【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
一人称視点の、主人公の以外の考えの描写が難しいことを痛感しております。
とりあえず、
ブレイクレッグは、品川ダンジョンの上層に生息しているモンスターで、見た目はほぼダチョウである。群れで行動しており、強力な蹴りを繰り出してくるため、なかなか手強い。そして、獲物の脚を狙う癖があるため、ブレイクレッグと名前がついている。手強いとはいったが、所詮は上層のモンスターなので、私たちにとっては雑魚である。
あのあと安心したのか、本格的に泣き出してしまい、そのまま泣きつかれて寝てしまった犬束さんをベッドに寝かせて、室井さんとともに部屋を退出したあと、私たちは廊下で室井さんと少し話をしていた。
「指名依頼お受けします」
「かしこまりました。こちらにサインをお願いします。何かこちらで用意するものなどございますか?」
「今からモンスターを取ってきて、調理しようと思いますので、給湯室かどこかを貸してもらえませんか?」
「わかりました。すぐに手配致します」
彩音さんと室井さんの会話を聞きつつ、私は私で考える。彩音さんが知らないことを考えないといけない。となると、検問の通過かな。
「……誰か一人ギルド所属の冒険者を手配していただけませんか?モンスターの死体を持って帰るわけですから、検問で止められる可能性があります」
「かしこまりました。手の空いている者を手配いたします。少々お待ち下さい」
各ダンジョンの入り口には検問があって、そこで持ち物の検査がある。一定量以上の
ちなみに、ドロップアイテムの加工品にも反応するが、加工品に関しては規制がない。入る時に持ってきた武器とかを、帰りに違反でーすって持ってかれたら洒落にならないしね。
今回の場合だと、加工する前の生の肉を持ってくるわけで、引っかからない方がおかしい。というか、1回引っかかった。そのため、ギルド所属の冒険者についてきてもらって、説明してもらったほうが確実だ。
なお、ダンジョン内で調理したモンスター料理は、何故か引っかからない。これに関しては、ほんとに謎だ。なんでなんだろう?
ギルド所属の冒険者は2種類いて、1つは救急・救命活動に特化した冒険者たち。簡単に言えば、レスキュー隊である。そしてもう1つは、対冒険者犯罪捜査部の冒険者たちだ。こっちは冒険者専門の警察官である。そもそも、冒険者たちはレベルを手に入れたことで一般人とは隔絶した能力を持っている。そんな冒険者たちの犯罪は、冒険者以外に対処が出来ない。故にこういう専門の組織があるのだ。
「夢希ちゃん。何を用意する予定?」
「ブレイクレッグを用意しようと思う。調理の手間も大してかからないし、何よりそもそもの味自体悪くないから」
「家からミノタウロスのカレー持ってくるんじゃダメなの?」
「それも考えたんだけど、モンスター以外の物、例えば、調味料の味を感じ取れるか分からないから、モンスターそのものを食べてもらおうかなって。それに、多分……米がダメだと思う」
「なるほどね。分かった」
「都合がついたものがいます。ギルドの入り口で合流してください。金髪碧眼の……そうですね。騎士のような男です」
「分かりました。ありがとうございます」
室井さんと別れてギルドの入り口まで戻ると、一人の男性が立っていた。短く刈り上げた金髪に、切れ長の碧眼。ギルド所属のエンブレムを胸にあしらったアーマーを付け、ロングソードを携えている。言われた通り、まさしく騎士って感じの見た目で、ちょっとびっくりした。彼は、こちらに気付くと朗らかに笑いかけ、こちらに手を差し出してきた。
「こんにちは。お二人が、美空彩音さんと物前夢希さんですか?」
「はいそうです。あなたが、今回のサポートをしてくださる方ですか?」
「はい。対冒険者犯罪捜査部の
私と彩音さんと握手を交わし、すぐに朗らかな顔から真面目な顔へと変わる。この人、かなり強いな……なんとなくだけど。そして、なんでこのレベルの人が手隙だったんだろう?
「急ぎの案件とのことで、内容をお伺いしても?」
「今回は、ブレイクレッグの死体を持ち帰ります。その際、検問で止められるのを防ぐために協力お願いします」
「聞いていた内容通りですね。しかし、何のためにブレイクレッグの死体を?」
「食べるためです」
緒方さんがポカンとした顔になった。多分、急ぎだからって、正確に内容を伝えずにここに呼んだな室井さん。もしくは、移動中に伝えればいいだろうって考えたのかな。その判断自体は間違ってないと思う。内容が大分常識の範囲外なことを除けば。
「え、た、食べるんですか?ブレイクレッグを……?」
「えぇ、ちょっと癖がありますが、鶏肉と似た感じで美味しいですよ」
「そ、そうなんですか……あ、車を回しますので、少し待っていて下さい」
「ありがとうございます!」
緒方さんの運転で品川ダンジョンに向かう。車の中でも、ちょっと緒方さんは混乱していた。そんな様子を見て、彩音さんが苦笑している。まぁ、突然モンスター食べるって言われたらこうなるよね。
品川ダンジョンは、渋谷ダンジョンの次に大きなダンジョンで、天然の洞窟って感じのダンジョンである。岩肌の露出した洞窟と少し広がった広間が連なったダンジョンであり、罠がない代わりにモンスターが多い。また、集団で行動するモンスターが非常に多く、油断すると袋叩きにあうダンジョンである。難易度としては、渋谷ダンジョンよりも上であり、ここも深層域まであるダンジョンだ。今回は上層にしか行かないけれどね。
