【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
「次の話は、どうしようかなー……?」
「そういえば、アヤネさんに聞きたいんだけど」
「ん?なに?」
「冒険者歴って何年?」
「学校込みだと5年。ユキちゃんは?」
「3年だよ」
答えを返したら、彩音さんが怪訝な顔になった。どうしたんだろう?
「……未成年だから、今17だよね?」
「うん」
「14から潜ってるの……?」
「14歳の誕生日に登録しにいって、翌日からソロでほぼ毎日潜ってる」
「イカれてる……」
「酷くない!?」
「あ、ごめんつい本音が!」
"誕生日登録からの翌日ダンジョンはヤベェよ…”
"イカれてるよお前…”
"やっぱユキちゃん異常者だわ…”
"つい本音がwww”
"つい本音が草”
酷くないかな!?いや、変人な自覚はあるけど、イカれてるとまで言われるほどじゃないでしょ!ジトッとした目で、彩音さんを睨むと、彩音さんはわたわたと手を振りながら、目を泳がせる。
「いや、あの、これはその……いやでも!やっぱり、誕生日翌日からソロでダンジョン突入はおかしいって!」
「そうなの……?」
「なんで首傾げてるの!?」
"だよなぁ!?”
"マジでおかしい”
"首傾げるあたりが実にユキちゃん”
"配信するまでの2年に何をしていたのか……”
"多分、もっとやべぇことしてるゾ”
おかしいのかな?お母さんもこうだったって言ってたんだけど……いや、色々規格外なお母さんの言葉を信じて行動するのがアレなのかな……?ちなみに、お父さんはオッケーを出した。流石、あいつの娘で、俺の娘だな!って。あれ?もしかしてお父さんも同類……?同類だったんだろうな。じゃないと夫婦にならない。
「ユキちゃんってさ……」
「うん?」
「優しくて良い子だなーって思うこともたくさんあるけど、同時に、常識がズレてるところあるよね……」
「そんなに……?」
「そんなに」
「…………そっかー……」
そんなにズレてるのか、私……コメントも見てみよ。
"そうだぞ”
"結構アレなところ多いよ。致命的ではないだけで”
"ほぼ毎日潜ってる時点で、大分アレよ”
"月1くらいでしか配信の休みないもんね”
"学生らしいこともしなさいね(おっさん並感)”
満場一致でズレてるらしい。そっかー……。まぁ、いいか。生きていける最低限あれば何とかなるだろうし。私は、私の良心を信じて生きている。正確には、それを良いものだと言ってくれた、友人たちの言葉を信じている。だから……いやでも、こう……正面からズレてるって言われるの結構ダメージ来るなぁ……
「……学生らしいかは知らないけど、友人たちと遊びに行ったりはしてるよ。みんな忙しいから全然予定合わないけど」
「何して遊んでるの?」
「例えば……季節の服買いに行ったりとか、新しく出来たカフェに行ったりとか、カラオケ行ったりとか……」
「すごく普通に遊んでる……!?」
「なんでそこで驚くの……?」
"すげぇ普通のことしてる……”
"嘘だろ!?”
"あのユキちゃんがそんな普通の高校生みたいなことを…!?”
「私のことなんだと思ってるのさ……」
「一言で言うなら、変人……かな」
"変人”
"変人”
"変人以外ないね”
「…………」
自覚があることと、他人にそれを突き付けられることでは、ダメージの受け方が違うようだ。1つ学んだ。学びたくなかったよこんなの……
「つ、次行こうか!ね!」
「…………うん」
この話題は辞めてくれるらしい。嬉しいな。……もうちょっと前でやめてほしかったな……
"なんでパーティ組むに至ったのか”
"アヤネさんは前にパーティ組んでた?”
"好きな食べ物は?”
"アヤネさんのオススメのお酒あります?”
