【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
感想、誤字報告ありがとうございます。
次はグリーンスライムなので、中層まで行く。イエロースライムもいるが、こちらは今日は放置の方向で。
浅草ダンジョンは結構珍しいタイプのダンジョンで、一層ごとに濃度が上がる。そのため下層まであるにもかかわらず、三層しかないのだ。そこまで広くもないため、移動自体は非常に楽だ。ここにいるスライムたちは、魔力の威圧が効かないため結構めんどくさい。彼らは魔力ではない何かを感知しているようなんだけど、それを司っているであろう核の研究ができないため、まったく判明していない。多分熱か振動を感知しているんじゃないか?とは思っているんだけど、結局は推測の域をでない。人間以外の動物にも反応するって聞いたから、その辺だとは思うんだけどな……
感知自体は容易だけど、小さいし数も結構多い。そしてこんな時にやることは一つ。そう、浮遊魔法で飛ぶことだね。上から見ると、結構見えるんだよねブルースライムって。草の間に青いぷにぷにしたものがたくさんいる。グリーンスライムだと見にくいんだけども。空を飛べるってかなりの強みなのに、あんまり使ってる人を見ないんだよね。
「なんでこんなに便利な魔法をみんな使わないんだろうなぁ……」
"上取れるのは便利だけど、制御がね…”
"そんなに制御難しいん?”
"まず浮くだけで結構キツイ。無重力状態みたいになるから、姿勢が安定しない”
"できたと思って、そのままひっくり返って頭打つとかよくある話よ”
「私もよくやったよ。安定して浮けるようになった後に、今度は移動速度の調整に失敗して壁や天井に突っ込んだ」
"うわぁ、マジか…想像以上にキツそう”
"いったそー”
"怪我とかせんかったん?”
「もちろんしたよ。何度治療してもらったか覚えてないくらいには。でも、練習ってそんなもんじゃない?」
"そこまでして練習を…”
"そりゃ、こんだけ自由自在になるわ…”
"そこまでしない人が大半なんですよ”
あれは痛かったな……全身打ち身だらけになったし、何度か骨も折った。それが今ではこうなんだから、練習って大事だよ。ちなみに、練習は『魔女の大鍋』でやったので、ケガした直後に治療してもらった。あそこ、発明品でケガする人が多いから、ヒーラー多いんだよな……
ちなみに、ゲームみたいなポーションもあるけれど、制作費用が結構高いため、値段も高く、今のところまだ気軽に使えないのでヒーラーの需要はとても高い。1人いるだけで安定性全然違うしね。あ、あとでこの粉と冷凍したスライム、研究用として『魔女の大鍋』に届けようかな。何かに使えるかもしれないし。
こう考えると、モンスターの内臓とかも持ち帰ってみるべきか……?ちょっと相談してみようかな。
ちょっとリスナーと雑談していたら、中層へ到達。ここからはグリーンスライムを探していく。ここでも、浮遊魔法は継続だ。
生い茂る草のせいで、グリーンスライムが本当に見えにくいんだよね。探知したあとにそこを見ても、一瞬あれ?ってなるくらいには見にくい。そのため、奇襲対策として空中にいることにしている。最終手段として、草原全部を焼き払うなんて手もあるけれど、本当に最終手段だ。スライムが大量発生したときくらいにしかやらない。
とりあえず、一匹だけいるグリーンスライムを発見したので、《グラビティ》で先手を取り、そのまま鉄串で核を破壊し《フリーズコフィン》で冷凍する。慣れてきたね、この動き。
「よし、確保」
"流れるようにやるじゃん”
"めっちゃ慣れてて草”
"見た目が完全に刺身コンニャクだな…”
うーん、この切ってない塊の刺身コンニャクみたいな透明感ある緑……形を整えてゼリーみたいにしたら、本当にメロンゼリーと間違える人が出そうだな……よし、切ろう。
グリーンスライムは、麻痺毒を持っているスライムで、内部の液体に麻痺毒が溶け込んでいる。それを吐き出したりはしてこないものの、体当たりついでに皮膚から浸透させて獲物の動きを止める。同系色の体色で隠れているため見つけにくく、奇襲されると麻痺毒で動けなくなり、そのまま食われる。この浅草ダンジョン内で危険性ナンバーワンとまで言われるモンスターである。
なお、イエロースライムはブルースライムの単純強化版って感じなので、ブルースライムとほぼ同じくらいの脅威度判定されている。
