【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
唐揚げ的なトンカツという謎の食べ物を美味しく食べたあと、彩音さんの魔法の練習をすることにした。
練習する《ガイアウェポン》という魔法は、岩を固めて武器の形にする魔法である。周辺から岩を持ってくるか、魔力で岩を生成するかで使い方が少し違うものの、基本的には武器に纏わせて巨大化させるように使うため付与魔法に分類される魔法だ。土属性に対して一定以上の適性があると、魔力で岩を形成出来るみたいで、それ以下だと周辺から持ってくるしかないみたいだ。その辺に関しては、どの程度の適性が必要なのか?そもそも適性の計測ってどうやるの?みたいな状態でよくわかっていない。
《ガイアウェポン》は他の付与魔法と違い、形成し終わった後は魔法を維持する必要がないという特徴を持っている。形成するまでが魔法で、そのあとは勝手にその形になっているというわけである。ただ、岩なのでとんでもなく重く、《
彩音さんの場合、《ガイアウェポン》で巨大な斧を作って、《
「《ガイアウェポン》!」
彩音さんが魔法を発動する。ハルバードを覆うように少しずつ岩が形成されていって、二回りくらい大きなハルバードになった。周辺から集める感じじゃないからいつでも使えるけど、そこまで成長するのに数分かかってる。言ってた通りタメがいるって感じだね。結構ゴツゴツしてるな……まさしく岩の武器って感じだ。
"ゲームとかで見るサイズのハルバードだわ”
"重そう……”
"ぎっくり腰とかになりそう”
「こんな感じなんだよね」
「発動自体はスムーズだけど、形成に時間がかかってるね」
「どうしたらいいかな?」
「単純なのは反復練習。あとは……ハルバードである必要ってあるの?」
「……え?」
「いや、斧系のスキル使うためなら、斧でいいんじゃないかなって思って。形もハルバードより単純だから、作りやすいと思うし」
「確かに……普段がこれだから、それに引っ張られちゃった」
「練習するのは、斧でいい?」
「うん、その方が使いやすそうだし!」
「わかった。《ガイアウェポン》」
杖を中心に斧を作成する。見た目は見やすいように。大きさは大きめに。彩音さんは私よりも体格がいいから、それなりの大きさでも振り回せるだろうし。大体3メートルくらいで作りあげ、形成し終わった斧を持ち上げてみる。やっぱり、岩って重いな……これ、私だと振り下ろすだけならともかく、横振りは無理かな。振り抜いたら、武器の重さで逆に私が飛んでいきそうだ。
彩音さんと、形成速度自体はそこまで差はない感じだ。私も慣れてないしね。ただ、私の武器の方が大分スマートな感じになった。彫刻したみたいな感じである。
「これを参考にしてみて。やっぱり、実物をイメージできるって大事だから」
「それでも、一発で成功するんだね……」
「慣れてないだけで、使った事自体はあるよ。それに、そこまで難しい魔法でもないし」
実際、そんなに難しくはないんだよね、この魔法。浮遊魔法の方がじゃじゃ馬で大変である。
「この魔法自体というか、岩を固定するのが大変じゃない?」
「固定……あー、そっか……」
私よりも使った経験が多いはずの彩音さんの形成速度が遅いのは、固定しようとしていたからか。そもそも固定するわけではなく、岩を削り出すみたいなイメージでやると、固定する必要がなくなるんだよね、この魔法。いくつもの岩をくっつける。みたいなイメージだと、バラバラにならないように固定する必要があるんだけどさ。
周辺から持ってくる場合は、このイメージでやるしかないんだけど、魔力を岩に変換できるならその部分は削れる。
「えっとね、1個の岩から削り出す。みたいなイメージでやってるから、そもそも固定してないんだよ」
「え!?そんなこと出来るの!?」
彩音さんから驚愕の声が上がる。確かに、若干裏技感あるよね、この方法。
「いくつかの岩を固めて作るんじゃなくて、大きな岩で武器を覆って、その後好きな形に削り出すみたいなイメージでやると、そもそも岩が1個だから固定しなくていいんだ」
「…………」
「もちろん、周辺から岩を持ってくるならそのイメージは大事だけど、そうじゃないならこっちの方がうまくいくと思うよ」
"目から鱗”
"確かにその方法なら固定しなくていいが……”
"アヤネさんのがゴツゴツしてて、ユキちゃんのスラッとしてんのは、その差なのか”
"いくつかの岩の塊と岩の塊を削ったやつなら、確かに見た目が変わるわな”
