【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私とリフレッシュ

 

「どうせならー……これでやらない?」

 

 目の前に差し出された、ラードの容器。ニヤついた凉の顔。

 

「ふふ……い、いやいや、それは、ふふん、ちょっとさぁ……?」

「ん、ふふ、流石にダメ、じゃない?アンタ……んふ……」

「ひひ、だ、だめ、かなー?」

 

 3人して変な笑いが出てきた。なんかもう、何もかもが面白い。ラードは想定してなかったよ。それ探してたんだ……いや、分かるよ?なんかもう全力でやるか!ってなって持ってきたんだろうっていうのは分かるんだけど、何故かやり過ぎ感出ちゃうのが無性に面白い。

 一通り笑い合って、もうなんか全力出してしまおうという空気になる。やってやろうじゃないか……!財布の中身は知らない。今あるのは、悪ノリだけだ。

 

「そこまでやるなら、パン粉良い奴にしてくる」

「小麦粉も一番高いのにしよー?」

「卵も高いのにしましょ」

「マヨネーズも瓶のやつにしようよー」

「4桁してるじゃない。いいわね」

「それでタルタルソース作ろう」

「いいねー。おいしそー」

「牛乳、この牧場直送のやつにしない?たっかいけど」

「1リットル800円はヤバいよ……ふふ」

「ひひ……買っちゃおうよー」

 

 ダメだ。際限なく高いやつになっていく。でも面白くってしょうがない。バカなことやってるなーって思うけど、やめる気にはならない。たまにはいいでしょこういうのも。

 

「豚肉とかも、ブランド物にしちゃう?」

「さ、流石にそれは……んふふ」

「やばいよー、お値段が3倍とかだよー、ひひひ」

「あ、ベーコン買おうと思ってたんだ」

「この分厚いのー?」

「ち、違うよ、んふふ、アスパラに巻くやつ」

「その分厚いの切って揚げましょ?」

「ベーコンブロックの串揚げはやばいよー、犯罪だよー」

「なんかこう、油キツかったときの念の為に漬物かなんか用意しとこうか」

「さんせーい……らっきょうとか?」

「何がいいかしらね……あ、これとか良いんじゃない?」

「いぶりがっこかー……ひひひ……」

「んふ、迷いなく高いのいったね……」

「今さら値段気にしてどうすんのよ……ふふふ……」

「逆に気にしてるけどねー?」

「確かに。高いの選んでるもんね」

「まぁ、それはそれとして、らっきょうも買いましょ」

「ちょっぴり魚も欲しい気がしてきた」

「アジー」

「イカ」

「丸々のやつ買おうか。私が捌くよ」

「大葉とか欲しくない?」

「海苔持ってきたー」

 

 この悪ノリを止める人はいない。このあとも、私たちは際限なく普段買わないような物をカートに入れまくり、意気揚々とレジに並んで……今まで見たことないような金額を叩き出したことにその場で笑いそうになったけど、迷惑になりそうだったので笑いをこらえつつ袋詰めして、退店したあと、そこで限界がきてみんなで爆笑した。やっばいよ。2万超えてるのは本当にヤバイ。

 荷物は全部収納魔法にしまう。今日はダンジョン潜らないって決めてたから、中身が空っぽだし、余裕で入る。

 そのまま凉の家に向かおうとしたところで、愛依がこんな事を言いだした。

 

「うーん……これゲーム片手にやるには厳しいわよね」

「確かに。火もあるし、ちょっと怖いね」

「家燃えるのは勘弁してー?」

 

 そうなると、なんかしら欲しいな。机は使えないから、ボードゲーム系も出来ないし……そういえば、愛依が映画とか見たいって言ってなかったっけ?

 

「映画見ようよ。サブスクだっけ?があるんでしょ?」

「あー、それもいいけどー……」

「アンタ、今日は色々あるわね、珍しい」

「えー?だって、ここまでやったのに、サブスクでいつも通りなのなんかなーって思わないのー?二人はさー」

「ちょっと分かるかな」

「まぁ、確かにここまできてなんかアレよね……」

 

 最後までこだわるか。そうだね。そうしよう。

 というわけで、全員でレンタルショップに行くことにした。凉曰く、サブスクが出来てから大分数が減ったらしいんだけど、昔の映像を昔の画質や音質で楽しむために使う人がいるらしい。

 

「どうせなら、普段見ないやつにしましょ」

「普段見ないやつ……」

「笑えるクソ映画にしようよー」

「クソ映画って、例えば?」

「サメ系?」

「グロいから却下よ」

「あー、確かにご飯中は嫌かもー?」

 

 レンタルショップに移動して、映画を探す。うーん、普段見ないやつってなると、あんまり思い付かないな……いや、思い付かないから見ないのか?どっちだろう?

