【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
なんか最近の話飯テロ成分足りなくねえか……? ってなった作者です。
増やしていきたい所存。
翌朝。相変わらず見張り番明けなのでちょっと眠いが、まだまだ許容範囲内である。
それでも、少しボケボケしている頭を覚ますためにも朝ご飯を食べようと、準備に取り掛かる。
とはいえ、である。もうちょっとこう、ダンジョン内のモンスターでバリエーション出せるつもりだったんだけどなぁ……
まさかモンスターたちがこんなに食べにくいモンスターしかいないとは……
パスタだけでなく米も来たが、メインとなるものがさ、ヤドカリしかないんだよね。ドラゴンは食べきっちゃったし、カメレオンはアレだし。
だが、せっかくなので新たな料理に挑戦してみることにした。
そう、カニみそでご飯を作るのだ。
「というわけで、これを使います」
「流石に素材からは料理したことないすね」
灰原さんと一緒にカニみそでソースを作るところから始めることにした。
カニみそも内臓だから、浜面さんは食べられないんだけど、当人から「とりあえず見てておもろいからそのままいけ」と言われたので遠慮せずにやらせてもらう。
後でペペロンチーノ作ってくれって言われたので、それは作るけどね。
それにしても、灰原さんは灰原さんでカニみそを使ったことが……そういえば。
「……市販のカニみそソースの調味料、ありますね」
「一回買ってみたんすけど、それなりに味が濃くて……」
「私の場合、使いきれる自信がなくて買わなかったです」
「……俺は無理矢理チャーハンにして処理したんで……結構人選びますよあれ」
灰原さんの耳と尻尾が垂れ下がったので、本当に無理矢理処理したんだろうな……
私としては、お父さんが常にいるなら割とありかなって感じだったんだけど、そもそもお父さんが晩御飯の時間にいないことが多くて、私もダンジョンで食べていて……って感じだったから、私の口に合わなかったら食べる人がいなくなるっていう問題があったんだよね。
愛依におすそ分けするっていう手もあるにはあるけど、なんかさ、自分の口に合わなかったからって余り物渡すの嫌じゃない? 現物ならともかく調味料を。大抵の場合量もあるしさ。
そこに、金守さんがふらっとやってきた。
「濃厚な味で美味いと思うが、確かに大味ではあるか」
「金守さんは買ったことあるんですね」
「ああ、少しだけ手を加えてディップソースにすると美味い。酒に合うしな」
「ふむふむ……」
金守さんも料理すると言っていただけあって、ささっとこういう話が出来るのはありがたい。
それにしても、お酒のツマミ、のディップソースか。色々入ってるとは思うけど……お酒に合うんでしょ? となるとそこそこ味が濃いはずだから……
「カニみそソースって、にんにく、塩、コショウ辺りでいけますかね?」
「そうじゃないすか? あー、でも、多分バター辺りは入ってたと思います」
「俺が食べたものには、若干だが醤油や酒も入っていたと思うぞ」
ふむふむ……よし、とりあえず、あるものでやらないといけないから、バターの代用品はオリーブオイルで行きます。
2人の意見も参考にしつつ、フライパンに油をひいてニンニクを炒め、香りが出てきたらカニみそを入れて、塩コショウを少しと醤油、酒を加える。
焦がさないようにかき混ぜながら、アルコール分を飛ばしたら、とりあえず味見だ。さて、どうかなー。匂いは美味しそうなんだけど。
「う、美味しくない!」
「……味濃いすね……」
味、濃っ! あまり濃さにびっくりだよ。これは水で薄めないとダメだ。
というわけで、水を少しずつ入れて味を調整。うーん、いい感じ薄まってきたけど、今度はちょっと味のまとまりが……
金守さんも味見をしながら、少し考える仕草をした後、意見を出してくれた。
「ふむ……みりんを少し入れるといいんじゃないか?」
というわけで、みりんをちょろっといれる。
そんなこんなで試行錯誤した結果、一応カニみそソースが出来上がった。
「……いい感じに出来ました?」
「ちょっと濃い気がしますけど、これでパスタとか米に合わせるんですもんね」
「ちょうどいいだろう」
金守さんのアドバイスもあり、三人で作り上げたカニみそソースは、大変美味しくできたと思う。
これから2人も私と一緒に冒険を……なんで首を横に振るんですか? 女性の中に混じるのは大変? 2人でくれば……金守さんが書類仕事で無理? じゃあしょうがないか……
何故か胸をなでおろしている金守さんを見つつ、献立を考える。と言っても、ご飯かパスタの二択だが。
「とりあえず……まずはパスタで行きましょうか。カニみそパスタ。具材は何がいいですかね?」
「ヤドカリのほぐし身とかいいんじゃないすか? まとまりそうですし」
「いいですね。野菜も何か入れたいな……」
「野菜……シンプルに玉ねぎ辺りでどうだ?」
これまた相談して出来上がったのが、このカニみそパスタである。
シンプルな感じにまとめてある。見た目はちょっと茶色が強めなので、和風パスタって感じである。
具材は玉ねぎだけなので、大分シンプルだけども。その方が味の調整しやすいから許してほしい。
「というわけで出来ました」
「味の調整はするので、とりあえず食べてみてください」
