【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
バロメッツを浜面のような草食になってしまった人が食べると、普通に草の味がするので美味しく食べられますが、結局は肉なのでお腹を壊します。
ドレッシングとかかければより美味しく食べられます。お腹はダメです。
お昼ご飯にヤドカリをカニの代わりに使ったトマトパスタを作ることにした。
カニは美味しくないし、カメレオンは味の問題で料理には向いていない。
いや、もしかしたら、料理したら味が変わるのかもしれないけれど、流石に今すぐに試したくはない。
というわけで、カニのような味がするヤドカリを用いて、カニのトマトパスタを作ることにした。
……カニなのかヤドカリなのかややこしいな……
肉が入っているので浜面さんのは別になってしまうが、当人曰くお前らがカメレオンの肉を食ってるのを見ながら、散々ニンジン食ってたから別にいい、とのことだったので甘えさせてもらう。
確かにボリボリ食べてたけども。浜面さんには、カメレオンの肉がニンジンの匂いがしたらしく、食べたくなったのだという。
匂いと言えば、さっきは不覚にもちょっと泣きそうになって彩音さんに抱きつきに行ってしまった。
お母さんが作ったカレーの匂いがしたせいだ。味も記憶のままだった。
……まあ、記憶なんて美化されるのが当然なので、あんな味ではなかった可能性の方が高いけども。それでも、懐かしかったのは事実だ。
お母さんが食べたら何の味になっただろうか? お父さんと食べた何かだろうか? それともお母さんの家庭の味とかだろうか?
考え出すととまらなくなりそうだったので、とりあえずお昼ご飯に集中することにする。
「俺も手伝います」
「ありがとうございます」
材料の調理をしようとしたとき、灰原さんがさっとやってきて包丁を握った。
前までなんだか距離のあった灰原さんも、今ではすっかり並んで料理する仲である。料理仲間が増えるのはいいことだよ。
この感じで広がれ料理の輪。好きなものを好きな時に好きなだけ食べられるのが自炊のいいところだよ。お店で食べるよりも圧倒的に安いし。
トマトソースの材料はトマト缶である。缶詰って偉大だよね。多少持ってきていてよかったよ。
「トマトパスタ……金守さんトマト平気ですか?」
「生だと厳しいが、火が通っているなら問題ない」
灰原さんと金守さんの会話で、金守さんが野菜苦手なのを思い出した。
い、意外と気を遣う部分が多くて大変だぞこのパーティ。今更だけど。
一番気を使う必要がある浜面さんが今回は食べないっていうから楽だけどさ。
それにしても、ずっとボリボリとニンジンをかじる音がしてるの中々シュールだなぁ……真顔でこっち見てるのも中々……。
さて、料理に意識を戻そう。
今回は奇をてらうようなことはせず、普通に作る。
ニンニクをみじん切りにしてオリーブオイルで炒めて……香りがしてきたらヤドカリを入れて少しだけ炒めてから、トマト缶を入れる。
その間に灰原さんにひたすらパスタを茹でてもらう。
ソースを少し煮込んだら、塩コショウで味を調えて……完成だ。
「このパスタ、簡単でいいすね。美味そうですし」
「お鍋用のカニ使うともっと簡単ですよ」
「なるほど……今度やってみようかな……」
ここでやってみようかなって言ってくれるのがありがたいなぁ……周りの人たちは大抵そんなこと言ってくれないからね……!
