【書籍化】配信に興味ないダンジョン配信者は今日も配信する 作:もけねこ
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アヒージョを味わっている間に、油の温度と水気の切り具合が完璧になったので、今日のメインであるブレイクレッグの唐揚げを作っていくぞ。
今回作るのは塩味と醤油味の2種類だ。塩味はコショウを少し入れて、少しばかりパンチを効かせた代わり、ニンニクを無しにした。醤油味の方はニンニクを少しだけ入れた。どちらを食べるのかはお好みでって感じ。
「じゃあ、今日のメインを作っていくね」
「お、待ってました!」
「ふふ、楽しみだなぁ……!」
2人にも楽しみにしてもらえているようだし、気合入れて揚げよう。どこに?は聞かないで欲しい。ただのノリだ。
まずは……うん。醤油からやっていこうかな。王道だしね。
"きたきたきたー!”
"配達で唐揚げ弁当買った俺に死角はない”
"俺もレンチンしてこよ…”
「そういやさ、アヤネさんって」
「うん、何?」
「……よく食べるからデカくなったの?それとも、デカくなってからよく食べるようになったの?」
鬼灯が彩音さんに投げかけた質問は私も、気になるな……私も鬼灯も小さいからね。彩音さんが羨ましいんだよね、本当に。彩音さんはモデルやってる愛依といい勝負なスタイルしてるし。身長が高いのが特に羨ましい。
彩音さんは少し考えるように黙ったあと、口を開いた。
「よく食べるから大きくなった……かな。昔からよく食べてたもん」
「あー……そっかー……」
「そっか……」
彩音さんの言動にちょっと悲しくなる。うぐぐぐ、私も鬼灯も少食ってわけじゃないけど、食べる方ではないし、その結果なのかもしれない。でも、これからたくさん食べれば伸びるはず。多分。きっと……!それに、胸だって……!
そんなことを考えていたら、横から彩音さんが冷水を浴びせてきた。
「……今からたくさん食べても、流石にもう成長しないんじゃない?」
「あ"?」
「は?」
「ご、ごめん!ごめんなさい!」
彩音さんの一言に鬼灯と2人揃って、ドスの効いた声が出た。なんだぁ、やんのかぁ……!?自分が成長しきったからってバカにしてるのかぁ!!
私たちのキレっぷりに彩音さんが怯えているけど、知るもんか!怒ってるんだぞ私たちは!
"ガチギレで草”
"めっちゃキレてるじゃん…”
"でも、実際もう伸びなさそうではあるよな…”
"縦よりも横に成長しそうだが…”
「ユキ、こいつらBANしようぜ」
「分かった、友人に連絡しておくね」
「2人とも落ち着いて!」
リスナーさんたちのコメントをみたらしい鬼灯がキレていたので、凉に連絡することを決める。
彩音さんが諫めてくるけど、これが落ち着いていられるわけないじゃないか!バカにしやがって……!
「これから成長するんだよボクたちは!」
「そうだそうだ!」
「ごめん、ごめんってば!」
2人揃って全方位に主張させてもらう。これから、これからなんだよ私たちは……!
"本当にすみませんでした!BANはやめてください!”
"お助けをー!”
"何もかもがアホで草”
ぎゃーぎゃーと騒いでいたら、唐揚げがいい感じに揚がっていたので、慌てて引き揚げる。あっぶない。こんがりとした、綺麗なきつね色。うんうん。いい感じに揚げられたと思う。1つ切ってみて中まで火が通っているか確認。うん、大丈夫そう。この確認怠ると食中毒が待ってるからね……
「…………ふぅ。酒飲んだら落ち着いたわ……」
「わ、美味しそう……」
"いい感じじゃん”
"本当に美味そう”
"中の確認大事だよね”
"俺も一回やったなぁ……生焼けから揚げ……"
彩音さん本当に食べ物に目がないな……油切れるまでちょっと待っててほしいな。次に、塩味の方のから揚げを同様に油の中に。今更だけど、ダンジョン内で揚げ物できるの本当にいいな。幅が広がる。カツ系のものや天ぷらなんかも作れそうだし……余裕があったらコロッケを自作してみたいところだけど、あれすさまじく手間なんだよね。あれ作る時間で何品作れるか。
じゃがいも茹でてマッシュして、玉ねぎとひき肉を炒めたあとで、二つを混ぜ合わせて、味整えてからタネを冷やして休ませて、それから形成、衣付けやってからようやく揚げる。冗談でなく手間が凄まじいので、本気で作りたい時でもない限り、総菜として買ってきた方がいい。間違いなく。