「パーティは前組んでたよ。ちょっと前に解散しちゃって、たまたまユキちゃんに会ってカレー食べて……配信見たら、この子と一緒にパーティ組めたら楽しそう!ってパーティ組んだの」
そういえば、こういうときはこういう風に振るんだって、凉が言ってたな。ニヤリと笑って彩音さんに声を掛ける。
「……で、本音は?」
「……!美味しいご飯たくさん食べれそうだなって!」
「……ふふふ」
「……んふふ」
2人で顔を見合わせて笑い合う。楽しいなぁ。
"てぇてぇ……”
"このままいちゃついててほしい”
"わかる”
「そういえば、アヤネさんってどのくらいの頻度でお酒飲むの?」
「たまーに、くらいかな。打ち上げの時とか、何かのお祝いの時くらい」
「好きじゃない感じ?」
「お酒によるかな。甘いのが好きなんだよね私。辛いのとか苦いのは苦手。ビールは苦いけど、最初の一杯だけ好き」
「お酒かー……お父さんが好きなんだけど、もっぱら日本酒か焼酎なんだよね」
「日本酒と焼酎……渋いね」
「渋いんだ……」
"その2つとウィスキーは硬派なイメージある”
"ワインとかブランデーだと華やかな感じ出るよな”
"甘いのだとカクテル系かな?”
"果実酒とか?”
「そうそう、果実酒とか。柑橘系が好きなんだよね。あとは、前にちょっとだけ飲ませてもらった
「みーど……?」
「蜂蜜のお酒!すっきりした甘さで美味しいんだ。高いんだけどね……」
「蜂蜜の、お酒……ふむ」
"蜂蜜酒たけぇんよな……美味いんだけど”
"あれデザートでしょ”
"分かるわ”
"柚子とかの柑橘系の果実酒好きだわー”
蜂蜜のお酒か……ふむ。蜂蜜は試したことなかったな……ホーネットクイーンの巣にあるか……?花とかないけど、蜂だしね。あってもおかしくないな。今度見に行こうかな。いやでも、酒造はダメなんだっけ?梅酒がいけるんだし、いけるか……?というか、そもそも蜂蜜酒ってどう作るんだ?あとで調べよう。それと、蜂蜜の精製?方法も調べよう。流石にそのまま食べられるようなものじゃないだろうし……
「ゆ、ユキちゃーん?おーい……?」
「…………?あ、ごめん何?」
「いや、突然無言で固まったから何かなって」
「蜂蜜って採取とかしたことないから、今度ホーネットクイーンの巣でも行こうかなって思って……」
「ほ、ホーネットクイーンの巣……」
「アヤネさんも一緒に行って、蜂の巣調べよ?」
「気軽に言わないでくれる!?ダンジョンボスだよ!?」
「知ってるよ?」
「もー!話が通じないー!」
彩音さんが頭を抱えてしまった。大丈夫かな…?
ホーネットクイーンは、奥多摩ダンジョンの一番奥にいるボスだ。奥多摩ダンジョンは、植物系、昆虫系のモンスターの楽園みたいなところである。そして、ホーネットクイーン自体はサイズが2メートル近くあるのだが、ほとんど動かないし、攻撃するための身体のパーツがないので、大して強くない。だけど、周りのキラーホーネットの軍勢が結構強い。女王蜂と働き蜂って感じである。キラーホーネットは、30センチくらいのオオスズメバチみたいなやつだ。強力な顎と毒針を持ち、集団での攻撃が脅威である。しかも素早い。浮遊魔法で空中戦をしたのは懐かしいな……結構楽しかった。
"諦めてくれアヤネさん。そいつはイカれてるんだ”
"ホーネットクイーンって蜂蜜集めてんの……?”
"つか、ダンジョン内に花とかあんのか…?”
"植物系のモンスターはいるから、そこから集めてる可能性はあるかも?”
"そのうち養蜂とか始めそう”
"やめろよ、本当にやりそうだろ!”
「養蜂……モンスターの畜産とかも楽しそうだね」
「リスナーさんたちのバカぁ!」
"やっべ”
"おい戦犯だぞ!!”
"マジでやべぇから!”
"アヤネさん、止めてくれ!マジで!”
「絶対やめてね!!ホントにやめて!?」
「でも、畜産出来たら、幾らでも食べられるよ……?」
「危険すぎるから!」
むむむ。確かに。安全性の確保が必要か……逆に言えば、安全性の確保さえできればいいわけか。今使ってる、この結界石になんか電源でもつけて永続出来るようにすればいけるんじゃないか?そもそも範囲が狭すぎるから、拡大しないとダメだけど……
"そもそも、畜産するにもモンスターって繁殖すんのか?”
"あいつらダンジョンから沸いてくるイメージなんだが…”
"確かに。どうやって増えてんだ?”
"キラーホーネットはホーネットクイーンが産んでるのは知ってんだけどな”
"つか、そもそもモンスターに性別あんの?”
"一応あるんじゃねぇの?いや見た目だけか?”
