【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
炒め物に火が通ったので、味見をしながら味を調整。うん。これくらいかな。
焼き鳥は……もうちょっと必要かな。串に刺してた作業分、火にかけるのが遅かったしね。
ちなみに、今回のために串は竹串を買ってきた。
「まずは炒め物出来たよ。焼き鳥はもうちょっとまってね」
「わー、美味しそう!」
「美味そうじゃん……」
ネギとアスパラ、ブレイクレッグの肉を入れただけのものに、シンプルに塩コショウで味付けしただけである。でも、これ美味しいんだよね。彩りもいいし。
"マジで美味そう”
"シンプルなのがいいよなこういうのは”
"マジで普通のキャンプ飯が出てきたな……”
「これ、食べてていいの?」
「先に食べてていいよ。私は作りながら食べるから。もっと作るんだし」
「アヤネさん、こいつは満足するまで作り続けるから、ほっといたほうがいい」
「えぇ……?何度も言うけど、作りすぎないでね?」
テーブルに乗せる前に、私の分は別の皿に乗せて確保してあるので、2人は何も気にせず食べてくれればいい。
2人に食べてもらいつつ、私は私で焼き鳥用のタレを作ってしまおう。今焼いてるのは塩だけど、次はタレの予定だ。焼き鳥を焼き終わったら、唐揚げ用の油を温めないとね。焼き鳥食べながら。
やることがたくさんあるから、ちょっと忙しいけど、これが楽しいのだ。料理はこういうところがいい。
「おー、美味いなこれ!……うむ。日本酒にも合う」
「美味しいよユキちゃん!」
「よかった」
2人とも笑顔で食べてくれるから、作りがいもあるしね。うむうむ。良いことだ。あっ、そういえば。
「それ食べる時、ネギに気をつけ――」
「
「!?ほい水!」
「
ネギトラップに彩音さんが引っ掛かったようで、口を抑えて悶える。それを見てホオズキがさっと水の入ったコップを渡す。注意が間に合わなかったか……
ネギって、噛んだ時に中の方の部分だけが喉の方に射出されることがあるんだよね。そして、その部分がめちゃくちゃ熱い。喉に直撃したわけじゃなさそうだから大丈夫だと思うけど、喉奥に直撃したときは……うん。
"アヤネさん無事?”
"あー、ネギか…”
"大丈夫か!?”
"喉に当たんなくて良かったよ”
「アヤネさん、大丈夫?」
「うん。大丈夫。予想外に熱くてびっくりしただけだから……リスナーさんたちも安心してね」
「ネギこわぁ……食べんとこ。食べらんないけど」
鬼灯のネギをみる目が完全に危ないものをみる目になっている……いや、確かにある意味危険なものではあるんだけどさ。
「あ、そうだ。ユキ、アヒージョ作れる?」
「アヒージョ?……ちょっと具材が少なくなるけど作れるよ。気に入ったの?」
「おん。前食ってから結構食ってるんだよアレ。酒にも合うしさ。肉でも作れるんでしょあれ」
「なら後で作るよ。今は鍋が足りないから」
「おん。任せた」
「……アヒージョ作るなら、これ使ってよ。実は持ってきたんだよね」
鬼灯はアヒージョが気に入ったらしい。今度レシピでも教えようか。油の処理が若干手間なくらいで、作るの自体は簡単だしね。臭み取り用のにんにくは常備してるし、鷹の爪も乾燥しているやつだから常備してるけど、流石に野菜の類は持ってきていない。なので肉しかない感じになるだろうけど、それでもいいだろう。今日は肉を食べる日なのだ。
とはいえ、炒め物に浅底の鍋を使ってしまっているので、それを食べきってから作ろう。流石に普通の鍋では作りにくいし。
そんなことを考えつつ鬼灯と話していたら、彩音さんが脇から真空パックに入ったものを私に渡してきた。えっと、結構大きめだけど、これは……
「ソーセージ?」
「そう!いや、出すタイミング逃したなーって思ってたんだけど……ちょうど良さそうだから」
「おぉ、結構いいやつっぽい」
結構立派なソーセージの4本入りパックだ。焼くだけでも美味しそうなやつ。これでアヒージョは大分豪華なんじゃないか?ふむ……1本だけ入れて、あとは普通に焼くか。その方が多分良いだろう。
"かなり大きいやつじゃん。焼いたらマジで美味そう”
"ああいうのはバーベキューでしか焼かないよなぁ……”
"完全にキャンプだわこれ。いつもだけど”
"そういや、ホオズキちゃんって普段何つまみにしてんだ?ジャーキーとか?”
