて食えないゾ”

 "ユキちゃんの歯が負けるんだから、俺らなんてなおさら無理よ”

 

 沸騰したので、弱火に変えてから、一旦彩音さんの様子を見に行く。声も何も聞こえないので、多分釣れてはなさそうだけどね。

 

「アヤネさん、調子はどう?」

「あ、ユキちゃん。さっきから、お肉だけ取られちゃって、うまく釣れないんだよね……」

「私もそうだったよ。で、たまに掛かったと思ったら、竿を壊された……」

「その、釣りへの執着は何……?」

「自分で釣った方がきっと美味しいと思うから」

「……キャンプ補正的な?」

「的な」

「……そっかー……」

 

 "まぁ、一理ある”

 "自分で釣ったっていう事実でうまく感じるのは分かる”

 "なお、未だに釣れていない模様”

 "6代目は壊れないで釣れて欲しいな”

 "また投網の出番が来てしまう……”

 

 私も、もう1本竿を取り出して、彩音さんの隣で釣りを始める。何故だか、彩音さんがこっちを2度見したけど、そのまま何も言わないまま、自分の釣り竿に視線を戻した。念の為に2本作ったんだよね。こいつは7本目だけど、バージョンは6代目。2人で並んで釣り糸を垂らして、しばらく。彩音さんが突然竿を振り上げて、叫ぶ。

 

「掛かった!」

「!!」

 

 大きくしなる竿、ピンと張った糸の先に、前後左右に動く魚影。彩音さんの邪魔をしないように、少し離れる。竿を左右に振り回し、リールをじわじわと巻き上げ……10分以上の格闘の末、ついに

 

「釣れたー!」

「やった!」

 

 彩音さんがMr.クマを釣り上げた!やったぞ、6代目にしてようやく釣り上げることが出来た!彩音さんには釣れた記念に、Mr.クマを釣り糸からぶら下げた状態で写真を撮った。あとで彩音さんのスマホに送るね。笑顔でMr.クマを持った彩音さんの写真は、結構いい写真だと思う。

 そして、Mr.クマを締めるべく、がっちり掴む。こめかみ辺りに、ナイフをザクリ。狙いは脳みそだ。Mr.クマの動きが止まって口が大きく開く。この状態になったらオッケー。脳みそが壊れた証拠だ。次に、エラのところからナイフを入れて、太い血管を切る。あとは、尻尾の方にも切れ込みを入れる。これで、綺麗に血が抜ける。なお、これにも《解体》スキルが使われる。便利なスキルで私は嬉しい。

 

 "とんでもない手際で草”

 "手慣れすぎでしょw”

 "練習してたんやろうなぁ…”

 

 このあとさらに2匹釣り上げることが出来、計3匹でお昼ご飯になった。串をさして、塩をかけて、火で焼く。シンプルな丸焼きスタイルだ。先に内臓は取り除いたので、丸かじりしてオッケーである。他の食べ方は、別の時に試そうと思う。今回は、ミノタウロスのカレーがメインだからね。

 私は1匹も釣れなかった。全部彩音さんが釣った。

 

「ちくしょう……なんでぇ……?」

「ほ、ほらご飯にしようよ、ユキちゃん!いい感じに焼けてきたよ?」

「……少し火から離して予熱で中まで火を通そう」

「き、切り替えはやっ……」 

 

 "あー!あー!”

 "いけません、いけませんよこれは!!”

 "くっそ腹減ってきた”

 "声が急にシャキッとするの草”

 

 切り替え速くないと冒険者は死ぬのである。決して現実逃避ではない。ずっと火に当ててると、皮が焦げちゃうからね。皮も美味しいのだから、焦げちゃうのはもったいない。予熱で火を通している間に彩音さんがこんなことを言い出した。

 

「ねぇ、配信らしいことしてみない?」

「配信らしいこと……?」

「雑談とか」

「今してるよね……?」

「私とじゃなくてリスナーさんと!」

「……」

「それにさ、これ食べたあとって基本的に、ひたすら煮込むだけでしょ?時間潰しにもなるし」

「ふむ……」

 

 "え!?このチャンネルで雑談配信を!?”

