【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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視点変えるのめちゃくちゃ難しくて、ポンポン変えながら書いてる作者さんすげー!!ってなってます。

感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。


酒に目がないボクとスタートライン

 

 割れたワイングラス等を片付けてもらって、再度同じものを用意してもらい、今度こそ乾杯をしたボクたちは、のんびりとお酒を楽しむことにした。ちなみに、片付けて貰っている間に肉の盛り合わせが届いた。ベーコンや生ハム、タタキなどの盛り合わせである。薬味は小皿で別。ボクのせいで迷惑をおかけします。たくさん飲むから許して。

 順番に一口ずつ飲んでいった彩音さんは、最後の一つを飲んだあと、口を開いた。

 

「あ、これ美味しいかも」

「おん。良かったー。他はダメ?」

 

 ふむふむ。やっぱり、ワインそのものが苦手な感じかもしれないね、彩音さんは。白ワインやロゼだと違うかもしれないけど、ここにあるのは辛口ばっかりだからなぁ……肉バルだし。

 

「うーんとね、これとこれは渋さがちょっと……って感じ。こっちはあぁ、ワインだなって感じ。美味しいんだけど、よりこっちの方が美味しいかな」

「やっぱりサングリアかー……飲みやすいよねぇ」

「うん。渋さも大分抑えられてて、飲みやすいよ」

 

 彩音さんが、何口かサングリアを飲む。うん。大分気に入ったみたいだね!良かったー、全部合わなかったらどうしようかと思ったぜ。

 

「よーし、サングリアの別バージョン頼もう!」

「え、別バージョン?」

「これはオレンジメイン。ベリー系メインとか、リンゴとかメインのやつもあるよ!」

「そんなのあるんだ!美味しそう!」

 

 楽しげに顔を綻ばせる彩音さんに、美味しいワインをお願いしますよマスター。あ、笑いはもういいからね。お酒入ってるから帰ってこれなくなるだろうし!

 飲みにくいらしいワインはボクが全部もらった。こういうのが出来るのがボクの強みだよねー。あれよ。頼みすぎちゃったときに全部食べてくれる頼もしい人の酒バージョン。

 追加で2種類のサングリアも届けて貰って、お肉もお酒も進む。話もしたいけど……やっぱりさっきのが頭にあるから、ここはお互いに共通する話題にしよう。身の回りの話は、多分うまく行かない。ボクと彩音さんの間には、思った以上に溝があるみたいだし。

 というわけで、夢希の話題を話そうかな。

 

「そういやさ、彩音さんって夢希とどこであったの?」

「あー……八王子ダンジョンで……」

 

 なんか、不自然に言い淀む彩音さん。なんだ?アイツは非常識だけど、他人の迷惑にならないように一応気を使って生きてるはずだぞ……?

 

「え何?なんかあった?」

「その、夢希ちゃんが谷に落ちたと勘違いして、助けなきゃ!って下まで追いかけていったんだよね……」

「……おん……?あのダンジョンを?走って!?」

 

 あの八王子ダンジョンを!?入り組んだ岩の迷宮と、飛行型モンスター飛び交う吊り橋を何往復もしないといけないあの面倒なダンジョンを!?

 

「うん……」

「うへぇ……想像したくねぇ……」

「で、下について、結界石の結界があったから、あそこだ!って行ったら、中で夢希ちゃんがカレー食べてて」

「……夢希らしいなぁ……」

 

 ……ワイン吹き出しそうになったよ!ただ……まぁうん。なんていうか、すごーく想像がつく。なんなら、『はぇ……?』みたいな顔で固まってるところまで思い浮かぶ。

 当時の光景を思い出したのか、彩音さんの眉間にシワが寄った。

 

「結構ムカついたよね……」

「だろうね!」

 

 ボクだったら、一発蹴り入れてるよ。いや、ボクの場合そもそも助けに行かないと思うけども。ダンジョン内で死ぬなんて当たり前のことだしね。目の前ならともかく、そうじゃないならあんまり気にしない。いちいち気にしてたらメンタル病むぜマジで。

 

「それで、まぁ、無事だし良かったなって思ったら、安心したのかお腹空いちゃって……夢希ちゃんにカレーをもらったんだけど……」

「それ絶対普通のカレーじゃないでしょ」

「食べたあとで砂ウツボのカレーだって言われて固まっちゃったよね」

「ぶん殴っていい!ボクが許す!なんならボクが殴るよ!」

 

 おま、おまえ!説明せずに食わせてんじゃねえよ!!しかも初対面だし、なんならお前のこと心配してくれて駆け下りて来てくれた人だぞ!?

