【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
塩でお酒飲むについて、感想欄でも結構意見がバラバラで面白かったです。
鬼灯が手刀で切ってあけたボトルから、ぶどうジュースを注いでもらって、彩音さんと一緒に飲む。
香りもいいし、美味しいなこれ。なんていうか、味が濃い。ジュースの味が濃いって何だよと思われそうだが、実際味が濃いとしか言いようがないのだ。
「ホオズキ、これ美味しいよ」
「うん。とっても美味しいよ!」
「良かった良かった……」
美味しくぶどうジュースをいただきつつ、将来的に飲み会で披露することになる一発芸を考えながら、アヒージョを作り始める。うーん。ダンジョン内とは思えないほどゆったりとした時間だ。
と言っても、炒め物をしていた鍋でオリーブオイルを熱して、ニンニクいれて肉を入れて塩コショウで味付けするだけなので、すぐに出来る。その横の今まで焼き鳥を焼いていた場所に鍋を置いて、こちらでは唐揚げ用の油を温め始める。多分、これが温まるころにはほぼ出来ているはずだ。
唐揚げに関しては、今回は2度揚げはしない。量があるし、用意するのも大変だからね。今日のために持ってきていたバットと網を2セット並べて、片方に調味液から取り出したブレイクレッグの肉を並べていく。揚げる前に水気を切らないといけない。衣は今日は小麦粉だけで作るので、ボウルに水をいれて溶かしていく。
そんな調子でチャカチャカ動いていたら、その様子を見ていた彩音さんがしみじみと呟く。
「ユキちゃんって、ホントに手際良いよね……」
"手慣れてるよな…”
"料理上手なのがよくわかる”
"何品も同時にやるのはマジで大変なんだよな…”
「モンスター食べようと思った時から練習してたしね」
「……ちなみにいくつくらいのとき?」
「確か9歳の時だったと思う」
前も言った通り、食料事情が気になったというのもあるけど、同時にお母さん驚かせたかったのもあると思うんだよね。だって、何だそれ!?ってなる話を量産している人だったから、その人のことを驚かせたい!っていうのは間違いなくあった。
驚かせる前にいなくなってしまったけれど、仏壇に報告はしてるから、きっと驚いて……いや、なんというかお母さんの場合、一切驚いたりしないでゲラゲラ笑い転げていそうだな。そっちのほうがお母さんらしいし。
鬼灯が私の話を聞いて、何やら考え事をしていたらしく、眉間にシワを寄せていた。
「…………もしかしてさ、なんか妙に体調悪くなってた辺りだったりする?」
「……そうだね。その辺だと思う」
「マンガみてぇにコゲ肉とか作ってた感じかー?んー?」
私の返答に対して鬼灯がニヤニヤと煽ってくるけど、申し訳ないが私は焦がす方面で失敗したことはほとんどない。いや、本当に。火を通しすぎて硬くなるくらいのことは、しょっちゅうではあったけども。
思わず当時の自分の失敗料理たちを思い出して遠い目をしてしまう。具体的には、ちゃんと焼いたつもりで食べたら、中がまだピンク色だった肉とかを。
「……生焼け肉が多かったよ……」
「お、おん……」
「な、生焼け……」
"生焼け肉はやべぇのよ…”
"普通にヤバい案件で笑えねぇ…”
"煽ってたホオズキちゃんすら引いてんの草”
"アヤネさんも引いてるんだよなぁw”
いやぁ、お母さんすらお腹壊して大変だったもんなぁ、あの時……私の返答に2人とも引きつった顔をしているけど、そりゃそんな顔にもなるよね。
あ、そういえば。
「生焼け肉といえばさ」
「そんな『といえば』ある……?」
「そこから繋がる話なくねぇ……?」
"生焼け肉といえばさ……?”
"そんな始まりある???”
"繋がりがわかんねぇ……!”
彩音さんも鬼灯も困惑している様子だけど、そんなにおかしいかな……?ともかく話を続けよう。
「ホオズキって生肉食べられるの?」
「矛先ボクかよ!」
"確かに、食えんのか?”