"ポテチとか食えないもんな…”
「おん?つまみ?確かに、ポテチは食えないねぇ……基本的にジャーキーが多いかなぁ、あと干物」
テーブルの上にスマホを置き、それをちらちら見ながら過ごしているらしく、鬼灯がリスナーさんたちと会話している。
一番配信者っぽいことしてないかこいつ……?適応力が高すぎでは……?
「干物っていうと、スルメとか?」
「そうそう。あとは……塩かな」
「塩……?」
「塩……」
「おん。塩をこう、ちまちま舐めながら日本酒を飲む」
「えぇ……」
「……うぅん……」
え、塩を……?単体で……?
思わず彩音さんと顔を見合わせてしまった。いや、なんというかその……うん。
"塩美味いよなぁ…!”
"塩www”
"完全に呑兵衛だこいつ!!”
"リスナーにも分かるやついるの草”
申し訳ないけど私たちはちょっと引いてしまった。そこまで行くのはこう……ね?
鬼灯的には大変不服だったらしく、良さを熱弁し始めた。
「美味いんだぞ、塩と日本酒!無駄な雑味とかないから、酒の味もよくわかるし!ちゃんと天然塩じゃないと美味しくないとか、色々あるんだって!」
「そうかもしれないけど、塩単体は大分……」
「うん、こう……ね?」
「え、そこまで引かれんの……?嘘だろ……!?」
鬼灯がショックだったのか崩れ落ちた。申し訳ないけど、引いちゃうんだよね流石に。いや、塩だけて。
なんというか、想像している絵面が酷いだけかもしれないけど、かなり酷い絵面じゃない?塩舐めながらお酒飲むって……
"そ、そんな引くことないだろ!やめてくれ……”
"めっちゃダメージ受けてて草”
"言っちゃ悪いが、大分アレだぞ塩のみはw”
"めっちゃ酒豪かアル中かなのよ基本w”
そんなこんな雑談をしている間に、焼き鳥が焼き上がったので、皿に乗せてテーブルに置く。話に夢中になって、ちょっと焼き過ぎちゃったな……
「焼き鳥第1陣出来たよ」
「やったー!」
「…………もういいや。うん。美味そう!」
ショックから鬼灯が回復した。切り替えは速くないとね。食え食え。そして、それで飲め。少なくとも、今日この場で塩はやめて欲しい。
「いただきます!」
「いただきまーす!」
「どうぞー」
私も次の焼き鳥を焼きつつ食べていく。今度のこれはタレにするので、塩コショウは振らず、多少火が通ったタイミングでタレにつけて再度焼いて……という感じで行こうと思う。
そして、隣でソーセージを焼き始めた。1人1本で行こう。うむうむ。豪華なご飯だ本当に。
「ブレイクレッグ美味しいね!」
「うん。美味しいよね。あと、ソーセージも焼いちゃうね」
「これ美味いよなぁ……あ、そういやさ」
「うん?」
「ブレイクレッグキングって食ったことある?」
ブレイクレッグキングは、品川ダンジョンの下層にいるブレイクレッグが小型になり、ちょっと見た目が変わったモンスターである。
名前付けの傾向的に、上層の方にいるモンスターの強い版モンスターみたいなのが出てくると名前の最後にキングが付くことが多い。ゴブリンキングとかオークキングとか。大体大型化するんだけど、ブレイクレッグキングは小型化している。
ブレイクレッグキングは、頭部が綺麗な青色をしていて、トサカが赤という、綺麗な色合いのダチョウ型のモンスターである。ブレイクレッグが大体2メートルくらいなら、ブレイクレッグキングは150センチくらいしかない。しかし、ブレイクレッグよりも脚がさらに発達し、装備ごとぶち抜いてくる。蹴りの威力だけならミノタウロス以上という、攻撃型のモンスターだ。
ブレイクレッグと違って群れて行動していないので、脅威度も若干下がっている。数の暴力って洒落にならないからね。あと、ミノタウロスと違って頭部や首が脆いのが理由。どんなモンスターも流石に頭を潰せば死ぬからね。
「ないよ。そのうち食べるつもりではあるけど」
「……美味しいのかな?」
「ブレイクレッグが美味いんだから、美味いでしょ」
「ほら、ミノタウロスの肉とか硬かったし……」
「おん……」
確かに、その懸念はある。懸念はあるが、そのへんのところはどうとでもなるのだ。何故なら。
「煮込めばなんとかなると思う」
「煮込むに絶大な信頼寄せてるじゃん……」
「ミノタウロスですら煮込めば食べられるんだよ?」
「カレー美味しかったなぁ……」
鬼灯が若干引いてるけど、実績がある調理方法なんだぞ?何が問題なんだまったく……
彩音さんが前に食べたカレーを思い出しているようで、微笑みながら呟いている。うん。美味しかったよね、カレー。
「カレーかー……カレー味の肉は食えるけど、カレー自体って食えるかな……?広義的には飲み物だから、酒ぶち込めばイケる……?」
「飲み物じゃないでしょカレーは」
何を言っているんだこいつは……?カレーは食べ物だよ。飲み物じゃない。
"カレーは飲み物教か???”