 あまりの暴挙に、ボクが拳を振り上げると、彩音さんが苦笑しながら話を続けた。

 

「夢希ちゃんには土下座して謝られたよ。それに、わざとじゃないっていうのもすぐわかったし。ほら、夢希ちゃんって表情はあんまり変わんないけど、分かりやすいじゃない?」

「おん……確かに分かりやすいねぇ……」

「それに、カレーが美味しかったから、いいかなって」

 

 えぇ……彩音さんもちょっとズレてるー……いや、怒れよ。多分ハルバードでフルスイングするくらいは許されるレベルだよ?少なくともボクなら、全力パンチくらいはするよ?

 まぁ、本人がいいって言うなら、ボクが掘り返すことでもないよね。その権利もないし。彩音さんとは家族でもないんだから。

 

「おん……え、砂ウツボって美味いの?」

「とっても美味しかったよ。おかわりしたくらいには」

「わぁお……」

 

 よほど美味しかったのか、彩音さんがにっこにこだ。というかおかわりしたって、この前の時も思ったけど、結構食べるよな彩音さんって……お腹ほっそいのに……胸か?胸にいってんのか?

 

「で、まぁ、その後色々あってパーティ組んだんだよね」

「その色々にめっちゃ詰まってそう」

「…………………うん」

 

 からかい混じりに言ったら、彩音さんの顔から表情がストンと抜け落ちた。声も、信じられないくらいひっくい声がした。今のホントに彩音さんから出た声?こっわいよ!!ホラー映画か!?

 多分、これが淳平が言ってた吐き出させて欲しい愚痴の部分だと思うけど、今話させるのはやめよう。もうちょっと酔わせてからにしたほうが多分いい。そんな匂いがする。飲みニケーションの経験則的に。

 

「わかった、聞かないから、飲もう!飲んで忘れよう!ね!」

「そうする……あ、こっちのやつも美味しい。ベリー系のやつ」

「おん。それはよかった……」

 

 よし、軌道修正出来た!うんうん。やっぱり、彩音さんは笑ってた方が似合うね。ちょっとぎこちないけど。マジでなんかあったんだな……

 にしても……普段表情豊かな人から、表情が抜け落ちる瞬間ってあんなに怖いんだ……知りたくない事知ったわ……

 

「鬼灯ちゃんは夢希ちゃんとはどこで?」

「おん?あー、魔女の大鍋(コルドロン)

「え、そうなの?」

「おん。ユニークスキルの解析してるときにね」

「あ、なるほど……」

 

 いや、懐かしいなぁ……あれ?なんだろう。思い返したら、白石さんのことしか思い出せないぞ……?あの人暴れすぎだろ。もうひたすら、『素晴らしい!』と『ロマンだ!』を連呼してる白石さんしか思い出せねぇ……夢希にめちゃくちゃやらせようとするのを必死に止めてた記憶しかないぞ……?

 

「ボクも夢希も、同じ人が担当してくれてたんだけど……どうやって解析してたとか何も覚えてねぇや」

「え、なんで……?」

「その人……白石さんっていうんだけど、その人が夢希のスキルに大興奮で、もう暴走しまくってた記憶しかない。『素晴らしい!ロマンだ!』って」

「あぁ……あの人ね……」

 

 彩音さんが、あぁあの人か。みたいな顔になった。あの人出不精なんだけど、彩音さんあったことあるのか……?

 

「おん?会ったことあるの?」

「前に一度ね。その時も、他の人のスキルを見て、『素晴らしい!ロマンだ!』って大興奮してた」

「相変わらずなのね……」

 

 あぁ、うん。絶対に白石さんだわそれ。多分、夢希経由かな。なんていうか、あの2人は若干波長が合うというかなんというか……年の離れた姉妹に見えるときがあるんだよなぁ……本人たちに言ったら、白石さんはともかく夢希は否定しそうだけど。絶対にアイツは魔女の大鍋(コルドロン)の素質があると思うよ。

 

「でも、ホントに夢希ちゃんのスキルってすごいよね」

「魔法だったら何でも覚えられるのはすげぇよなぁ……」

 

 あれはマジで反則だと思う。いや、ボクのスキルも大概だけど。デメリットがーなんて話もあるけど、そもそも食べられない物があるなんて、大抵の人がそうじゃね?って話だし。そんなのの代わりに他の人より遥かに身体能力が強化されるんだぜ?なんならここに、《身体強化(ストレングス)》まで載せられるんだぜ?