検問で緒方さんから軽く説明をしてもらい、3人でダンジョンに入る。《魔力探知》でもっとも近いブレイクレッグの群れを探す。探知距離内に居なかったら、ひたすら拡大してやる。私の最大探知距離は
「ブレイクレッグの群れを見つけたら、まず首をはねてください。そして、脚も切ってほしいです」
「首と脚を、ですね」
「脚も切るのは血抜き用?」
「そう。両方切ると早く抜けます。それと、首を一発だと、肉が痛みません」
「な、慣れてますね……」
ブレイクレッグは、私が2番目に研究したモンスターだ。バロメッツがどうしようもなく不味かったので、リベンジに挑戦したのがブレイクレッグだった。故にかなり細かく調べてある。血抜きの仕方から解体の手順まで、一切淀みなくできる自信がある。
ブレイクレッグ6頭の群れに全員で襲いかかる。やっぱり緒方さんがかなり強くて、あっという間に3頭の首がとぶ。私がショートソードで1頭倒した時には、彩音さんが2頭首をはねていて、すぐに群れが全滅した。《魔力の矢》だと、威力が高すぎて爆散しちゃうんだよね……全部の死体を浮遊魔法で浮かせ脚を切る。そして、結界石で結界を張って……血抜きをしながら次の工程へ。
「こいつらの羽根を片っ端からむしってください」
「全部?」
「胴体と翼部分は全部。首は大丈夫です。掴んで引っ張るだけで取れます」
「分かった!」
「わ、分かりました」
片っ端からむしってむしって、むしる。ここだけが大変なのだこいつは。
3人で黙々とむしっていく。私は《解体》のスキルがこんなところでも作用するので、他の二人よりも速い。故に2頭分をさっさと終わらせて、肉の解体に移る。毎度のことながら、内臓は食べない。手羽、ムネ肉、モモ肉の3種類に分割する。他は全て捨てる。私がやった分の解体を終わらせる頃には、2人ともむしり終わっていたので、そのまま解体する。やっぱり人数いると違うね。
ちょっと量は多いが、犬束さんがどれくらい食べるか分からないし、ついでに私たちの昼食にもしてしまおうと思う。収納魔法から鍋を取り出して、鍋の中に肉を放り込み、蓋をして結界を解除。さぁ、帰ろう!
「帰ります」
「おっけー!」
「は、はや……」
終始緒方さんが困惑気味だった気がするが、まぁしょうがない。早々に入り口まで到達し、行きに緒方さんが伝えてくれていたお陰で、問題なく検問を通り抜け、ギルドへと戻る。
緒方さんには、車での送迎に、検問のこともやってもらったので、何かお礼をと思ったら、賄賂になるから受け取れないと言われてしまった。確かに、賄賂になっちゃうか……その辺厳しそうだもんね。お礼の言葉だけ尽くし、ギルドで降ろしてもらう。このあと他に仕事があるらしく、そのまま車で去っていってしまった。めちゃくちゃ忙しい中来てくれたのかな……ありがとう緒方さん。
ちょっとお役所仕事の世知辛さを感じながらギルドの中へ。入り口横に室井さんがいたので給湯室に案内してもらう。案内された給湯室は、まぁ普通の給湯室って感じである。机の上に鍋を置かせてもらい、収納魔法からまな板とナイフを取り出す。そして、肉の塊を片端から一口大に切っていく。大きなまま焼くとなると、ちょっと場所を取るし、何より火が通るのが時間がかかる。切り終わったら、彩音さんに渡して、鉄串に刺してコンロで焼いてもらう。5串分切ったところで、一旦停止。そして、1串だけ塩コショウを振る。
「塩コショウ振るの?」
「1本だけね。味が分かるか試してもらう」
「分かるといいね……」
「うん」
本当に分かってほしいな……分かってくれるなら、いくらでもやりようがある。
「では、犬束さんを呼んできますね」
「お願いします」
ここまでノンストップで駆け抜けて来たので、ちょっとばかり疲れたな……とか思っていたら、彩音さんに頭をくしゃくしゃと撫でられた。なんかみんな私の頭撫でるよね?なんで?
「きっと、大丈夫」
彩音さんの元気づけるような声。あー、バレてたのか……正直不安なんだ。もし仮に、
深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。彩音さんのおかげもあって、なんとか平静を取り繕えそうだ。少なくとも、犬束さんの前では、絶対に不安な様子を見せるわけにはいかない。
「ありがとう、彩音さん」
「どういたしまして」
扉が開いて、犬束さんが室井さんと一緒に部屋に入ってくる途中で停止した。寝たからか、顔が大分すっきりしているのと、点滴がなくなっているけど……ど、どうしたんだろう……?
「ど、どうしたの……?」
「匂いがするっす……焼けたお肉の匂いっす!!」
思わずガッツポーズをしそうになるのを必死にこらえる。彩音さんが犬束さんに焼き鳥を差し出した。塩コショウのやつは別に置いてあるので、今渡してるのはただ焼いただけのものだ。
「どうぞ」
「い、いただきます……」
犬束さんが焼き鳥を口に入れようとして、手が震えて止まってしまう。呼吸も荒くなっている。その姿があんまりにも痛々しくて、胸が苦しくなった。思わず、彩音さんの手を握ってしまう。
そのまま何度か深呼吸をしたあと、犬束さんは意を決したように、口に焼き鳥を入れた。そのまま固まって……涙を流しながら、口を動かす。
「ちゃんと、味がするっす……美味しいっす……」
「……もっと食べたかったら言ってね。たくさん取ってきたから」
「……はいっす。ありがとうございます……ホントに、ありがとうございます……」
泣きながら焼き鳥を食べる犬束さんを見ながら、彩音さんとこっそりハイタッチをした。お互い、目に光るものがあったのは内緒だ。
室井さんは内容が内容なので、正直に話すと思っておらず、ある程度濁して伝えてくれています。モンスター食べるのは大分変なことですからね。主人公は押し通りましたが