【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

新年早々体調不良でダウンしておりました。

みなさんも体調にお気をつけください。私は、身体が冷えたことによるダメージの蓄積が限界を超えた感じでしたので。


配信に興味のない私と奇跡の使い方

 

 スライムを食べ、スラ玉によってダメージを受けた翌日、私は彩音さんの家に向かっていた。鬼灯曰く、彩音さんの家は、冒険者向けの普通のマンションって感じらしい。

 冒険者向けの家というのは、簡単に言えば頑丈な家だ。何かと力が強い冒険者たちは、色々壊しがちだ。普段はセーブ出来ている人も、咄嗟の時はセーブ出来ないことがある。なので、壁や床が結構頑丈だったり、ドアノブが合金製だったりする。それでも、壊しちゃう時は壊しちゃうけども。私も、何度か家の壁を壊してしまっている。

 あと、装備を管理するのにウォークインクローゼットがもう一箇所あったり、浴室が非常に広かったりする。なので、部屋自体は結構広いし、それに伴って家賃もそれなりなんだけど、冒険者って高給取りだからね。モンスターのドロップアイテムは、一部を除いて結構いい値段になる。上層のモンスターで色んなところにいるゴブリン系とか、スライム系なら落とすスラ玉なんかは安い。

 とりあえず、指定された住所に辿り着いた私は、ロビーのインターホンで部屋番号を押した。こういうところ来たの初めてだな……

 

『はーい』

「あ、彩音さん、夢希です」

『夢希ちゃん!今開けるね!』

 

 目の前のガラス張りドアから鍵が開く音がして、ドアが開く。へー、こんな風に開くんだ……部屋のある3階までエレベーターで移動して、部屋の前に立つ。インターホンを再度鳴らすと、彩音さんが出てきた。お互い冒険に行く前なので、装備を身に着けている。

 

「おはよう、夢希ちゃん。いらっしゃい!」

「おはよう彩音さん。お邪魔します」

「その、昨日はごめんね?」

「ううん。大丈夫。彩音さんこそ大丈夫?」

「私はもう大丈夫!」

 

 彩音さんの部屋のリビングに通された第一印象としては、シックな部屋って感じだった。白と黒のモノトーンがメインで、造花の花瓶が良い感じの差し色だ。本人が結構華やかな見た目をしているので、ちょっと意外だった。椅子とテーブルがあるので、床に座る感じじゃない。

 私の部屋は床に座る感じだ。机がこたつ机だからね。冬はそこでぬくぬくしながら過ごすのがいいのだ。 

 呼ばれた理由としては、今日の打ち合わせ兼彩音さんが奇跡を使えるようになったとのことだった。昨日のスラ玉のダメージ回復をしてくれるらしい。痛みはほぼないけど、アザがくっきり残っていて、昨日お風呂で笑ってしまった。

 ダンジョン内とかその付近でやらないのは、アザの場所が場所だからだ。流石に人目に付きそうなところでお腹を見せびらかしたくないし。彩音さんの家のほうがダンジョンに近かったのだ。

 

「《祝福の施し》!」

「本当に使えてる……!」

「ふふ、練習したんだ!」

 

 《祝福の施し》は低級の回復奇跡で、軽い怪我を治すのに使われる。骨折とかは治せないけど、打ち身、擦り傷、切り傷辺りなら大抵治せる。

 くっきり残っていたアザが綺麗になくなった。痛みも消えたし、本当にちゃんと使えている。いいなぁ……

 

「いつから?」

「実は、冒険者学校時代からなの」

「ということは……5年?」

「そう!ちゃんと、《破魔の祈り》も使えるようになったの!」

 

 おお、《破魔の祈り》もなんだ。スゴイな……《破魔の祈り》は、状態異常の回復が出来る奇跡だ。毒やら麻痺やらは大抵何とでもなる。あと地味に風邪や食中毒なんかにも効果があるらしい。下層や深層の毒に特化したモンスターでもない限りは、大抵何とでもなる感じだ。

 《祝福の施し》と《破魔の祈り》の2つが、奇跡の初級というか、基本になるものだ。そこから先が長いらしいけど、一つも使えない私にはあまり関係がない。ちなみに、攻撃用の奇跡もあるらしいけど、見たことはない。使える人が少ないんだとか。なので、もっぱらヒーラーはそれ専門の人が多い。彩音さんは大分希少なタイプだね。

 

「私は使えないから、本当にありがたいよ」

「夢希ちゃんが使えないの意外なんだけど、理由はあるの?」

「それが、よく分かんないんだよね」

「……どういうこと?」

「なんかね、魔力は流れるのに発動しないんだよね……教えてくれた人には、『理解できていないから』って言われたんだけど、よく分かんない」

「理解できて……あー……んー……」

「何か心当たりでも……?」

 

 私が使えない理由がよく分からないという話の途中で、彩音さんが変な声を出した。どうしたんだろうか?心当たりでもあるのかな?聞いてみると彩音さんがなんだかすごく言いにくそうな顔をしている。なんだろう?

 

「その、私も昨日なんとなく分かったんだけど、本気で祈る感じなんだよね」

「本気で祈る……」

「そう。本気で祈るの」

 

 本気で祈る……か。うーん……ダンジョン内で死にかけた時とか、尊厳がなくなりかけた時とかに、本気で祈ってた気がするんだけどなぁ……そういえば、彩音さんは何を祈ったんだろう?

 

「彩音さんは何を祈ったの?」

「…………二日酔いの苦しみから解放してくださいって……」

「…………そんなに苦しいんだ二日酔いって……」

「地獄だった……頭は痛いし気持ち悪いし何度も吐いたし…」

 

 彩音が遠い目をしている。私は絶対に、お酒を飲める年齢になっても、量を飲まないようにしようと決意を新たにした。大体、その症状ほぼ食中毒なんだよ!下痢がないだけで!

