【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
感想は全て読ませていただいていますが、返信をやめることにしました。
理由としては、その時点で返信した内容と書いた時の内容にズレが生じる時があり、結果として嘘を書くことになってしまうためです。
申し訳ありません。
「白石さん、本題なんだけど……」
「そうだった。大鍋の修復とミンサーの作成、それと見せたいものがあるんだったね?」
本題を切り出すことにした。ミンサーの作成がどのくらいかかるかわからないし、なるべく早くないと厳しいかもしれない。
すると、横から犬束さんから心配そうに声を上げた。
「私もいて大丈夫なんすかそれ……?」
「大丈夫だよ」
「暇なら見ていくといい」
心配してくれるのはうれしいけど、何も問題はないんだよね。個人的な話ではあるけど、秘匿するような情報とかも何もないからね。
「なら、暇なんで見ていくっす。ところで、ミンサーってなんすか?」
「ひき肉を作る調理器具。こう……ハンドル回すと肉がパスタみたいに出てくるアレ」
なんかこう……と両手を空中でぐるぐるする。どうしよう、全然伝わる気がしない……地味にアレをジェスチャーで伝えるの難しくない?
なんだけど、犬束さんにはちゃんと伝わったらしい。
「へー、あれミンサーっていうんすね……ついにモンスターでハンバーグでも作るんすか?」
「ハンバーグもそうだし、メンチカツとかミートソースとか色々」
「結構色々使えるんすねぇ……」
しみじみと言う犬束さん。実際ひき肉はいろいろ使えるからね。他にもそぼろとかにも使えるし、餃子、つくねなんかにも使える。あとはソーセージとかも作る機会があるかもしれない。
流石にソーセージを作るときの腸皮は市販のもの使おうと思うけど。でも、今回考えてる一番のメインは……
「メインはキーマカレーかな」
「キーマカレーとはロマンだね」
白石さんから同意が取れた。白石さんもカレーが好きである。
ちなみに理由は、一度に大量に作れて保存がきくかららしい。保存ってそんなに効くっけ?って思ってたら、小分けして冷凍してるんだそうだ。
『
「ロマンなんすか……?」
「白石さんのロマンは褒め言葉ってだけで、基本的に大した意味はないよ」
「あー、言われてみれば確かに……なるほどっす」
「……」
犬束さんが納得した顔をしているその対面で、白石さんが何とも言えない顔をしている。でも、今私が言ったとおりだよね?『いいこと』とか、『好き』くらいのノリでロマンってつかうよね?実際大した意味はないでしょ。
まず、今回のメイン一つ目を解決するため、収納魔法から錬金用の大鍋を取り出す。中身は昨日家に置いてきたから、これだけだ。普段のままだと、ここにキャンプを展開することになるからね。
「とりあえず、大鍋ね」
「ふむ……何で凹んだんだい?簡単に凹むような強度じゃないはずだが」
渡した大鍋を白石さんが調べながら質問を投げてくる。当然の質問なんだけど、起こったままを説明して伝わるかな……?
「スラ玉を圧縮したやつでこう……跳ね回って当たった……」
自分で言っておいてあれだけど、説明下手くそ過ぎない?でも、これ以上の説明出来ないし……
「スラ玉……あぁ、あれか。なんだ、夢希も作ったのかあれを」
伝わったらしい。というか、白石さんも作ったことあるのか。
「白石さんも?」
「もちろん。というか、『
「そっかー……」
『
というか、どういう理由で研究してたんだろうか?役に立たないという結論ってことは何かに使おうと思ったんだろうけど。
「あの、全然わかんないんすけど、スラ玉ってあのめっちゃしょぼいスーパーボールみたいなやつっすよね?」
「そうだよ」
「で、それを圧縮すると、めっちゃ硬い大鍋が凹むくらいの威力が出るんすよね?なんで……?」
「さぁ……?」
犬束さんからの質問に私も首をかしげてしまう。実際あれって何だったんだろうね……?