 

「ホントすごいよね……でも、少し安心したんだ……」

「おん?」

「夢希ちゃんは未成年で、私よりも冒険者歴が短いのにずっと先にいて、でもそんなスキルがあったなら、そりゃそうだよねって……」

「……」

「ソロの戦い方が出来てないって、夢希ちゃんに指導されてるんだけど、やっぱり全然違うなって……鬼灯ちゃんだってそう。やっぱり違うんだなって……」

 

 彩音さんが暗い表情でワイングラスを見ながら呟く。あー……前に淳平も似たようなこと言ってたなぁ……ボクの方がずっと前にいるって。自分よりもスタートが遅いはずなのにって。あの時はバカ言ってんじゃねぇよって殴り飛ばしちゃったけど。

 もしかして、これこそが淳平の言ってたことか?自分も思ってたことだから?なんかそんな気がしてきたなぁ……

 まったくどいつもこいつもさぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ワインを一気飲みする。ちょっと落ち着いたけど、やっぱり大分ムカついてる。夢希なら優しく指摘するのかもしれないけど、ボクはそんな事できない。怒りのままに彩音さんを睨みつける。

 

「あのさ、ボクたちのことナメてんの?」

「……え!?いやそんなつもりは……!」

 

 彩音さんが驚いた顔をしながら手をブンブン振り回す。その反応も淳平がやってたなぁ……

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()人間と、ボクたちのスタートラインが同じなわけがあるもんか。ボクたちは、産まれたときからその環境の中にいるんだぜ?

 望めば、現役の冒険者から手解きが受けられる。武器だって何でも手に入る。どんな知識もそこにある。ちょっと考えれば分かりそうなものなのに、歴が短いのに先にいるだのスキルがすごいだの……あぁ、ムカつく。

 

「根本的に間違ってんだよ。確かに、冒険者としての歴で見るなら、ボクたちの方が短いよ。14歳からしか登録出来ないんだから。でも、例えば武器の振り方。ダンジョン内での動き方。モンスターの習性や特徴。そんなもんは全部、子供の時から叩き込んでんだよ。それこそ、ボクは5歳から刀振ってんだ。冒険者学校で習うまでまっさらだったお前が、なんでボクたちと対等になれると思ってんだ。ボクたちの10年以上とお前の5年が同じなわけないだろ」

「…………」

「これが、ボクたちを、夢希をナメてるんじゃなかったらなんなんだよ」

「…………」

 

 ボクは一気にまくし立てた。彩音さんは固まったまま動かない。淳平に言われた時よりも頭にきている。多分、彩音さんが夢希について言ったからだと思う。正直、この前まで仲が良いなんて思ってなかったけど、それでもずっとアイツを見てきたのは事実だ。だから頭にきた。

 夢希が、アイツが、どれだけ努力してきたと思ってる。母親が死んだって、父親が腕を失ったって、決して歩みを止めなかったアイツをバカにするんじゃねぇ。ユニークスキルがすごい?確かにそうだな。ボクもちょっと羨ましくなるくらいの性能してるよ。それは認める。

 でも、それだけだ。それだけなんだよ。アイツの魔法の技術は全部自前なんだ。魔法の同時使用も、とんでもない制御技術も、正確で広範囲な索敵も、全部あいつの努力の結果だ。()()()()()()()()()()()()()()()。才能があったのは事実でも、あそこまで練り上げたのはアイツ自身なんだよ。

 口が乾燥してるので、ワインを飲むのを再開する。言いたいことは言ったし、これ以上は言い過ぎちゃう気がする。いや、もう言い過ぎてるか?ともかく、彩音さんの反応を待つことにする……淳平の時は、殴り飛ばしちゃったせいですげぇ怒られたんだよな……

 

「そっ、か……そう、だね……」

 

 ボクのワインが全部なくなって、ようやく彩音さんが小さく溢した。下を向いてるから表情は分からないけど、声は暗い。

 