お皿に盛ったものを水晶のテーブルに並べていく。このテーブル本当に便利だなぁ……軽く洗うだけで汚れが落ちるし、ここで料理も出来る。周りを耐熱用の何かで覆えば、鉄板焼きのお店みたいな感じになりそうだし。
まぁ、重いのが難点だけど。収納魔法の中に入れておけば問題ないし、私たちには大して問題にならない重さだ。何より、薄くても頑丈だから、嵩張らない。
…………よし、ここから出る目途が立ったら、美弥子にお願いしよう。試作品の使用感の確認ということにして格安にしてもらおう。改善点をレポートにまとめる感じでもいけるでしょ。『
「わあ……美味しそう!」
「トマトパスタ……いつものことではありますが、ダンジョン内とは思えませんわね、本当に」
「めっちゃいいじゃーん。お洒落だしー?」
彩音さんと花奈さんからは相変わらずの高評価。涼子からも評価が高い。
男性陣……というか、金守さんも口角が上がってる。
ふふふ、実際美味しそうだもんねこれ。割と自信あるよこれは。
「本当に美味しそうですねえ……モンスター料理は初ですから、楽しみですよ」
「美味しそうですよね! ヤドカリのトマトパスタ!」
研究班の二人も楽しみにしてくれてるみたいだし、嬉しいなと思ったら、他のメンバーの顔色が変わった。
「……正しいんだけど、そう言われると途端に……」
「ヤドカリ……」
「ヤドカリかー……」
あぁうん……確かに、ヤドカリのパスタって言われるとちょっと嫌かも……
でも、モンスター料理なんて大体そんな感じだし。見た目で言うならもっとゲテモノ食べてるし。ゴックンチャクとか。
何なら、昨日食べたドラゴンだって、見た目で言うなら間違いなくゲテモノだったじゃん。
大分アレなビジュアルなドラゴンの、紫色の肉だもん。
でも、美味しかったんだから、今更だと思う。
「いただきます」
私が最初に食べる。それは変わらない。
フォークでパスタを数本だけひっかけて、くるくると丸めて……ぱくり。
うんうんうん……
「美味しいです」
悪くない。これだ! っていう特色があるわけじゃないけど、地上でカニを使って作ったときとほとんど変わらない。
うんうん、悪くない食べ方だと思うな。こうなると、普通にカニ料理の材料にできそうだ。
お夕飯は何にしようかなぁ……
私がお夕飯に意識を飛ばしている間に、みんなもそれぞれ食べ始めた。存分に食べてください。
追加も出来るよ。ちょっとだけだけど。後でもっとヤドカリ狩ってこないとね。
「うん、おいひい!」
「美味しいですわねぇ……」
「おいしー! ホント、夢希っちって料理上手だね」
女性陣からは好評。
みんな美味しそうに食べてくれて嬉しいなあ。
「ふんふん……これはいい! いやあ、一度食べてみたいと思っていたんですよ。レポートは見せてもらっていましたからね。このために戦闘訓練をしてもいいくらいです」
「夢希ちゃんのご飯は本当に美味しいですね! 嫁に来ませんか!?」
「行かない」
研究班からも好評。長谷川さんはともかく、美弥子はいつも通り過ぎる。
「美味いすね。クリームパスタにしてみたいな……」
「それもいいな。パスタではなく、カニ玉、いやヤドカリ玉か。それでもよさそうだ」
「卵合いそうすね。チャーハンとかよさそうじゃないです?」
「悪くないな」
男性陣は料理トークで盛り上がってる。私もそっちに入りたい。
ちなみに、浜面さんはその横でボリボリと人参を食べ続けていた。大分シュールである。
お昼ご飯を食べた後、私たちは腹ごなしの間に午後の予定を話し合っていた。
午前中は探索に出たけどモンスターが多くて断念したので、午後は探索に行くんだと思っていたんだけど、金守さんからすると違ったらしい。
「拠点周辺に繰り出して、食材とドロップアイテムを回収する。エリアの探索は明日以降に行う予定だ」
「今からじゃないんですか?」
金守さんの告げた予定に、怪訝な顔をした彩音さんが質問を投げる。
私もそう思うんだけどね。
「モンスターの移動も半日で収まるとは思えませんから、安全を考えるなら今日は拠点からあまり離れない方がいいでしょう」