 "明日槍降るわ”

 "槍で済めばいいが……”

 "日本がなくなるんじゃね?”

 

 一理ある。普段は勉強の復習だったり、愛依と凉からオススメされたマンガとか読んでるけど、彩音さんもいるから流石にアレだし……ちょうどいいと言えばちょうどいいのかな……?

 沈黙した私を見て、了承と受け取ったらしい彩音さんが、スマホを取り出す。配信画面を見て、そのままクスクス笑い出した。

 

「どうしたの?」

「い、いやね、リスナーさんたちみんなして、配信らしいことするなんて天変地異の前触れじゃないか?っておびえてて……ふふ……」

「えぇ……」

 

 酷くない……?と思ったけど、そういえば、初めて挨拶したときも似たようなこと言ってたっけ。毎度同じ流れをやるつもりなんだろうか彼らは……とりあえず、Mr.クマ食べよ。うん。美味しい!味もほぼ鮭なので、なんか豪華な気分になれる。鮭の丸焼きにかぶりつくなんて、まずないからね。

 

「いただきます。うん。美味しい……」

「あっズルい!私も食べる!いただきます!」

 

 ズルいってなんだ……?疑問を抱いたまま、美味しいねー、なんて言い合いながら2人でもぐもぐ食べる。すごく楽しいな。誰かとこんなふうにダンジョンでご飯を食べるなんて考えもしなかったし。

 

「アヤネさん、もう1本どうぞ」

「ありがとー!ユキちゃんはいいの?」

「もうお腹いっぱいなので」

「じゃあ、いただきまーす!んー、美味しー!」

 

 "アヤネさん食うなー”

 "結構でかいんだけどな、あれ……”

 "いっぱい食べる子はかわいい”

 "分かる”

 

 食べている彩音さんを横目にごちそうさまをして、ミノタウロスの茹で?煮込み?具合を確認する。1時間ちょっとしか煮込んでないから、まだまだ硬いね。焦らずじっくりやるぞ。現在時刻が14時30分だから、19時くらいにはカレーが出来る……かな?野菜に関しては、家で下処理してきたのですぐにできるし。

 

「ごちそうさまー!美味しかったー!」

「お粗末様でした」

「ちょっとビールが飲みたくなる味だったね」

「アヤネさん、お酒飲むの?」

「たまーにね。ほら、打ち上げとかやるからさ」

「あー、打ち上げ……やる?」

「夕食が打ち上げみたいなものでしょ?」

「それは……そうなの?」

「そうなの」

 

 そうなのかな?そうなのかも……?打ち上げって、お酒を飲んでるイメージなんだけど、ご飯食べるだけでも打ち上げになるのかな……?でも、お互いお金ないしな……そんな考えが顔に出ていたのか、彩音さんに軽く額を小突かれた。

 

「打ち上げっていうのはね、皆で美味しいご飯を笑いながら食べることなの。お酒はオマケだし、どこでーとか、いつーとか、関係ないから。私たちは、夕食に、モンスターご飯食べるのが打ち上げ!」

「…………そっか」

「そうそう」

 

 打ち上げは、皆で美味しいご飯を笑いながら食べること。か……そうなんだったら、とっても素敵だな。本当に、とても素敵なことだ。

 

「よし、雑談配信しよう!」

「…………本当にやるの?」

「嫌?」

「うーん。どっちでもいい。が本音かなぁ……」

「じゃあやろう!リスナーさん。話題ちょーだい?」

 

 にっこにこでスマホに向かって話しかけている。なんかテンション高いな彩音さん。こういうの好きなんだろうか…?というか、雑談なのに、初手からリスナーに振っていいの……?一応、私もスマホを取り出して、配信画面を見ることにする。

 

 "初手からこっちに振るんかい!”

 "ユキちゃんの見た目どんなん?”

 "アヤネさんの年齢は!?”

 "なんでモンスター食べようと思ったの?”

 "ここは王道の、パンツ何色ですか?”

 

「確かに私も気になるかも……」

「……どれ?」

 

 半分くらいセクハラでは……?