「えっとね、イメージしやすいように見せるね……《ガイアウェポン》」
「腕埋もれてるけど大丈夫!?」
「うん。大丈夫。流石に持てないから地面に置くけど」
もう一度発動して、今度は杖を中心に岩の円柱を形成する。腕が埋もれているけど、問題はない。流石に腕ごと固めたりはしないよ。重すぎて持てないけどね流石に。
「《ガイアウェポン》」
そこから再度発動。持ち手の方からゴリゴリと削り取っていく。イメージとしては彫刻だろうか?わざわざ柱から削るやり方に慣れてなくて結構キツいけど、魔法である以上は制御出来る。柄の部分を削り取り、次に刃の部分。なるべく厚さを残して、どちらかといえば、叩き切るような武器にしていく。
形成し終わった巨大な岩の斧を持ち上げる。大体3.5メートルくらいで、刃渡りが1.5メートルくらい。見やすさ重視で巨大に作っちゃったけど、私だとこれくらいが限界である。《
「こんな感じのイメージでやると、1個の岩で作れるから固定する必要がなくて手間が減るんだ」
「…………」
口をポカンと開けたまま彩音さんが動かない。ど、どうしたの……?
「アヤネさーん……?」
「はっ!?ごめん、びっくりして固まってた!」
「そんなに驚く?」
「いや、だってすごいよ今の!ホントに彫刻してるみたいに岩がスルスルーって削れていって、綺麗な斧の形になったんだから!!」
なんだかテンション高く説明してくれる彩音さんだけど、本当にそんなに驚くことかな?いや、見た目は結構キレイに出来たとは思うんだけどさ。
"マジで凄かったわ”
"彫刻速送りって感じだった”
"ぶっちゃけ《錬金》使ってるかとおもったわ”
とりあえず手本は見せられたので、彩音さんに再度挑戦してもらうことに。今までと発動の仕方やイメージの仕方が違うから、結構大変だと思うけど、頑張ってほしい。
彩音さんは、イメージだけでやるのは無理そうとのことで、1回私のように柱を作ってから、斧の形に削り出す。ということをやってみるらしい。結構難しいんだけど、本人がやりたいならやってみたほうがいいだろう。
そして、練習を始めようとしたところで、彩音さんが困惑した表情でこちらを見た。分からないところでもあったかな?
「そういえばなんだけどさ……」
「何?」
「そもそも、最初の岩の柱ってどうやったの?武器じゃないから作れなくない……?」
"言われてみれば……”
"《ガイアウェポン》ってそんな制約あんの?”
"名前の通り、武器しか作れんはず”
"纏わせるのは、そっちのほうが楽&効率がいいからってだけよ”
"え、じゃあどうやったんだ……?”
確かに《ガイアウェポン》は、あくまで岩で武器を作る魔法である。なので、武器以外の形には出来ない。纏わせて使うのが主体になっているのは、単純に芯というか核というかがイメージしやすいようにだ。変なところから作り始めると、手を巻き込んで固めちゃってえらいことになるからね……使い込んでる人は、地面から何本も武器を生やしてそれで戦ったりするらしいけど。
今回の岩の柱は、確かに武器ではない。だが、魔法というのは本人のイメージだとか、思い込みだとかが結構影響する。この魔法はこう!みたいな、一般と違うイメージで発動すると、まったく別の挙動をするのだ。その辺が魔法の面白いところだと思うんだよね。そして、今回の場合は私がこんな解釈で作ったからだ。
「アヤネさん、魔法って結構本人のイメージによるんだ」
「それは聞いたことあるよ。でも、それと今回のこれは違うような……」
「違わないよ。あれは、
「……え?」
「あれは棍棒だから」
「……………えぇ……」
"棍棒www”
"あんな棍棒があってたまるかwww”
"アヤネさんドン引きで草”
彩音さんがドン引きしている。そんなに引くことなくない……?円柱の形した鈍器は、大抵棍棒でしょ。偏見かもしれないけれど。
とりあえず、彩音さんは納得してないようだけど、大きな棍棒を作るように魔法を使うことにしたらしい。でも、大きな岩を作るというのが難しいらしく、両手くらいのサイズの岩をいくつも組み合わせるような形になってしまった。魔力が足りてないわけじゃなさそうだから、ここは反復するしかないね。
「うーん……1個の岩で出来た棍棒っていうのが、そもそもイメージしにくいなぁ……」
「遺跡とかの柱を思い浮かべるといいよ」
「それすると、棍棒ってイメージが崩れちゃうから……」
「あー……」
"それはそう”
"あれはどう見ても柱なのよ”
"というか、イメージで武器かどうかの判定変わるのすげぇな…”
"そのうち釣り竿とか作り始めるんじゃねぇの?”
