【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私と休(めない)日(3)

 

 叔父さんと雑談しながら白石さんの部屋へ向かっていたのだが、ふと気になった。

 

「ところで、どこまでついてくるつもりなの……?仕事は?」

「仕事は行き詰っちまった……だから、気分転換してんだ……」

「そっかー」

 

 叔父さんからため息とともに吐き出された言葉に納得した。まぁ、研究で行き詰まることもあるだろうし、気分転換は大事だよね。というか、普通こうだよね?仕事は別にやんなくてもいいし。みたいな白石さんがおかしいんだよね?

 それに、白石さんのところに行って気分転換になるのかどうかは疑問ではあるかな……いや、私の持ち込んだ話が息抜きになるって言ってるんだし、むしろ息抜きにはなる……?とはいえ、今日の話ってスライム粉とミンサーと釜の凹み直しだしなぁ……スライム粉は興味持つかもしれない?

 そんなことを考えていたら、曲がり角から、一人の女性が出てきた。叔父さんと同じ赤褐色の髪をポニーテールにまとめ、白のタンクトップにカーキ色のオーバーオール。背が高めで全体的に細身な印象を受ける女性。

 大森美弥子。叔父さんの娘で、私の従姉妹である。叔父さんと同じ魔法研究に熱を注いでいるのに、なんでかメカニックみたいな格好をしている。謎だ。

 

「げっ……」

「あ!」

「ふは!げってお前……」

 

 思わず声が漏れてしまった。隣で叔父さんが笑っているけど、私は美弥子が少し苦手だ。理由は色々ある。まさしく『魔女の大鍋(コルドロン)』のクランメンバーらしい暴走性だとか、やたらと声が大きいところとか。でも一番の理由は……

 美弥子が私の目の前で跪き、自然な動きで私の左手を持ちあげる。そして、満面の笑みでこう叫ぶ。

 

「夢希ちゃん!結婚を前提にお付き合いしてください!!」

「嫌だよ」

 

 若干食い気味で即答。

 出会うたびに告白されるんだよね……なんでか分からないけど……!かれこれ2年くらい、ずっとこうである。というか、16歳の誕生日を迎えて結婚出来るようになった途端こうである。いい加減諦めてくれ……ちなみに、16歳になる前は、普通にお付き合いしてください!だった。そちらは14歳から言われている。

 

「くっ……まだ好感度が足りませんか……!?」

「そういう問題じゃない」

「いつかきっと頷かせてみせます!」

「そんな日は来ない」

「来させます!」

「…………」

「くくく……ふっ……」

 

 笑みを崩さず邁進することを宣言した美弥子に、思わず遠い目になってしまう……叔父さんは自分の娘なんだから、笑ってないで止めてくれないかな!

 とはいえ、出会う場所はここしかないし、数ヶ月に1、2回会うかどうかくらいなので、そこまで気にもしてないんだけど……うん。いい加減理由聞いてみよう。そうしよう。

 

「あのさ、美弥子はなんでそんなに私とけっ……つ、付き合いたいの?」

 

 ちょっと「結婚」の言葉に照れてしまって言い方を変えたけど、とりあえず聞かないと。

 すごく不思議そうな顔をして、美弥子が首を傾げる。

 

「?夢希ちゃんが大変魅力的な女の子だからです!」

「えぇ……」

 

 魅力的って……背は低いし胸もないし、くびれとかもない寸胴体型だよ私。顔は……良いのかよく分からないけど、無表情すぎてアレだし……いや、そういうのがタイプなのかな?

 

「む、信じていませんね!?良いでしょう!」

「……何が?」

 

 自分の身体を見ながら少し考えていたら、美弥子がなんだか決意を固めた表情になった。一体何が良いでしょう!なんだ……?