 

「あー、ライブの映像とか見たことないわね」

「興味あるバンドとかアイドルじゃないと、微妙だよー?」

「そうなの?」

「ライブの音質って特殊だしー、基本的にファン向けだから、詳しくないと分かんないネタとかあるからねー」

 

 あー、そりゃそうか。わざわざライブに来てくれる人たち向けにやってるんだもんね……見てみたいけど、そもそも知ってる人がいないしな……

 

「詳しいわねアンタ」

「そりゃライブ行ってるしー?抽選当たった時だけだけどねー」

「抽選なんてあるんだ?」

「あるよー。人気になると、会場キャパ5万人に、100万人以上が応募とかザラだからねー」

「……えと、20倍?」

「そーそー」

 

 とんでもない倍率してる……今までよくわかってなかったけど、凉が当選したー!ってはしゃぎまくって喜んで理由を今知ったよ。

 適当なライブのを軽く見ていた愛依が、棚にそれを戻す。

 

「そうなると微妙ね……ラブロマンス……はいいわ」

「そうだね……」

「濡れ場とか来たら気まずいもんねー」

「ホラー……はグロいわよね?」

「幽霊系とかならー、ワンチャン?」

「ビックリした拍子に油ひっくり返しそうだからやめよう?」

「確かにやりそー……」

「ホントに怖いからやめときましょうか……選択肢なくない?」

「アニメ映画とかは?」

「凉が詳しいでしょ?」 

「まーねー」

「昔のやつならどう?」

「昔のやつー?確かに知らないの多いかもー?」

 

 あーでもないこーでもないと言いながら、アニメ映画の中でも、いわゆる不朽の名作が置いてあるエリアに移動する。すごい昔のやつばっかりだ……これなんか100年くらい前だよ。わ、こっちには白黒映画がある……!

 

「すごいわね、タイトルは聞いたことあるのに内容知らないのばっかだわ……」

「うわー、ポップについてる名台詞だけは全部知ってるー……」

「私ですら聞いたことがあるのがちらほらあるよ……」

「アンタが知ってるって相当ね……」

 

 いや、このコーナーすごいな。たまにテレビでやってる感動した名シーン集!みたいなので一度は見たことあるヤツばっかりだ。そのシーンしか知らないけど……

 3人で、1作品ごとにポップがついている気合の入れように驚きつつ、コーナーを見ていく。結構ファンタジー系が多いみたいだけど、なんていうか、今だとファンタジーというか現実で出来るなこれ……みたいな話もあるみたいだね。魔法がなかったり、モンスターがいなかったりする世界って、どんな世界なんだろう?

 しばらく見ていると、愛依が一つの作品を指差した。女の子と豚と……黒い影?みたいなのが映ってる。

 

「ねぇ、これとかどう?」

「んー?お、放映当時に日本で歴代最高売上出してるんだー。すごいねー」

「へー……あ、この辺その制作会社のやつばっかりだ」

「ホントね……ねぇ、この辺から借りてかない?一人一作ね」

「お、りょーかい。うーん……わたしはこれー!かわいー!」

「アタシはこれにするわ」

「うーん……私は……」

 

 愛依は最初に選んだやつで、凉は……おっきな……タヌキ?クマ?がバス停の横で傘をさした女の子と並んでいる作品を選んだ。

 

「あ、これにしようかな」

 

 豚の飛行機乗りの話らしい。豚の飛行機乗りってなんだ……?あと、タイトル横のキャッチコピーがちょっと気になった。当時のかっこよさってどんなんだろう?あと、こういう飛行機見たことないしね。

 

「じゃー、借りて帰ろー」

「料理の準備もしないとね」

「そうだね」

 

 借りるものも決まったので、借りてそのまま凉の家へ。凉の家はちょっと良さげなマンションで、本人曰く防音らしい。本当に、集まって騒ぐには完璧なのである。あと、本人の趣味でテレビの画面も大きいし。

 部屋に入って、荷物を取り出す。見たことないブランド物みたいな食材が山程出てきて、また笑ってしまった。さっき買ったやつなんだけどさ。いやでも、これすごいな……

 