「よし、まず醬油味の唐揚げね。今やってるのは塩味」
油も切れたので、二人の前に唐揚げを置く。まだまだ揚げるのでどんどん食べてね。鬼灯は自分のお腹と相談しながらにしてほしいけど。食べられなさそうだったら、横で希望に応じた料理を作って出そうと思う。
「揚げたて食べられるの贅沢だよね……いただきます!」
「おん……いや、美味そうだよな、本当に。いただきまーす」
彩音さんと鬼灯が一個ずつ食べる。結構熱いと思うんだけど、まるまる行ったよこの二人……私はさっき割ったやつを食べる。それなりに冷えてるし、食べやすくていい。お、いい感じで美味しい。予想外ににおいがきついとかもなかったし、大成功だ。
「はふはふ、うめぇ!!」
「んー!美味しい!」
二人にも大好評みたいだし、よかったよかった。鬼灯も問題なく食べられそうで良かったよ。食べすぎには注意した方がいいと思うんだけど、どのくらいなら大丈夫なのかは本人に任せよう。こっちで余計なお世話してもしょうがないしね。
2人が美味しそうに食べている中、次の唐揚げが揚がったので、引き上げる。油に入れてから冷ましてる時間があるので、結構なハイペースで並べられるのがいいね。先ほどと違ってちょっと白めだけど、これは醤油じゃなくて塩味だからである。こっちも一個切って、中を確認。うん、大丈夫そうだね。
「ほー色違うんだ」
「こっちは塩味だからね」
「なるほどねぇ……へいリスナー!これに合う酒は何?」
リスナーさんたちを検索ツール代わりにするんじゃないと言いたいところだけど、なんというか、コミュニケーションの取り方としては正しい気がするんだよね。実際、スライムの時も思ったけど、外から発想とか知恵を持ってきてくれるわけだし。すごくありがたいよ。自分だけだと、わからないところとかあるしね。
"ビール!!”
"ハイボールだろ”
"レモンサワー!"
「ふむふむ、アヤネさんは?」
「唐揚げはレモンサワーかな」
「つーまーりー?味がさっぱり目の炭酸系ってことだな?とりあえずビール飲むか。あとは飲みながら考えよ」
「ところで、ホオズキちゃんは唐揚げ食べても大丈夫そうなの?」
「今のところ問題なさそう!マジで酒に合いそうなので食えるってわかったのはデカい。やっふー!」
鬼灯がすごくうれしそうだ。ずっと苦労してるもんね……試行錯誤しながらだったのを横でずっと見てきたから、喜んでくれて本当によかったよ。それに、基準がお酒なのが鬼灯らしい。
缶ビール片手に唐揚げをつまむ鬼灯をみていると、本当に呑兵衛だなって感想になるけども!そして、私もぶどうジュースを飲んで……うーん、ちょっと味が喧嘩しちゃうなこれ。私もさっぱりめのが欲しい。彩音さんはどうだろう?
彩音さんの方をみても、あんまり気にしていないのかそのまま飲んでいた。いや、ちょっと羨ましそうに鬼灯見てるな……何かあったっけ……あ!
「ねえ、ホオズキ」
「おん?どした?」
「前に作ってくれたライムのやつ、作れない?」
「おー、いいよ。作るからコップだけ用意して。アヤネさんもいる?ノンアル丸絞りライムサワー」
「え、美味しそう!欲しい!」
彩音さんも勢いよく食いついてきた。鬼灯がお酒が基準なら、彩音さんは食べ物基準だな……私は何基準だろうか……?食べ物だな。うん、食べ物だ。
彩音さんと二人でぶどうジュースを飲み干し、鬼灯の前に置く。鬼灯は収納魔法から強炭酸水を取り出してコップに注ぐ。そして、ライムを取り出した。なんで常に持ってるんだろうね……?多分レモンも常に持ってる。
「作ってもらっておいてあれなんだけどさ」
「おん?」
「なんで常に持ってるの?」
「酒に入れるためだが?」
「……そっかー……」
"でしょうねwww”
"この感じだとレモンも持ってそうで草"
"マジで酒基準すぎるこの子w”
"うーん、これは鬼”
何を当たり前のことを言ってるんだお前。くらいのテンションで鬼灯に言われてしまう。同時にすさまじく納得したけども。まあ、確かにお酒に関係ないものを持ってるわけないが。鬼灯だもんな。
そして、鬼灯はライムを右手に持つと、そのまま丸ごと握りつぶしてコップに注ぐ。いやあ、何度見ても豪快だなこの作り方……お父さんも時々やってるから、冒険者内では結構やるみたいだ。