 ちょっと身構え、そして、口を開いた美弥子が暴走を開始した。

 

「まず夢希ちゃんは顔がいいです!人形のような綺麗でいて少しキュートな感じのするお顔をしています!吸い込まれるような深い海を思わせる青い目はいつまでも見ていたくなるような宝石のような美しさです!白い髪はゆるい癖っ毛ではありますがふわふわとしていて顔との対比で全体的な雰囲気が少し柔らかくなっていますしさらに手触りがとても良いです!最近はお手入れもしていますよね?それがさらに艶を出していて真珠の様な輝きを放っていてとても綺麗です!夢希ちゃんは体型について気にしているようですがそんなものは人それぞれです!私はとても可愛らしさを感じる体型だと思いますし可愛らしい服装がよく似合うと思うのでそういった服装をしていくのがいいと思いますよ!次いで内面ですが好奇心旺盛で興味を持ったものには挑戦していくその精神は見習いたいものがありますし目的達成のためにひたすら邁進できるのもグッド!興味のないものには徹底して無関心なところもありますがそこもチャームポイントです!それに意外と面倒くさがりで特に対人関係ではもごもご!」

「もういいもういいもういい!!」

 

 褒め言葉の濁流に耐えきれなくなって、掴まれていた左手を振りほどき、両手で美弥子の口をふさぐ。

 もう顔があっつい!なんだこれ!いきなりなんなんだもう!!

 ただまぁ、彼女が割と本気で私を魅力的だと思って口説いているのは分かった。いや、分かったけどどうすればいいんだこれから……!

 とりあえず美弥子が落ち着いたらしいので手を離す。顔を背けて手をパタパタと動かして風を送る。なんか変な汗出てきた……

 うぐぐぐ……やってやったぜ!みたいな満面の笑みがムカつく……!

 

「それにしても、お久しぶりですね!」

「…………うん、久しぶりだね」

「正確には72日と4時間32分ぶり!実に長かったです!」

「…………」

 

 もう怖いよ!何が美弥子をそんなに駆り立てるんだ!!いや、一気に顔から熱は引いたけども!

 彼女の温度差というか、高低差というかに困惑していたら、また左手を美弥子に取られて引っ張られる。

 

「さあ、行きましょうか!」

「え?あ、いやちょっと」

「さーいくかー」

 

 叔父さんも棒読みで背中押さないで!?私は白石さんのところに行きたいんだよ!!

 

「あの私は……!」

「新しい魔法がそれなりにありますから!楽しいですよ!」

「それは楽しそうだけど、今日は白石さんのところに」

 

 いや、確かに新しい魔法があるのは楽しいと思うよ。さっき叔父さんが言ってた魔法とかも試してみたいし、でも今日はあくまでも白石さんのところに行きたいのであって……!

 そして、再び始まる暴走特急。

 

「私のオススメはやはり父の作った光源魔法ですね!夢希ちゃんからの依頼だそうですが発想が素敵です!ダンジョンを照らすことで美しい景色を味わいたいとは!しかしこの魔法は単純そうに見えて奥が深く開発に時間がかかりましてこの度派生魔法が先に完成しましてあ父から聞いてますかね!強烈な閃光を前方に放つことで一時的に視力を奪う魔法としてかなり有益だと思われますが実際に戦闘で使えるかどうかはダンジョンで戦っている夢希ちゃんのような方の意見を是非にお聞きしたくてそれはもう首を長くしてまっていたんですよ!別種の派生魔法が2つ出来るくらいには!さらなる派生として医療用にも使えそうな魔法が出来ましたしそちらの研究もしておりますので確認してください!他にも以前から研究がされておりましたテレポートもしくはアポートに関しては難航しておりましてやはり瞬間移動というのは厳しいのでまずは高速移動出来る魔法をということで現状呼び寄せ魔法が開発中です!現在のところ呼び寄せるは出来ますが速すぎてキャッチ出来ない等の問題があるため改善に全力を尽くしておりますが必ず完成させますので楽しみにしていてください!」

「…………うん。楽しみにしてるね……」

「はい!!」

 

 もはや、恐怖すら覚えるけど()()()()()()()()()()()()()()()。さっきもそうだった。彼女の肺活量というかなんというかに驚いていたら、美弥子の足が止まった。

 嘘でしょ……?言葉の濁流に圧倒されていたら、いつの間にか魔法研究科の研究室まで連行されてる!

 『魔女の大鍋(コルドロン)』こんな人ばっかりだよ……私は自分のことを変人だとは思うけど、絶対この人たちほどじゃない。絶対に!

 

「皆さん!夢希ちゃんが来てくれましたよ!」

「え!?」

「ホントだ!」

「夢希ちゃんだ!!」

 

 扉を開け放ちながら中にいた人たちに、美弥子が声を掛ける。うーん、見知った顔ばかりだ。そして、全員白衣を着用している。やっぱり美弥子がオーバーオールなのおかしくない?1人だけめちゃくちゃ浮いてるよ?