さっき私たちは味見をしたので、味の保証は出来てる。なので、最初の一口は彩音さんがいった。
この辺躊躇しないよね彩音さんって。
「いただきます。うん、美味しいよ! うーん、結構海鮮というか、磯っぽい?」
「ちょっと不思議だよね」
まったく海に近くないのに、何故か若干磯の香りがする不思議な料理になったのには、作った三人で首を傾げあったものだ。
海鮮物の味ならともかく、本当に磯の香りがするのが本当に不思議なんだよね。
そんな彩音さんの様子を見ていた他の面々も、思い思いに食べ始めた。
そんな中、一口食べた、神妙な顔をしてうつむいてしまった花奈さんに、涼子が近づいていく。
心配そうな顔してるけど、絶対にそんな心配するようなことじゃないと思うよ。花奈さんだし。
「花奈っち、大丈夫? 合わなかった?」
「いえ……白ワインは持ってきませんでしたわね……」
「……花奈っちはさあ……」
あまりにも想像通りだったなあ……
平常運転すぎる花奈さんに、涼子が本気で呆れている。いや、なんかもうあの目はそう。
ドン引きしている目だ。愛依によくされる目だからよくわかる。
こんなやり取りがありつつ、朝ご飯を食べ終えた私たちは、本日の予定を話し合っていた。
「さて、今日の予定だが。このフロアのマッピングをほぼ終わらせるつもりで探索する。今後の目途が立った以上、自重がいらないからな」
「ブルルル……全力だな?」
「ああ、その予定だ」
金守さんの宣言に、浜面さんが獰猛な笑みを浮かべている。金守さんも不敵な笑みで応えた。
私もちょっと楽しみである。自重がいらないっていいよね。良い響きだ。
全力で暴れていいというのは、とても楽しいことだからね。クラーラも出そう。クーは……今はいいか。
というわけでクラーラを出しておく。当人もやる気満々なのか、四本の触手全部でガッツポーズしてる。
涼子のおかげでマナポーションもたくさんあるから、好き放題させてもらおうかなー……
「夢希ちゃん、凄く楽しそうだね……?」
「思う存分暴れていいみたいだからね。楽しみだよ。ね、クラーラ」
クラーラもくるくる回って楽しそうだ。
彩音さんも苦笑してるし。彩音さんの場合は思いっきり暴れると気絶しちゃうもんね。いや、もうちょっと武器に慣れたら、斧で大暴れできるようになるかな?
今まで抑えていた面々が各々暴れたいと思っている中、少し前に聞いたことのある咆哮が聞こえてきた。
「っ! 今のは……」
「あの、ドラゴンの……」
「……障害が生まれたらしいな」
「まずはあれから、か?」
「その予定になりそうだな……」
何故だか、みんなのテンションが異常に低い。
やたらと深刻そうな顔してるし……いや、あのドラゴンだよ? テンション上がらないの?
「なんでそんなにテンション低いんですか……?」
「いや、あのドラゴンだよ? 夢希ちゃん」
なんだか彩音さんまでものすごく深刻な顔をしてる。
むしろ、彩音さんの場合はテンション上がると思ったんだけどな?
「うん、知ってるよ?」
「だったらわかるでしょ?」
そりゃあ、わかるよ。あれだけ食べたもん。
「とっても美味しいよね」
「そうじゃないから!?」
「ブルヒヒィッ!? ブホッ、ゴホッ……」
彩音さんの悲鳴が聞こえて、その後ろから浜面さんの噴き出す音が聞こえた。
なんでそんな反応なんだろう? あんなに美味しく食べたじゃないか。ゆさゆさと前後に揺さぶられながら、周りを見ていると。
「……ええ……」
「……」
灰原さんと金守さんが呆れた顔をしているのが目に入り。
「とても夢希さんらしいですわね」
「これでこそ夢希ちゃんです!」
美弥子と花奈さんがニコニコしているのが見えた。
おかしい。みんなの反応が想定と違いすぎる。
あんなに美味しく食べたはずだし、前と違って対策もわかってるんだから、そんなに怖がる必要もないのに……。
ああでも、解体するのは大変かもなあ……うーん、どうにかたくさん肉を確保して、地上にも持ち帰りたいところだ。
お土産によさそうだし。そこら辺のクリスタルでもいいんだけど、やっぱり特別なものの方がいいよね。お土産ってさ。
「あーし、そのドラゴン知らないんだけど、そんなヤバいの?」
「ブレスと血液にクリスタル化の効果がありまして……もし、対策なしで効果を受けた場合彫像になりますねぇ。北条さんが居なかったら全滅すらあり得たでしょう」
「……
「えぇ。ああ、大変美味なのも
「そういうことじゃないんだケド?」
長谷川さんの解説に涼子が真剣な顔で反論している。
そうか、涼子は食べてないんだった。
「涼子も食べようよ。美味しいよ?」
「……いや、気になるケド、そうじゃなくて……」
そこで気になる辺り、涼子もやっぱり『
「……物前君、あのドラゴンに恐怖を感じたりしないのか?」
金守さんが複雑な感情の入り混じった表情で私に問いかけてくる。
その、聞きたくないような、呆れているような、微妙な表情は何なんです……?
「前は怖かったですよ。でも、今は美味しいことが分かってますから、楽しみです」
「………………そうか」
長い沈黙の後に一言だけ返した金守さんはそれきり何も言わなかった。
夢希の秘密
好きなテレビ番組は料理番組と動物番組(ダーウィンが来たとか)
ワイドショーとドッキリ番組は大っ嫌い