"食えそうな気はするが…”
"鬼だしな…”
鬼灯が叫び声をあげて頭を抱えてしまった。そんなに変な話だったかな?実際に気になるんだよね。鬼の鬼灯が生肉を食べられるのか。
酒を一気にあおると、そのまま質問に答えてくれた。
「あー、生肉は食えるけど不味いんだよなー……」
「味覚の問題なんだ」
「おん、そうなんだよ。肉食動物みたいにはなれんかったよボクは……」
「ならなくてもいいでしょ別に……」
若干落ち込んだようにつぶやく鬼灯に、思わず呆れてしまった。肉食動物みたいにって、何を目指してるの君は……
「いやでもさぁ……こう、生肉がっつきながらニタニタ笑ってるのが鬼っぽくねぇ?」
「それは分かるけども」
「想像したら、確かに鬼っぽいねそれ」
彩音さんと一緒に同意する。いや、確かにその方が鬼っぽいっていうのは一切否定しないけども。本当に、『鬼』っぽくふるまうことにこだわるなこいつは。見た目が鬼だから、それが非常に合うのは分かるし、実際に似合ってるんだけどさ。
"ロールプレイガチ勢で草”
"結構こだわり強いタイプなのねw”
"和装にひょうたんに刀で揃えてるもんなw”
「そりゃ、せっかく他の人と違う身体なんだから楽しまないと損じゃん?」
「ガッツリ楽しんでるよねホオズキは。特に酒」
「おん。酒はマジで美味くていいぞぉ!あ、アヒージョ用にワイン開けよ」
「あれ?日本酒は……?」
「おん?飲み終わったが?」
"嘘やろ???”
"はっやwww”
"720をその速度で飲むの草”
ほれ。なんていいながら、日本酒の瓶を軽く振る。中に液体が入ってる音がしない。どういう速度飲んでるんだこいつ……
「ええ……」
「ホントにお酒が大好きなんだね……」
「まぁな♪そういやさ、リスナーたちに聞きたいんだけど、アヒージョって何ワインが合う?ボクは白だと思うんだけど、それがタコのアヒージョだからってのはありそうだと思ってさー」
私と彩音さんが引いているのも気にせず、リスナーに話を振り始める。やっぱり、こいつが一番配信得意なんじゃないか……?
流石に火を扱いながら画面を見るのは危ないので、その辺のやり取りは任せてしまおう。私はもろもろ作り終わったときでいいでしょ。多分。それに、なんだかんだアヒージョ出来たし。
"中身が肉だと赤だなぁ”
"アヒージョは全部白”
"ロゼだろ真面目に。中身が何でもあうぞ?”
"中身によるけど、肉じゃなければ白かな”
"酒飲み多すぎだろw”
「すげぇ、全部出るじゃん」
「バラバラだねホントに……」
「ちなみにアヤネさんは何が合うと思う?」
「あんまり飲まないからあれだけど……お肉とニンニクには赤ワイン。じゃない?イメージとしては」
「なるほどねぇ……」
話が切れたっぽいので、アヒージョをテーブルの上に置く。から揚げ用の油も温まったので、そろそろ揚げ始めようかな。
「出来たよ。肉だらけのアヒージョ」
「本当にお肉ばっかり!でも、美味しそう!
「お、やったぜ!……ちょうどいいし、全部開けるか!よーし飲むぞー!」
いや、何言ってるのこいつは。ってうわぁ!収納魔法からどんどんボトルが出てくる!!本当にワインセラーになってないか!?
10本近い本数を並べていたんだけど、最終的に3本を残してしまいこんだ。いや、それにしても、いったい何本入ってるんだ……
"全 部 開 け る か”
"すげぇ種類出てくるじゃんwww”
"マジで全種類出すの草”
"呑兵衛がよぉwww”
「なんで全種類あるの……?」
「気分で飲み分けるために決まってんじゃーん。さぁて、どっからいくかなー」
「それいくらしてるのさ」
「おん?これが3000円、こっちは2000円、このボトルも……2000円だったかな?」
順番にピンク、赤、白の順番でボトルを指さす鬼灯。なんというか、高校生の私からすると結構高くない?って感じの値段だ。ただ、お酒の値段わからないから、高いのかどうかがよくわからない……
「高いのかどうかが分かんないや……」
「普通くらいの値段」
「そうなの?アヤネさん」
「私、普段缶チューハイとかだし詳しくは分からないけど……でも、ボトルワインなら、それくらいのはよく見るかな」
彩音さんの発言的に、ワインとしてはそんなに高くないらしい。この前ワイン飲みたいって言ってから、結構飲んでるのかと思ったんだけど、そうでもないのかな?