 もうどうにでもなれと現実逃避し始める。ここまで連行されてしまっては、どうにか出来ると思えない。いや、手段を選ばないならどうとでも出来るけども。怪我させる確率が高いからやらないけど。

 

「すみません、こちらの魔法確認してもらえませんか!?」

「この魔法、発動に難があるので、問題点の洗い出しをお願いします!」

「是非現場の目線からアドバイスを!」

 

 研究熱心な彼らにとって、どんな魔法だろうが使える私は本当に得難い人材らしい。それに、『魔女の大鍋(コルドロン)』はとことん研究畑の人が多い。そのためダンジョンに潜る人が少ないからか、新しい魔法が出来てもダンジョンで使うことを想定すると難がある。みたいなことになったりする。発動までに時間がかかりすぎるとか、範囲が広すぎて周囲を巻き込むから使えないとか。

 わらわらと私に群がってきた彼らに対し、横から手を叩く音がした。一旦全員が止まってそちらを見る。叔父さんが顔の横に手をあげていた。

 

「お前ら一旦落ち着けー?そんなに集まられても夢希が困っちまうだろうが」

「叔父さん……!」

「それにまずは、夢希が希望出してた魔法からに決まってんだろ!」

「叔父さん……!?」

 

 一瞬助かったと思った私がバカだった!そりゃここまで連れてきたら試させるよね!

 叔父さんの言葉を聞いて、研究員さんたちが口々に同意と謝罪を口にする。

 

「確かに……ごめんなさいね」

「そうですね、すみませんでした!」

 

 いや、あの……うん。もういいや。諦めよう。今日は白石さんのところにいけないかもしれないが、それはもう仕方がないってことにしよう。後で謝罪のメッセージでも送ればいいか。理由聞いたら怒らないだろうし。

 

「まー、とりあえず使ってみてくれ。これが設計図だ」

 

 叔父さんが私の前に大きめの紙を持って来る。図形やら計算式やら文章がズラズラと並んでいるやつだ。

 魔法の開発は、大抵こういった感じで行われている。魔力の流れ方に流し方、発動するために必要なイメージ、どういった変換をするのか……事細かく仕様をまとめ、それを読んでその通りに魔力を流すと発動する感じだ。

 新しい魔法を使えるようになるにはそれなりに練習がいるわけだが、私にはこれ読んだだけで使えるようになるスキルがあるので、テストプレイとかだと私が最適って話にもなる。

 光を発生させる魔法、その設計図を読んでいる途中で、一筋の光が見えた気がした。

 

「…………!」

 

 あ、そっか。ここでみんなの目潰しして逃げれば……!怪我とかもさせないで無力化出来る……!希望を抱き、設計図に目を通していく。ふむふむ。そんなに難しい魔法じゃないし、ぱぱっと使える感じだ。これならいけるか――

 

「じゃ、俺たちは遮光グラス掛けるから、遠慮なくぶっ放していいぞ!」

「え」

「夢希にも念の為に渡しておくな」

 

 バッと叔父さんの方を振り向けば、みんなして遮光グラスをかけていた。そして手渡される遮光グラス。

 なんてことするんだ!逃げ道がなくなったじゃないか!!

 もうしょうがないので、とりあえずで使ってみることにした。えっと、魔力をこう流して……手のひらからこう!

 ピカッ!!と結構な強さで光を放ってびっくりした。遮光グラス越しなので眩しくはないけど……うーん……これダンジョン内で使って大丈夫か……?人が居たら大分厳しいような……目潰し目的だし、こんなんでいいのか……?

 研究員の人たちが歓声を上げる中、ダンジョン内で使うに当たってどうなるかを考えていたら、後ろでドアが開く音がして、聞き覚えのある声がした。

 

「あ、本当にここにいたっす」

 

 ちょっと前に見た顔だった。あの時より大分血色がいいし、頬もこけたりしていない。

 

「遅いんで迎えに来たっすよ。夢希ちゃん」

「……!」

 

 笑顔を浮かべた犬束さんがそこにいた。

 ……………このタイミングで登場とか、ヒーローかな?すごく輝いて見える……!

 




ルイズコピペにしようか迷ったんですが、流石にやめました。

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