【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

48 / 173
感想、お気に入り登録ありがとうございます。


配信に興味のない私と休(めない)日(2)

 

 叔父さんと二人でエントランスから離れ、白石さんの部屋に向かって通路を歩きながら、乱れた髪を手で整える。まったくもう……

 とはいえ、本当に助かった。あのマシンガントークを止めてくれて。

 

「……叔父さんありがとうね、助かったよ」

「たまたま通りがかってよかったぜまったく。あの人は本当に無限にしゃべるからなぁ……」

 

 叔父さんが遠い目をしている……ああ、小川さんって本当に見境ないのか……まぁ、それはそれとして。

 

「これは髪をぐしゃぐしゃにした分ね」

「あ?いってぇ!?」

 

 軽くスネに蹴りを入れさせてもらった。つま先で小突く感じの。流石に髪をぐしゃぐしゃにするのはダメだよ。身内でもね。

 しばらくスネを押さえてケンケンで移動する叔父さんを横目に、先ほど気になったことを聞いてみることにした。

 

「……そういえばさ、あの人って何歳なの?私が初めて会ったときから見た目変わってない気がするんだけど」

「……俺も知らん。何なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」

 

 思わず叔父さんの方を見ると、すさまじく真剣な顔でこちらを見ていた。え、嘘でしょ?叔父さんが入った時って大体30年くらい前では……?

 呆然として叔父さんを見ていると、そのまま、真剣さを声にも乗せてこう告げられた。

 

「あの人は、魔女の大鍋(コルドロン)七不思議のうちの一つだ。触らんほうがいい」

「……そうする……」

 

 七不思議って何?とか、七つで収まるの?とか、聞きたいことはあったけど、その辺には触れずに頷いておくことにした。だって怖いもん。魔女の大鍋(コルドロン)の七不思議だよ?絶対厄ネタしか出てこないって。

 頷いた私に叔父さんが胸をなでおろしているのを見るに、真面目に厄ネタの宝庫なのかもしれない。

 

「で、今日はどうしたんだ?」

「白石さんところで色々とね」

「随分ざっくりだなぁ……たまには、俺のところにも顔出せよなぁ?」

 

 叔父さんは、魔女の大鍋(コルドロン)の魔法研究課の課長をしている。だから、魔法に関してとんでもないスキルを持っている私がいると研究が捗るってことで、私に協力を求めてくるんだけど……

 

「叔父さんのところに行くと一日拘束されるし……」

「それはしょうがないな!」

「えぇ……」

 

 とんでもなく良い笑顔で言い切る叔父さんを見て、ちょっと引く。とはいえ、協力する代わりに私が欲しいなーって言った魔法の開発とかマジックアイテムの作成とかやってもらってるので、そのうち顔を見せようと思う。そのうち、ね。本当に1日拘束されるんだもん……

 私のユニークスキル《ソロモン》が魔法に特化しすぎているから、それ関係で良く呼ばれるんだよね。『魔法系スキルなら全て覚えられるし、使える』の部分で主に。この、『全て』の部分が重要で、より正確に言うなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 ユニークスキルの解析を依頼されて、魔法系スキルっぽい名前なんだけど、そのまま実験すると危ないかもしれないから助けてとかよく言われる。私は、ユニークスキルも使えるけど、基本的にとんでもなく威力が落ちる。例えば『とんでもない威力の爆発が起きる』みたいな魔法が、『ちょっとした爆発が起きる』くらいまで威力になるのだ。しかし、逆に言えばかなり安全にユニークスキルの解析が出来るわけで。

 昔からそれ関係でお手伝いをしていたんだけど、未成年だから報酬渡すわけいかないから、借りという形にしておいて、私からのお願いを優先して聞いてもらうという形になっているというわけだ。ただ、借りの総量がどれくらいなのかが私には分からない。

 何故って?彼らの価値観が一般からズレすぎてるからだよ。例えば、新しく魔法開発したから、スキルとして登録されるか確認してくれって言われて、2個ほど試してその場は解散。後日、ありがとうの言葉と一緒に数万円の高級果物を渡してくるような人たちだよ?魔法の中身見て、試して、記録結晶触るだけだから、数十分とかだよ?それでそんなんが対価扱いされるんだから、本当に分かんないよ……

 白石さんに色々作ってもらっているのも、ここの取引じみたものによるところが大きい。本来なら、オーダーメイドなんて未成年の私が手が出るものじゃないんだけど、魔女の大鍋(コルドロン)全体で私に対する借りがとんでもないらしいので、その一部なんだとか。

 ………………実はこれ、私を魔女の大鍋(コルドロン)に入れるために外堀埋めてるだけだったりするんだろうか……?なんか怖くなってきたな……

 

「そうだ夢希!この前言ってた光を出すだけの魔法なんだが!」

「!どうだった?」

 

 変なところで恐怖を感じつつあった私に、叔父さんがすこぶる楽しそうな顔をして、元気よく声をかけてくる。

 何時ぞや八王子ダンジョンを照らしたいからと光を出す魔法をお願いしたんだけど、その成果が出たみたいだ。

 

「閃光弾みたいに一瞬光を放つようにするのはうまくいった!光量も結構すごくてな、ちゃんとモンスター相手にも通用する感じだ。ただ、お前が一番要望してた固定して光らせるってのがうまくいかなくてな……」

 

 途中から後頭部に手をやりながら、ちょっと落ち込んだような声に変わる。

 それはちょっと残念だな……こう、どこでも生み出せる強力な電球みたいなのが欲しかったんだけど……

 

「そうなの?」

「……光球にすると、光量が減る。結界で覆うようにしたんだが、結界で光を遮っちまうみたいでな。かといって《ファイアボール》みたいにそのものを球状にすると、なんとほぼ光らなくなるんだよ」

「え?なんで……?」

「大元を光を放つ魔法でやろうとしたのが間違いだった感じだな。球状にまとめる過程で光の向きが内側に向いちまった。だから、今は光球そのものを作る魔法を開発中だ。もうちょい待っててくれ」

 

 なるほどね。光を直線で放つ魔法で、光を曲げて球状にしたせいで、光が周りにいかなくなっちゃったのね…………いや、むしろ、光を直線で周りにほぼ拡散させずに放つ魔法の方がすごくない?