「えっ!?」
"豪快すぎるwww”
"丸絞り過ぎんだろwww”
"あれって握りつぶせるんだ……"
あれ?彩音さんがびっくりしてる。もしかして、あんまりやらないのか……?なんだか、彩音さんと一緒にいると、自分の常識が揺らぐ瞬間が多々あるんだよね……
果汁を絞ったあと、少しだけ塩を入れて味を調えて……ノンアルコールで味見できないから勘らしいんだけど、すくなくとも作ってももらった限りでは一度も美味しくなかったことはないから、結構作りなれてるんだと思う。
「ほい。丸絞りライムサワー」
「ありがとう」
「あ、ありがとう……ホントに丸絞りだったね」
「まあね。流石にレモンは出来ねぇけどなー、手のサイズ的に。さぁてボクはー、ジンライムを炭酸で割って飲むか」
何やら別のお酒を取り出して同じように絞っていく鬼灯を横目に、ライムサワー(ノンアル)を一口。うーん、さっぱり!口の中の油がキレイに流されていく感じで、いくらでも唐揚げが食べられそうだよ。それに、ライムの匂いが結構するんだよね、このやり方。私も練習しようかな。
「ホオズキちゃん、これ美味しいよ!」
「だろぉ?自慢の一品よ。にしても、唐揚げ美味いし、ジンライムにも合うしでいいねぇ……」
「塩と醤油だと、どっちが気に入った?」
「甲乙つけがたい!どっちも美味い!」
「ユキちゃん、塩味もとっても美味しい!」
「んふふ、良かった」
2人とも笑顔でガツガツ唐揚げを頬張ってくれて、本当に嬉しい。私も食べるけども。ライムサワー片手に。いや、本当にこの飲み物って揚げ物に強すぎるな……すごいさっぱりする。
しばらく食べながら雑談して、彩音さんと一緒に、もう一杯作ってもらったところで、2人がリスナーさんたちのコメントを拾った。
"そういや、唐揚げにレモンかけないのな”
"確かに、うめぇのにな”
"戦争の火種をまくんじゃない!”
"やめろやめろ”
「あー、派閥あるもんね……」
「そうなん?なんか色々あんだなぁ……」
「何の話?」
「唐揚げにレモンかけるかどうかって話」
「あぁ……ホオズキ、レモン出して」
「あいよー。ほれ」
なるほど、レモンね。私はあってもなくてもいいかな派閥なので、どちらでもって感じだ。あればあるで美味しいし、なければないで美味しい。それだけである。彩音さんも嫌いなわけじゃなさそうだし、鬼灯は食べたことないしで、一旦かけてみようか。
というわけで鬼灯にレモンを要求。即座に収納魔法からレモンを取り出して私に投げてくる。やっぱり持ってたね。
「あるんだ……」
「おん。酒に入れるものは大体持ってんだなぁ、これが」
「もし、なんだけど……」
「おん?」
「……烏龍茶とか言ったら――」
「ほい」
「ホントに出てくる!」
あまりの何でも出てくるっぷりに彩音さんがびっくりしてる。いや、私もびっくりしてる。なんで烏龍茶持ってるんだよ。飲めないでしょ君……え?烏龍茶でお酒を割るの?そんな飲み方があるんだ……
"割材まで入ってんのかwww”
"酒関係しか入ってなさそうマジでw”
"無限に酒関係の品出てくるの草”
"酒関係以外のもの入ってんの?”
「酒関係以外のもの……ねぇな、うん」
しばらく収納魔法の中を探っていた鬼灯だけど、なかったらしい。まぁだろうね。いや、本当は着替えくらいは持ってるかもしれないけど、わざわざ言うようなことでもないし。
レモンをナイフで4つに切って、1つを唐揚げに絞る。あとは皿の隅に置いておく。かけたい人がかけるなり、鬼灯がお酒に入れるなりするでしょ。
「あー、大分さっぱりすんねこれ」
「レモンかけると油っぽくなくなるよね」
「食べやすくていいよね」
「うーん……」
なんだか、鬼灯が考え込んでしまった。そんな真剣に考えるようなことある?レモンかけるだけで?
唸りながらしばらく考え込んだ後、結論が出たらしく、鬼灯が口を開いた。
「なんつーか……レモンかけると、ライムのさっぱり感が過剰になる感じする」
「あー……」
「確かに……」
確かにちょっとそんな感じするなぁ……彩音さんとも頷きあってしまった。すでに大分中和されてるもんね、レモンで。
とりあえず、この場においてはレモンはかけないほうがライムサワーに合う。という結論で落ち着いた。
コロッケはマジで惣菜で買ってきましょう。家で作るもんじゃないですあれ。