"アルコール混ぜたら食えるわけちゃうやろwww”
"流石にきついんじゃない?w”
「ま、とりあえず食ってみてダメだったらその時!」
「それで全部行く気なの……?」
「おん。そりゃ食えるもん増えたら、より美味しく酒が飲めるからな!!」
「そこなんだ……」
「そこなんですよ……あ"ー、酒に合うなぁ、焼き鳥」
焼き鳥をむしゃむしゃ食べつつ酒をぐびぐび。いや本当にこいつは呑兵衛過ぎる。凄まじい呑兵衛だよ本当に。彩音さんも呆れてるし。
"酒が中心過ぎるでしょこの子w”
"まさに酒飲み……”
"アル中だろこれもうwww”
"禁酒……出来ないんだったな”
"禁酒したら死ぬもんな……”
「はい、第2陣。今度はタレね。あとソーセージも焼けたから」
「お、いいじゃんいいじゃん!」
「美味しそう!」
「炒め物食べちゃってくれる?その鍋でアヒージョ作るから」
「りょーかい」
「本当に豪華なキャンプだね……」
第2陣のタレ焼き鳥もソーセージも出来たので、皿に乗せる。そろそろ揚げ物の準備をしよう。鍋に油を入れて温めてっと……急かすようで悪いけど、作れなくなっちゃうからね。
大きくてジューシーなソーセージを味わいながら食べつつ、唐揚げの準備をしていると、彩音さんがぶどうジュースの瓶を持って固まっていた。どうしたんだろ?
「……あ」
「おん?アヤネさんどした?」
「ホオズキちゃん、コルク抜き持ってる?」
「おん?あぁ、任せとけって」
あー、コルク抜きか。というか、コルク付いてるぶどうジュースなんてあるんだ……ワインよく飲んでるし、そりゃ持ってるよね。なんて思っていたら、ボトルを持った鬼灯がとんでもないことを仕出かした。
「ほいっ!」
"手刀で切るなwww”
"実際に見たの初めてだわそれw”
"さも当然のようにボトル切って開けるの草"
いや、嘘でしょ……?右手でシュッと口の部分を切り飛ばしてしまった。いや、出来るのそれ!?瓶が割れる音とかしなかったよ!?あと、魔法の類は一切使っていない。魔力を感じなかった。
あまりの光景に固まってしまったし、彩音さんも大分顔が引きつっている。凉に勧めてもらったアニメや映画でしか見たことないよそれ……
「…………あ、ありがとう……」
「すげぇ微妙な顔してておもろ」
「本当に出来るんだそれ……というか、切り口がキレイ過ぎない!?」
いや、なんでこんなにキレイに切れてるんだよ!手刀なんだから割れてないとおかしいじゃないか!!
なんというか、本当に刃物でスパッと切ったみたいなキレイな切り口をしていてびっくりする。手刀でやっていいことじゃないよこれ……
「すげぇだろぉ?練習したんだわ」
「なんでこんなこと練習したの……?」
「おん?宴会の一発芸用に。初手でやりやすくていいんだわ」
「……そうなんだ……」
"確かにめっちゃキレイに切れてるw”
"練習したは草”
"宴会の一発芸としては満点な気がするわこれw”
"初手のビールでいけるもんな”
飲み会って、そういうこともしないといけないのか……うーん……お酒が飲めるようになるまであと3年、いや、2年とちょっとあるけど、その間に何か考えておくか。
魔法でなんか手品みたいなのでもやろうかな。見た目も派手になるし。
「今絶対面白いこと考えてるぜ、ユキは」
「……最終的にとんでもない宴会芸しそうで怖いよ……」
「それはそう」
"それな”
"絶対やらかすゾ”
"信頼があるな”
将来の宴会芸について考え事をしている横で、鬼灯と彩音さんが何やらひそひそ話をしていた。
鬼灯は途中までニヤニヤしていたのに、彩音さんが何やら呟いたら、途端に真顔になったんだけど、何話してたんだろう?
塩で日本酒飲むの好きなんですけど、マジで引かれたことがあります。結構凹みました。