「それに合わせて、食料としてメインになるヤドカリの生息数が他に比べて少ないようだからな。確保する時間を作った方がいいと判断した。さらに言えば、美空君の槍の補充のことも考えると、なおさらだ」
「今の感じだと、一戦闘で一、二本は投げてるもんなあ。ドロップ運が悪かったら赤字の可能性もあるか」
「ドラゴンがまた出て来たら、何本も必要になりそうですもんね」
男性陣からの指摘ももっともだ。確かに、今のところ後方にいるヤドカリ相手にとりあえず一本投げるみたいになってるもんね。
でも、それが一番安全だし……相手の数が減れば投げる必要もなくなりそうだけどさ。
私が攻撃よりも防御を優先しないといけなくなっているせいでそうなってるから、初手でヤドカリに魔法で攻撃できるようになれば問題ないと思う。
魔法の耐性がちょっとあるのが問題だけどね。体についているクリスタルが魔法への耐性を高めているようなので、ちゃんと狙わないといけない。
そういった点もあって槍投げするのが安定になっているというのもある。
「水沼君には、マナポーションの補充を頼みたい。余裕があるうちに確保しておきたい」
「おけまるー。持ってこれるだけ持ってくるねー。エリクサーも二本くらい用意しとく?」
「そうだな……頼めるか?」
「まかしときー?」
金守さんからの指示に、ウィンクにピースで応える涼子が非常に頼もしい。
涼子のエリクサー持ってくる発言に、花奈さんが首を傾げた。
「貴重品でしょうに惜しげもなく持ってきて大丈夫なのですか?」
「他はどうだかわかりませんが、『
「そ、そうでしたか……」
本来、エリクサーってものすごく貴重品だからね。すごくお高いし。
横にいた彩音さんが私の服の裾を引っ張り、小声で問いかけてきた。
「夢希ちゃん、本当なの……?」
「本当だよ。実験で指とか手足が吹っ飛ぶとかよくあるみたいだし」
「うわあ……」
ドン引きしている彩音さんだけど……実は、かなりオブラートに包んだというか、事実を隠ぺいした言い方である。
だってさ、マッドサイエンティストの集団が、たかが手足が吹き飛ぶ程度で済むわけなくない? 正直、死人が出てないのが不思議でしょうがないよ。
まあ、一番そういう意味で大けがしてたのは私かもしれないけどさ……全身ズタズタになってたわけだし……
「今後は素材の採取もみなさんにお願いできますから、そういった点でも容易に調達できますね」
「その感覚を持たれると、消費量が大幅に上昇しそうなので勘弁してほしいんだが……」
「はっはっは。今更ですよ。すでにその思考が蔓延しつつありますから」
「……は、ははは……」
長谷川さんがにこやかに話した内容に、金守さんの顔が引きつった。
エリクサーの素材集めか……私に言ってくれたらいくらでもやりますよ? 旅行と研究ついでにダンジョンに行きます。
後で彩音さんたちにも伝えておいて、金守さんに進言させてもらおう。
「……とまあ、本来ならすぐに出発する予定だったんだが……」
そこまで方向性が決まったところで、金守さんが苦笑しながら自分の角を撫でた。
その姿を見て、私と彩音さんは目を、花奈さんは髪を……全員が今発光している部分を触りに行く。
「ブルヒィ……光ってるのが気になるよなあ……」
笑いを嚙み殺し切れていない浜面さん。
気持ちは分かるけどね。私も花奈さんの姿に笑いそうになって目をそらしたから。
虹色の後光を背負っている花奈さんは、今でも直視したら笑ってしまいそうなので、申し訳ないけどそちらを見ないようにしている。
「どんな影響があるかわからないからな。とりあえず、発光が終わるまでは待機だ」
私たちの発光現象が無くなったのは、それから2時間後のことだった。
肉一切れでこれだけ光るんだから、たくさん食べたらどうなっちゃうんだろうか……
カメレオンは基本的に封印しようと決心した。味が味だから、料理にも使えないしね。
『女帝』が食べたら、夢希が初めて作ったハンバーグの味がします。