思わず白石さんに視線を向ける。こういうことは白石さんに投げるのがちょうどいい。実際昔作ったことがあるなら、原理なんかは把握してるはずだし。
「詳しく説明してもいいが……簡単に言ってしまうと、ボールがバウンドする度に加速するのさ。一度バウンドするたびに2倍の高さまで跳ねるスーパーボールを想像してごらん。最終的にとんでもないことになるのは想像がつくだろう?」
なるほど、そんなめちゃくちゃなものができちゃったのか……いや、危険物過ぎないかそれ!?あ、あの時あの程度で止まってよかったよ、もっと加速してたら大変ことになってた。
「それ、めっちゃ危険じゃないっすか……?」
「あぁ、危険ではある。が、その程度だよ」
「…………」
若干声が震えている犬束さんの質問に、白石さんは軽い調子で答えるけれど、絶対にその程度じゃない。絶対に。やはり、『この世界でもっとも危険な未探索領域は
危険物が多すぎて感覚麻痺してるんじゃないか?ぶっちゃけた話として、クランの奥底からロボット兵器が出てきたって私は驚かない。むしろ、そのくらいは当然のようにあると思っている。
「さて、この修復には少しかかるよ。強度が強度だし、一応手入れもしておきたい」
「ありがとう」
「で、ミンサーだが……」
「うん」
「これに関しては、すでに出来ている」
「うん……うん?」
え、なんだって?完全に思考が追い付かない。そもそも話したの昨日の夜だし、その時点だと資料を集めておくって言ってたから、資料集めて作るまでが速すぎるでしょ。
「話したの昨日の夜だよね?なんで出来てるの?」
「……仕事速すぎないっすか?」
犬束さんが引いている。わかるよその気持ち。実際私も若干引いてる。
「資料を集めているうちに作りたくなってしまってね。これだ。素材は、本体が魔鉄鉱、刃の部分がソードスコルピオの尻尾だ」
「おお、ちゃんとしてるっす。実物見たことないっすけど」
ぱっと見は普通のミンサーだ。にしても、ソードスコルピオの尻尾って、大分切れ味良さそうだな……
ただ、白石さんの作ったものなら、絶対に確認しておかないといけないことがある。
「…………変な機能ついてないよね?」
「魔法で駆動するタイプではないから、つけていないよ。ついていたほうが良かったかい?」
白石さんが、ちょっと期待しているような目をしている。うん。返答は決まった。こういうときは塩対応をしなくてはならない。
「ううん。これがいい」
「…………そうか……」
製品について嘘はつかないので、本当に何もついていないんだろう。そして、絶対変な機能付きのやつも作ってたなこれ。
ミンサーに変な機能付けるのは逆に難しい気がするんだけど、何をつけたんだろうか……触れると危ないからやめておくけども。『魔女の大鍋』式の言葉の濁流にのみ込まれかねない。
そして、突如として白石さんが大声を上げた。
「それで!本題だが!!」
「…………なるほどね」
「…………早く本題入りたいから先に作っておいたんすね?」
「まままさかそんなわけないじゃないか!?」
めちゃくちゃ動揺している白石さん。犬束さん、大正解だよ。まったくこの人は……
グリーンスライムの粉の入った試験管を取り出して、白石さんに渡す。白石さんは、目を輝かせながら試験管を覗き込んだ。
「ほほう……!」
「うーん……薄緑の粉……すか?」
「……ふむ、魔力的にはグリーンスライムのものだね。そして、若干とはいえ麻痺毒がある」
「え!なんでわかるんすか!?」
「白石さんのユニークスキル」
「あぁ、なるほどっす」
白石さんのユニークスキル《広目天》は、《魔力探知》の超強化版といった感じのスキルである。私も《魔力探知》でモンスターは分かるけど、あれはあくまで生きているから分かるのであって、死体になったら分からない。なんかある、かも?くらいの感じになってしまう。これは、死んだ時点で魔素が拡散していくせいだ。
白石さんの場合は、視界に入っているもの限定ではあるが、それに関係なく探知、解析出来るくらいの性能をもっている。どれくらいかというと、戦闘の痕跡を見ると、その場で何があったのか完璧に把握出来るくらいの性能である。
最初は読み取れる情報量が多すぎて脳が処理できない。なんてことになって大変だったらしい。今は問題ないみたいだけどね。
「どうやって回収したんだい?」
「《ファイアスロワー》で乾燥させた」
「《ファイアスロワー》って火炎放射っすよね?それ、乾燥っていうんすか……?」
