【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する   作:もけねこ

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配信に興味のない私といつもの光景

 

 モンスターの不思議に首を傾げながら探すこと1時間ほど。ついに、湧き水を見つけた。下をのぞき込むと、湧き水によって出来た池の周りに、砂と岩を固めて作った防壁を築き、ソードスコルピオが集まっている。数にして大体50匹ほどの超大型の群れだ。最低でも20くらいはドロップアイテムが欲しかったので、これはかなり幸先がいい。

 ソードスコルピオは、胴体部分は本当にただの大型のサソリみたいな見た目だが、甲殻がそこまで硬くなく、ここまで問題なく潜れる近接職なら大抵一撃であるほどには脆い。しかし問題は、ソードスコルピオ最大の特徴である先端が剣になっている尻尾だ。刃渡り1メートルほどで、強度も斬れ味も凄まじい。さらに、人間が振り回すのと同じくらい自由自在に振り回してくる。盾で胴体を守ったら、返す刃で足を斬られたり、横薙ぎを躱したと思ったら突きで追撃されて腹を刺されたりなんてことはよくある話で、中にはこちらの剣戟を受け流した上で切り返してくるような、歴戦の個体もいたりするらしい。また、基本的に7〜8匹程度の集団で行動しているため、対処に手こずると囲まれて四方八方から切り刻まれる。ここ八王子ダンジョンで最も危険な超攻撃特化型モンスターなのである。

 50匹にもなる超大型の群れともなると、普通の冒険者やパーティなら、気付かれた時点でもはや死を覚悟するレベルの群れだが、私のように浮遊魔法を使える魔法職にはただのエサである。 

 何故なら、良くも悪くもあいつらの脅威は尻尾の剣だけ。空中に対しては、そもそも攻撃手段がないのである。

 

「よし……」

 

 彼らの真上で杖を構え、一番のお気に入り魔法《魔力の矢》を準備する。魔力に気付いたソードスコルピオ達がこちらを一斉に見たあと、逃走し始めるが、もう遅い。

 《魔力の矢》は大体の魔法職が一番最初に覚える攻撃魔法だ。一部の才能のある人たちは、もっと強力だったり、属性系の魔法だったりを覚える。だが、大抵の魔法職は、これを覚えてダンジョンに入り、ゴブリンやらコボルトやらを倒してレベルを上げ、他の魔法を覚え……この魔法を一切使わなくなる。

 一部からは一度も使われず、大多数から存在を忘れ去られる魔法。そんな悲しい魔法が《魔力の矢》なのである。私は好きだけど!しかしながら、他の冒険者にそんなことを言うと、信じられないものを見る目で見られる。この魔法が何をしたって言うんだ…!最初からずっと私のそばにいてくれた、こんなに良い魔法なのに…!そんな、誰にも分かってもらえない悲しみを怒りに変え、八つ当たり込みでモンスターに連射する。

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドド!!

「ギギィィィィィィィィィィィィ!?」

 

 "これを見るためにこの配信を見てんだよなぁ!?” 

 "いつ見ても威力がおかしいwww”

 "い つ も の 光 景”

 "何度見てもゲラゲラ笑えて最高www”

 "ガトリングみたいな音してるのマジで何?w”

 

 一分も経たずに全てのソードスコルピオを殲滅した私は、穴まみれ、血まみれの地面の近くまで降りて、ドロップアイテムを確認していく。前は地面に降りていたんだけれど、一度つまずいて、血で満たされた穴に全身でダイブしてからというもの、降りるのをやめた。全身ベタベタするし、生臭いしで最悪だったから、二度と同じ目に会いたくない。何より、全身よく洗ったのに、翌日友人たちに「なんか臭くない?」と言われたのは軽くトラウマだ。

 

「ドロップ数は……26。よし」

 

 これまた不思議だが、ドロップアイテムと死体は違うものだ。ドロップアイテムは、モンスターを倒したあとの死体から、ポコッと出てくるのである。だから、今回みたいに一気にやると、ぐちゃぐちゃの死体が広がった地面から、ドロップアイテムが一斉にポコッと出てくるのでちょっと面白い。