「とりあえず……部屋のセッティングは凉に任せるとして」

「コンロとー、鍋とー……なんか必要だよね?机覆う何か」

「テーブルクロスとかないの?」

「持ってると思うー?」

「夢希、魔法でどうにかならない?」

「そんなに万能じゃないよ……あ、収納魔法の底にレジャーシートならあった」

「それでいいよー。ありがとー……なんかこれ重くない?」

「冒険者用のやつだしね」

「あぁ、頑丈だから重いのね」

「なるほどねー。ありがとー」

 

 収納魔法から取り出しきれていなかったレジャーシートを凉に渡して、愛依と2人でキッチンに並ぶ。食材の仕込みをしなくては。

 買ってきたアジとイカを卸すのは私がやるので、愛依には他のものを用意してもらう。その後は分担してやることにした。凉はテレビだとか借りてきた映画のセッティングとかをやってもらう。あとは食器も。

 

 

 

 

 

「よし、これで一通り出来たわね?」

「出来たね」

「すごー……壮観」

 

 そこそこ時間が掛かったけど、準備が出来た。机の上には、様々な食材が串に刺されて並んだ皿が4皿もある。中央には、ラードを溶かした鍋が置いてある。飲み物も念の為にと用意した漬物も準備万端である。

 豚肉、ベーコン、アスパラ、タマネギ、じゃがいも、アジ、イカ…etc。あとは揚げるだけだ。衣は各自で漬けるようにと、ボウルを1個ずつ用意した。机のサイズが足りるのか心配になったが、ギリギリ乗り切って良かった。

 とりあえずまずは。ということで、3人同時に豚串に衣を付けて油に投入する。火が通らないと怖いので、ちょっと長めに揚げてから取り出す。綺麗なキツネ色になった豚串に感動する。揚げたてだから、きっと美味しい……!みんなでソースに漬けてから食べる。

 

「……いただきます」

「いただきます」

「いただきまーす」

 

 サクッと良い音がした……うん!あっっつい!

 慌てて飲み物を口に含むと、みんなして同じように飲み物を飲んでいた。めちゃくちゃ熱かったけど、美味しい!衣がサックサクだし、味も悪くない。お高めのソースも美味しい。

 

「あっついけど、美味しいわね!」

「美味しいけど、口の中火傷したー……」

「ここから、自分で好きなの食べようね」

「あ、映画も開始ー」

 

 映画を流しながら、食べたいものを揚げて、好きなように食べていく。揚げた直後のものは少し置かないと、口の中が大変になる事が分かったので、ちょっとみんなしてペースが遅めだ。

 

「アジフライうまー。大葉付いてるのがうれしー」

「そっちのほうがいいかなって思って。ん、タマネギ美味しいな……」

「おー?わたしも食べようかなー?」

「アンタ、じゃがいもはいいの?」

「あっ、食べる食べるー」

「アスパラ串も美味しい。いい感じ」

「アンタは野菜以外も食べなさいよ。アイツが他のやつ全部食うわよ」

「分厚いベーコン串、油っぽすぎるかもー……口の中ベトベトするー」

「あーもう、ほら、漬物でも食べなさい」

「ありがとーママー」

「誰がママよ!」

 

 いや、ママだと思うよ本当に。立ち回りが完全にお母さんだよ。自覚してないのかな……?にしても、野菜美味しいな……サクサクだし。ラードで揚げるとこんな感じになるんだ……ちょっと肉の香り?みたいなのがして、良いアクセントになってる。次は……私もアジフライにしようかな。

 その後も、色々話しながら食べ続けていたら、映画を完全に失念していてもう一回見ることになったり、思った以上に映画が面白くて、夢中で見ている間に串を焦がしたりと、トラブルもあったものの、とても楽しい時間を過ごすことが出来た。

 片付けはそれなりに大変だったけど、それも楽しい時間だった。油ものだから、洗うの大変だったけどね。残り物は全部揚げて凉に渡して保存食的なものに。調味料は私と愛依で半々に、ラードは再び固まったものを私がもらうことになった。色も澄んだままだったし、これで作りたいものも出来たからね。

 順番にお風呂に入って、深夜まで映画を見た。愛依が途中で泣き出したのを凉がからかったり、面白いシーンでみんなで笑ったりと、楽しく映画を見ることが出来た。そのあと寝室に移動して、布団に潜って、眠る前に雑談して……本当にいいリフレッシュになった1日だった。

 

 まぁ、翌日みんなして寝坊したのは、もうお約束なのかもしれない。学校にはギリギリ間に合って良かったよ。

 




彼女らが何を話したのかは、彼女らだけの秘密ということで
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