レッドスライムとパープルスライムは、見た目のせいで見つけやすいため、対処はしやすいものの、遠距離攻撃を平然とやってくるので注意が必要なモンスターである。それぞれ火炎放射と毒液噴射をしてくるため、集団で来られると結構大変だ。特に火炎放射で目眩ましをされた直後に、毒液で弾幕を張られると洒落にならない。毒そのものはそこまで強烈ではないけれど、スライムの溶解液に毒を混ぜて発射している感じなので、防御ではなく回避することが大事だ。
……やっぱり、これだけ多種多様で強いのに、なんでゲームであんなに雑魚敵扱いなのが納得いかない。どうしてだ……?調べても分からなかったし……そうだ、聞いてみようかな。
「あのさ、リスナーさんたちって、ゲームのスライムがなんで雑魚敵なのか知ってる?」
"なんでかは知らんけど、あのゲームの影響はでかい”
"昔のゲームで雑魚敵として出てきた結果、定着した感じだな”
"大元は小説に出てくる結構強めなモンスターみたいなんだけどな”
"多分、なんでかは開発者に話を聞くしかなさそう”
そうなんだ……割とみんなして知らない感じなのか。となると、もうこれは分からないかなぁ……うーん、納得いかないけど、しょうがないか。
でも、私はあのスライムのデザインは可愛らしくて好きだよ。強さが納得いかないだけで。
さて、グリーンスライムもスライスし終わったし、見た目重視で酢味噌で食べよう。
「よし……うん。完全に刺身コンニャクだね。いただきます」
"マジで刺身コンニャクで草”
"見た目完璧”
"というか、麻痺毒大丈夫なん!?”
ふむ……あー、口の中が痺れる〜。食感に変化は特になし。舌の上でパチパチするとかもないね。あ、なんか味がするけど、これ多分スライムの味じゃなくて、麻痺毒の味だな。へー、こんな感じなんだ。意外と苦くなくてアクセントになる感じなんだな……柚子皮みたいな?……違う気がしてきた……
「あー、口の中が痺れるけど、ちょっとだけ苦味があって、それが良い感じ」
"それ、麻痺毒では?”
"麻痺毒ヤバくない?”
"大丈夫なの?”
「《麻痺耐性》の熟練度高いから、ちょっと痺れるだけだよ。中華料理の麻の感じ。そのうち、カンストしたらこの感覚も味わえないのかな……」
"そんなレベルまで抑えられるんだwww”
"むしろ、そこの心配するんかい”
"麻痺無効を惜しむ人なんているんだ…”
実際あれが一番近い。辛味のない麻である。ここまで耐性スキル上げるのが大変だったけどね。慣らしたかいがあるというもの。ただ、カンストしたあとがどうなるかは不安だな……この感覚も何もなく、ただの苦味としてしか味わえなくなったら、悲しい。
よし、次は黒蜜……あー、これはちょっと微妙かも。黒蜜と苦味が合わない感じだ。
「うーん、これは甘いもので食べるのが難しいかもしれない。変に苦いや」
"あれま”
"苦味はキツかったか”
"となると、酢味噌が一番?”
「そうだね、酢味噌はよく合うよ。苦味を抑えるのは塩味らしいから、それもあると思う」
味の補完関係みたいなものがあるようで、例えばだけどスイカに塩を振るのは甘さを際立たせるため。みたいな感じのやつである。味を際立たせるのではなく、抑える関係性も当然あるということだ。
とりあえず、冷凍品は堪能したので、次に粉にしよう。もう一匹捕まえて、《ファイアスロワー》で炙る。うん。今度本当に白石さんにお願いして、ドライヤー作ってもらおう。魔力式のやつ。色々使えそうだし。
ブルースライムの時と同じように、しばらく炙り続けると、粉になった。こっちは薄緑の粉である。あ、ドロップアイテム出てきた。
スライムたちのドロップアイテムは全員共通していて、なんというか……スーパーボールみたいな弾力のある玉である。スラ玉と呼ばれている。色がランダムらしく、ブルースライムから赤いスラ玉が落ちたりする。とりあえず、今は関係ないから放置で。
「えっと、この粉は……にっが!?めっちゃ苦い!!」
指に少し付着させてペロッとなめたら、あまりの苦さにのたうち回る羽目になった。なにこれにっがい!!く、口の中がぁ!?水で洗い流して、なんとか事なきを得た。うぐぐ……それに、若干麻痺してる感覚もあるので、多分麻痺毒の粉?みたいな感じなのかもしれない。多分危険物だなこれ。
"苦いってことは麻痺毒の塊みたいな……?”