いやでも、やっぱり高くない?合計7000円もあったら、もう一個椅子買えるんだけど。
「酒は安いのは3桁だけど、高いやつは7桁とかだからなー。4桁ってのは、まぁそういうことよ」
「7桁って……」
7桁って……つまり100万円ってことでしょ?そんなに高いお酒なんてあるんだ……実は私があんまりわかっていないだけど、高級なものって最終的にそのくらいに落ち着いたりするんだろうか?
ちょっと引いてしまった私の様子をどう思ったのか、鬼灯が補足情報をくれる。
「有名どころは流石に聞いたことあるんじゃねぇの?ド◯ペリとかロ◯ネ・コ◯ティとか」
「……聞いたことある……!」
すごい聞いたことある名前が出てきた……!なるほど、そういう全然その界隈を知らない人でも名前は知ってる。くらいの有名な奴がそのくらいの値段するのか。
「ホオズキちゃんは、そのあたりのお酒って飲んだことあるの?」
「前に両親に飲ませてもらった。けど、今のボクにゃこの辺の酒が合ってるんだよねぇ」
「高ければ美味しいわけじゃないんだ?」
「いや、美味いよ?確かに舌に合わないってのもあるけど、それ以上に金銭的な身の丈の話。たまに飲むにしたって高すぎるからさぁ……」
「あぁ……」
「なるほどね……」
そりゃそうだ。7桁のお酒なんてそうそう飲めるわけが……いや、冒険者としては割と現実的に可能なのでは?
もしかしたら、成人したあとの鬼灯はひたすらその辺のお高いお酒をグビグビ飲んでる可能性があるな……
"飲んだことあるんかい!”
"やっぱ、高いのはうまいのか…”
"そりゃそうだよなwww”
"つか、その酒代どっから出てんの?”
「基本的にバイト代。あと、インターンの給料」
バイト代か……あ、そうだ。鬼灯に聞いてない。
「ホオズキ、どこでバイトしてるの?」
「おん?あー……ひひ、内緒ってことにすっかなー?」
「えー……」
すっごく悪そうなニヤつき顔で断られてしまった。いや、似合ってるなそういう顔……鬼のロールプレイが板につきすぎている。
そんなところにちょっと感心していて黙ってしまったんだけど、その沈黙をどう受け取ったのか、鬼灯が少しだけこぼしてくれた。
「まー……業種的にはカフェの店員やってる」
「え、カフェ……?」
「おん。カフェ」
「かふぇ……?」
ほ、本当にお酒関係ないところ……だと……!?それにカフェの店員……!?いやできるのかそれ?確かに鬼灯は人当たりいいけど、こう、カフェの店員さんみたいな制服着てるところが全く想像できないんだけど……?和装以外見たことないぞ!?しいて言うならジャージくらい。
あまりにも衝撃的過ぎて呆然としてしまった。
「すげえ呆然とした顔してておもろ」
「今まで見た中で一番呆然としてるかも……」
"くっそ、ユキちゃんの顔みてみてぇw”
"ユキちゃん視点の映像だからからしゃーないなぁ……”
"にしても、カフェの店員は想定してなかったな……"
"なあ、つまりバイト先に行けば和装じゃないホオズキちゃんが見れるって……こと!?”
"はっ!!”
"くそ!どこで働いてるんだ!?”
"情報はよ!!”
「君たちさぁ……」
「リスナーさんたち……」
なんか知らないところでリスナーさんたちが二人にドン引きされていた。
会話していたらいい感じにアヒージョがちょっと冷めたので、みんなで食べることした。
鬼灯はワインを全種類開けて順番に飲みながら。私と彩音さんはぶどうジュースをちびちび飲みながら。うーん。やっぱりキャンプだよねこれ。
「美味しい!ソーセージもブレイクレッグもいいね!」
「うめー!そしてやっぱり、肉だからか赤が合うな……」
「……ソーセージ美味しい」
ブレイクレッグも美味しいけど、それ以上に、もう一本くらいソーセージ入れておけば良かったかもしれないくらい、このソーセージがアヒージョに合うなぁ……あとで、彩音さんにどこで売ってたのか聞いておこう。
それと、絶対にいつかソーセージを作ろう。モンスターで。