「む。確かに。そもそも繁殖出来ないなら、畜産にならないね……」
「それは確かにそうだね……モンスターってどうやって増えてるんだろ?」
「一応肉とか食べられるわけだし、突然ポコっと出てきてるわけじゃないんじゃ……いやでもそうなると、毎日モンスターハウスが補充されてる理由が思い付かないな……」
「モンスターハウスって毎日補充されるの?」
「うん。大体20時間くらいで補充される」
「なんでそんなこと知ってるの……?」
「毎日、渋谷ダンジョン中のモンスターハウス狩り尽くしてレベリングしてたから」
「初めて聞いたよそんなレベリング方法!!」
"どんなレベリングだよwww”
"効率厨の末路でしょそれwww”
"流石、3年で3200レベルになった女は面構えが違う”
"ソロでやる方法では絶対にないwww”
浮遊魔法で浮いたまま魔法ぶちまければいいだけで簡単なんだけどな。落とし穴踏み抜いて、穴が閉じる前に《
「安全確保もちゃんとやったから、特に危なくないよ。浮遊魔法が使えて攻撃魔法も使えるなら、誰でも出来る」
「嘘でしょ……」
「落とし穴落ちる途中で浮遊魔法で滞空して、そのまま攻撃魔法で殲滅するだけだよ」
「方法だけ聞くと確かに簡単に出来そう……?」
"普通の魔法職は魔法2つ同時使用すんのは厳しいんよ”
"そもそも浮遊魔法はスキルじゃないから、制御クソむずいのよ。自由自在なユキちゃんがバグってるだけ”
"スキルじゃねぇの!?”
"スキルじゃなくて、収納魔法と同じでただの魔法だぞ”
"『ただの魔法』とは……?”
「え、収納魔法と浮遊魔法ってスキルじゃないの!?」
「スキルじゃないよ?」
「え、じゃあ何なの……?」
「冒険者学校で習わなかった?」
「私が近接職のクラスにいたからか、あんまり魔法職のスキルとかについて詳しく習ってないんだよね」
「確かに、あんまり覚える必要ないか……」
スキルですら無いものまで覚えてもね。私も近接職のスキルはともかく、技術の方までは分かんないしな……お父さんは詳しそうだけど。
「それで、その2つはなんなの?」
「簡単に言えば、『ただの魔法』だね。厳密には、うーん……スキルに反映されない技術と同じなんだけど、良い例えが思いつかない……」
「あー……剣系スキルと剣術の違いみたいな感じ?」
「多分……?それの魔法スキル版だね。『
「マジックアイテム作ってるクランだよね。あの人達が作ったの?」
「そうだよ」
その人たちは、『魔法が使えるなら空を飛べてしかるべき』というわけの分からない理由で開発に着手し、この魔法を完成させたのである。彼らの自伝がすごく面白かった。今度彩音さんにも貸してあげようかな。冒険譚好きだって言ってたし。いや、冒険譚とはちょっと違うか……?開発秘話の話なんかは、今の私の基礎にもなってると思う。私は料理だけど。
そして、その人たちが集まって作ったクランが『
"大抵のマジックアイテムは彼らが開発したものなんだよなぁ……”
"どんなことやってるんや……”
"空間拡張カバンとか結界石とかその辺全部”
"マ???影響デカすぎんだろ……”
「他にはなにか開発した魔法あるの!?」
「あるにはあるんだけど、それらはスキル扱いになっちゃって、今でもスキルに反映されない純粋な魔法はこの2つだけ」
「え、スキルまで開発してるの!?」
「開発者の自伝持ってるけど……読む?」
「ホントに!?今度読ませて!」
お、結構食いつきがいいな。こういうのでもいいなら、幾らでも貸し出せる。私が冒険譚読むの好きだからって、両親が買いまくって来たから、一部屋分くらいあるんだよね。ありがたい限りだよ。2人とも冒険者だったから、家に1人にしてたのが申し訳ないっていうのもあったのかもしれないな。
"スキルになってるのも凄まじいけどな!?”
"スキルにならないのと、なるの、どっちが凄いの…?”
"わからん……”
"マジでわからん……”
"「全ての
"覚悟決まりすぎだろwww”
"マンガやアニメの話を現実にするための集団か…”
"何がすげぇって統率取れてて、爆発以外で問題起こしたことがほぼ皆無なこと”
"性格合うなら最も優良なクランって言われてるからな”
"条件がめっちゃ厳しいやつだろそれ”
ロマンを追い求める技術バカが大好きです。