"ゲームとかにはあるから、いけんじゃね?”
その辺の問題もあるか……そこら辺は、魔法に慣れているか否かが大きいところだよね。イメージ出来るかどうかが大きい魔法というものは、イメージの解釈を自由にすることの練習がいるのだ。円柱型の棍棒なんていうのもそれの結果である。持ち手が両手でも掴めない棍棒なんて、普通あり得ないからね。ただ、魔法を使うときは、もっと自由である方がいいのだ。私のように。
その後も、何度か棍棒を作っていた彩音さんだったけれど、1個の岩で作るというのがクリア出来ずにいた。試行錯誤はしているのか、岩の発生の仕方が毎回違うんだけど、ダメみたいだ。というか、柱というのがイメージの邪魔をしているみたいだ。ちょっと申し訳なくなってきた。
なので、あの柱みたいな感じではなく、普通の棍棒みたいなものを作ることにした。持ち手なんて細くていいしね。どうせ削るから。というわけで、持ち手を一般的な棍棒にして、1メートルくらいの部分から巨大化した感じで作成して、彩音さんの目の前にお手本として置くことにした。
「ありがとう、ユキちゃん!それならイメージ出来そう!」
「なら良かった」
彩音さんも喜んでくれた。嬉しい。これを手本に再挑戦することに。最初はうまくいかず、どうにも不格好になってしまったものの、2度目で大分うまくいった。形はほぼ完璧になったので、あとは一枚岩にするだけだ。
何度も試すことしばらく。ついに、1個の岩で棍棒を作り上げた彩音さんがそこにいた。
「やった……出来た……!」
「やったね、アヤネさん」
"綺麗な棍棒やん”
"完全に1個の岩だ!”
"あとはここから削るだけやな!”
あとは削るだけなんだけど、残念なことにそれは今日はなしだ。理由は単純で、彩音さん自身はちょっとハイになってて気づいてなさそうだけど、彼女が魔力切れ寸前だからである。魔力切れを起こすと、吐き気や頭痛に襲われるのだが、その前段階として、冷汗が出たり指先が震えたりする。額に多量の汗が浮かんでいるし、武器を持ってる手も震えているから、そろそろやめたほうがいいだろう。
ただ、今の彩音さんに言って素直に聞いてくれると思えないので、別の理由を伝えよう。私も昔そうだったしね。何か出来るようになった直後って、本当にアドレナリンで体調不良感じないんだよね……それで何度か気絶したし……
「アヤネさん、ちょっと一旦終わりにしようか」
「え、いや、ここまで出来たんだし!」
「申し訳ないんだけど、そろそろ下処理始めないと夕飯が……」
「え……?うそ、もうこんな時間なの!?」
現在時刻はすでに17時前である。下処理も考えると、流石にそろそろ始めないとマズイ。それに、下処理の途中で多分魔力切れ仕掛けていることにも気づくはずだ。というか、大体13時くらいから始めたから、4時間近くぶっ続けである。集中力スゴイな彩音さん……
「肉の下処理と同時に野菜の下処理もしたいから、アヤネさんにも手伝って欲しいんだ」
「うん。分かった……」
ちょっと残念そうなのが申し訳ないけど、許して欲しい。気絶するまでやると、その後が地獄なんだ……あの時を思い出してテンションが下がってしまったけど、気を取り直して、ダンジョンブーブーで牡丹鍋を作ろう!