「過程がどうあれ、結果が乾燥なんだから、乾燥でいいでしょきっと」
「…………夢希ちゃんって、結構適当というか、おおざっぱなところあるっすね……」
適当とは失礼な。実際、最終的に起きた事象としては乾燥なのだから、乾燥でいいだろうに。温度の高いドライヤーみたいなものだろう。多分。
「なるほど……実に面白い。ロマンだ!少し待っていてくれ、簡易的な検査をしてくる!!」
言うが早いか、白石さんはそのまま隣の作業部屋に入っていってしまった。まぁ、すぐに出てくるでしょ。
実際、1分もしないうちに扉を勢いよく開けて帰ってきた。
「これがあれば、地上で安全に耐性スキルを獲得できるだろう!」
「超便利じゃないっすか!」
犬束さんが歓喜の声を上げる。私も、それが出来たらいいなと思って持ってきたところあるしね。
何度か食らえば耐性が付くとはいえ、そもそも食らうのが危険すぎるのである。地上で獲得出来るなら、それに越したことはないのだ。
今はドロップアイテムで同じ様なことをやっているところはあるけれど、あれはあれで無耐性だと死にかねないので、そもそも耐性の性能上げにしか使われていない。
「とはいえ、このままだとあまり意味はなさそうだが」
「そうなの?」
「毒性が低すぎる。これだけでは獲得するのにどれだけ量が必要になるか分からないな」
む、そうなのか。でもそれだけ毒性が低いなら、むしろ安全に出来るはずだから、研究してくれれば、きっと何とかなるはずだ。それは白石さんに任せるけども。
「だが!!」
「わっ!」
「ひぃ!?」
急に大声を出されて本当にびっくりした!白石さんはさぁ……!
「これはロマンだ!素晴らしい!!少なくとも、これでスライム種の毒の解析が完全にできるだろう!解毒薬が作れるようになるかもしれない!」
あー、なるほど?確かにそれはそうかも。使う機会は……どうだろうか?そもそもスライムの毒って、食らうのと同時に酸で溶けてること多いしな……いや、逃られる可能性が上がるなら、あったほうがいいな。
「夢希!すまないが私はこれを研究室に持っていくよ。今日のところは解散だ!」
「あ、うん。ミンサーありがとう。それと、大鍋よろしくね」
「ああ、任せてくれ!!さあ、楽しくなるぞ……!!」
ドタバタと部屋から出ていってしまった。うん。予想通りだよ。白石さんはこういう感じの人だ。嵐みたいだよまったく。
「……嵐のような人っすよね……」
「もう慣れたよ。それに、犬束さんもここに入ったならわかるでしょ?白石さんはまともな方だって」
「あー……まぁ、そうっすね……」
犬束さんが遠い目をしている。実際、白石さんはかなりまともな方である。本当に。
さて、用事も済んだことだし、今日は帰ろう。意外と時間かかっちゃったし。アクシデントで。白石さんに色々頼むだけだったはずなのに、疲労感が強い……
「今日はこれで帰るね」
「はいっす!あ、案内するっすよ。念のために」
犬束さんに別れを告げたつもりだったんだけど……うん。確かに念のために案内してもらった方がいい気がしてきた。捕まりかねない。
「……お願いしてもいい……?」
「任せてほしいっす!」
右手で胸を叩いて笑顔で承諾した犬束さんを見て、少し安心する。完全に安心出来ないのは、ここが『
不安に反して、あっさりとエントランスまで帰ってこれた。一安心だ……
「今日はありがとう」
「いえいえ、大丈夫っすよ!まだまだ恩を返しきれてないんで!」
「……」
返し……そういえば、白石さんに相談するの忘れたな……うーん、彩音さん、友人たちや鬼灯、お父さんにも相談してみようかな。
ちょっとそんなことを考えていたら、犬束さんから変な発言が飛んできた。
「じゃあ、また会いましょう、先輩!」
「うん、また……先輩?」
「え、夢希ちゃんって、先輩っすよね?」
「……なんの……?」
え、本当になんのだろう?確かに冒険者歴では先輩ではあるけど、それでわざわざ言われるようなことはないし……そもそも、冒険者において、先輩後輩はあんまり関係がない。レベルの上下の方がよほど大事だからね。レベルが上であるほど、冒険者として経験を積んでいるわけだから。
色々と混乱していたら、犬束さんから爆弾が投げ込まれた。
「『
「違うけど!?」
「え、違うんすか!?」
違うよ!私は『
このあと、犬束さんの誤解を解くのに大いに奮闘することになった。最後の最後でとんでもないアクシデントだよ!休日だったはずなのに、全然休めた気がしないんだけど!!
次回は配信をします