「そうだよね……夢希ちゃんが、スキルだけで強くなって、努力してないなんてあり得ないよね」

「……そりゃね」

「鬼灯ちゃんも、ごめんなさい。気付かせてくれてありがとう」

「おん」

 

 許してやろう。ボクは優しいので。あとでちょっとやり返すけど。彩音さんが顔を上げて、ボクの目を真っ直ぐ見る。

 

「私、もっと頑張るよ……!」

「………………」

「……なにその顔……?」

 

 彩音さんがちょっとムッとした顔になる。なんか……すげぇ微妙な顔しちゃった。でも、理由があるから許して欲しい。

 

「いや、その……淳平とも同じような会話したんだけど……」

「小糸くんと?」

「おん。で、彩音さんと同じく頑張るって言って……」

「うん」

「……無茶して死にかけたなぁ……って……」

「…………」

 

 あ、彩音さんが目を逸らした。無茶するつもりだったな……?ダメだぞ。死にに行ったら意味ねぇんだからな。命は大事にしないと。ただ、賭ける時は全部賭けるべきなだけで。

 

「命を大事にして下さい。無茶せずに」

「…………はい」

 

 彩音さんが気まずそうに返事する。頼むぜマジで。夢希が悲しむからな。

 その後、ボクは彩音さんにゲームを持ちかけた。ボクがぶっ壊した空気をどうにかしたいっていうのと、ちょっとさっきのやり返しがしたいからね。

 

「彩音さん、ちょっとゲームしようぜ?」

「……ゲーム?」

「おん。お互い交互に質問するだけ。質問の内容によって、答えるかどうかを選ぶ。で、質問に答えたなら相手が酒を飲む。答えたくないなら、自分が飲む。で、マジでもう飲むの無理!ってなったら終わり」

 

 まー、単純に、潰れるまで飲もうぜ?ってだけである。もう、変な空気になるくらいなら、こういうゲームでもした方がいい。飲み会の終わり方があんまりにも空気悪いのはちょっとあれだしな。

 それに、このルールだとボクが負ける要素ねぇし。

 

「いいよ。どっちから?」

「おん?彩音さんからどうぞ」

 

 お、即答で受けてくれるとは。いいね。

 

「じゃあ……鬼灯ちゃんの好きな食べ物は?」

「肉」

「も、もうちょっと具体的に……」

「……ハンバーグ」

「ハンバーグ好きなんだ……えっと、私が飲むんだよね」

「おん」

 

 好きなんだよね、ハンバーグ。なんでかは、まぁ、お母さんがよく作ってくれたってだけだよ。

 グラスのワインを彩音さんがあおる。そんな一気にいかんでもいいのに……というか、1杯飲む必要はないんだぞこのゲーム……

 

「……ふぅ。グラス1杯飲むちょっとキツいかも……」

「1杯飲まなくていいんだよ?1口でいいんだからね?」

「え!?」

「まぁ、次からってことで。ボクは1杯飲むけど。じゃあボクからも、質問ね」

「うん」

「好きな食べ物は?」

 

 大抵、ボクは同じ質問をオウム返しすることにしている。相手のこと分かりやすいし。

 

「うーん……カレーと唐揚げとカツ丼」

「見事に茶色!」

「ふふ。さあ、鬼灯ちゃんもどうぞ」

「おん」

 

 なんも気にせず1杯飲む。うん。美味い。最初っからこうしておけば良かったかもなぁ……変に会話しようとしてミスったなぁ……空気ぶっ壊しちゃったし……

 

 

 

 しばらくお互いに質問をしあいながら、お酒を飲み、彩音さんに結構酔いが回った頃になって、ボクは気になっていたことを質問した。

 

「夢希とパーティ組むまで色々ってどんなの?」

「あぁ……えっとね――」

 

 その後の彩音さんからの返答を聞いて、ボクは聞いたことを後悔した。なんだそのふざけた話はよぉ!めっちゃくちゃじゃねぇか!!いい気分が吹き飛んだが???

 その後、お酒でタガが外れたらしく、ゲームをそっちのけで延々とその辺りの愚痴を垂れ流す彩音さんの話を聞いていたんだけど、あんまりにもな話だったので、全部聞かなかったことにすることにした。誰かに聞かせらんねぇよ……

 ただ、やっぱり淳平の言ってた吐き出させたい愚痴ってこっちが正解だったみたいだな……やらかした……

 




次回は主人公視点に戻ります。

追記:終盤を加筆&修正しました
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