 

「ユキちゃんは、なんでモンスター食べようと思ったの?」

「始まりは冒険者の自伝を読んでて、結構食料の問題が取り上げられてたことかな」

「そこから、どうやってモンスターを食べるに繋がるの?」

「持っていくのが大変なら現地で調達すればいいのに、なんでしないんだろう?って思ってさ」

「言われてみると確かにそうだね」

 

 "それは確かにそうだな……”

 "確かに現地調達は考えるよね”

 "なんでやってなかったんだろ?”

 "不味かったとか?”

 

「ユキちゃんなんか知ってる?」

「知らないけど、もしかしたらっていうのはある」

「え、なに?」

「最初に食べたモンスターが不味かったんじゃないかな?美味しかったら、毒があっても食べようとするのが日本人なのに、それをしないってことは、多分そういうことだと思う」

「…………すごい説得力ある説だねそれ……」

 

 これに関しては、なんかもう自信を持って言える説ではある。だって、毒だろうがなんだろうが、美味しかったらどうにかして食べようする民族が、食べようとしないなんてあり得るか?例えそれで犠牲者が出たとしても、食べるだろう。間違いなく。

 

 "食に対する信頼の厚さよ”

 "フグとか食ってるもんな……”

 "ウナギも血に毒あるしな”

 "マジ?初めて知ったわ”

 "何食べたか想像ついたりする?”

 

「何食べたのか、想像つく?」

「バロメッツかな……あいつ、本当に、美味しくないから……」 

 

 苦虫を噛み潰したような顔をしながら、そう返す。あいつは、本当に、美味しくなかった。2度と食べたくないし、美味しく食べる方法が思いつかない。バロメッツは、緑色の羊みたいなモンスターで、毛の代わりに葉っぱが生えている変なやつだ。メインの攻撃は頭突き。動きが鈍いので、大して脅威じゃない。

 

「そ、そんなに……?」

「食感は肉なんだけど、噛む度に草の味と匂いのする肉汁が染み出してくるし、やたらと弾力があって噛み切れないから、いつまでも口の中に残るんだよね……」

「うわぁ……」

 

 想像したらしい彩音さんが、大分引いている。そうだよね、想像しただけで美味しくなさそうだよね……実際食べると、多分その数倍は美味しくないよ。罰ゲームとかには、ちょうどいいかもしれないね。

 

 "マジで不味そうw”

 "想像したくねぇ……”

 "それは食べる気なくすわw”

 "食べ方工夫とかやったんかな?”

 "やってないとは思えんが……”

 

「ちなみにさ、なんか工夫してみたりとかした?」

「ドレッシングかけてみたり、うすーく切ったりしたけど、結局、そもそも肉の食感がして、草の汁が出てくるのがダメだった」

「あー、もう根本がダメだったんだ……」

 

 "無理だったかー……”

 "諦めるって選択肢持ってるんだユキちゃん……”

 "確かに、それが初手だと食べようと思わんかもなぁ……”

 "逆に、今までで一番美味しかったのは?”

 

「あ、それ私も気になる!」

「美味しかったのか……」

 

 悩むな。なんだろう……?シンプルに美味しいのだと、砂ウツボかブレイクレッグかな……調理法とか込みだと、ジャンボイナゴの佃煮とかに……いや、やっぱり砂ウツボかなぁ……?

 

「け、結構悩んでるね……」

「…………シンプルに美味しい!ってなったのは、砂ウツボかな」

「この前の?」

「カレーにする前に作った、白焼きが美味しかった。あと、家で作った砂ウツボの蒲焼き」

「…………今度、食べさせて欲しいなー?」

「うん。今度行こうね」

「やったー♪」

 

 "あれ美味そうだったもんなぁ…”

 "蒲焼き作ったのか!”

 "くっそー羨ましい……”

 "なんか普通の配信みたいだ……”

 "アヤネさんに感謝しなくては……”

 "これはこれでいいな”

 "最後の会話だけ聞くと、デートの約束なんよな……イイ”

 "行くのはダンジョンだけどな”

 




サブタイトルを先に書いて、それをプロット代わりにして書き始め、そしてまったく違うことを書き、サブタイトルを書き直す。
最近ずっとこうなっております。なんでや……
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