"成分解析とか出来そう”
"割と大発見では?”
お、そうか。確かに。ここまで完璧な状態で保存ができるなら、麻痺毒の研究が進むかもしれない。とりあえず、これは食べたくないので、粉は全部試験管に入れて、念入りに封をする。今度『魔女の大鍋』に持っていこう。
今日は……ちょっと早いけどこれくらいにしておこうかな。なんていうか、スライムはお腹に溜まらないから、どっかでご飯を食べたいところだ。サイズ自体はそれなりなんだけど、やっぱり液体なのか、こう……カロリーが足りない感じなんだよね。
"そういやさ、スラ玉ってなんかに使えんの?”
"スラ玉はスーパーボールとして遊ぶくらいじゃない?”
"ゴムの方が性能いいって話だったよな”
"《錬金》で圧縮したらどうなんの?”
"知らんけど、ゴムになるだけじゃない?”
「《錬金》でスラ玉を圧縮……やってみようか。時間あるし」
楽しそうだし、やってみよう。時間もあるし、今日はこれで最後にしよう!
「というわけで、この50個のスラ玉を煮詰めて圧縮するよ」
中層を飛び回ってスライムを殲滅し、スラ玉を回収してきた私は、中層の小部屋に《魔力障壁》を貼って錬金の準備を整えていた。
《魔力障壁》を貼った理由は、外敵対策というより、出来たものが危なかった時の念の為だ。他の人に被害が出る可能性もあるしね。結界石の結界だと、内側からだと色んなものを素通りしてしまうので、周りの安全という点ならこちらのほうがいい。
"行動が早すぎる”
"色とりどりのスラ玉だー”
"スーパーボールすくいの屋台でしょこれ”
錬金用の大鍋に色とりどりのスラ玉を浮かべ、火にかけることで圧縮する。1個にまとめてしまおう。
30分ほどで圧縮は完了。1個にまとめてみた。見た目は真っ黒である。まぁ、アレだけ色んな色混ぜたらそうなるか……
「とりあえず、圧縮完了……うーん、触った感じは特に変化は感じないけど……」
"真っ黒になった…”
"黒いスーパーボール?”
"何が圧縮されたんだろ?”
うーん……ともかく、このスラ玉がスーパーボールみたいに跳ねるのか試してみるか。肩の高さから下に落として……あいたっ!?
「ふごっ!?」
跳ね返ったスラ玉が私の額にぶち当たった。いや、なんだこれ何が起きてる!?なんだか、すごい音とともに、《魔力障壁》で出来た結界の中を飛び回っている。ちょ、これヤバ、いったー!今度は脚に当たった!ど、どうにか止めないと……!
"なんかヤバいことになってないか!?”
"すごい音してるぞ!”
"ユキちゃん大丈夫!?”
い、いやでもこれどうすれば!?さっきから、耳元を高速で通過していく音が怖いんだけど!ど、どうしよう本当に……あっ!
ゴスッ!という鈍い音とともに、私の鳩尾にスラ玉が直撃した。
「おぐぇっ!?」
痛いなんてものじゃないけど、捕まえたぞ……!力を振り絞って、とりあえず鍋の中に再度投入。流石に水の中なら跳ね回るまい……!
鍋に入れたあと、あまりの痛さにしばらく動けそうになかった。なんなんだこの威力……!
"大丈夫か!?”
"何が起きたんやマジで”
"マジで大丈夫?”
「な、なんとか平気……とりあえず、効果を消去するために《錬金》使うね……」
周りを確認する。壊れたものはなさそうだけど、鍋がちょっと凹んでる……にしても、スマホやカメラが壊れなくて良かった。そんなことが起きたら周りに何を言われるか……考えたくもない。
「と、とりあえず、もう帰ります……お疲れ様でした……」
"お、おつー”
"お大事に!”
"気をつけてね!”
ともかく配信を切ってしまう。変に心配されるのも嫌だし。色んなところが痛いよ……
にしても、何が起きたんだろう……?どういう原理であんな訳の分からない挙動を……?
その後しばらく経ってから、私はお腹をさすりながらダンジョンから出た。この前とはさすっている理由が違いすぎるよ……
反発係数1以上のスーパーボールってこんな感じだそうです。跳ねるたびに加速していくとか。