 そして、叔父さんのちょっとしたクセというか、叔父さんは基本的に、何を作るのかを言わない人だ。何を作るかを言う時は、99%完成している時である。

 

「…………実は出来てるでしょ?」

「あんな不良品は出来てるって言わねーんだよ!魔力と光の変換効率が他に比べて5%も悪い上に、光じゃなく熱にまで変換してるんだぞ!?2%もだ!こんなん外に出せるか!」

「……」

 

 誤差でしょそれ。という言葉を私は飲み込んだ。いったが最後、叔父さんの魔法に対する情熱を延々と聞く羽目になる。小川さんと同レベルのマシンガントークが始まってしまう。私からすると完成で良くないそれ?って思うんだけど、当人からすると違うらしいんだよね……

 白石さんが『ロマン大好きな技術バカ』なら、叔父さんは『魔法大好きな魔法バカ』である。なお、娘さんも同類である。ブレーキは奥さんだけだ。その奥さんも、たまにどころか頻繁にブレーキ外れちゃうけども。

 魔女の大鍋(コルドロン)はみんなこんな人ばっかりである。そして、この人たちに囲まれて育った私が変人扱いされるのも納得ではある。不服だけど。大いに不服だけども!

 

「えっと、他に開発できた魔法ある?」

「光を出す魔法関係で言うと、さっき言った閃光弾、スタングレネードを参考にして音も出るようにしたやつ、光量減らして持続時間伸ばして懐中電灯にしたやつくらいか。まぁ、どれも既製品の方が性能はいいけどな。あとは副産物で光の向きの変更くらいだな」

 

 指をおって数えつつ叔父さんが教えてくれる。スタングレネードは使えそうだけど、耳栓必須だし、懐中電灯はまぁ……うん。電球の前段階ってことなんだろうな。それともう一個は何に使うんだろう?

 

「光の向きの変更って?」

「あー……ざっくり言うなら光学迷彩とか蜃気楼とかあの辺のことが出来る」

「とんでもない魔法が出来てる……!」

 

 いやなんかすごい魔法出来てない!?そんなこと出来るの!?というか、色々悪用出来そうなやつじゃん!

 

「ま、常時発動させるタイプだから、魔力垂れ流しでバレバレだけどな!」

「……あ、そっか」

 

 叔父さんが、私の懸念を感じ取ったのか明るく笑い飛ばしてくれた。確かに魔力垂れ流しなら、バレバレだね。今の世の中、監視カメラに魔力検知機を付けるのが当たり前になっているから、なおさらである。魔法で色々出来ちゃうしね。

 ちなみに、魔法の発動を隠す魔法は今のところない。魔女の大鍋(コルドロン)の研究の結果として、今のところ不可能という感じなので、多分本当にない。

 ただまぁ……出来ちゃったけど危ないから隠してる可能性は……なくはないかも。

 

「とはいえ、マジックアイテムに出来れば使えそうな魔法だからな。医療方面で開発が進んでる。身体の傷跡を隠すとか、そういう感じでな」

「なるほどね……」

 

 例えば顔の傷を隠すのにメガネに、腕の傷を隠すのにブレスレットに。それぞれ付与してみる計画だ。なんて叔父さんが続ける。

 いや、なんか副産物としてすごい魔法が出来てしまったな……研究なんてそんなもん。と、叔父さんと白石さんに言われた時は納得しにくかったけど、こういうふうに聞くと本当にそんなもんなのかなって思うよね。

 

「にしても、夢希から光出す魔法作ってくれって言われた時はびっくりしたぜ。何に使うのかと思ったらダンジョンを照らしたいとはな!」

「だって、八王子ダンジョンを照らしたら綺麗そうじゃない?」

「それは分かる。出来たら一緒に見に行こうな!」

「うん。行こうね」

 

 私と叔父さんは、良くも悪くも……ちょっと子供っぽいところを全力で出来る悪友みたいな感じである。多分、友達が少ない私を気遣ってくれてるんだと思う。

 幼い私の遊び相手その2だもの。ちなみにその1は白石さん。鬼灯はその3。

 結構色々頼んじゃってるし、遊んでももらってるし……私結構仕事の邪魔をしてるのでは……?

 

「……ねぇ、今更なんだけど、色々頼んじゃって、迷惑じゃない?」

「ははは!迷惑なら断ってるっての!それに、夢希が持って来る話はなんつーか……こう、息抜きに良いんだよ。本当にな」

「……なら良かった」

 

 私の疑問を笑い飛ばしたあと、なんだかすごくホッとしたような顔をしながら叔父さんが呟く。

 昔流行っていた小説には、魔法がある異世界に、家電めいたものを持ち込んで大儲け!みたいな話があったみたいだけど、現実は逆である。大抵のことは家電で出来るので、わざわざ魔法にする意味が薄いんだよね。結果、魔法の研究=戦闘用魔法の研究になっている感じだ。

 確かに、そんな中で戦闘とまったく関係ない魔法の開発をお願いしている私は、息抜きはちょうどいいのかもしれない。

 邪魔になっているわけじゃないんなら、今まで通りでいいかな。ダメだって言われたら、その時に考えよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。