 

「それで、鬼灯ちゃんが《破魔の祈り》は二日酔いにも効果があるって言ってたから、もうホントに、失敗したら死ぬくらいのつもりで本気で祈ったら使えるようになったの……」

「な、なるほどね……」

 

 二日酔いにも効果あるんだ……結構範囲広くない?状態異常ではあると思うけど。でも、となると私は何で使えないんだ……?食中毒に効果があるのは知ってたから、その理屈だと使えてもおかしくなさそうなんだけどな。あの時は本気で祈ったぞ……?

 

「でも、その理屈なら、食中毒の時に使えるようになりそうなんだけどな、私も……」

「発動しないの?」

「そう。魔力は流れるんだけど、発動しない」

 

 2人してうーん……と考え込んでしまったのち、彩音さんがこんなことを口にした。

 

「もしかして、ユニークスキルのデメリットだったりしない?」

「魔法だったら覚えられる代わりに奇跡を使えないってこと?」

「ありそうじゃない?魔法なら何でも使えるんでしょ?」

「……確かにありそう……」

 

 確かにありえるかもしれない。これだけ長期間練習して使えないのなら、そのデメリットがあってもおかしくない。そもそも、魔法が何でも使える時点で大分アレなスキルだし、それくらいのデメリットはありそうだ。身体的に異常が発生するわけでもないから、気づきにくいし。

 なんだか意外な形で私のスキルのデメリットを知ったけれど、結構スッキリした。奇跡が使えないことがちょっと気になっていたけれど、デメリットならしょうがないもんね。

 スッキリしたところで、今日の打ち合わせをやろう。いつまでも部屋にお邪魔してるわけにもいかない。

 

「彩音さんは何かしたいことってないの?」

「私?」

「うん。普段私のしたいことに付き合ってもらってるし……」

 

 普段は本当に私のしたいようにやらせてもらっているし、彩音さんも何かしたいこととかないだろうか?振り回してる自覚もあるし……

 彩音さんは、しばらく考え込んでから口を開いた。

 

「私は……魔法の練習かな」

「魔法の?」

「うん。《ガイアウェポン》の練習」

「《ガイアウェポン》を使ってるの見たことないかも」

 

 《ガイアウェポン》は、武器に岩を纏わせる魔法で、純粋に重量とサイズを加算されるので威力が上がる。付与魔法の中では結構特殊な方で、発動後に維持する必要がない。纏わせるまでが魔法で、纏わせたあとは勝手にそのままになる感じだ。うまく纏わせないと、維持できずにバラバラになるので、そこは注意が必要だけど。

 彩音さんの場合は、岩で巨大な斧型にしてしまえば、《スマッシュエッジ》も《地砕き》も出来ていい感じだと思う。《地砕き》は岩が砕ける可能性はあるけど、それだけの威力が出せるわけだし。ただ、《身体強化》必須だな多分。重いし。

 

「奇跡の練習ばっかりでこっちの練習全然してなくて……」

「どうして?」

「発動までに時間がかかっちゃって、戦闘中に使える気がしなかったから。でも、最低限使えるようにしておきたいなって」

「……そんなに時間かかる魔法だっけ?」

「タメがいるんだよねあの魔法……」

 

 確かに、タメはいるかもしれないなあの魔法……タメというか、形成するのに集中する必要がある感じ。バラバラにならないようにしないといけないしね。

 でも、そういうことならいくらでも付き合おう。私も使えるから、見本ならいくらでも見せられるし。

 

「その練習もするとして。もし他にないなら、渋谷ダンジョンでダンジョンブーブーを食べたい」

「またダンジョンブーブーを?」

 

 彩音さんが怪訝な顔をする。確かに、彩音さんと出会ってから、同じモンスターを食べたことはないしね。でも、私は前回のトンカツが美味しくなかったのが悔しくてたまらないのだ。それに、彩音さんにも知ってほしい。あいつの美味しさを。

 

「うん。この前があんまり美味しくなかったから、リベンジしたい。今度はちゃんと対策を練って来た。あと、彩音さんにあいつの鍋を食べて欲しい。美味しいから」

「鍋?」

「そう、鍋。ちゃんと下処理をして、味噌味の鍋にすると本当に美味しいんだ」

「そうなんだ……楽しみにしてるね!」

 

 彩音さんがにこにこしているのを見ていると、こっちも元気になるなぁ……私が笑おうとすると、こう……ぎぎぎって異音が出そうな顔になるし。愛依や凉曰く、たまに笑ってるらしいんだけど、自分じゃわからないからなぁ……

 

「うん。楽しみにしててね。予定としては、午前中はソロの練習、お昼にリベンジして、午後は下処理をしながら魔法の練習って感じになるかな」

「分かった。頑張るよ!」

 

 なんだか、普段よりも気合が入っているというか、なんというか……?あー、昨日の電話で言ってたやつかな?

 

「……なんか気合入ってるね?」

「うん。鬼灯ちゃんや夢希ちゃんに負けてられないからね。出来ることからやっていこうって思って」

 

 彩音さんの目に炎が見えた気がした。ものすごく気合が入ってる。無理しないようにだけちょっと言っておこう。こういうときってやらかすんだよね。私も……うん。

 

「そっか……無理しないようにね?」

「ふふ、鬼灯ちゃんにも言われたよそれ。やっぱり仲良いよね、2人って」

「そうなのかなぁ……?」

 

 彩音さんが面白そうにくすくす笑っている。うーん、そうなのかなぁ……?やっぱり、よく分からないんだよね……

 若干疑問は残ったけれど、とりあえず渋谷ダンジョンに向かうことにした。待ってろよダンジョンブーブー。

 

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