 そうして、ポコッと出てきたドロップアイテムを浮遊魔法で回収し、少し離れた岩場まで移動する。今度はちゃんと地面に降りて、懐からクッション性に優れた袋に包まれた水晶玉のようなものを取り出す。渋谷のイレギュラー解決に貢献したお礼として貰った、結界石と呼ばれるマジックアイテムの最高級品である。この結界石は、魔力を充電することで結界を展開する事ができるマジックアイテムで、危険なダンジョン内で安全確保が出来る優れものだ。平均的な性能の結界石は、テントよりもかさばらないし、中層のモンスター数発くらいは耐えられるので、ダンジョンの中で休息を取るためにも、中層以降に潜る冒険者の中ではマストアイテムになっている。食事したり、仮眠とったりするときとかね。普通は、パーティで潜って交代で見張りをしつつやるもので、これは結界石を使っていても変わらない。使わないより、遥かに安全に出来るってだけ。ソロの私は、大抵の場合、飛行型モンスターが来ない場所で、空中に浮遊しながら休憩していた。

 しかし、この最高級品の結界石は、中層のモンスターどころか、下層最強のモンスターであるはずのミノタウロスの剛腕や突進ですら揺るがないほどの硬度の結界が展開出来る。依頼でもない限り、ソロでしか潜らない私にはありがたすぎる代物だ。このレベルの防御性能になると、見張りとか警戒とかいらないからね。解除する前に周囲を確認する必要はあるが、それだけでいいし。

 こんなとんでもない性能している分、毎回取り出すときはドキドキだ。流石に、落としたくらいで割れないとは思うが、それでも怖いものは怖い。壊したあとで修理や買いなおすとなったらいくらかかるか……

 ちなみに、低品質な結界石もある。こちらはかなりお手頃価格販売されており、冒険者のお花摘みに使われている事が多い。私もそのために持ってる。流石にお花摘み程度で、この結界石を使うのはどうかしている。

 収納魔法で収納していた大鍋とコンロを取り出し、コンロに大鍋をセット。大鍋にソードスコルピオの尻尾を放り込む。魔法で水を満たして《錬金》スキルを発動しながらコンロを着火!……しようとしたところで、くぅ…っと、お腹がなった。

 

「お腹空いたな……」

 

 虚空を見上げながら、お腹を撫でる。スマホを取り出し、時間を確認。18時47分か……何を食べようか?非常食として携帯食料は持ってきているが、非常食だけあって美味しくない。食材はある程度持ってきているけれど、野菜や調味料メインで持ってきているから、メインになる何かが欲しい。ソードスコルピオは食べることを想定してなかったからバラバラにしてしまったし、そもそも集団でやってくるモンスター相手だと手加減すると危ない。他に、この辺にいるモンスターなんて、あとは砂ウツボくらいしか……ウツボ?

 収納魔法から、食材の入ったリュックを取り出し、中身を確認……よし、あるな。次に調味料の入ったかばんを取り出して……あった!

 

 今晩の献立が決まった。

 

 "この、素材煮込んで濃縮する工程、本来それ専用の道具使うはずでは…?”

 "《錬金》のスキル使えばいける”

 "道具で代用出来るから圧倒的外れユニークなんだよな《錬金》”

 "実際ユニークって、唯一無二とか再現不可とかが多い中、道具で代用出来るのはマジでちょっとね…”

 "外れユニーク持ちなのにこの強さなのバグでしょマジで” 

 "この強さなんだから、複数持ってるでしょ”

 "だとしてもやろ”

 "あら〜可愛い音”

 "もうすぐ7時だし、腹も減るわな”

 "この「お腹空いた…」昔のドラマみたいなんで好き”

 "おっさんが飯食うだけのあれなw”

 "飯テロ来そうだから、俺もなんか食べ物用意しまーす”

 "さー今日の献立は何だろなー”

 




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